それでは、どうぞ!
振り分け試験
俺は大谷吉継。文月学園に通う高校一年生だ。
今日は進級直前の振り分け試験の日。だが…
(高虎がまだ来ていない…?)
俺の友人の藤堂高虎がまだ来ていないのである。あいつは成績優秀で身体能力も高い。間違いなくAクラスに入れるのだが…
「どうしたんだ、吉継。」
後ろの方から声がかかる。この声は間違いない。
「・・・雄二か。」
俺と高虎の悪友、坂本雄二だ。あまり成績が良いとは聞かないが、頭の回転はとても速い。
「珍しくボーッとしてたぞ。」
「ああ、心配させて済まない。試験まで後五分位なのに高虎が来てなくてな。」
「高虎が?」
雄二が少し驚いている。無理もない。高虎は入学してから無遅刻無欠席だったのだからな。
「アイツが今日に限って熱でも出したのか?運悪いなあ。」
「もしこのまま来なかったら、あいつはFクラス確定だな。」
文月学園の学年末の振り分け試験は、追試が無い。それ故に当日欠席は無得点となり、自動的に一番下のクラスであるFクラスに落とされる。
「ところで、雄二はどうするんだ?」
「ん?どうするって?」
「お前の事だ。勉強はしていたのだろう?」
「まあ、申し訳程度にはやったが・・・Aクラスに入る気は無い。」
「・・・どういう事だ?」
「点数を調整して、Fクラスの代表になる。」
一体目の前の男は何を言っているんだ。わざわざ下位クラスに入るなど。
「 最下位のクラスに入って、上のクラスを倒し、下剋上をしてみたいんだ。」
「・・・」
「勿論簡単に出来るとは思ってないさ。だが、だからと言って上で偉そうにしている連中に入りたくはない。」
「考え方がお前らしいな。」
だが、この事を俺に話すと言うことは・・・
「・・・その計画に俺も乗ってほしい、という流れか。」
「そう言うことだ。学年トップ10に入るお前が一緒に居るなら心強い。」
「・・・断ることなど、出来ぬようだな。」
この言葉を聞いた雄二が顔を明るくさせる。
「そうか!それなら話が早い。頼んだぞ。」
そういって雄二は自分の席に戻って行った。
「はい、それでは席に着いて下さい。」
雄二が帰っていったとほぼ同時に試験監督の教師が入ってくる。
「あれは・・・古文の明智先生か。」
紫色の長い髪を後ろで結んでいて、長身で細身の先生。性格は温厚で生徒にも慕われており、教師の中でも一、二を争う頭の良さだそうだ。余談だが、娘もこの学校に通っている。
「先生、高虎が来ていません。」
「高虎、と言うと藤堂高虎君ですね。・・・今日は風邪で休みのようですね。」
(高虎が休みか・・・これであいつはFクラス。)
「では、問題用紙を配ります。一教科目は、現代国語です。」
問題用紙を丁寧に配っていく明智先生。俺の所にも配られ、全員に行き渡って少ししてチャイムが鳴る。開始の合図だ。
(問題は大した事無いな。Fクラスなら、どの程度の点数だろうか・・・)
点数を取らず、怠けているように見せない。それはとても大変な事であったのだ。