何も片付いてませんが、とりあえずの節目として
「……貴女の罪を、善行であがなうことは、できません」
「だろうな」
私は、どうしようも無い程に黒だ。私の罪は、大き過ぎる。
殺した数すら覚えていない。神殺しも犯している。それも大量にだ。
無自覚に厄を移し害した罪など、思い浮かべることさえ出来ない。
ならば、地獄に落ちることは、当然であり、必然だ。
「地獄行きを免れる方法を、貴女は理解しているはずです」
「ああ」
「貴女は、それでも尚……」
「そのつもりは無い」
少なくとも、『妖怪としての私』を受け入れてくれた者達が、存在している限りは。
私は、『不運を司るモノ』に成るつもりは無い。妖怪として生きる。
「気遣ってくれたことは、有り難く思う」
「……本当に、罪深いことですね」
いつか、今の私を皆が忘れ去った後には、彼女の言う通り、悪神に純化するのも、1つの道か。
それまで私が生きていれば、だが。
どちらにせよ、害悪極まる存在ではあるだろうがな。
秋が終わり、冬が過ぎて、今は春。
幻想郷が白一色から、色とりどりに彩られていく。
「……それにしても、色鮮やか過ぎるな」
雪解けと共に、季節を問わず、花という花が咲き乱れている。
何だったか。確か少し前にも同じことがあった気が……雛と出会うよりも前……吸血鬼異変とは、どっちが先だったか。
忘れた。別に大した問題には成らないし、どうでも良いか。
霊が溢れ花が咲いているだけだ。気にする必要も無し。
念の為に雛は人里へ向かったものの、今頃は花祭りに参加させられているだろう。
言うまでも無く、人間とは触れ合うことも言葉を交わすことも出来ないが。
しかしこの様子なら、厄神様の祭壇には、数え切れない程の花が捧げられているに違いない。
雛も、人里の上空から人々の祭りを眺めて、微笑んでいることだろう。
あの娘も、随分と人間になつかれたものだな。裏で手を回したらしい紫には、感謝しておこう。
私の方はと言えば、特に何をする気も起きないし、庭の花でも肴にーー
「クロー! 散歩に行こー!」
「分かった」
良し、出るか。独り酒より姉様だ。
私の姉様がこんなに可愛いわけがない訳が無い。
何だか妙な一文が頭の奥から湧いた。なんだこれ。
まあ、言いたいことは分かる。姉様は可愛い。無論、雛も可愛い。
え、なに? 聞いてない? 聞け。何なら一昼夜語り明かしてやる。
とまあ、それはともかくとして。
「タラッタラッタラッター♪」
歌って踊る姉様が可愛すぎて、私の中に生き残った『前世』部分が喝采している。
何故、名前も人生も親の顔すらも忘れている癖に、こういう所だけが消えずにいるのやら。
コレのせいで、雛が成長してからは、一緒に風呂に入る際、私は目隠し装備である。
たとえ『前の私』であろうと、私の娘に欲情させてたまるか。ぶち殺すぞ。
雛に抱き締められたりすることについては、『男として』よりも今の私の感覚の方が強いので問題ない。
……男性的欲求より強いって、他者との触れ合いにどれだけ飢えているんだ、と思わなくも無いが。
生まれて初めて紫に手を取られた時には、あいつの目の前で泣いたくらいだしな。
百万年の孤独で、潰れかけていた頃といえども、最大級の黒歴史だ。
死にたくはないが、穴があったら入りたい。埋まりたい。
相手が洩矢神様で無かったのが救いか。あの方に弱味を見せたら、即座に喰われる。
確実に、「百万年分泣きなよ。1滴残らず飲み干して啼かせてあげる」とか言われる。
嫌に具体的に、映像まで脳裏に浮かんだ。怖い。
いや、そんな与太話は良いとしてだ。
「私の前に歌いながらやってくるなんて、なんという挑発。なんといううさぎのダンス」
鳥の妖怪が現れた。
あー、月の異変後の宴会で見た覚えがあるな。ミス某だったか?
一先ずは、そこまで危険では無さそうだし、先程の氷精同様、姉様に任せよう。
私がやっても良いのだが、やる気満々な姉様に水を差すのも悪い。
短い口上の後、早速弾幕ごっこに興じ始めている。
勿論、スペルカードルールに則った、遊びの範疇だ。
「平和だ……」
「退屈の間違いじゃないかしら?」
「退屈を受け入れられるから平和なんだ」
お前には分からんかも知れんがな、風見。
殺気が無かったので、傍に着地することは許したものの、警戒は向けておく。
何をしに来たお前。
「花が咲く異変の元凶として、追われているんじゃないのか?」
「かかって来るなら、叩き潰すだけよ」
それはまた、物騒なことだな。平常運転だが。
「あの白い兎も、来るなら相手をしてあげるけれど?」
「ほう?」
言ったな、お前。
「雛の時と同じ台詞になるが、繰り返そう」
今、私の身内に手出しをすると、言ったな?
「もし姉様を害したら、何百年かけてでもお前を衰えさせ、全盛期の半分の力も出させずに、殺す」
「…………ええ、分かっているわよ」
「なら良い」
本気で殺る、などと口にした瞬間に、風見は喜んで姉様と雛を殺す。
従って、私の忠告は、「全力を出せないまま死なせる」という、風見にとって最低の死に様だ。
こいつに対しては、率直な脅しは全く効かない。というか逆効果にしか成らない。
面倒臭いなこいつも。
「……鬼とかいう奴とは、随分と楽しく戦ったくせに」
本当に面倒臭いなこいつッ!?!
何だ!? 嫉妬か!? 何でだ!?
私が誰と馬鹿騒ぎしようと、お前には関係ないだろうが!
こんな事態に成るんだったら、射命丸に記事を書く許可なんて出さなければ良かった!
あぁー、もぉーめんどぉくさぁ……。
「ねえ、ところで、」
なんて毒々しい笑顔だよお前。悪どいことを企んでいます、と書いてある。
「貴女の姉と『弾幕ごっこ』をするか、貴女と『この前と同じ遊び』をするか、どっちが良いかしら?」
選択肢が無いぞおい。
姉様とお前の『弾幕ごっこ』とか、心臓に悪すぎる。見ていられる訳があるか。
満面の笑みを見せるなこら。
「すまん姉様。この先は別行動だ」
「はいよー」
私と風見の『有効打1発勝負』の余波は、些か以上に大きい。姉様の近くではやれない。
前々回はともかく、前回は山が抉れ大結界に亀裂が入ったらしい。
修復と事後処理に奔走した紫から、秘蔵の酒で機嫌を取り聞いたことだが。
その節は、正直すまんかった。半分は風見のせいだ。3割は狐。
「クロー、死なないようにねー」
「……ああ、頑張る」
さて、今回はどうなることやら。
この戦いが終わったら、自宅に帰って雛に抱えられながら姉様と酒を呑むんだ。
別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?
何となく言わないといけない気がした。理由は知らん。
結果、負けた。でも生きている。どうにか辛うじて。
前回は狐が乱入してうやむやに成ったから、これで1勝1敗1分けか。
それにしても、まさか、私の防御結界が貫かれるとは。
風見の砲撃を受け止めたら、数分間撃ちっぱなしにされて、ぶち抜かれた。
あの火力馬鹿め。かすっただけだから死なずに済んだが、直撃したら塵も残らなかったぞ。
殺す気か。
ああ、殺す気だったな、徹頭徹尾。
しかし、あいつの砲撃は、あんなにも持続する代物だっただろうか。
まさか私対策に鍛えたのか? あの矜持の塊が? 頭から爪先まで自尊心のあいつが?
本気過ぎる。本気で殺しに来ている。
もう2度と正面からは受けない。次も生き残る自信など無い。
防壁で軽減し、咄嗟に回避はしたものの、右半身が丸ごと火傷で痛い。
吹き飛ばされて、現在地不明。
何やら、頭上に紫色の桜が見える。何処だ此処は。
「しかしまあ、紫に咲く桜とは珍しい。いやはや全く以て実に……業が深い」
風に混じる紫色の欠片。
幻想郷に溢れ返る狂い咲きの中、一際狂った妄執の念。
彼岸桜の花吹雪。
こんな場所で同類に会うなど、本当に、憎たらしい。
一目見れば分かる。この桜を咲かせているのは、地獄行きの定めにある霊だ。
救われる資格を失いながら救いを請い続ける、愚劣極まる罪人共。
「罪を犯して死に世迷い、果てには、桜に憑いて魔性を咲かす。
見苦しいこと、この上無い」
お前達も、私も。
今更になって悔い嘆くのなら、自覚した時点で往ねば良かったのだ。
「永らえて死に切れず。死して尚も泣き喚くなら」
「「桜と散れば良いものを」」
私の独り言に重なる声。
「そう、貴女は……余りにも長く生きすぎた」
楽園(ザナドゥ)の閻魔(ヤマ)が、其処に居た。
焼き餅ゆうかりんが可愛く見えたら、病院でボクと握手! (  ̄▽ ̄)ノ←末期
自分とは遊びの付き合いしかしないコクトが、見知らぬ鬼とかいうのとイチャイチャ(死闘)したと聞いても、1年近く自分を高めるために耐えたゆうかりんは乙女(断言
ラストにて、えーき様の台詞回しが難解過ぎて再現を諦め、心の中学2年生を解き放ちましたが、翻訳すると
コクト「犯罪者が愚痴愚痴言うなや」
えーき「オマエモナー」
です
この後は、風神録前までを埋める各キャラ視点を書いてから、第2部【第風話】に入ります
そしてこれで! 次回からやっと! 最新話を一番下に持って来れる! やったー!
以下、「悪神化したらアンリ・マユ(真)の同僚だなー」という思い付き
【セイハイ・ダイサンジ】
黒兎「サーヴァント、アヴェンジャー。
アンリ・マユの殻として、召喚に応じ参上した。
問おう。貴方が、私のマスターか?」
何が始まるんでsーー大惨事大戦だ!(食い気味