超融合! 次元を越えたベジータ   作:無敵のカイロ・レン(シス見習い)

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絶望をぶっこわせ! 100倍ビッグバンかめはめ波

 追い詰められたベジータの元に現れた新たな超戦士の姿に、龍姫神の水晶玉から状況を見ていたGT次元の一同がどよめきの声を上げる。

 超サイヤ人ブルーという、彼らにとって未知の変身をしたゴジータの姿からは、五年前に彼らが見た超サイヤ人4のゴジータとはまた違う威圧感が放たれていた。

 

「フュージョン……!」

「あれが、あっちの世界のお父さん達のフュージョンかぁ……」

「勝てる……! 勝てますよ!」

 

 ベジータの超サイヤ人4が解けた時はどうなるものかと冷や汗を流した一同だが、最強の融合戦士の登場に再び希望を見出す。

 別の世界とは言え、あの孫悟空とベジータが融合したのだ。それだけでも彼の戦闘力の凄まじさは十分に窺えた。

 

 

「──これは……?」

 

 その時である。

 一同と共に戦況を見つめていた龍姫神が、唐突に水晶玉から目を離して呟いた。

 

 そして虚空に向かって、ここに居ない誰かと話すように言葉を紡ぎ出したのだ。

 

「……しかし、それは……龍神界の掟に反する行為ですよ?」

「龍姫神様?」

 

 そんな彼女の様子に気付いたパンが怪訝そうな目で見つめるが、龍姫神は尚も言葉を続ける。

 

「……わかりました。それならば、私から言えることはありません」

 

 誰かと話しているその会話の内容は傍目からは要領を得ないものだったが、一頻りまとまったように見えたところでパンが彼女に問い掛ける。

 

「龍姫神様、今誰と話していたんですか?」

 

 自分も超サイヤ人フォレストという変身に至ったことで、パンは龍姫神が持っている特別な力のことはよくわかっている。そんなパンだからこそ、今の彼女がただ独り言を呟いていたようには見えなかったのだ。

 そして龍姫神が、その意見を肯定しながら答えた。

 

「……龍神界に居る、孫悟空さんです」

 

 彼女は今、パンの祖父である孫悟空と話していたというのだ。

 その言葉にパン以外の一同も反応し、水晶玉から視線を外して龍姫神を注視した。

 

「え? 今なんて……」

「おじいちゃんと、話したの?」

 

 彼と何を話していたのか──一同の視線を受けた以上答えないわけにはいかないかと苦笑するような表情を浮かべながら、龍姫神が言った。

 

「メタフィクスを倒す為に、彼が力を貸すと……そう言っています」

 

 ──瞬間、龍姫神の青髪が翠色へと変わり、神々しいオーラを纏った超サイヤ人フォレストへと変身する。

 そんな彼女は両手を顔の前で合わせながら、遠くの誰かへ祈りを込めるように瞳を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 同じ頃──超次元の地球。

 

 七つのドラゴンボールを集めたブルマ達は、彼女の自宅の庭に集合して神龍の召喚を行おうとしていた。

 叶えてもらえる可能性は限りなく低いとわかっていながらも、それでも願わずにはいられない──未来のトランクスの世界を救うという願い事を叶える為に、彼女らは藁にも縋る思いでドラゴンボールを集めたのである。

 そんな一同の中にはブルマの他にもトランクス少年やマイ少女、仕事を休んでまでこの場に駆けつけてきた孫悟飯達の姿もあった。

 

 

「いでよ神龍! そして願いを叶えたまえー!」

 

 一同が見守る中で、ブルマが庭に並べた七つのドラゴンボールに向かって合言葉を言い放つ。

 その瞬間、空は夜のように闇に包まれ、眩い光に包まれたドラゴンボールから天に昇る光の柱と共に巨大な龍の神様が顕現する──筈だった。

 

 

「……あれ?」

「どうしたんだ? 神龍出てこないぞ?」

 

 ドラゴンボールが、反応しなかったのである。

 ブルマが合言葉を間違えたわけでも、集めたドラゴンボールが偽物というわけでもない。

 確かに七つ揃えた筈の宝玉は、何故かブルマの声に無反応であり、本来現れ出てくる筈の龍の姿は現れる気配さえも無かった。

 

「……おかしいわね、合言葉は合ってる筈なのに。いでよ神龍! いでよってばー!」

 

 何度も合言葉を述べるブルマだが、神龍は一向に姿を現さない。

 それは、初めての事象だった。

 

「出てこいよ神龍ー! 未来の俺が居た世界を元に戻してくれよ!」

「お願い神龍! この通りよ! ほら、ピラフ様達も頭を下げて!」

「え? お、おう……」

 

 ちびっ子たちがドラゴンボールに向かって縋るように頭を下げるが、それでも神龍は姿を現さない。

 まるで神龍自身が召喚を拒んでいるような状況に、一同は眉をひそめた。

 

「どうしたんだろう? 神龍、ビルス様にいじめられたから拗ねちゃったのかなぁ?」

「そんなわけない……と思うけど」

 

 悟天が呟いた子供らしい推測も、あながち否定しきれないのが笑えない話だ。

 最近の神龍は妙に人間臭く、破壊神ビルスを前にした時などはそれが瑞著に出る。

 しかしそれでも、誰がどんな時でも呼べば出てきてくれたのが神龍だった筈だ。全く予期していなかった状況に困惑しながら、ブルマはドラゴンボールにヒビでも入っているんじゃないかと一つずつその状態を確認していった。

 

「そう簡単に叶えてくれる願いだとは思ってなかったけど……まさか、神龍すら出てこないなんて……もう!」

 

 確かに今まで、自分達が散々神龍を酷使して来たという自覚はあるが、それが召喚を拒否された原因なのだとしたら完全に自分の責任なのではないかとブルマは責任を感じる。

 

 もしそうならば、今まで自分が願ったことは全て無かったことにしても構わない。

 

 未来の息子が居た世界を平和な形で元に戻してくれるのなら、今後一切ドラゴンボールを使わないとも約束することが出来た。

 ブルマにとって時代は違えど、彼も大切な息子なのだ。

 

「頼むわよ、神龍……」

 

 膝を折り、憔悴した心の中でブルマは祈りを込める。

 

 ──しかしそれでも、人の願いを叶える龍の神様は現れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 超サイヤ人ブルーのゴジータとメタフィクスの死闘は、自らの生命を燃やし尽くすようなゴジータの猛攻がメタフィクスを押していた。

 

「はあああああ!!」

 

 赤く染まったゴジータの拳がメタフィクスの腹を突き刺し、超光速の連打が着実にダメージを与えていく。

 二倍、三倍、四倍、五倍、六倍。

 倍率を上げていく界王拳から受けるおびただしい負担に身体中が悲鳴を上げても構わず、ゴジータの戦闘力は尚も上昇を続けていく。

 

「ぐっ……おおおっ!」

「だりゃあああっ!!」

 

 拳と拳を正面からぶつけ合い、拮抗する二人の力が名も無き惑星を崩壊へと導いていく。

 滅ぶのはゴジータか、メタフィクスか。

 状況ははっきり言って、メタフィクスの側に分があった。

 界王拳の負担で動けなくなるかフュージョンの制限時間が切れればゴジータの負けであり、メタフィクスの勝ちだからだ。

 ゴジータの勝利条件はただひとつ。自らの戦闘力が上昇を続けている今のうちに、全ての決着をつけることだった。

 

「私の憎しみは……私達の絆はっ!」

 

 メタフィクスの方からしてみれば、時間稼ぎをするだけでも確実な勝利へと近づく筈であった。

 しかし、彼は決して後ろに下がらなかった。自分には背負っているものがあると言ったその言葉通り、彼は自らの悲願を果たす為に果敢に挑んでいた。

 

 ──その精神は、彼の中にある英雄の魂にも通ずるものがあるだろう。

 

「こんなところで……終わるものかアアアアアッ!!」

「ちいっっ!」

 

 メタフィクスの咆哮と共に超サイヤ人0のパワーが唸りを上げ、稲妻の走った拳でゴジータを殴り飛ばす。

 

「終わらせる……! 取り戻すのだ! こんな理不尽なものではない……正しい者達が救われる世界を! 彼の望んだ優しい未来を!」

 

 閃光が疾る。

 メタフィクスが限界を超えて高めた力を解放し、その両手からなりふり構わず気弾を連射したのである。

 凄まじい剛弾の嵐を前に──ゴジータもまた下がらなかった。

 

「お前の言う世界は何もかもゼロに戻して! 嫌いなものを消した未来だろう!」

「そうだ! 神も全王も存在せず、フリーザのような悪人も生まれない平和な世界だ!」

「それを決めるのがお前の判断なら、結局一緒じゃねぇか! お前の言う全王や破壊神達と!」

「違う! 私の背には常に、私に託して消えていった者達の想いがあるッ!」

 

 メタフィクスの気弾を右腕で弾き返しながら叫ぶゴジータに、メタフィクスが狂気的な眼光を向けて言い放つ。

 彼の言葉は、確かにそれを望んでいる者も世界には居たのだろう。

 理不尽を消した新しい世界──それが今の世界より悪くなる可能性よりも、良くなる可能性の方が高いのかもしれない。

 自らを邪神や悪人と称する彼とて、確かに望んでいるのは平和な世界だ。

 ある意味ではザマスとも似ていて──しかし考えは対極にある。

 

 だが、だからこそ。

 

「だったら!」

 

 ゴジータには彼の願いを、最後まで認めることが出来なかった。

 

「ゼロからやり直して別の未来を作るなら! お前が救いたがってるトランクスだって、生まれない世界になるだろうが!」

「ぬうっっ……!」

 

 気弾の弾幕を搔い潜ったゴジータが、さらに界王拳の倍率を上げた膝蹴りでメタフィクスの腰を折る。

 続けざまに右腕を振り下ろし、星その物を真っ二つにする手刀でメタフィクスを地面へと叩き付けた。

 

「それに……アイツにだって、楽しい思い出やこの世界で失いたくないものはあった筈だ!」

 

 一瞬で復帰したメタフィクスが、崩壊していく大地を蹴って飛び上がり、上空のゴジータと激突する。

 その瞬間に生まれた恒星のような眩い光芒の中でゴジータが叫び、自らの思いを突き付けた。

 

「都合の悪いものを始めから無かったことにして、別の世界を創って! そんなんでお前は満足なのか!? それで本当に、未来を救えたって言えるのか!?」

「……っ!」

「お前が失ったものを取り返したいなら! 全王やザマスが消した世界を元に戻せば、それで十分な筈だ!」

「私が望んでいるものはその先にある! 一つや二つだけではない! 全ての世界の平和だ!」

 

 ゴジータの拳がメタフィクスの頬を打ち、メタフィクスの拳がゴジータの胸板に突き刺さる。

 

「……ッ、ちぃ!」

「私の為の願いではない! それが必要なほど、この次元は行き詰まっているのだ! 貴方がたこそ目の前で見てきた筈だろう!?」

 

 時空の概念すら歪める超次元戦闘である。

 無限を凌駕する二人の戦士は刹那の間で何万回と打ち合い、双方の体力を同等の勢いで削っていく。

 

「失った世界を蘇らせたところで、この世に全王のような悪が居る限り何度でも同じ不幸が訪れる! 全ての悪の根を断つ為には! ゼロからやり直す以外に方法はないっ!!」

 

 あまりにも固い意志の乗せられたメタフィクスの拳が、ゴジータを弾き飛ばす。

 接近した時と同じ速さで弾き飛ばされたゴジータは背中が地面に着くよりも速く体勢を立て直し、憎悪に燃えるメタフィクスの姿を見上げた。

 そんなゴジータにメタフィクスが叫ぶ。

 

「自分達の周りだけ助ければ良いと言うのは、貴方がたの傲慢だ!」

「お前こそ、自惚れてんじゃねぇぞ!」

「何もかもを救ってこその神だ! 私は貴方がたさえ救ってみせる!」

「俺達は、お前の赤ん坊なんかじゃねぇ!」

 

 荒ぶる流星群のような気弾の雨を互いに撃ち合い、その全てを相殺していく。

 その光の瞬きの中で繰り広げられる肉弾戦も、対話も……二人の戦いは平行線だった。

 界王拳の倍率を上げて力を増していくゴジータに対して、メタフィクスはまるでこの世界で消えていった全ての執念を取り込み、それを力に変えているかのようにエネルギーを増幅させて食らいついている。

 ゴジータとメタフィクスの戦いが始まってからまだ三分と経っていないが、既にゴジータが身に宿しているエネルギーには限界が訪れていた。

 

「この一撃で決める……!」

 

 両手を突き出し、ゴジータはその手を広げて照準を定める。

 そんな彼と同じように、メタフィクスもまたゴジータに向かって気功波の構えを取った。

 

「ビッグバン……! かめはめ波ああああああっっ!!」

 

 そして、ゴジータが放つ。

 両手の前に生み出した巨大な光の球体から、身体中の全エネルギーを注ぎ込んだ波動が迸り出ていく。

 その光に対してメタフィクスが対抗するように撃ち放ったのもまた、同時だった。

 

「邪神魔閃光ッッ!!」

 

 印を結んだメタフィクスの両手から、かつて未来の師匠から譲り受けた大技が放たれる。

 

「はあああああっっ!!」

「おりゃあああっっ!!」

 

 気功波対気功波。

 ビッグバンかめはめ波対邪神魔閃光。

 

 両者がこの戦いを終わらせる為に死力を振り絞って解放した一撃は、二人の真ん中の位置で衝突し、稲妻を走らせて拮抗していく。

 超パワー同士の激突に、互いの肉体が軋みを上げる。

 

「ぐっ……!? ぐうううっっ!」

 

 次第にメタフィクスの邪神魔閃光がゴジータのビッグバンかめはめ波を押し始め、徐々に拮抗が崩れていく。

 超サイヤ人ブルーの上に重ねた界王拳の反動によって、遂にゴジータの力がパワーダウンを起こしたのである。

 

 ──このままでは、負ける。

 

 この星ごと消滅させようとじりじりと押し迫ってくるメタフィクスの執念に、ゴジータが歯を食いしばる。

 そんな彼に向かって、さらなる力を爆発させたメタフィクスが吠えた。

 

「そうだ……二人の戦闘狂が溶け合った程度の力に、我らの絶望が負けるものかァァァッ!!」

 

 超サイヤ人ブルー同士のフュージョンでも、まだ足りないという邪神の力。

 彼の生み出した超サイヤ人0という絶望の力は、孫悟空でもベジータでも一人では太刀打ちできない強さだった。

 ここで膝を屈してしまえば、一瞬で楽になるだろう。

 

 しかし。

 

 それでも、彼は──彼らは諦めなかった。

 

「持っていけ!」 

「!? ベジータ……!」

 

 追い込まれたゴジータの元に、超サイヤ人に変身したベジータが駆けつける。

 そして彼はその手をゴジータの肩に乗せると、自らの内包するありったけの力を──サイヤパワーを注ぎ込んだ。

 

「よっしゃー!」

 

 戦力差を考えれば、微々たる量に過ぎないそのエネルギー。

 しかし僅かに回復することが出来たそのエネルギーが、ゴジータのビッグバンかめはめ波の威力を取り戻し、メタフィクスの魔閃光を押し返していった。

 

「界王拳……100倍だあああっ!!」

「う……うおおおおおおおおおっっ!!」

 

 この命が燃え尽きても良いと──限界を超越したゴジータの力に対して、メタフィクスも抗う。

 凄まじいエネルギーを解放して一層強まっていく二人の砲撃は、際限なく膨張していき──

 

 

 ──この惑星ごと、全てを飲み込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白い回廊を抜けたそこにあったのは、見る者の心を捉えて離さない、美しい青の世界だった。

 宇宙空間にぽっかりと浮かぶ青い球体──地球。

 地表面の七割を覆う青い輝きを発し、ちぎれ飛ぶような雲の白さと相まって、数多くの宇宙人達がそう評して来たようにそこは「美しい」星だった。

 地球、と一言で言っても、この眼前に広がる存在感は凄まじい。

 自分達が生活し、慣れ親しんできたその星のビジョンを見つめながら──彼ら「四人」の姿は真っ白な世界にあった。

 

「ここは……」

「なんだ、この場所……オラ達、さっきまで戦ってた筈じゃ……」

 

 ゴジータのフュージョンが解除され、悟空とベジータに戻った二人がこの状況の変化に困惑の表情を浮かべる。

 先ほどまで自分達は名も無き星でメタフィクスと撃ち合い、その決着をつけようとしていた筈だ。

 全く同じ威力で拮抗した彼らの力が最大まで膨れ上がった瞬間、彼らは青白い光に飲み込まれ、気づけばこの世界に居た。

 

 そんな彼らに向かって、超サイヤ人0から通常の状態に戻り、虚ろな表情を浮かべたメタフィクスが淡々と状況を説明する。

 

「ここは「次元の狭間」の深層領域……あらゆる次元と時空を観測することが出来る、無の世界です」

「! メタフィクス……」

 

 自分達と同様に五体満足の状態で居るメタフィクスの存在に気付いた三人が身構えるが、変身を解除している今のメタフィクスの姿に戦意は見えない。

 ただ虚ろな表情で、真っ白な世界の虚空に浮かぶ地球のビジョンを見つめていた。

 

「……何が起こったんだ?」

 

 そんな彼の姿に、依然警戒しながらGT次元のベジータが問い質す。

 先ほどの攻撃の結果相打ちになったのだとすれば、自分達が居るのはここではなくあの世である筈だ。

 しかし全員生きている上に、この「次元の狭間」へと転移している。

 不可思議な現象に対して、メタフィクスが簡潔に語った。

 

「私達の全力がぶつかり合ったあの瞬間、全王の力と同じ特異現象を引き起こしたのです。それが私達の居た場所に次元の消滅を引き起こし、行き場の無くなった私達が一時的にここへ導かれた。……かつて、名も無き界王神がそうだったように」

 

 詳しく理解させる気は無いと言うようなおざなりな説明であったが、先ほどの一撃がこの状況を招いたことがわかれば一同にはそれで十分だった。

 GT次元のベジータにとっては、「次元の狭間」という場所に来るのは二度目になる。

 しかしそこには彼が前に訪れた時にはなかったものが──虚空に浮かぶ、地球のビジョンが映っている。

 

 まるでメタフィクスが彼らに、それを見せつけているかのように。

 

「今そこに見えるのは……かつてトランクスが過ごしていた未来の世界です。見なさい。今の貴方がたには、彼らの絶望を知る義務がある」

 

 映し出されたビジョンは外側から見た地球から中の景色へと変わっていき──荒廃した町の姿が彼らの視界に広がった。

 

 ──そこは、とある町の遊園地だった。

 

 本来ならば多くの人々で賑わっている筈のその場所では各所で爆煙が噴き上がっており、泣き叫ぶ人々の阿鼻叫喚な景色が広がっていた。

 爆発が上がる度に、何人もの力無き人間が死んでいく。

 その地獄を作り出しているのは、悪魔のような少年と少女だった。

 

「あれは……人造人間……!」

 

 人造人間17号と、人造人間18号である。

 二人とも悟空達の時代とは違い、高らかに笑いながら残虐な行為を行っていた。

 自分の楽しみの為に虐殺を繰り返す二人──そんな彼らの元へ、山吹色の道着を着た青年が立ち向かっていく。

 

「あそこに居るのは……悟飯か!?」

 

 それは、かつて未来の世界に生きていた──この世の理不尽に翻弄された英雄の追憶だった。

 


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