サザンビークの結界使い   作:すけ
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第三話 光の貴公子と黒き結界使いの死闘?

「あ!おかえりなさい!ラグサット様の護衛お疲れ様でした。帰られたところ早速で申し訳ないのですが、あなたに受けてほしい依頼があります。こちらをどうぞ。」
「ああ、ありがとう。」


俺はリーザス村から大臣の息子、ラグサット様の護衛を終えてサザンビークに帰ってきた。ゼシカが目が覚めるまでリーザスに居たかったが、至急サザンビークに帰ってこいとギルドの職員に言われそうもいかなくなってしまった。ちなみに、ギルドの職員はわざわざルーラでリーザスまで飛んできて俺に伝えてくる。この世界には電話というものはないが魔法がある。だから誰かに伝えたいことがあったら、伝えたい人の元に直接自分が向かえばいいのだ。しかし難点が一つ、それはルーラを使える者がかなり限られるということだ。原作でもルーラを使えるのは主人公とククールだけだったはず。つまり、将来大魔法使いになるあのゼシカでさえルーラを使えないのだ。これはもう魔法の練習とかでなんとかなるものではない。100%才能で決まってしまう。だからルーラを使えるやつは自分を天才だと思い、他を見下すやつが多い気がする。リーザスまで来た職員もそういったタイプのやつだ。名前はペーテルという。やつはドヤ顔でルーラを使い、決めポーズで俺たちの前に現れることから、俺たち冒険者の中ではドヤ顔の貴公子というあだ名で呼ばれている。奴は金髪で赤眼、さらにイケメンときた。俺が一番嫌いなタイプだ。そんなドヤ顔の貴公子にドヤ顔を見せられ、終いにはゼシカが目を覚ますのを待つことも止められた。奴の所為ではないのはわかっていたが、俺は無性に腹が立ったのでペーテルがルーラで俺をサザンビークまで連れて飛ぶ直前に、奴の頭上に魔力で隠した結界を張ってやることにした。やつはそのまま結界に頭をぶつけ5分ほど悶絶していた。あまりに痛そうだったので少し可哀想になってしまい、ペーテルにリーザス村の子供たちからもらったお菓子を分けてあげることにすると、やつは「一応、受け取っておこう!僕に受け取って貰えて君は幸せ者だな!後世に語り継いでもいいのだよ?」
と今まで見たことがないほどのドヤ顔を俺に見せつけてきやがったので、俺は結界を四重に重ねて奴の頭上にもう一度ぶつけてやることにする。今度は20分ほど気を失ってしまった。

そんなくだらないやり取りを行い、俺はサザンビークに再び帰ってきた。受付嬢に依頼書を受け取り内容を見てみる

「ダンビラムーチョの討伐?思っていたほど難関な依頼じゃないな。これなら俺じゃなくてもいいだろ?」
「はい。ダンビラムーチョの討伐のみならば、達成できる冒険者の方は沢山います。しかし、その…。なんていうか。」
「なんだ、歯切れが悪いな。とりあえず言ってみてくれ。」
受付嬢が気まずそうに
「ペーテルさんと一緒にダンビラムーチョを討伐して欲しいのです。」
最悪の依頼を俺に押し付けてきた。




「なぜ俺なんだ?それこそ俺じゃなくてもいいだろ。そもそもペーテルはギルドの職員だ。戦う必要がないんじゃないか?」
「ひっ!す、すみません。」
あまりに嫌すぎて、受付嬢にびびられてしまうほど俺は怒りの形相を浮かべてしまっているようだ。いかんいかん。彼女は何も悪くないのに彼女に当たっても仕方がない。
でも少し考えてみてくれ。俺はサザンビークで大事なことがあると聞いて、ゼシカの目が覚めるのを見届けることができず、急いで飛んできたんだぞ。しかも俺は非常に遺憾ながらルーラを使えない。だからペーテルと手を繋ぎながらここまでくるという誰得な状態のままここまで飛んで来たんだ。少しは怒りたくなるのも仕方がないだろう。

「少し強く当たってしまった。すまない。で、何故やつが魔物を狩る必要があるんだ?」
「は、はい。なんでも、ペーテルさんがデインの呪文を覚えたからだそうです。」
「なに!デインだと!?」
「はい。なのでこのままただのギルド職員として腐らせたくないと、上部とペーテルさんの要望で魔物を討伐する術を学ぶことが決定したんです。しかしペーテルさんは魔物討伐などほとんど行ったことがないので何が起こるかわかりません。そこで何が起こってもいいようにあなたと一緒に討伐させることが決定したんです。」

驚いた。ペーテルのやつは紛れもない天才だと言うのか!?ものすごく認めたくない。

話は少し変わるが、デインという呪文を知っているだろうか。ドラゴンクエストの呪文であり属性は光。ドラクエ8では主に主人公が扱っていたはずだ。まあ、彼はいきなりライデインを覚えていたがそんな者は稀だ、まずはデインを覚えるのが基本的だろう。この世界ではデインを扱える者は非常に少ない。それこそルーラを覚えている者よりも。故にデインを扱えるだけでそいつは魔法使いとして街や国専属の冒険者になることができる。さらに、この世界でのデインという魔法の存在は闇の魔物を払う呪文としてかなり強力なのだ。何故だか、この世界は一般の魔物の他に闇の世界からの魔物もごく稀に出てくることがある。レティシアの闇の世界に出現する魔物のことだ。あいつらが何故かこちらの世界にいることがたまにあるのだ。一体でも見つかれば付近の街の一流の冒険者たちがすぐさま討伐に向かう。奴らの強さはかなりバラつきがあり、見た目が弱そうな奴でもギガンテスの如き力でこちらに攻撃を仕掛けてくることがある。だから初級の冒険者たちが向かってしまうと油断して殺されてしまうことが多々ある。しかし、デインを覚えている者がいれば話は別だ。
闇の世界の魔物はデインにめっぽう弱く、とりあえずデインを敵に向かって放てばほぼ確実に消滅する。俺の友人にデイン系統の呪文を扱える者がいるが、そいつによると奴らにデインを外すことの方が難しいらしい。とにかく適当にデインを撃っても奴らは勝手に消滅してくれるらしい。羨ましすぎる。俺は勿論デインなんて使えない、だからごり押しで奴らを倒さなくてはならないのだ。めちゃくちゃ大変なんだぞ。あいつらは力が強い上に耐久力もある。だから囲んで潰そうとしても押し切られてしまいできない。さらに別の手段で攻撃を仕掛けても耐えやがる。耐久が特に高い奴との戦闘はまる1日かかったこともある。苦い思い出だ。
魔物が苦手とする結界を扱う俺でさえこれなのだ。他の冒険者、特に剣士は涙目だ。一流の剣士でなければ刃が全く通らずまるで相手にならない。剣士の友人によると、「闇の魔物が出てきたら俺は必ず逃げる。逃げる恥より刃が通らない恥の方が恐ろしいからだ。」だそうだ。

そんな闇の魔物を楽々倒せる魔法をドヤ顔の貴公子ことペーテルは覚えやがったのだ。もし俺が剣士ならペーテルに斬りかかっていただろう。

すまない。また話が長くなってしまった。先程の会話を忘れてしまっている人もいるかもしれないな。俺は今、受付嬢にペーテルと一緒にダンビラムーチョを討伐する理由を尋ねた所だ。
「なるほどな。確かにあいつがデインを覚えたのなら、職員のままにしておくのは惜しいな。わかった。この依頼を受けよう。」
「ありがとうございます!よろしくお願いします。」
こうして俺はペーテルとダンビラムーチョを討伐することになった。


「私はペーテル・マクスウェル!人は私を光の貴公子と呼ぶ!そしていずれ、あの七賢者をも超える伝説を作る男だ!さあ共に伝説を作りに行こう、結界使いよ!!」
いつものドヤ顔と謎の決めポーズを決めながらペーテルはふざけたことをぬかす。こいつとサザンビークの外に出てから30分ほど経つが、そろそろいい加減にしてほしい。
「大声を出すなといってるだろう!?魔物に気づかれちまったじゃねーかよ!お前は何度言えば学習してくれるんだ!?あーくそ!俺まで大声になっちまってる!!とりあえず敵に囲まれる前に逃げるぞ!」
「ふふ。逃亡も時には必要なことだな。いいだろう、ここは一度引く。しかし!私が再びお前たちの前に立ち、呪文を唱えた時がお前たちの最後!穢れのない光をもってお前たちを」
「いい加減にしろ!ベラベラ喋ってないでさっさと走れ!」
もう嫌になる。早く家に帰りたい。



「どうやら撒いたようだな。はぁ…。」
「ふはは!結界使い!もうへばってしまったのか?私はまだまだ走れるぞ!君もまだまだのようだな!」
「じゃあもっと走るか?そうだな、いっそベルガラックまで走るか?そうすればお前のその口も少しは閉じるだろう。」
「…いや、遠慮しておこう。私の使命はダンビーラムーチョを討伐することなのだからな!待っていろダンビーラムーチョ!貴様の悪行もそこまでだ!この光の」
「おい、ペーテル。早速お目当の奴が現れたぞ。戦闘をする準備をしろ。あとダンビラムーチョな。お前、イントネーション間違ってるぞ。」

俺たちからおよそ、100メートルほど離れた草むらにダンビーラムーチョ…くそ!あいつの妙なイントネーションに釣られちまった!ダンビラムーチョが姿を現した。どうやらこちらに気づいているようで結構な速さでこちらに向かってくる。
「おお!?現れたな、ダンビーラムーチョ!この私が直々に相手をしてやろう。」
ペーテルがサーベルを構えながらダンビラムーチョに斬りかかりに行く。ペーテルは魔法と剣を使う所謂、魔法剣士というスタイルをとる。無駄にかっこよくてムカつくな。

ペーテルがダンビラムーチョに向かってサーベルを突く。ダンビラムーチョはペーテルの攻撃を見切ってかわし、躱した体勢のままペーテルに斬りかかる。このままではペーテルは避けられないだろう。
「結界一式(護て)」
ペーテルの前に半透明の結界を張りダンビラムーチョの攻撃から身を守る。ダンビラムーチョは結界に攻撃を弾き飛ばされ、ペーテルの元から離れていく。
「おお!流石だな、結界使い!今のは助かったぞ。少々油断してしまったようだ。しかし次はそうはいかんぞ!私の奥義を見せてやろう!ダンビラムーチョよ!」
そう意気込むとペーテルは、一度サーベルをしまい魔力を練り始めた。ペーテルの手から淡い光が現れ始め、その光は段々と大きくなり、頭部ほどの大きさになる。そして
「喰らえ!デイン!」
デインをダンビラムーチョに放った。
ダンビラムーチョはようやく体勢を整えることが出来たがもう遅い。奴の前にデインが迫りそして、
「■■■■!」
轟音とダンビラムーチョの叫び声が聞こえ俺達はデインが命中したことを確信した。
「よし!どうやら私の奥義デインが命中したようだな。ふはは!ダンビラムーチョも存外たいしたことがないではないか。これならば今すぐにでもかの暗黒神も敵ではないかもしなんな!」
しかし
「知っているか?ペーテル。そういうのをフラグって言うんだぞ。」
少なくない怪我を負っているがまだまだ闘争心が折れていないダンビラムーチョが、魔法の衝突により発生した土埃の中から姿を現した。
「なに!?何故だ!確かに私のデインは命中した筈だぞ!」
今回なぜ上部がこいつにダンビラムーチョを討伐させたのかを俺はようやく理解した。おそらく、ペーテルの出かかった鼻を叩き折るためにこの地方でも強力な部類に入るダンビラムーチョを寄越したのだろう。おかしいと思ったんだ。ペーテルはギルドの職員で魔物の討伐などほどんど経験したことがない筈。そういうやつは戦闘を行う時、多少なりとも魔物に恐怖する筈だ。しかしこいつはダンビラムーチョにいきなり斬りかかったり、何の躊躇いもなく魔法を放つなど恐怖心というものがあまり見受けられなかった。魔物に恐怖心を抱かない事は一見勇敢のように見えるだろうがそれは全く違う。常に恐怖心を持ち恐怖の中で戦う勇気を持つことが勇敢と言うものだ。まあこれはフォル爺が言っていたことなんだけどな。とにかくやつにはそれが全く足りない。そういうやつはほぼ確実に魔物に殺される。

「ひっ!?」
ダンビラムーチョが怒りの形相をペーテルに向けながら走ってくる。ペーテルは自分の自信の魔法が通用しなかったことに驚愕し、ダンビラムーチョの決死の突進に恐怖を抱き動けなくなってしまっている。
「ペーテル!!しっかりしろ!避けるんだ!」
ペーテルは俺の呼びかけに何とか反応しダンビラムーチョの突進を辛うじてかわそうとする。しかし
「ぐぇ…。い、痛い。痛い痛い痛い!」
僅かにダンビラムーチョの攻撃はペーテルに当たりペーテルの右の腕をへし折る。
「ペーテル!今は痛がっている場合じゃない!立て!そしてやつを倒すんだ!」
俺の役割はペーテルを補助することではない。おそらくペーテルがこれから魔物討伐をやっていけるかどうかを見極めることが俺の役割なのだろう。だから心苦しいがここは手を出さない。しかし、もしあいつが諦めを見せたらその時は助ける。が、その時はペーテルにはしばらく魔物討伐に向かわせることはないだろう。上部もそういう判断で俺を寄越したんだと思う。

「うぅ。痛い、痛い。くそ。私は…。僕はこんな所で終わることはできないんだ…。」
しかしあいつは折れずに立ち上がって見せた。
「父上や母上、妹のためにもお前達を撃つと決めたのだ…。僕は、こんな所では終わらない。お前らなんぞに負けはしない!」そう言い放ちダンビラムーチョ向かってサーベルを抜き再び斬りかかる。ダンビラムーチョも突進の体勢を終え、再びペーテルに向かい斬りかかる。両者が交差する時
「うおおお!」
ペーテルのサーベルが眩しいほど輝き、ダンビラムーチョの刀を貫通し身体を突いた。そして
「■■■■■■!!!!」
ダンビラムーチョは断末魔を浴びながら消滅した。


「ふはは!!!結界使いよ、私はやったぞ!あの強力なダンビーラムーチョを見事討伐して見せたのだ!これを私達の伝説の第1章、光の貴公子と黒き結界使いの死闘と名付けようではないか。」
俺に肩を借りながらペーテルは嬉しそうに語る。
あの戦いの後、ペーテルは魔力切れを起こし立てなくなってしまった。当然だ、あいつはデインの他に何とホーリースラッシュまで放ちやがったんだ。かなり魔力を消費してしまっただろう。しかし、自信の危機に新たな力が解放するとかこいつはいよいよ主人公にでもなるつもりだろうか。俺はこいつが主人公のゲームをあまりやりたくないな。
しかしまあ、俺は少々こいつを見くびっていたようだ。
初戦闘で腕を折られ、怒りの形相を浮かべながら斬りかかられても恐怖心に打ち勝ち、見事敵を倒したんだ。こいつは立派な冒険者になる資格がある。

「俺をお前の伝説に巻き込まないでくれ。ところでペーテル、一つ聞いてもいいか?」
「ああ!構わない。なにせ、我が戦友の質問だ。私の答えられる範囲ならば答えてみせよう!」
「お前はこのまま本当に魔物と戦う道を選ぶのか?今のギルド職員としての生活も悪いものでもないだろう。デインを使えることは確かに闇の魔物に効果的だ。だが、ギルド職員であるお前が無理にやる必要もない筈だ。もし、お前が上に強制されているなら俺が何か言っておいてもいいぞ。」
「ふふ。結界使いは優しい男なのだな。私を心配してくれているのがよくわかる。しかし、私は戦う理由があるのだ。」ペーテルはいつものドヤ顔を止め、少し苦しそうにそう言った。
「…良ければ聞いてくれるか?結界使い。私の戦う理由を。」
「ああ、俺で良ければ。」
そしてペーテルは語る。彼が戦うと決めることになる過去の出来事を。













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