怨霊の話   作:林屋まつり

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二十四話

 

 鉄蛇との第三戦。豊浦は鉄剣を手に取る。

 傍らにはシャーリー。鉄剣を抜き、鉄蛇を開放したら速やかに彼を《大和》へ送り届けるために待機。

「それじゃあ、行くよー」

 気楽に彼は告げ、鉄剣を手に取る。そして、抜いた。

「んっ、」

 飛翔、同時に豊浦をかっさらう。そこから鉄蛇が構築される、が。

「シャーリー君っ、上に飛んでっ!」

 がくん、と。一瞬、魔法力が途絶えた。否。

「え?」

「大丈夫か?」

 気が付けば、シャーリーはバルクホルンに抱えられ、豊浦はミーナと芳佳が両手を掴んで空へ。

 そして、

「なんだ、あれ?」

「あれが、今回の鉄蛇みたいね。……素材が違う、可能性は指摘されていたけど」

 ミーナが冷や汗を流して呟く。眼下、霧が蟠っている。

「シャーリー君、意識はあるかい?」

「あ、……ああ、まさか、私、意識飛んだか?」

「そうみたいだね。……あれが、毒か。な。

 ともかく、シャーリー君、高空を飛んで、僕を《大和》へ」

「ん、了解」

 

 シャーリーと豊浦を見送り、ミーナは視線を移す。

 横須賀海軍基地を覆う黒い雲。そこから立ち上るように霧が追加。

 そして、すっ、と霧の中、視界の隅に赤い輝きが見えた。一瞬だが、見逃すことはしない。

「……いた、わね」

「ミーナさん?」

「コアがあの霧の中を動き回っているわ。けど、霧への接触は禁止。

 おそらく、あれは毒ね」

「毒蛇ってのはいるのだが、……蛇が毒そのものになったのか。わけがわからん」

 トゥルーデが頭を抱える。あれが蛇かは不明だが。

「どっちにせよ、コアを壊して終わりですわ。

 あの霧に防御能力があるとは思えませんわ。早急に叩きましょう」

「そうね。…………ん、…………んん?」

 固有魔法を使いコアの位置を探ろうとしたミーナは眉根を寄せる。

「ミーナさん?」

「コアの位置が、正確に把握できない? サーニャさん」

「はい」

 サーニャは魔導針を発現。コアの位置を探る、が。

「…………すいません。曖昧、です。霧、かかってるみたい」

「曖昧でもないよりはましだ。サーニャ。位置の指示を「トゥルーデっ!」」

 声を飛ばしていたトゥルーデの前にエーリカが飛び出す。シールドを展開。

 そこに突き刺さる、霧で出来た蛇。シールドに激突して動きを止める、が。

「もーやだーっ」

 ぼろぼろと、シールドが削られる。

「退避っ!」

 ミーナの言葉にウィッチたちは急上昇。エーリカもトゥルーデが抱えて空へ。その足元を蛇が通過。

「ハルトマンさんっ、今のは?」

「シールドが、毒蛇に触れたところから壊れてった。

 あいつの体を構成する毒、魔法力そのものまで有効かもしれない」

「探索があいまいになるのも、それでしょうか?

 あ、それと、さっきの毒蛇が飛び出した場所、その起点あたりにコアがあります」

「来るぞっ」

 サーニャの言葉に全員がそちらに視線を向け、エイラが叫ぶ。その方向から牙をむく毒蛇が「四っ?」

「コアの場所は、変わっていません」

「つっ」

 毒蛇そのものはあまり大きくない。一メートル程度か。けど、

「牽制にもならないか」

 バルクホルンは退避しながら銃撃した。けど、銃弾が通過した場所の霧が吹き飛んだだけで毒蛇そのものに影響なし。

「なんか、今回も随分と、…………私たち、なにと戦ってるんだっけ?」

 合流したシャーリーが頭痛をこらえるような表情で呟く。ミーナは頷く。

「千年以上独自進化を続けたネウロイよ」

「研究者が見たら発狂するなこれ」

「ともかく追撃追撃ーっ、コアが行っちゃうってーっ」

 ルッキーニが手を振りながら告げる。コアが移動している。それはわかる。

 靄から飛び出す毒蛇、その起点は離れるように移動している。まずいわね、と。

「あの毒蛇の直撃を海軍の軍船が浴びたらどうなるか分からないわ。

 シャーリーさん、毒の影響は?」

「今はない。けど、一時的に意識が吹っ飛んだ。

 あの、蛇の形の、直撃したら間違いなく、…………まあ、死ぬな」

 毒蛇に物理的な攻撃能力がなく、毒そのものに生命活動への支障がなかったとしても、この高度は墜落死に十分だ。

「そっちは何かあったか?」

「コアの居場所を起点にあの毒蛇が飛んでくるわ。それと、シールドが毒で壊れたみたいね」

「…………うえ。宮藤、シールドは控えろよ。

 気合で何とかなる物じゃないかもしれないし」

「はいっ」

 前を飛ぶ芳佳の声。毒蛇を回避しながら基点めがけて飛翔しコアを追撃。

「あそこ」

 サーニャがロケット弾を放つ。地面に突き刺さり爆発。そして、「晴れましたわね」

 ペリーヌが呟く。爆発、爆風に押されて霧の一部に穴が空いた。なら、

「一発、吹き飛ばして「エーリカは待機っ!」あうっ?」

 固有魔法の疾風を解き放とうとしたエーリカはミーナの制止に急停止。つんのめる彼女を横目に、

「扶桑皇国海軍、砲撃要請。

 弾頭は爆発力重視、炸裂弾。位置は蛇の飛び出す起点。私たちは高空で回避するから気にしなくていいわ。

 目的、あの霧を蹴散らすわっ!」

『了解した。ウィッチたちは距離に気を付けてくれ、念のためシールドを、爆撃の爆風で霧が上まで届くかもしれない』

「了解。お願い」

『撃ちよーい、……………………はじめっ』

 淳三郎の声がインカムに響く。その声はウィッチたちも聞いていた。軍船が展開する方を一瞥し、射線を確認。

 そして、雨あられと叩き込まれる砲弾。ウィッチたちは距離を取り、芳佳はシールドを展開。

 爆発。芳佳は眉根を寄せる。

「芳佳ちゃん?」

「杉田大佐の警告、正しかったみたい」

 シールドが微かに綻ぶ。大した影響はないが、それでも、確実に毒はここまで届いたらしい。

 けど、意味はあった。

「コア、確認しましたっ!」

 サーニャが声を上げ、同時に砲撃。つまり、霧は確かに晴れたという事。

 ミーナもそれを確認する。彼女の固有魔法は確かにコアの存在を確認、艦砲で傷つかないのは想定通り。けど、

「霧を出しているわね。総員、追撃っ!

 リーネさん、今回の鉄蛇の特性を杉田大佐に報告をして、サーニャさん、私たちでコアの位置を追跡するわ」

「「はいっ」」

 リーネとサーニャの声が重なり、ミーナはサーニャと前へ。そしてその最前線は、

「毒蛇、……来るな。

 数は五。下集中、上に逃げろっ」

 エイラの言葉にウィッチたちは上へ。その下を五匹、毒蛇が通過。

「わおっ、さっすがエイラっ」

「このくらい簡単だ」

 ルッキーニの言葉にエイラは素っ気なく応じる。集中はそらさず、緊張は解けない。

 毒蛇はシールドさえ破壊する。防御が出来ないなら回避しかない。それに特化したエイラに回避行動を任せる。

 …………失敗すれば、あるいは全滅さえあり得る。エイラは緊張に拳を握る。と。

「エイラさん」

「なんだよ。お前は引っ込んでろよ」

 握った拳に重なる手。芳佳はエイラの横で微笑。

「シールドでも時間は稼げるから、一緒に頑張ろう」

 わずかでも、毒蛇の突撃は遅らせられる。だから芳佳は前線を買って出る。……エイラは視線を逸らして、

「…………遅れるなよ。のろのろしてたらおいてくかんな」

「うんっ」

「なに笑って、……右っ!」

 エイラが握る芳佳の手を引っ張り右へ。それに続いてウィッチたちは右に回避。毒蛇が通過する。

 霧の集合体。くらり、と。

「つっ、……すぐ横を通過するだけでも毒は届くか」

「毒が届く範囲何て知るかーっ!」

 毒蛇が飛んでくる場所はわかる。が、それを構成する毒素がどこまで届くか、そこまでは知らない。

「仕方ないなー、じゃあ、かるーく風出すから、早めに仕留めてよ」

「そうね。お願い」

 サーニャと前を見据えながらミーナ、と。

「ミーナさんっ、杉田大佐から、艦載機で上空からコア周辺に爆撃の提案がありますっ! 高空から、艦上爆撃機三機。偵察機二機の編成ですっ」

「そう、……ええ、お願い」

「上っ!」

 エイラの指示を聞いて上へ。足元を毒蛇が通過。エーリカの疾風が霧を吹き散らす。

「これなら、とりあえずはいけるか」

「射程範囲に到着。……サーニャさん、位置は大丈夫ね?

 リーネさん、構えて、リーネさんの銃撃後。そこに向かって射線を集中させるわ。エイラさんと宮藤さんは攻撃に参加しなくていいわ。回避に集中」

「リーネちゃん」「はいっ」

 ロケット弾が放たれる。リーネは対装甲ライフルを構える。爆発、霧が晴れる。

 そこに、かすかに見える紅の煌めき。ネウロイの、コアの色。「そこっ」

 銃撃の音。銃弾がコアに突き刺さる。そして、

「撃て撃てっ!」

 ウィッチたちの銃撃が集中。銃弾がコアに突き刺さる。けど、外殻はなくともコアの硬さは鉄蛇相応。銃撃の集中にも耐え、「右っ!」

 エイラの声にウィッチたちは右に飛翔。そこに毒蛇が突撃する。「追撃、左っ!」

 毒蛇は上昇し、ウィッチたちを追撃する。

「下からも来たっ!」

 エイラは芳佳の手を引っ張って振り回す。毒蛇は空を舞い、旋回し、ウィッチたちを追撃。

「ちょ、これやばいっ?」

 シャーリーは高速で飛び回りながら舌打ち。何せ毒蛇は霧。いくら銃撃しても意味はなく、発生数は無尽蔵。シールドを張ってもシールドそのものが浸食崩壊する。つまり、防御不可。

 なら、

「ハルトマンっ、無茶頼む」「了解っ」

 数が多すぎる。回避不可と判断したエイラはエーリカに声を飛ばし、エーリカは頷き両手を広げる。

 ウィッチたちはエーリカのところに集まり、毒蛇が追撃。その瞬間に、

「シュトゥルムっ!」

 周囲に展開した疾風が毒蛇を吹き散らす。と、同時に、

『コア確認、直上より爆撃開始します』

 艦載機からの通信。そして、空から爆弾が落ちてきた。

「このくらいなら」

 爆発、コアが霧より露出し、芳佳のシールドが毒に浸食されて綻びる。けど、

「撃ちますっ!」

 リーネがコアに銃撃、ウィッチたちも銃弾を撃ち込む。

『コアの移動を確認、追跡し、爆撃を継続します』

「ええ、お願い」

 爆撃が続く。偵察機はうまくコアの位置を把握しているらしい。だから、

「追撃するわ」

 

「速度を上げたわね」

 毒蛇をばらまきながらコアはさらに速度を上げる。ミーナは眉根を寄せる。

「消耗戦、といったところですわね」

 ペリーヌは軽機関銃を握って眉根を寄せる。毒蛇はそこを通過するだけで毒をまき散らす。エーリカが疾風で吹き散らしているが、

「あーうー」

「大丈夫かハルトマン?」

「はーやーくー、しとめてー」

 すでに飛行も面倒になったらしい。トゥルーデに背負われたエーリカが情けない声。

 けど、鉄蛇は時間稼ぎを選択したらしい。高速で逃げ回り毒蛇で消耗させる。…………腹立たしいが、悪くない選択だ。

 ぱり、と音。

「霧も、貫けるかしら?」

「上、って、ペリーヌ、なにやる気だ?」

「穿ちますわっ!」

 毒蛇の上へ。そして、「トネールっ!」

 雷撃が霧を貫き吹き飛ばす。

「おお、やるなツンツン眼鏡」

「ふっ、このくらい楽勝ですわ」

 出来るかは分からなかったが、けど、その不安を表に出さず、ふっ、と笑うペリーヌ。エイラは笑って「なら、次は五匹、右二、左三」

「逃げますわよっ!」

 楽勝、だが。毒蛇の発生は無尽蔵。対してこちらは魔法力を消費する。最小限で仕留めていきたい。

「シャーリーさん、ルッキーニさん、バルクホルンさん、リーネさん。コアへの攻撃はお願いね。

 ペリーヌさん、毒蛇の撃破をお願い」

 了解、と声が重なり、

「手は緩めないわよっ! どちらにせよ、長期戦は不利のようだしね」

 ぴりぴりと、微かな、本当に微かな痺れ。どれだけ吹き散らしても、どれだけ貫いても、それでも、微かな毒は大気に残る。それは、少しずつウィッチたちを蝕む。

 それが重なれば、……いずれ、体が動かなくなり墜落。

 爆撃は止まらない。コアの位置は明白で、ウィッチたちは追撃しながら銃弾を叩き込む。

「これは、速度の勝負だな」

 二丁の機関銃で銃撃を重ねながらトゥルーデは呟く。いかに早く撃破するか。それが勝敗に直結する。

 と、

「霧が?」

 すぅ、と。足元の霧が晴れていく。けど、ミーナの固有魔法は、だいぶ損耗しているようだが、それでもコアの存在を伝える。

 つまり、

「決戦、ってことかしら?」

 霧が集まる。構築されるのは霧で出来た巨大な蛇。

「毒蛇」

 高密度の毒で出来た蛇。頭部に輝く赤い光。

 

 咆哮を上げた。

 

「来たっ」

 エイラの言葉にウィッチたちは急上昇。その足元を毒蛇が通過。

 今まで飛んできた毒蛇とはサイズが違う。最高速で上昇してかろうじて回避。けど、それだけでは終わらない。

「追撃っ! 宮藤っ!」

「少し、もってっ!」

 ぎりぎりで回避し、追撃の尾が跳ね上がる。急上昇を続けながら芳佳はシールドを展開。シールドに尾が触れる。

 重さはない。もとよりそれは霧。シールドに伝わる衝撃は皆無。

 けど、シールドが綻びる。毒蛇に触れたことでその毒がシールドを破綻させる。一秒、尾の一撃を防ぎ「よくやりましたわねっ!」

 声。そして、

「トネールっ!」

 雷撃が霧を吹き散らす。

「艦砲頼むか?」

「霧相手に砲撃してどうするのよ?」

 トゥルーデの提言にミーナは溜息。一応、蛇の形はしているがその体は霧。いくら砲撃しても通過するだけだろう。それは炸裂弾でも変わりない。

 毒蛇の足元なら爆風で霧を吹き飛ばせるかもしれないが。どうせすぐまた固まるだろうから意味があるとは思えない。

 つまり、

「やるしかないわね。幸いにも第一段階である程度削ってあるから、そこまでの耐久性はないだろうけど」

「あれで削られたから固まったのかな」

「でしょうね。運がよかったわ。エイラさんたちの固有魔法がなければ持たなかっただろうし」

 そして、この状況はさらにウィッチたちに有利になる。ここぞとばかりに重なる銃撃。霧の中という広大な範囲ではなく、目の前の蛇の形、限られた範囲を移動するなら、ウィッチたちも追撃は容易で、

「行くよっ!」

 毒蛇の直上。エーリカは下に掌を突き出す。

「吹き飛べ、シュトゥルムっ!」

 眼下、毒蛇めがけて放たれる竜巻が、それを構成する毒霧を吹き飛ばす。ウィッチたちはシールドを展開して飛散する毒を防御。

 シールドは綻びる、が。

「終わらせるわよっ!」

 ミーナの号令、エーリカの固有魔法で剥き出しになったコアに銃撃が叩き込まれる。毒霧を吹き散らされた鉄蛇は攻撃を出来ず体を再構築するが。…………遅い。

 対装甲ライフルの銃弾が、コアを貫いた。

 

「お疲れ様」

 毒蛇撃破の報を受け用意されていた茣蓙。ウィッチたちはストライカーユニットを脱いで転がり込む。

「ああ、……疲れたー」

「くたくたですわ」

「糖分、…………甘いものー」

 毒蛇を散らすために飛び回っていたエーリカとペリーヌは寝転がって、予知した未来の位置から毒蛇の回避方法を考え続けたエイラは糖分を求めて手を伸ばす。

 サーニャもぺたんと座りながら「甘いもの、私も欲しいです」と、小さく呟く。

「家に戻ったら僕がこっそり作っておいたお菓子があるよ」

「はい」「えー、すぐ食べさせろー」

 扶桑皇国の可愛いお菓子、それを思って微笑むサーニャと、ごろごろと駄々をこねるエイラ。

「砂糖ならあるが? 食べるか」

「うぇー」

 意地悪く笑う美緒にエイラは変な声を上げて否定する。甘いものは食べたいが、砂糖を丸齧りしたくない。

「豊浦さん。私の分もある?」

 同じく、固有魔法を使ってコアを追い続けたミーナ。豊浦は「もちろん、みんなの分あるよ」と笑って応じる。

「そう、…………けど、みんな。もう少し《大和》で待機するわ。

 豊浦さんの言っていた蛇の特性、再生を再現しているかもしれないし、一時間は観察を続けましょう」

「監視は我々が請け負おう。皆はここで休んでいてくれ」

 淳三郎の言葉にウィッチたちは頷く。

「皆は毒蛇の監視を継続。コアが発見されたら急報の用意っ!

 手の空いているものは今のうちに砲弾の再装填を済ませておけっ! それと、ウィッチたちは残りなさい。彼女たちから要望があったら出来るだけ応えるように、奇襲を受け可能性は十分にある。警戒を怠るな」

 淳三郎の指示で扶桑海軍の軍人たちは慌ただしく駆け回り始める。静夏をはじめウィッチたちは待機。

「で、今回のネウロイは、…………ネウロイでいいのか?」

 ウィッチたちの指揮のため同じく残る美緒はぐったりするミーナに問い、ミーナは苦笑。

「いい、と思うわ。

 千年の時を経て独自進化を遂げたネウロイ。と報告するつもりだし」

「まあ、それがいいだろうな。それで、どんなものだった?」

「形があるのはコアだけね。あとは霧、おそらく毒霧ね。

 もともと、豊浦さんから指摘があったわ。今回の、鉄蛇は蛇に見立てられた能力を持つ、って」

「ああ、火山弾と、雷か、…………なあ、ミーナ」

「ん?」

「欧州にも、いると思うか?

 鉄蛇のような、古くから存在するネウロイは?」

 美緒の問いに、ミーナは溜息。

「可能性は十分にあるわ。調査も、今回の報告は随時送っているし、本格化するでしょうね。

 けど、大丈夫よ。鉄蛇も何とか対応できているしね」

「…………ああ、そうかもな」

 いくら最前線、欧州とはいえ、あのネウロイとまともに戦えるウィッチがどの程度いるか。

 ミーナは苦笑。いつも、並んで戦っていた相棒の不安は手に取るようにわかる。

 だから、ミーナは拳を掲げ、美緒の額を軽く叩く。

「だから、期待しているわよ。

 この戦いを最前線で見ているのだからいい教訓になったでしょう。貴女も、指導内容を考え直してみることね」

「……ああ、そうだな」

 これから先、どのようなネウロイが現れるか分からない。当たり前だが欧州は扶桑皇国より遥かに広い。なら、遥か古代から眠り続けているネウロイがいてもおかしくない。し、発見されていないだけで想像を絶する進化を遂げたネウロイがいるかもしれない。

 けど、なにがあろうとも、どんな敵と戦おうとも、喪う事がないように、……それをかなえるために指導内容は徹底的に考え直す必要がある。

 その決意を固め、美緒はミーナに頷いた。

 


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