※第霧話から第萃話までの内容を含みます※
本当は、第月話と第判話まで含めたかったのですが、てゐ関連が収まりきらん!ということで前後編に (--;)<下の前編って何や
紅い霧では、八雲紫から依頼を受け、異変前に厄を撒くのみ。
春の雪では、完全に傍観。
黒兎様は、動きません。
異変関係よりも、紅霧異変直後に、風見幽香と一戦交えたことの方が大事でした。
当事者達には戯れかも知れませんけど、幻想郷全体の大気を揺るがす程の決闘。
本当に、ご自身の影響力を自覚してくださいませ。
貴女の砲撃1発で、こっちは全身がピリピリするんです。能力のおかげで空気の動きに敏感な分、余計に。
まあ、異変後の宴会でも、遅れた花見の席でも、ご相伴にあずかりましたが。
そのままずっと酒造にだけ集中してくだされば良いのに。
あーもう、この1杯が無いとやってられませんって。美味しー。
なんて、安穏としていたバチが当たった、とでも言うのでしょうか。
飲んだ分は働けということなのですか。
働いているじゃないですか私。
どうして妖怪の山に風見幽香が攻め込んで来ているんですかっ!?!
事の発端は、天狗の領域付近へ現れた風見幽香に、哨戒天狗が用件を尋ねに向かったことから。
あろうことかあの花妖怪は、「うるさい」の一言と共に、その白狼天狗を殴り飛ばしました。
一命を取り留める程度の、失神できずに苦痛に苛まれ続ける程度の、絶妙な加減で。
は?
何です? 問答無用? 会話不成立ですか?
貴女、何を考えているんですか。クレイジーですか。サイコパスって奴ですか。
上空から様子を伺っていた私が呆然としていると、風見幽香が真っ直ぐに視線を向けて来ました。
地表から此処まで、どれだけ離れていると思っているんですか。
どんな感知能力ですか。
凝視しないでくださいやめてください帰ってください。
加えて、私への言付けが、普通に会話する程度の声量だったことから、風を操り音を拾っていたこともバレているみたいです。
もうやだ……怖すぎる……。
何なんですか……最上位級の連中って、どうしてああなんですか。
威圧感を放たないと生きていけない呪いか何か患っているんですか。何て傍迷惑な。
応対は柔らかい黒兎様の方が、まだ接しやすいですよ。怖いことに変わりはありませんけど。
ともかく、私への言葉は、端的。
「コクトの居場所を教えないと、このまま天狗の長の所まで行くわよ」
全速力で天魔様の元へ向かいましたとも。
取り次ぎも何もかもを無視して、手順も規則も踏み倒して、直談判しましたとも。
僅かでも読み違えたら、風見幽香のみならず、黒兎様まで同時に敵に回す案件じゃないですかこれぇ!?
「……成る程」
「い……如何いたしましょう、天魔様……」
「コクト殿達の住まいは、我らと八雲紫、秋の姉妹神のみが知る、秘中の秘。触れ回ることは罷り成らぬ」
ですよねぇ……。
下手を打つと黒兎様から、「天狗が裏切った」と思われますもんねー。
あややややややや詰んでませんかこの状況。
ですが、そんな私達を待つはずも無く、風見幽香は動きます。
散歩の様なゆったりとした歩調は、一瞬すら食い止められません。
笑いながら、悠々と、いっそ優雅に、歩みを進め続けます。
天狗達を薙ぎ倒し、防衛線を踏みにじり、縄張りを侵略し続けます。
前線から天魔様に届く報告は、どれもが「太刀打ちできない」という悲鳴でした。
最早、悩む暇すら許されない、決断の時です。
内容が想像できるからこそ、少しでも先延ばしにしてほしかった瞬間です。
「射命丸よ」
「はい」
「その最速の翼を以て、コクト殿へ助力を請いに行け」
「直ちに」
いぃーやぁーでぇーすぅぅーーー。
そう叫べたら、どれほど良かったでしょうか。
私、清く正しい射命丸。現在、黒兎様とご息女の前にて土下座中でございます。
形振り構っていられませんから。切迫し過ぎて張り裂けそうな事態ですから。
逃げたいですけど。冷や汗が止まりませんけれど。
ご息女の不機嫌な様子に、黒兎様がどう反応されるかと、身体が震えますけれども。
「……あー。風見に巻き込まれたのは、災難だったな。奴の相手は、私がしよう」
た………………助かったぁぁぁぁぁぁ…………!
生きています! 私、今、生きていますよぉぉぉぉッ!!!
よっしゃー! 任務完了ぉー!
「…………母様」
と思ったら、ご息女がまだ不機嫌顔ぉー!? な、何!? 何で!?
「すまんな、雛。
約束していた酒は、また埋め合わせする」
「……はい…………どうか、無事に帰ってきてくださいね?」
ああ、と頷く黒兎様に、やっと表情を苦笑気味に崩すご息女。
差し出がましいとは思いますが黒兎様。ご息女が不機嫌そうにしていた理由は、酒では無いかと。
そうか。それはそうですよね。
いくら黒兎様が地獄を煮詰めた様な怪物でも、風見幽香が相手だと、心配もしますか。
ご息女の心配は、黒兎様に全く届いていないみたいですけれど。
私も口に出すつもりはありませんけれど。
この母娘の関係に口出しするとか、何処にそんな命知らずが居ますか、いいえ居ません。
はい。
そして今、妖怪の山の上空にて、さながら神話じみた戦闘が行われています。
黒兎様が姿を見せた途端、風見幽香は天狗を意識の外に弾き出し、一直線に襲いかかりました。
対する黒兎様も、以前に感じた以上の妖気を纏い、迎え撃ちました。
私はと言えば、開戦からずーっと、山に降り注ぐ流れ弾を減衰させ続けています。
天狗の集落は天魔様が対処してくださっていますが、他の場所はそうも行きません。
風を固めた壁を貫いて尚も木々を根刮ぎ吹き飛ばす砲撃を、放置なんてできません。
いっそのこと放置したいですけどね!? もう休ませていただきたいですけどね!?
疲れたんですよ! いつまで撃ち合っているんですか!?
そんな常識外れな威力を連射し続けるなんて、どういう原理ですか!
化物ですか!? ああ化物でしたね、ええ、忘れてなんていませんよ!
止めに来たであろう、八雲紫の式、八雲藍まで参戦して、三つ巴となりました。
被害増えたじゃないですか何をしに来たんですか貴女っっ!?!?!
八雲紫や鬼の方々や吸血鬼姉妹や亡霊姫も加われば、幻想郷最上位が勢揃いですねアハハハハ!
余談ですが、騒ぎが終息した後に訪ねてきた八雲紫に、天魔様が多額の賠償を請求なさったそうです。
管理者として云々とか、式の暴走についてとか。
良い気味です。
ただし、その話し合いにおいて、この件に黒兎様が関わったと人間に伝えることは、禁止されました。
あちら側の理由は分かりませんが、天狗側としても、風見幽香に好き放題された記事を出す者は居ないでしょう。
外部には、双方に都合の良い内容だけが知らされて終いです。
そして、さして時間を置かず、新たな動乱が始まりました。
幻想郷中に広がる、鬼の、鬼の四天王の、伊吹萃香様の、気配。
私は、生まれて初めて引きこもることを決めました。はたての如く。
博麗神社の宴会? 知りませんよ。そんなことより身の安全が最優先です。
こんな、これまで静観していた黒兎様が遂に腰を上げた異変に関わるなんて、命がいくつあっても足りません。
写真機の整備や過去に集めたネタの再確認で、解決まで暇を潰していますから、お構い無く。
唯、今回の経緯については、是非とも取材させていただきたいですけれど。騒動が収まった後で。
その為に、黒兎様から記事を書く許しをいただかなくては。
八雲紫とも、どこまで書いて良いか、話さないといけませんね。
「お邪魔いたします、コクト様」
「ああ。伊吹との馬鹿騒ぎについて聞きたい、だったか?
良く来たな、射命丸」
先日、風見幽香の件で伺ったばかりの、黒兎様のお住まい。
……不覚ながら、応接間で黒兎様と向き合っても、緊張感に慣れてきた自分が居ます。
いけません。
これはいけませんよ。
危機管理がなっていません。
黒兎様の危険性を忘れたわけでは無いはずでしょう、私。
馴染んで鈍ったら、すぐにでも取り返しのつかない失態をしてしまうかもしれないんですからね!
慣れこそが事故の元なのですよ!
「米酒と果実酒、どっちが良い?」
「あ、では、今日は果実酒の、醸造酒の方で」
「ふむ。仕事中に蒸留酒は飲まない主義だったか?」
「強いお酒も好きなんですけどねー」
「そうか。なら、そちらはまた今度だな」
「あやややや。楽しみにさせていただきます」
そう! これはあくまでも、和やかな空気を作る取材テクニックなんですからね! 嘘じゃないですよ!
「そう言えば、伊吹とやる前に、博麗の巫女とも手合わせしたな」
「詳しく聞いてもよろしいでしょうか!?」
その後、伊吹様との戦いは勿論、そこに至るまでに戦った相手についても取材させていただきました。
……道中が、それぞれ異変扱いできる規模の決戦なんですが……段々驚かなくなってきました。
その上に、『妖怪が博麗の巫女に勝利した』という一大事。
これ、確実に、書いても八雲紫の検閲で削除される内容ですね。
強行したら、私が削除されること間違い無し。待ったも無いでしょう。
ええ当然、聞かなかったことにしますとも、はい。
あややの泣き顔をあややの写真機で撮影した写真を目の前で舐め回し幻想郷最速で全身殴打されながらパンチラ激写に執念を燃やしたいだけの人生だった (  ̄ー ̄)<おれは人間をやめるぞー
あと、そういえばもうすぐ日本リア充記念日の1つじゃないか爆発しろ、ということで
【トウホウ・タ☆ベ☆テ☆】
黒兎「雛に何を吹き込んだァッッ!!!!」
紫 「あらあら、血相を変えてどうしたのかしrプフッwwww」
黒兎「しらばっくれるなら最後までやりきれ! そんなことよりもだ!」
紫 「何よもう。あの子が『外の世界の行事を教えてほしい』って言うから、親切に教えてあげたのに」
黒兎「ほう? お前の親切とは、『裸にリボンがバレンタインの正装』と無垢なあの子を騙すことなのか?」
紫 「台詞もちゃんと言えていたかしら?」
黒兎「ああ」
紫 「どうだった?」
黒兎「悶え死ぬところだった。あとコンマ1秒、自分を目潰しするのが遅れていたら、危うかった」
紫 「押し倒せば良かったのに」
黒兎「消し飛ばすぞお前」
紫 「貴女も妖怪でしょう。欲を抑えてばかりだと、いずれ存在を保てなくーー」
黒兎「真面目な表情を作っているが、楽しんでいるだけだな?」
紫 「あ、そうだ。忘れるところだったわ」
黒兎「何だ?」
紫 「はいこれ。バレンタインチョコ」
黒兎「……ここまで予定通りか?」
紫 「嫌ねぇそんな、人を策士みたいに」
黒兎「ヒトでは無いだろうが」
この後、気勢をそがれたコクトが作ったチョコレートカクテルで、雛とてゐも交えて飲み会(雛は服着た
これも全部ゆかりんって奴の仕業なんだ! (゜ロ゜)