トウホウ・クロウサギ   作:ダラ毛虫

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1分前に、第地話も更新しております、ご注意下さい

地霊殿まで終わったので、一応最終回として、いつか訪れる結末を超短編にて




時系列順不同
第末話


「……約束を果たしに来た」

「…………」

 応えは無い。

「大地が壊れ尽くして、全人類が地下に潜るか宇宙に旅立つかしたというのに、こんな所に座り込んでいたなんてな。

 まさか、『人』探しに悪神の権能を使うとは、思わなかった」

「…………」

 彼女は応えない。

「……貴女は死んだ。だから、私が殺そう。藤原妹紅」

「…………」

 私の声に応じる者は、誰も居ない。

 死んだ彼女は、昨日も今日も明日も、変化しない。

 

 だから、地上に生きた最後の『人間』を、私は殺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 幻想郷から、幻想が尽きた。

 楽園の箱庭は、終焉を迎えた。

 

 それでも、神も妖怪も失われても、幻想が無くなっても、科学に囚われた世界に紛れ込んでも、私は消えない。

 

 

 

 

「ちっ……結局、負け越しになったわね」

 幾度となく競った好敵手を亡くした。

 

「神奈子も早苗も逝ったし、私も逝くよ」

 永きを過ごした友を亡くした。

 

「ああ、楽しかったよ……これで満足さ」

「最期に相手をしてくれて、ありがとう」

 何度も馬鹿騒ぎした友を亡くした。

 

「私より年上になるまでは、生きなさい」

 最も古き友を亡くした。

 

「流石にもう疲れたし、この辺で良いや」

 共に生まれた姉を亡くした。

 

 

 

 そして今。

 

「かあ……さま……?」

「ここに居る。心配するな、雛」

 

 私は、娘を看取ろうとしている。

 親が子を、見送ろうとしている。

 

 それでも尚、私は、消えることができない。

 死にたくない。

 死にたくないから。

 だから私は、死ねない。

 共に逝きたいと願っても、私は、死にたくない。

 

「なか、ないで……かあさま……」

「……それは無理だ」

 悲しいのに。

 死にたくなるほど悲しくて寂しいのに。

 なのに、私は未だに、死にたくない。

 

「どうしても駄目か?」

「……だめよ」

 雛を、厄神を生き永らえさせる方法はある。

 地上を汚染し尽くして、宇宙に逃れることができず、地下に潜った人類。

 彼らに、災厄を思い出させれば良い。

 不運という厄災を、刻み付ければ良い。

 神に救いを請わせて、厄神様に祈らせれば良い。

 

 そうすれば、雛はまだ生きられる。

 

「ごめん、なさい……」

「雛が謝ることじゃない」

 

 しかしそれは、許されない。

 この子は、そんなことを望んでいない。

 

 死の縁にあって尚、この子は『人間の幸福』を願うから。

 

 私が暴れて、その祈りを穢すことなんて、できない。

 

「かあさま……わたし……」

「ああ」

 

 最期の瞬間まで、この子はまさしく、神様だった。

 

「しあわせだったわ……」

 

 

 

 

 

「私も、お前と出会えて、親子になれて、一緒に過ごせて、本当に、幸せだったよ」

 

 

 

 

 

 

 私は独りになって。

 そして私は、悪神に純化した。

 

 

 もう、この世界には、『因幡コクト』である必要性が、『妖怪』として生きる意味が、無くなったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………そう言えば……」

 

 独り呟く。

 

「誰も居ないのは、随分と久し振りだ……」

 

 この先の悠久を想いながら、応える者の居ない荒廃した大地で、変色した空を仰ぎ。

 

 

 独り、呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 私はまだ、死にたくない。

 

 

 

 




プロット段階で、『結末は雛を看取り独り遺された黒兎』と決めていました
どんな可能性世界でも、これだけは変わりません、変わらせません




しばらく別シリーズに入るので、一先ず黒兎はこれにて完結です

今後については、星蓮船以前を時系列バラバラで、思い付き次第ちまちまと……何か電波受信したらひじりん達も

クロカラス後編も書かないとですし、まだ書いていないキャラ視点も書いてみたいなーとか考えてますが、予定は未定
あとさなしず

要するに、毎度のことながら、書きたい時に書きたいものを書きます
のんべんだらりがデフォルトです

感想全返信は今後も続けていきたいと思いますので、最新話以外についてでも、良かった点、悪かった点、直した方が良い点、気に入らない点、シャウト、ご自由にぶつけて下さい悦びます


では皆様またお会いしましょう ノシ







【ひじりん回ちょっとだけ】

「はぁ……どうして、毎度毎度……」
 私の溜め息に、彼女はくすりと笑った。
「たまには、実力者との平穏な初対面を望んでも、バチは当たらんと思うのだが?」
「望むことは、責められることではありませんね」
 にっこりと応じられる。
「叶わぬ願いと言われているようにしか聞こえんのだが……」
 再度、溜め息。
 ああ全く、嫌だ嫌だ。
「……では、始めようか」
 慣れ親しんだ、染み付いた構えを取って、顔を上げる。
 対するは、超人。
 人間でありながら『人間』を超越した者。
「せめて、楽しもう、強き『人』よ」
 最上の敬意に値する、『人間』だ。
「極致を私に、魅せてくれ」

 いざ、南無三。



(  ̄▽ ̄)<両者の「生」と「死」に対するスタンスとか、書けるネタはゴロゴロしておりますね

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