超融合! 次元を越えたベジータ   作:無敵のカイロ・レン(シス見習い)

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次元を越えた戦い! フリーザvsウーブ

 前兆は、黒い霧だった。

 晴天の青空の一点が霧に覆われ黒く滲んだ瞬間、小さな何かが地上へと落下した。

 まだ昼間の人々の賑わうサタンシティの中心部へと落ちてきたそれは轟音を鳴り響かせて地を揺らすと、付近の建物やオブジェを薙ぎ倒すように吹き飛ばしていった。

 

「なんだ!?」

「なに……?」

 

 その頃の悟飯達は食事を終え、店を出た直後だった。

 

「隕石だ! 隕石が落ちたぞー!」

 

 町中は野次馬の喧騒に包まれており、吹き上がっていく爆風から逃げ惑う人々の姿があちこちに見える。

 現場の光景はこの場からは見えなかったが、尋常でない落下音の大きさから判断するにそう遠くない位置と見て間違いなかった。

 これまで数々の悪意に襲われてきた地球であるが、隕石が落ちてくるという天然自然絡みの事象は意外にも珍しい。少なくとも、悟飯が持つ三十年程度の記憶には一度も無いものだった。

 しかし悪党だろうと隕石であろうと、被害を受けた人間達が困っていることに違いはない。悟飯達三人はお互いに目を合わせると、迷わず人命救助を行う為に落下現場の元へと赴いた。

 

 

 ──しかし、野次馬達が隕石が落ちたと騒いでいたその物体の正体は、隕石ではなかった。

 

 

 ……それがただの隕石だったのなら、どれほど良かったことだろうか。

 舞空術を飛ばして現場に赴き、三人の中で最初に到着した悟飯が「ソレ」の姿を初めて目にした時、一瞬呼吸が止まるほどの衝撃を受けた。

 

「馬鹿な……っ、お前は……!」

 

 空から落下してきた物体──それは隕石ではなく、「人」だった。

 だが、ただの人間ではない。異彩を放つ目も口も鼻も尻尾も、金色の輝きを放つその肉体も……この地球には存在しない「宇宙人」と呼ばれる人種だったのだ。

 しかしその金色の宇宙人は、本来であれば地球どころか、この世にすら存在しない筈の人物だった。

 

 その男の獣よりも鋭い眼光が、何かを探し求めるように辺りを見回す。そしてその視線が交差した瞬間、悟飯は彼が何者であるのかを即座に見抜いた。

 悟飯が以前に彼と会ったのはもう三十年以上も前になるが、かつて「彼」と対峙した自身の経験から来る直感が彼の正体を教えてくれたのだ。

 彼の放つ威圧的な眼光。そして、出会う者全てを恐怖の底に陥れる圧倒的な「帝王のオーラ」。今まで戦ってきた敵の数は多くとも、それを当然のように身に纏っている人物など悟飯にとっては今も昔も一人だけだった。

 

「フリーザ……!」

 

 なんでここに居る? どうやって生き返った!? そう叫ぶ悟飯の声にその男──フリーザは冷淡な視線を返すだけだ。

 本来白く染まっていた筈の姿は何故か金色になっているが、その姿は見紛うことなく宇宙の帝王フリーザそのものだ。仮にあれに名を付けるとすれば、「ゴールデンフリーザ」と呼ぶべきか。

 三十年も昔に死んだ筈の彼が、何故ここに居るのか。五年前にドラゴンボールが封印されたことによってこの世とあの世の境界は再び強固になり、もはやどんな手を使っても死人が生き返ることは出来ない筈だった。

 

「パパ!」

 

 怪訝な表情を浮かべる悟飯の元に、遅れてパンとビーデルが駆けつけてくる。

 しかし、ここに二人が来るのはあまりにも危険だ。ここに居るフリーザの強さが悟飯が知っている頃のフリーザと同じであれば、今のパンはそう易々とはやられないだろう。しかし、この金色のフリーザは違う。あまりにも次元が違いすぎる。一体どんな手を使ったのかは知らないが、今のフリーザの身から感じ取れる「気」はかつての比ではなかった。

 

「見つけました。やはりこの星に居たのですね、龍の気を持つ人間よ」

 

 フリーザの視線は悟飯から外れ、今しがたこの場に現れたパンの顔へと向く。すると、彼女の姿を認めた彼が小さく呟いた。

 身に纏う凶悪な力とは対照的に、どこか虚ろな響きを含んだ声であったが、その憎たらしい声色も間違いなくかつて聞いたフリーザのものと同じだった。

 

「龍の気だと?」

 

 見つけた──一体こいつは、パンに対して何を見つけたと言っているのだろうか? その言葉に不穏な雰囲気を感じた悟飯は即座にパンを庇うように前に出ると、彼の視線を自らの身で遮った。

 

「パンは、ママを連れてここから逃げてくれ。こいつは、僕が食い止める」

「パパ……気をつけてね」

 

 果たして今の自分でどこまで戦えるか……正直言って、悟飯にはあまり自信がない。

 だが、家族が無事にこの場から逃げ果せるまでの時間を稼ぐことは出来る筈だ。戦う覚悟を決めた悟飯はパンにそう告げるなり(スーパー)サイヤ人へと変身し、内なる「気」を一気に限界まで引き上げた。

 

「はああっ!」

 

 そして黄金色のオーラを纏った悟飯が、さらに青白い稲妻を迸らせた超サイヤ人2へと形態を変化させる。

 かつて老界王神に引き上げてもらった力は永続的なものではなかったらしく、しばらく鍛錬を怠っていた為か、歳を取ってしまった為なのかはわからないが、今は完全に消失してしまっている。故に五年前の戦いでも弱体化を避けられなかった悟飯だが、今この時もその事実が恨めしかった。

 

「フリーザ、お前の相手はこの俺だ!」

「……孫悟飯ですか。なるほど、彼女は貴方の娘でしたか」

 

 超サイヤ人2に変身した悟飯に興味を持ったのか、フリーザがまたもどこか虚ろな声で呟く。

 悟飯が超サイヤ人に変身出来ることは予め知っていたのだろうか、黄金色に輝く姿を見ても彼は欠片も動じた様子はない。

 妙だ。と、悟飯はこの時、目の前の宇宙人の姿を怪訝な表情で見据える。

 自尊心が高く、自己主張が激しい。そして誰よりも執念深かったのがあのフリーザという男だ。しかし目の前の金色のフリーザにその様子はなく、冷淡な表情でこちらを見据える彼の佇まいは不気味なまでに静かだった。

 

「貴方に用はありません。そこを退きなさい」

「僕のことを覚えていたのは意外だけど、そうはいかないな。大体、どうやって生き返ったんだ?」

「生き返った? ……なるほど。やはり、この次元(・・・・)でも、既にフリーザは亡き者になっているのですね。誰に生き返されることもなく……結構なことです」

 

 生き返った理由を問う悟飯に、金色のフリーザの言葉は要領を得ない。何故か他人事のようであり、引っ掛かる物言いだった。

 

「この次元だと? どういうことだ?」

「私は龍の気を持つ貴方の娘を追わなければならないのです。そこを退きなさい、孫悟飯」

「ふざけるな! お前を放っておくことなんか出来ない!」 

 

 金色のフリーザの口調はかつてのフリーザと同じだが、やはりどこか引っ掛かる物言いである。

 しかし彼がフリーザと別人でないことは彼から感じる「気」が証明しており、悟飯には彼と戦うことへの迷いは無い。

 宇宙の帝王フリーザは数々の惑星を暴力によって支配し、無差別な殺戮と破壊を振りまき、宇宙中の人々を恐怖に陥れた史上最悪と言ってもいい極悪人である。戦士に不向きとまで言われた温厚な性格の悟飯だが、そんな人物がこの地球に現れた上に、理由は不明だがパンを狙っている。そんな状況の中で、事を穏便に済ませられる筈もない。 

 そして金色のフリーザの方にも、既に容赦はなかった。

 

「ならば消えなさい」

 

 無慈悲に放たれた彼の言葉が、会戦の合図となる。 

 

 孫悟飯対ゴールデンフリーザ。二人のぶつかり合いから迸る波動は五年前からの努力により復興を果たしたサタンシティの町並みを紙屑のように破壊していき、甚大な被害を振りまいていく。

 それでも不幸中の幸いだったのが事件の裏でいち早くこの事情を察し、行動を起こしていたミスター・サタンによる住民達の避難誘導が手早かった為、人的被害を見た目以上には抑えることが出来たことだろう。

 

 しかしそれでも被害をゼロに抑えることなど出来る筈もなく、ゴールデンフリーザが放つ気弾の流れ弾等により、少なくない人々の命を刈り取られていった。

 

 もうこの地球には、ドラゴンボールは無いと言うのに。

 

「貴様ーッ!」

 

 この戦いで犠牲になっていく人々の姿を目に、怒りの臨界点を超えた悟飯の魔閃光が炸裂する。

 悟飯がその攻撃でフリーザの身を空高くまで押し出していくと、戦いの舞台は町に被害が及ばない上空へと移った。

 

 魔閃光の直撃を正面から浴びたフリーザだが、その身体には傷一つ付いていない。悟飯が察していた通り、金色の姿となったこのフリーザは以前とは桁外れに戦闘力を伸ばしていた。

 

「くっ……!」

「全盛期の貴方ほどではありませんが、今のは良い一撃でした。あの次元の痩せ細った貴方よりは、まだ力を失っていないらしい」

「あの次元……? さっきから、何のことだ? お前は何を言っているんだ?」

「貴方なら、パラレルワールドというものの存在はご存知でしょう。この世界は全て、全宇宙をも一括りにした「次元」というものに収められているのです」

「……そのパラレルワールドが、どうしたって言うんだ?」

「このゴールデンフリーザはこことは別の「次元」で貴方の父親が戦った、パラレルワールドのフリーザなのですよ」

 

 金色のフリーザがようやく明かした自身の素性について、悟飯には今この場でそれ以上詮索することは出来なかった。

 

 彼が考えている間にもフリーザが攻撃を再開し、魔人ブウをも超える速く重い攻撃を悟飯の身に浴びせてきたのである。

 

「ぐあああっっ!」

 

 ──圧倒的。二人の戦いはまさにそう表現することしか出来ない、酷く一方的なものだった。

 

 全盛期よりも弱体化している今の悟飯にとって、彼の相手はあまりにも荷が重すぎた。

 ゴールデンフリーザが拳を振るう度に悟飯の身体に傷が増え、意識が遠のいていく。それでも抵抗の姿勢だけは揺らがなかったのは、彼のせめてもの意地だった。

 

「諦めて楽になりなさい。貴方は決して、私には勝てない」

「死なないさ……たとえ僕がやられても、僕よりも強い戦士が必ず立ち上がり、お前を倒す!」

「……貴方らしい言葉だ。次元は違えど、心の在り様は同じということですか。無駄とは言え、見事なものです」

 

 今の悟飯が窮地の中で抱いているそれは、まるで彼とは別の「次元」で生き、戦いの果てに希望を託して散っていったもう一人の彼自身のような気高い精神であった。

 確かに悟飯一人では、この金色のフリーザには歯が立たない。恐るべきほどに、実力に差があり過ぎるのだ。

 しかし、この地球に居る戦士は悟飯一人だけではない。

 悟飯よりも強くて若い、次の世代を守る立派な戦士が居るのだ。

 

 それが彼らの生きるこの次元──「GT次元」の強さだった。

 

 

「む……?」

 

 ゴールデンフリーザが悟飯の身を上空から荒野の地面へと叩き落とし、とどめとばかりに特大の気弾を振り下ろしたその時だった。

 今まさに悟飯の命を奪おうとしていた気弾は突如横合いから割り込んできたピンク色の光によって相殺され、目標に達する前に消滅したのである。

 それはゴールデンフリーザでも孫悟飯でもない第三者が、この戦場に介入してきたことを意味していた。

 

「すみません、遅くなりました」

 

 先の光と同じピンク色のオーラを撒き散らせながら、その青年は悟飯とゴールデンフリーザの間に降り立つ。

 褐色の肌に、黒髪を特徴的なモヒカン刈りにした二十歳ほどの青年。

 師匠が消えた今も修練を怠ることなく重ね続けてきた彼の姿は、見た目の頼もしさはもちろん、身に宿した「気」の質もまたかつての師匠と遜色がないレベルにまで研ぎ澄まされていた。

 彼こそが孫悟飯の父、孫悟空が鍛え上げた唯一の弟子──

 

「助かったよ、ウーブ君」

 

 魔人から生まれ変わり、魔人と一体化した史上最強の「地球人」。それが青年、ウーブであった。

 平和の世の中でも師と同じくストイックに修行に励んでいた彼の戦闘力は、今や混血サイヤ人達のそれを遥かに上回っており、その実力はベジータに次ぐほどにまで成長していた。

 

 

「ウーブ……私の知らない戦士ですね」

 

 現れた彼の姿に、ゴールデンフリーザが初めて表情を変えた。だがそれは恐れや驚きなどというものではなく、ただ興味が沸いた程度の反応である。

 比喩を入れるなら、歩いていた道端で珍しい虫を見つけたような反応だった。

 そんな彼の態度に対して、ウーブの方は別段思うことはない。しかしそれとは別に、彼はここへ来るまでの道中で見たサタンシティの惨状に激怒していた。

 

「俺はお前がどんな奴なのかは知らない。だけど悟飯さんと、サタンシティをあんな目に遭わせたお前を許してはおけない!」

 

 そして、ウーブは激情を露わにしてその力を発散する。

 桃色のオーラが爆ぜ、大気が震える。吹き荒れる「気」の嵐は五年前の孫悟空と比べても劣ってはおらず、悟飯よりも遥かに上を行っていた。

 内なる「気」を解放しきったウーブが、大地を蹴る。

 彼の突き出した右手の拳がゴールデンフリーザの頬を打ち抜いたのは同時で、その後に衝撃音が響いた。

 さらに続けざまに放つ超音速の連撃が彼の鳩尾を抉ると、十撃目にウーブの蹴り上げた右足が彼の身を豪快に吹っ飛ばした。

 

「波あああっ!!」

 

 ウーブは尚も容赦なく追撃のかめはめ波を放つが、その一撃は即座に体勢を整えたフリーザに惜しくも回避される。そして次の瞬間には二人の姿はその場から掻き消え、上空で幾度も衝突し合う拳の衝撃音だけが辺りに響いた。

 

「凄いな……!」

 

 見ているだけでも全く追いつけない二人の戦いに、悟飯が思わず呟く。

 

「スピードもパワーも、超サイヤ人を超えている……」 

 

 両者が繰り出す格闘のラッシュとラッシュ。お互いの身から感じ取れる戦闘力は非常に拮抗しており、熾烈な攻防が空を弾き、海を割っていく。

 この戦いで特に悟飯の目についたのはウーブの成長であろう。彼は五年前に自身と同化した魔人ブウの力を完全に引き出しており、その技巧もまた五年前より遥かに洗練されている。成長期の間、誰よりも真剣に修行に打ち込んできた成果がそこにあった。

 彼の格闘技はまるで父孫悟空を彷彿させ、戦闘時間が経過していくに連れて徐々に優勢に立ち、ゴールデンフリーザを追い込んでいった。

 

「これが、魔人の力だ!」

 

 そしてウーブの両手を組み合わせたハンマーパンチが炸裂し、ゴールデンフリーザが地面に墜落し巨大なクレーターを作る。

 戦闘開始から十分弱。実力の差が、二人の勝負の決着がつき始めた瞬間だった。

 

「……なるほど、魔人ブウの生まれ変わりでしたか。地球人ながら神に匹敵する力を身につけたとは、とても素晴らしいものです。彼が生きていた次元にも貴方のような戦士が居れば、悲惨な運命を辿ることもなかったでしょうにね……」

 

 首を鳴らし、頭を左右に揺らしながら立ち上がるフリーザが、やはりどこかフリーザらしからぬ言葉を呟く。

 この戦いで追い詰められているのは彼の筈だが、不気味にも欠片も激情を見せない冷淡な表情は戦闘開始前と比べても全く変わらなかった。

 

「どうやらこの次元の地球には、想定よりもイレギュラーが多いようだ。ここは撤退し、改めて出直すことにしましょう」

「あれだけのことをしておいて、逃げられると思うのか?」

 

 劣勢を悟ったフリーザが、その口で撤退を宣言する。フリーザの性格を知らないウーブがその言葉に動じることはなかったが、悟飯の方は信じられないものを見るような表情で彼の姿を眺めていた。

 撤退など、あのフリーザがそんなことを言うわけがない。そこで悟飯は自身との戦闘中に彼が言っていた言葉を思い出し、理解する。

 ……この推測が正しければ、今目の前に居る男はフリーザではない。少なくとも「悟飯の知っているフリーザ」ではないのだと。

 

「お前には聞きたいことがある。殺しはしない……これで、身動きできない人形になれ!」

 

 悟飯がそうこう考えている間に、ウーブがこの戦いを終わらせに掛かる。

 指先から放たれたピンク色の光線は、かつて魔人ブウが得意技にしていた魔法の光線と同じものである。命中したものは術者が指定した物体へと姿が変わってしまう一撃必殺の魔法──魔人ブウが度々人間をお菓子に変えていた光線と同じ技である。

 その光線を今、ウーブはフリーザの身体を人形にする為に放ったのである。

 しかし対するフリーザに避けようとする素振りはなく、それどころか甘んじて光を受けるように身を差し出してきた。

 

「また会いましょう。「GT次元」の戦士達よ」

「!?」

 

 フリーザが光線に身を包まれながら、ノイズの混じった声(・・・・・・・・・)で言いながら、その場から朧のように姿を消した。

 フリーザの身体は光線に当たった瞬間人形になるのではなく、始めからこの場に居なかったように消滅したのである。

 

 

「……やったのか?」

 

 倒したにしては、あまりにも不穏すぎる消え方だった。ウーブと悟飯は不意打ちを警戒して周囲を見回すが、周囲に気配は無い。

 

「いえ、逃げられました。すみません」

「謝ることないって。だけどあいつ、フリーザじゃなかったのかもな……」

 

 ウーブとしては光線が当たった感触までは確かにあったのだが、あの一撃で倒したという手応えは全く感じていなかった。

 恐らく彼は、何か瞬間移動のような撤退手段を使ったのだろう。残念ながら、彼がまだ生きていることは間違いなかった。

 

「何はともあれ、ありがとうウーブ君。君のおかげで助かったよ。こんなに強くなって……僕も安心して引退だな」

「いえ、悟飯さんだってまだ……」

 

 今回命拾いすることになった悟飯が、自分よりも遥かに強くなったウーブに対して改めて礼を言う。孫悟空が居なくても、地球には次世代を担う強力な戦士が居る。そのことが悟飯には頼もしく、喜ばしいことだった。

 しかしそう言う悟飯の方にもまた、決して力が無いわけではない。長い学者生活の為か全盛期より力は落ちているが、それでもまだ老け込む歳には早いだろう。

 また鍛え直せばまだまだ戦える筈だと、ウーブがフォローの言葉を述べようとしたその瞬間だった。

 

「なんだ、あれは……?」

 

 ウーブの視線──まだ昼の青い空から、眩い光が閃いたのである。

 

 刹那、雷鳴のような轟音がその光から響き渡り、入道雲を吹き飛ばしながら巨大な気配が降下してきた。

 

「っ、またアイツか!」

「いや、違う……」

 

 もしやあのゴールデンフリーザが戻って来たのかと身構える悟飯だが、上空から降りて来たその気配は彼のものではなかった。

 

「そんな……!」

「まさか……!?」

 

 空を埋め尽くすような巨大な身体。全身が青色の鱗に覆われているその姿は、明らかに人ならざるもの──

 

 

神龍(シェンロン)……っ!」

 

 

 ──その「(ドラゴン)」の姿は間違いなく、七つの願い玉と共にこの世界から消えた筈の存在だった。

 

 

 

 

 

 


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