超融合! 次元を越えたベジータ   作:無敵のカイロ・レン(シス見習い)

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急いで迎え戦士たち! 狙われた全王宮

 全王宮──それは「超次元」に存在する十二の宇宙とは別の場所にあり、界王神や破壊神、天使しか行くことができない全王の宮殿である。第七宇宙の老界王神でさえも三回しか訪れたことがなく、界王神の付き人たるキビトや界王などは足を踏み入れた事さえない特別な場所だった。

 巨大な青いクラゲの上にそびえたつ「全」という文字を模した宮殿の周囲には、十二本の石柱が立ち並んでおり、石柱の上にはこの次元に存在する十二の宇宙の姿がそれぞれ浮かんでいる。

 

 しかし、元々この場所に立っていた石柱は全部で十八本であり、宇宙もまた十八個存在していた筈だった。

 

 今この場に六つほど石柱の数が足りないのは、かつてこの宮殿の主である全王がその手で「消してしまった」からである。

 全王は現存する十二の宇宙を統べる神々の王であり、その神格は大界王神や破壊神よりも遥かに高い。

 その気になれば全ての宇宙を一瞬で消すことも出来ると言われている彼は、見た目こそ可愛らしいものだが、この次元において誰よりも圧倒的な力を持っている彼の前では何人たりとも逆らうことは出来ず、絶対的な王としてこの王宮に君臨していた。

 

 そんな全王がわけあって二人に増えたのがこの全王宮にて最近起こった珍事であるが、「その時」が来るまで王宮内では二人の全王がお互いと楽しそうに会話しているということ以外、普段と何ら変わりのない風景が広がっていた筈だった。

 

 

 ──全王宮をたちまち崩壊へと導いたのは、外部から侵入してきた一人の邪神だった。

 

 

 それは、全王以外には大神官しか反応することが出来なかったほどの、一瞬の出来事だった。

 その一瞬の間に、全王宮を取り巻くこの世界から全ての「光」が消え失せたのである。

 

「何者だ!?」

 

 全王に仕える二人の側近が不測の事態に即座に対応することが出来たのは、ひとえに彼らの優秀さを表していた。彼らは二人の全王が動くよりも一歩早く、闇に落ちた宮殿内を自身が解放した「神の気」の光で照らしたのである。

 

 そして、その光に照らされて侵入者の姿が露わになる。

 

「私の名はメタフィクス。貴方がたを殺しに来ました」

 

 侵入者は、全王の聖域には入り込むことが出来ない筈の「人間」の姿をしていた。

 だが、その身に宿している「気」は明らかに人間の物ではなく──性質としてはこの宮殿の者と同じ「神の気」のそれに近いものがある。

 しかし聖なる「神の気」であれば決してありえないほどに、淀み切った彼の「気」は禍々しい異彩を放っていた。

 

 メタフィクスと名乗った侵入者が青みがかった前髪を静かに揺らしながら、氷のように冷徹な目でそれぞれの玉座に座っている二人の全王の姿を交互に睨む。

 

 その時である。

 

「……ぐっ……!」

「貴様っ、何を……!?」

 

 この宮殿に仕える神官達が一斉に膝を折り、地に屈した。

 背後から彼を昏倒させようと迫っていた大神官さえも含めて、突如としてこの場に居る誰もが身動き一つ取ることが出来なくなったのである。

 

「既にこの宮殿は、私の作り出した神封じの結界に覆われている。この結界の中では、あらゆる神の力が無効化される」

「なんだと……!」

「そう……強い力を持つ神ほど、私の結界は深くその肉体を蝕んでいく」

 

 狼狽える神官達の視線を受けながらも、邪神メタフィクスを名乗る侵入者は眉一つ動かさない。そしてそんな彼から飛び出した言葉に、彼らは絶句するほかなかった。

 

 

「君、面白いのね」

「凄いのね」

「でもムカつくね」

「ムカつくのね」

 

 大神宮さえも膝を折っているこの状況の中で、二人の全王だけはゆっくりと動き出した。

 全く同じタイミングで玉座から浮かび上がった二人の全王はムッとしながらも興味津々と言った表情を浮かべ、メタフィクスの周りをプカプカと漂っていく。

 そんな彼の、彼らの前でメタフィクスが目を閉じると、彼は一人感慨に浸るように呟いた。

 

「ムカつく、ですか……相変わらず具体性の無い幼稚な言葉だ。その醜悪な姿も、あれから何も変わっていませんね」

「……? どういうこと?」

 

 「神封じの結界」によって次々と邪神のひれ伏すように横たわっていく神官達の間を歩きながら、メタフィクスは全王が座っていた玉座の元へと向かっていく。

 そんな彼の呟きを聞き取った全王が、表情の読み取れない顔で首を傾げる。

 

「君、前に会ったことある? トランクスって子とは違うよね?」

「ええ、貴方にとって私は取るに足らない存在だったのでしょうが、私の方は一度として貴方への憎しみを忘れたことはなかった」

「僕が嫌い?」

「貴方を好く者がいる筈がないでしょう。私は神を憎む数多の人々の願いによって生まれた存在……故にこそ、私の力は貴方を許さない」

 

 二人の全王に囲まれながら、彼は涼しい顔で全王用の小さな玉座の一つへとたどり着く。

 そしてその席を何の躊躇もなく蹴り飛ばしていった彼に向かって、一人の神官がよろよろと立ち上がった。

 

「下がりなさい!」

「大神官様……!」

 

 大神官──この全王宮で全王の次に高い神格を持ち、第七宇宙の天使ウイスの父親でもある男だ。その力は息子のウイスや娘のヴァドスよりも遥かに強く、十二の宇宙の中で最も全王に近い力を持っていると言っても良いだろう。

 

 ──しかし、この全王宮を覆う結界の効果は絶大であった。

 

 狼藉を働く邪神に向かって飛び掛かっていく大神官の速さは、本来の彼の半分にすら遠く及ばなかったのである。

 それほどまでに結界内における彼ら神官や天使達への影響力は強く、致命的なまでの弱体化を強いていた。

 

「──!」

 

 邪神の張り巡らせた闇の結界によりその力を著しく削がれている大神官の攻撃が、邪神の元に届くことは無かった。

 それどころか大神宮は近づくことすら叶わず、メタフィクスが右手を軽く振り上げて放った「気合砲」の一撃により、彼の姿は王宮の壁を突き破りながら遥か彼方へと吹き飛んでいき──戻ってくることはなかった。

 

「子供の躾も出来ぬ太鼓持ちが、私に勝てる筈がないでしょう。我が結界の中では、この次元で最強の戦士すらもあの有様です」

 

 寧ろ満足に身動きすらできない他の神官達の様子を踏まえれば、立ち上がって挑むことが出来るだけでも大神宮はその力の程を示していた。

 万全な状態の大神宮であれば、今の一撃でやられることはまずなかった筈だろう。

 しかし、この闇の結界の中では彼の神の力すらも問答無用で封じ込められており、それが彼とメタフィクスとの間に隔絶した力の差を生んでいた。

 

「そしてこの結界は全王、貴方にも影響を与えている」

「うん」

「君、消せないね」

「ムカつく」

「ムカつく」

 

 神を封じ、神を殺す為だけに編み出された邪神の秘術がこの結界である。

 神々の持っている力がいかに強大であろうと、その力を解放する術を封じられてしまえば激しい弱体化は免れなかった。

 そしてその影響力は二人の全王にすら例外なく及んでおり、先ほどからメタフィクスを消滅させようと働かせている筈の力も、今の彼にはまるで通じていなかった。

 

「いつまでも、貴方の思い通りになると思うな……」

「……っ」

 

 気づけば二人の全王は、彼の手に拘束され首を絞められていた。

 二人の全王が持つ全宇宙をも消滅させられる強大な力は、たった一人の邪神によって封じ込まれたのだ。

 

「……力というものがいかに脆いか。力に頼って治める世界が、どんなに虚しいものか……」

 

 自身の力を思うように振るえないことに困惑か、或いは苛立ちを感じながらじたばたともがく二人の全王に対し、邪神メタフィクスが冷淡に呟く。彼らを見据える一見冷酷無比な眼差しの内には、おぞましいまでに滾っている憎悪の炎が宿っていた。

 

「それを誰にも教わることが出来なかった貴方がたに今、邪神である私が教えましょう」

 

 そう言って、メタフィクスが自らの内包する「気」を解放する。

 瞬間、宮殿は激しい震動に襲われ、おびただしい亀裂に覆われては次々と崩壊に向かって進んでいく。

 神を封じる闇の結界と同じ色の闇色のオーラに包まれた彼が、文字通り神をも殺す眼光で未来世界の(・・・・・)全王を睨み、高らかに宣言した。

 

「もはやこの次元を管理すべき者は神ではない……この私だ」

 

 その日──邪神による、邪神の為の殺戮が幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「超次元」のベジータがブルマのドラゴンボール集めに協力したのは、ひとえに父親としての情が理由だった。

 父親として当然のように息子の救いを求めている今のベジータは、昔の彼からは考えられないほどに成長したと言えよう。彼の変化を間近で見てきた妻として、ブルマはそんな夫のことを嬉しく思っていた。

 

「ふん……」

一星球(イーシンチュウ)ね。これで三つ目……トランクス達も一つ見つけたみたいだから、これで四つ目かしら」

 

 常人なら捜索に手間が掛かるであろう海の底に落ちていたドラゴンボールを拾い上げると、海中から出てきたベジータが浜辺で待機していたブルマに向かって投げ渡す。

 ブルマの開発したドラゴンレーダーと戦士達のフィジカルが合わされば、かつては散々苦労したドラゴンボールの収集も実に容易いものだった。

 

 今こうして彼らがドラゴンボールを集めているのは、先日に起こった一つの事件がきっかけである。

 

 人造人間を倒したことで平和になった筈の未来の世界に現れた、ゴクウブラックと神ザマス。

 新たな敵と戦う為、この時代から未来トランクスの救援に向かった悟空とベジータ。

 そんな中で外部から手を回してくれた破壊神ビルスやウイス達の働きもあり、事件は解決したものとなった。

 

 しかしそれは、未来の人々にとっては全く救いのない形での解決であった。

 

 ザマスが宇宙と一体化し、もはや打つ手なしと思われたその時、悟空が呼び出した全王が未来の世界諸共ザマスを消滅させた。

 その後、この時代に逃れた未来のトランクスは恋人のマイと共に、ブルマ達に別れを告げて「ゴクウブラックが地球に来る前」の時代へと飛び去っていった──それが、今回の事件の幕引き方である。

 おそらくトランクス達が新たに向かった時代では破壊神ビルスの働きにより事件を未然に防ぐことが出来、今度こそ平和が訪れることだろう。

 

 しかし、それはあくまでも「もう一つの未来」のことであり、未来のトランクスが暮らしていた世界とは別の世界の時間軸なのだ。

 

 つまり、彼が新たに向かった未来は新たに宇宙に誕生したパラレルワールドの一つに過ぎず、厳密にはトランクス達が暮らしていた世界そのものではない。

 決して、全王が全てを消滅させてしまった彼らの世界が元に戻ったわけではないのである。

 

 おそらく、トランクスもそのことには気づいていたのだろう。

 気づいていても、言うことが出来なかった。何故ならば、全王が消した自分達の未来はもうどんなにあがいても元に戻ることはないのだと──そう感づいてしまっていたから。

 

 責任感の強い彼のことだ。これ以上こちらに心配を掛けたり、その手を煩わせたくないと考えていたであろうことは想像に難くない。

 

 ならばそんな彼の為にも、この世界のドラゴンボールの力で彼の居た世界を元に戻してあげたい。ブルマ達の願いは、その一つだった。

 

 しかし現実問題、地球の神龍がその願いを叶えてくれる可能性は限りなく低いだろう。

 何せ復元を頼むのは星の一つや二つどころの話ではなく、そもそもこの時代ですらない未来の世界である。それでも不安過ぎると言うのに、さらに言えば消滅させたのは破壊神すらひれ伏す全王という最強の神だ。破壊神にさえ怯えて頭の上がらない神龍が、全王の気分を害したくないからと願い事の受け入れを拒否する可能性は十分にあった。

 

 だからこそそんな絶望的な現実の中でも、ベジータがドラゴンボール集めに付き合ってくれたことがブルマには意外であり、嬉しかった。

 

「良かったの? ウイスさんとの修行をすっぽかして」

 

 自分の「気」で身体中に纏わりついた海水や海藻を弾き飛ばしているベジータに向かって、ブルマがそう訊ねる。

 そんな彼女の質問に彼はそっぽを向きながら、彼らしからぬ低い調子の言葉で答えた。

 

「……俺の願いの前には、神も天使も関係ない」

 

 

 今のベジータにとって、息子の為に願うことは自分の修行を差し置いてでも優先しなければならなかったのだ。

 (スーパー)ドラゴンボールならいざ知らず、地球のドラゴンボールの力でこの願いを叶えることは難しいだろう。しかしだからと言って、気持ちの面ではベジータもブルマも諦められなかったのだ。

 時代は違えど、あのトランクスもまた彼らにとっては自分の家族と変わりないのだから。

 

「残念ながら、そうも言ってられない状況になりました」

 

 ベジータは自分自身の思いを打ち明けた直後、そんな彼の言葉に応じたのは先ほどまでこの地球に居なかった筈のウイスだった。

 そして彼の隣にはいつもと同じく破壊神ビルスの姿があり、さらにその横には孫悟空(カカロット)と、瞬間移動で彼らを連れて来たのであろう界王神の姿があった。

 

「ウイスさん? それに、界王神様まで揃ってどうしたのよ?」

 

 一緒に修行をしている悟空ならばともかく、その一行に加えて普段界王神界に居る界王神までも連れている光景は二人の目には意外だった。

 ブルマの問い掛けに対して、ビルスとウイスは頬の固まった真剣な表情で答えた。

 

「非常事態だ」

「すみませんが、ベジータさんには私達と一緒に来てもらいます」

 

 その言葉に怪訝な表情を浮かべたのが、ウイスとビルスの力の強大さを理解しているベジータである。

 今しがた彼らの言った「非常事態」という言葉は、一般人が言うのと彼らが言うのではわけが違うのだ。

 普段の彼らとは違う一切緩みのない顔つきもまた、その事態の重さを物語っているようだった。

 

「どういうことだ?」

 

 ありとあらゆるものを破壊出来る破壊神ビルスと、そんな破壊さえも文字通りなかったことに出来る天使のウイス。二人が揃っていればどんなことでも解決出来るというのが、内心憎たらしく思っているベジータの認識だった。

 彼らの力は、それこそ今のベジータの力を持ってしてさえ届かないほどのものなのだ。

 故にこそ、彼らの語る「非常事態」とは人間には想像のつかない出来事を意味していた。

 

「全王宮が崩壊しました。このままでは全王様の命が危ないと、先ほど私の頭の中に大神宮様からの救援要請が入ったのです」

 

 いつになく重苦しい表情でそう答えるウイスの言葉に、ベジータが目を見開く。

 全王──全ての宇宙の頂点に立つ真の王者。不死身となったザマスを未来の宇宙ごと消滅させた強大な力は、実際にこの目で見てきた。そんな彼が今命の危機に瀕しているとは、確かにベジータには想像のつかない非常事態だった。

 そしてそのことが本当ならば、ベジータの返す言葉は一つしかなかった。

 

「断る」

 

 にべもなく、ベジータはそう言い捨てた。

 それは自分の力が、彼らの役に立てそうにないからだという謙虚な理由では断じてない。

 今のベジータにとって全王の命の危機など、これ以上ないほどにどうでもいいと感じただけに過ぎないだ。

 

「何故俺があんな奴を助けに行かなきゃならないんだ? 大体、あの全王って奴がそんなことになる事態に、わざわざこの俺を呼ぶ意味があるのか?」

 

 どこの世界に、息子の世界を消した張本人を助けにいく親が居るものか──そう出掛かった本心の言葉は、自分の柄ではないと思い直前で胸に留める。しかしベジータの気持ちは、その思いが全てと言っても良かった。

 彼らにとって全王がいかに偉大な存在であろうと、ベジータにとっては自分が助けに行く価値もない外道でしかなかったのである。

 そんな彼の断固とした拒否姿勢に苛立つ破壊神も居るが、今のベジータには関係ない。

 

「断る気かい? 破壊しちゃうよ?」

「やってみやがれ! あんな奴の為に戦うぐらいなら、消された方がマシだ!」

「ベジータ……」

 

 かつてこの地球を守る為にプライドを投げ捨ててでも媚びを売った相手でさえも、今のベジータの頭を冷やすことは出来なかった。

 それほどまでにベジータはザマスと全王……そして何よりも、未来の息子を本当の意味で救うことが出来なかった自分自身に苛立っていたのだ。

 

「……随分、言ってくれるね。だったら、望み通り破壊してやろうじゃないか」

「ビルス様、ここで私達が言い争っていても仕方ありません。かく言うこの私も、一体どういうことなのか判断しかねているのですが……全王様の命を脅かすほどの存在が、王宮に現れたことは確かなのです。こんなことは、歴史上初めてです。大神宮様からの言伝によると、その者を倒すには人間の力が必要だとか……」

 

 険悪な雰囲気になるベジータとビルスの間に立って、ウイスが仲裁に入りベジータを説得する。

 ビルスはそれによって渋々ながら矛を収めるが、ベジータの表情は一向に晴れなかった。

 

「なんだ、あんたらともあろうものが人間頼みか。都合の良い神様だぜ……今度は妙に弱気じゃないか」

「ベジータさん、全王様は全ての宇宙の上に立つお方……もしものことがあれば、この宇宙もただでは済みませんよ」

「チッ……面倒な野郎か」

 

 全王の命などに興味はなく、さっさとくたばってくれた方が気が晴れるぐらいに彼のことを嫌っているベジータであったが、この宇宙──地球を引き合いに出されればそうも言っていられなくなる。

 全王を見捨てるということは、ほかならぬ地球を見捨てることにもつながると──そんな仕組みになっているのなら、始めからベジータに拒否権は無かった。

 

「そう言うなよベジータ。もしかして、そいつと戦うのがこえーのか?」

「そんなわけがないだろう! ふん、いいだろう、俺も行ってやる! だが勘違いするな! 俺は神の為に戦うんじゃない! 俺は俺のプライドを守る為に戦うんだ! それを忘れるなっ!」

 

 高らかに言い放つベジータであったが、今回の場合彼が戦うのは地球の為なのだということは誰の目から見ても明らかだった。

 孫悟空の軽口にだけは盛大に反応したベジータがそう言い切ると、彼は一転して協力の姿勢を取った。

 

「なあ? ベジータの奴今日はやけにピリピリしてねぇか」

「トランクスが帰ってからはずっとこんな感じよ? アイツにも、色々思うことはあるのよ……」

「……やっぱ変わったな、ベジータ」

 

 額に青筋まで立てて怒鳴る姿は昔の彼と何ら変わっていないが、その正義はほぼ真逆のものへと変化している。

 道理で自分に追いついたわけだと、悟空は今の彼の強さを理解し改めて尊敬を抱いた。

 

 

「では、界王神様。お願いします」

「……はい。カイカイ」

 

 そしてベジータの加わったウイス達一行が、界王神の瞬間移動により地球を出発する。

 ウイス、ビルス、悟空、ベジータ、界王神と……その一行は、この第七宇宙で最強のメンバーと言っても良いだろう。しかも今回は、ザマスの事件では裏方に回っていたウイスとビルスが、最初から表に出て戦うつもりでいる。本来ならばあまりにも過剰な戦力であり、負ける筈のないメンバーだった。

 

 

『ようこそ我が全王宮へ。超次元の英雄達よ』

 

 

 全王宮の玉座に堂々と座る、たった一人の邪神と出会いさえしなければ──。

 

 

 

 

 ──次元の存亡を賭けた戦いが今、始まろうとしていた。

 

 


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