次回からは清涼祭編となります!
「さて、戦後対談を始めるか。」
「…うん。」
俺達Fクラスは、Aクラスに勝利するという快挙を成し遂げた。戦後対談を見守っているFクラスの皆も笑顔だ。
「俺達からは何も言うことは無いな。設備の交換、それだけだ。」
「…交渉は?」
「無い。それでも良いだろ?明智先生。」
雄二のやり方で問題ないか、側にいる明智先生に尋ねる。
「はい。それでは設備の交換の手続きは、私がしておきます。Aクラスの方々は旧校舎の方へ行って下さい。」
それを聞いたAクラスの皆は足取り重く出ていった。
…数人を除いて。最後に木下、久保、工藤、霧島が残り、俺達に言った。
「三ヶ月後、アタシ達は絶対にこの教室を取り返すから、覚悟してなさい!アンタ達なんかに負けっぱなしなんて絶対に嫌よ!」
「首を洗って待っててね。」
「…うん、次は負けないよ!」
「…雄二、帰ったら、覚えていて。」
「おい翔子!それは脅迫だ!」
完全に悪役のそれだが、それはどうでも良い。俺達はAクラスのシステムデスクを手に入れたのだ。
「…お前達、席に着け。話がある。」
雄二が静かにそう言った。高虎や明久、秀吉達もキョトンとし、自由に座る。
「まず、お前達には心の底から感謝している。皆のお陰でこの豪華な設備を手に入れる事ができた。ありがとう!」
雄二が深々と頭を下げる。
「珍しいな、お前が頭を下げるなんて。」
「何言ってんだ高虎。俺だって礼を言うこと位ある。それとだ。」
礼だけではないのか、雄二が続ける。
「これからはこのクラスに多くの戦争が仕掛けられる。Aクラスだけではなく、Cクラスや、Eクラスなどからも来る、それらを跳ね返して行かなければならない。これからも頼むぞ!」
『おう!』
ガラッ
ドアが開いた。あれは…明智先生?
「こんにちは。明日からあなた達の担任を務めさせて頂く事になりました。」
…え?
『えええええっ!?』
教壇にいた雄二や、普段大声を余り出さない高虎も叫ぶほど驚いている。
「ちょっと待ってくれ!福原先生はどうしたんだ!?」
雄二が動揺しつつ聞く。
「福原先生は、Aクラスの担任に変更となりました。よって、高橋先生は学年主任だが、担任を持たない事になりますね。」
「そ、そんなことは可能なんですか?」
姫路が明智先生に聞く。
「今まではこのような事は一度もありませんでした。ですが、あなた達がAクラスに勝つという、これも今までに例がない快挙を成し遂げました。それに…」
そこで一拍置く。
「高橋先生の意思でもあります。『ホームルームをあの教室でしたくない』と仰っておりまして…」
『…』
高橋先生らしいというか、何と言うか…可哀想になってきたな、Aクラスが…
「今日は試召戦争のみの予定日でしたね。そろそろ下校の準備を始めて下さい。」
まだ午後の三時半か。いつもより早く帰れそうだ。
「父上!父上は帰らぬのか?」
「私はまだ職員会議があります。一緒には帰れませんよ。」
「むう…」
玉が頬を膨らませる。仕方無いよな、明智先生も担任入りして忙しいだろうし。
「吉継、俺達も帰るか。」
「そうだな、久し振りに長政様の家に寄ってみるか?」
長政様とは、俺や高虎が住んでいる下宿の大家で、俺達の父親とも知り合いらしい。
その縁もあり、長政様や妻のお市様には小さい頃から良くしてもらっている。
ちなみに、俺と高虎の下宿は場所が違い、結構離れているのだ。
「時間もあるし、行くか!」
高虎がカバンを取って早足で歩き始める。よっぽど嬉しいんだろうな…
~移動中~
「「失礼しまーす」」
「はい、どなたですか…あら、高虎に吉継!」
長政様の家に着いて出迎えてくれたのは、長政様の妻のお市様。
もう三十路にかかりそうな年齢らしいが、外見はとても若々しく、姫路や玉と並んでも年上には見えない方だ。
「長政様はいらっしゃいませんか?」
「今、夕食の買い物に行っています。もう少ししたら戻られるはずですよ。さあ、上がって下さい。」
リビングに上がり、お茶が出される。
「もう二人とも高校二年生ですか。どこに行っているのですか?」
「俺も吉継も、文月学園に通っています。」
高虎が受け答えをする。
「文月学園…試験召喚システムを導入しているあの文月学園ですか?」
「はい。ちなみに今日、試召戦争をしてきました。」
「まあ!どうだったんですか?」
「俺達の勝利に終わりました。設備を交換して、豪華な設備になりました!」
高虎、余程嬉しいんだな。いつも物静かな高虎がここまで…
「そう…良かったですね。まだ一年は始まったばかりですし、いつまでも浮かれてはいけませんよ。」
「分かっております。皆で手にしたシステムデスクを手放しはしません!」
そう、これからだ。雄二の言う通り、色々なクラスが攻めてくるだろう。どれだけ守ることができるか、だな。
「市、帰ってきたぞ!…おお、高虎に吉継ではないか!」
長政様が袋を持って買い物から帰ってきた。
「お邪魔しております。」
「ははは、そんなに固くならなくても良いぞ。それはそうと、珍しいな。」
「学校が少し早く終わり、暇が出来たので、ここに寄っていこうと思いました。」
「なるほどな。折角だし、夕飯でも食べて行かないか?ちょうど鍋でもしようと思っていたのだ。」
「な…長政様、良いのですか?」
「全然構わぬ。学校で何があるのか、等聞きたいしな。」
ありがたい。お市様の料理はとても美味しいし、皆で食卓を囲むのも悪く無いな。
「それでは、ご馳走になりましょう。高虎、それまでに課題を終わらせるか。」
「そうだな。お市様、テーブルをお借りしてよろしいでしょうか?」
「はい。自由に使って良いですよ。」
お市様の許可を頂き、課題を荷物から出す。この量なら一時間足らずで終わりそうだ。
~更に時間経過~
「出来上がりましたよ~」
「「おお!」」
課題をおえ、長政様と談笑したりしている内に、夕食が出来上がった。とても美味そうだ。
「それでは、頂きます!」
高虎が一番に箸をつける。それを見て、俺や長政様、お市様も食べ始める。
「…美味しいです。」
「ふふ。そう言って貰えると嬉しいです。頑張って作った甲斐がありました。」
お市様も嬉しそうだ。
「そう言えば、そなたらは文月学園に通っているのだな。」
「はい。」
「あそこは、成績によってクラス分けされていると聞いたが…」
「そうです。俺と高虎は、一番下のクラス。腐った畳に脚の折れた卓袱台でした。」
長政様とお市様の手が止まった。
「だが、下のクラスは試験召喚戦争…テストの点数によって強さが決まる召喚獣で戦う戦争に勝つことによって、上のクラスと設備を交換できます。」
「それで、そなたらは設備交換をしたのだったな。」
「豪華な設備と言っていましたね。どの様な設備なのですか?」
「システムデスクに、デスクトップパソコン。ノートや文具、参考書も学校が支給してくれます。」
「「…」」
俺の説明にまたもや声を失った。同じ学費でこの格差は流石に酷いよな。
「高虎、吉継、良かったな。学校生活が楽しくなるだろう。」
「ただ、設備を落とされた人達は気の毒ですね。畳は腐ったら大変ですし、体調を崩さなければ良いですね。」
「交換したとき、首を洗って待ってろ、と言われましたよ。そうだよな、吉継。」
「ああ、まだこれで終わりではない。」
だが、こういう楽しいときは、そんなことは忘れていたいよな。
そんなことを考えている内に、鍋が全て無くなった。もう帰らねばならんな。
「ご馳走様でした。」
「ありがとうございます、長政様にお市様。突然押しかけて、夕飯までご馳走になってしまって…」
「良い。某も久々に会えて楽しかったぞ。これからもたまに来てくれると嬉しい。」
「いつでも遊びに来て下さいね。」
「はい。それではお邪魔しました。」
ドアを閉める。まだ四月だから、夜は少し冷えるな。
「それじゃあ、帰るとするか。」
「ああ。吉継、また明日な。」
俺達の家は長政様の家を中心に、ちょうど反対方向、ここで帰り道が別れる。
少し後ろに手を振り、俺達は帰路についた。
「」
今回出てきた浅井長政とお市は、今後もちょくちょくと出てきます。
結構展開が早いですね。書き忘れが無いか心配です。