Four worlds with each season Ver.Woman   作:@1319

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なかなかこっちに時間を割けないのが辛い……。学校でちまちま書いてようやく投稿できるようになりました。

よろしくお願いします!


戦う準備 その3

 博士に連れられてこれから自分の部屋になるという場所に来た私はその部屋に驚いていた。

 

「何なの……。私の部屋と全く同じじゃない」

 

 私が普段生活していた自分の部屋と全く同じものがそこにはあったから。でも……なぜ? あの部屋は私の家族と私自身しか知らないはず。それなのに完全に再現されているこの部屋に私はある種の恐怖を抱いた。

 

 そんな私の感情を察知した博士はその不安を取り除くためか言葉を紡ぐ。

 

「どうやら驚いているみたいだね。説明するとこの部屋は君たちが一番リラックスできる空間を作るためにこういう部屋割りを作ったんだ」

 

 確かに博士の言う通り、自分の今まで過ごしてきた空間があるだけで心の余裕はできる。それは本当にありがたいことではあるのだけれど……。

 

 問題があるのなら、それは博士が男性であるということかしら。同じ部屋を作るということは絶対にあることをしないとできないはずだから。

 

「いったいどんな手を使ってこんなことをしたのかしら」

 

 やったことはある程度予想が付く。部屋のレイアウトは本物を見ていないとできない。そんなのは誰が考えたってたどり着くことができる。だったら次に考えるべきなのはどんな方法を使ったのか。私たちの常識が通じないこの施設内では未知が広がっている。それを知りたいという探求心が出てしまった。

 

 でも、その方法を素直に答えてくれるという甘い展開にはならない。世の中そんなに甘くないということなのかしら?

 

「それは、残念だけど企業秘密かな。でも常識の範囲内での観察だったから君たちの心配していることはないから安心して」

 

 この常識はきっと倫理に関すること。のぞき見をしていたのは認めるけど、着替えやその他女性が嫌がるところでの観察はしていないと、きっと博士はそう言いたいのだろう。

私としても見られるのはあまりいい気はしない。それは無断であるのならなおさら。

 

 それに、今日……数時間前に初めて出会った男性のことをいくら博士だからといって完全に信じられるかというとそうでもない。

 

「出会ったばかりなのにそこまで信用はできないのだけれど……」

 

 何か嘘があるのではないか。そんな考えが私の中に芽生える。目の前で起きている状況と人物を見て。

 

 私にそう言われると博士は軽く笑ってみせた。その笑いは何を企んでいるようなものではなく純粋な笑いだった。

 

「あはは。そうだね。でも、時雨ちゃんがいるってことである程度は察してくれないかな」

 

 ここで私が失念していたことを思い知らされる。そうだ。この場所には博士だけがいるわけではない。助手である時雨さんもいた。だから全部が全部安心できるということではないが、同性の彼女が引き留めてくれていると考えるだけで幾分は楽になった。

 

 とりあえずは納得ができた。時雨さんという存在がどんなにまじめな人であるかは少し一緒にいるだけである程度は理解することができたから。

 

「……そうね。あと1つだけ確認していいかしら?」

 

 だから後は、過去のことじゃなく現在のことについて尋ねるのが先決だ。ずっとそうであると考えたうえで生活してしまってはこの場所はこころが休まる場所からただの牢獄になってしまうのだから。

 

「何かな?」

 

 博士が私の問いに首をかしげる。

 

 そんな博士に私は今考えているうえで最悪なことが起きているのかいないのかを尋ねる質問をする。

 

「この部屋には監視されるものはついていないのよね?」

 

 今この瞬間だけは、世界の状況なんてどうでもいい。女の子として部屋を監視されているということは死活問題。そんなプライベートも何もないこの空間で過ごせなんて無理な話だ。

 

 そんな私の最大級の質問に博士は首を縦に振った。その行動が意味するのは、……肯定。

 

「勿論だよ。君たちがこの場所に呼んだ時点で個人を監視する意味はもうないからね」

 

 その理由が博士の口から告げられる。思い返してみれば私がこの場所に来た時は自身の部屋からだった。あの光の扉を出現させるにはある程度部屋のことを知らなくてはいけなかったのだとしたら、この場所に来てしまえば観察に関してはもうしなくてもいいだろう。

 

 そういう考えに至った私は博士の言葉を素直に受け入れることにした。とにかく見た限りではそういった機械も見られないことも、私の考えを後押ししたようだし。

 

「それを聞いて安心したわ。じゃあ、しばらくは一人にしてくれるかしら? 集中したいの」

 

 この部屋のことが分かったのならやることは1つ。この部屋に来ることになった最大の理由。魔法を覚えるということを静かな部屋で集中してやりたいと博士にお願いをしたからだ。

 

 ここに来るまで少し渋っていた博士だったけど、この私の言葉には素直に従ってくれた。

 

「わかった。僕はそろそろ武器庫に戻るよ。彼女たちも選び終わってるかもしれないしね」

 

 確かに、そろそろ決まっていてもおかしくない時間だった。移動にそれなりの時間を使ったし、今こうして話している時だって時間は過ぎている。

 かなり質問攻めにしていたせいか少し長い間話過ぎたと思わなくもないけど。

 

 そう言って博士は私のこれから生活してく部屋から出ていく。これでこの空間には私1人しかいなくなった。

 そして目の前にあるのは博士が持ってきた魔法書。これから私のやることはたった一つだけ。

 魔法の知識を身につけるために本を読んで理解する。それだけよ。

 

 

 

 

 

 私はこらえきれない好奇心を開放するかのように魔法書を開いた。

 

「これが魔法について書かれている本なのね。一体どんな内容なのかしら?」

 

 ただ最初にあるのは本の目次。どんな本にでもあるこれからのページに何がかかれているかを読者に伝えるもの。その中身を見るとどうやら最初のほうが初心者用であるということが分かった。ならどんどんページをめくっていくだけね。

 私は目の前にある読んだことが全くない魔法書に向き合っていた。この先には私のことを騒ぎ立てる未知がある。それだけで私の胸は高鳴っていた。

 

 ページをめくると次に書かれていたのは魔法について。使う魔法について書かれているわけではなく発動方法の大まかな説明と、必要なものがかかれている。

 

「確か……博士が言っていた魔法の使い方はその魔法に関係する呪文を読んで、魔法陣を頭で想像することによって使うことができる、だったかしら。てことは魔法の効果と呪文、そして魔法陣も覚えないといけないのね。結構大変だけれど、面白いじゃない」

 

 本に書かれている内容も博士の言っていたことと相違は内容だし、きっと正しいことなのでしょう。だったら覚えること、覚えるべきことはいろいろあるということなのだけれど、大丈夫。私ならできる。そういう確信が心の中に芽生えていた。

 

 そんな気持ちで本を見ていると次のページから魔法の詳細がかかれている。使う魔法の名前、効果に発動の上で重要になってくる魔法陣など細かい説明と同時に書かれていた。

 

「え~っと……最初にある魔法は……ボーボールね。博士が入門って言ってたってことはこれが基本の魔法ってことになるのかしら? 『燃える玉よ、飛んで行け』……これくらいなら別に苦じゃないわ」

 

 初めての魔法の名前と呪文、そして魔法陣を見てみた。円形ベースの赤で描かれているその魔法陣。複雑ではあるけどパターンを覚えてしまえばあとは何とかなる。それに意外にも呪文は簡単な言葉であったこともあり、それほど難しいと思えなかった。これが初球の魔法なのだろうけど、このレベルだったら渋る必要はないわね。……じゃあ、なんで博士は魔法を勧めなかったのかしら?

 

 そんな疑問が私の中に出てくるが、難しいことになるとさらに難しくなる。この先の未来を考慮すれば初めて手を付けるものに、それも知識が必要なことを後回しにするのは当然だと思い、いったんその思考を切断する。今は、目の前の未知に集中したいから。

 

「この魔法陣は結構ありふれた感じのものなのね。覚えるのは四分の一のところだけで十分のようだし」

 

 魔法陣の特徴は簡単に言ってしまえば角度90度分の扇を4つ合わせたもの。形を覚え、頭に浮かべる程度なら基本となっている四分の一のデザインを記憶したほうが早いと私はそう考えた。

 この後も次のページ、次のページとめくっていき魔法の知識を深めていく。この本に書かれている魔法は簡単なものだと言っていたけど数が結構あるため覚えるにはそれなりの時間がかかるだろう。

 それでも私はやり遂げるわよ。絶対に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私たちは武器を選び、博士たちがどこにいるのかが分からないため武器庫の前で待っていた。時雨ちゃんもどこに行ったのかわかっていないことからむやみに移動しないように待機を選択したんだ。

 

「あ、博士。おかえりなさい」

 

 武器庫の前で少しだけ待っているとやってきた道から再び博士が戻ってきた。だけど、紅葉ちゃんの姿が見えない。どうしたんだろう? てっきり一緒にいると思っていたんだけど。

 

「ただいま。3人とも武器は選べたのかな?」

 

 私たちのところまでやってきた博士は周りを見渡して成果がどうだったのかを聞いてくる。今まで武器庫の中でやっていたことは、私たちの使う武器選び。それぞれが選べたから外にいる。

 

 博士の問いに剣を持っていることが嬉しくなった蛍ちゃんが自信満々に壁に立てかけていた選んだものを博士に掲げてみせる。

 

「あぁ! この大剣がおれの選んだ武器だ!」

 

 それは蛍ちゃんの身長くらいの長さの大剣だった。横幅も長いところは肩幅よりも広くかなり重そうだけど蛍ちゃんは軽々持ち上げている。……これが適正ってやつなのかな?

 

 そう考えていると今度は雪ちゃんが今までずっと抱え続けていた武器を博士に見せる。

 

「あたしも相棒を選べた。早く使ってあげたい」

 

 雪ちゃんが持っているのはスナイパーライフル。綺麗な黒色で光っているその銃はスナイパーライフルらしくスコープが付いている。これなら確かに遠くの敵にも太刀打ちができる。それと、腰についている少し小さめのハンドガンもきっと近距離用の装備なのかな。

 

 じゃあ残っているのは私だけなんだ。2人は興奮気味に話していたけど私はあくまで冷静に。

 

「私はこの片手剣を選びました。いろいろ応用が利くと思ったので」

 

 でも、なんか手の内を全部見せたくないとそう思ってしまった。だから私が言葉に出してみんなに見せるのは最初に選んだ片手剣だけ。それでも地面から私のおへそまでの長さがある。剣先が真ん中に集中している洋式の剣には左右両方に刃があるから注意して扱わないと自分が怪我しちゃうというところも考えておかないと。……って武器庫の中に鞘があったんだった。

 私は慌てて鞘に剣をしまって博士のほうに向きなおる。

 

 そんな私たちの様子を見た博士は安心した様子で話し始める。

 

「うん。しっかりと選べたようだね。……移動ばっかりで申し訳ないんだけど、あと2か所ほどついてきてくれるかい?」

 

 そしてそのあとすぐにまた移動があるということが博士の口から告げられた。まぁ、仕方ないことではあるけどかなり移動が多いとみている風景もそんなに変わらないから飽きるんだよね……。

 

 でも、その言葉を聞いた瞬間に蛍ちゃんの目が輝き始める。さっき話していた博士の言葉に何か嬉しくなるようなところがあったのだろうか?

 

「武器が使えるのか!?」

 

 あ~。そういうことね。今まで武器を選びたいって言ってたけど実際は使ってみたいというのが本音だったんだっけ。でも2か所ってことはそれとは違う場所があるってことだと思うからそう決めつけるのは少しだけ早いような気がするよ。蛍ちゃん。

 

 その私の考えはあっていたみたい。なんでわかるのか。それは博士がすぐに答えたから。

 

「そっちもあるんだけど、紅葉ちゃんをもう案内したからね。君たちのプライベートルームに案内するよ。3人とも少し疲れたでしょ?」

 

 だから紅葉ちゃんは博士と一緒に戻ってこなかったんだ。それにしてもプライベートルームまで用意してくれるなんて結構ありがたいかも。

 ……でも、今は時間的にもおなかの調子的にも1つだけやりたいこともあったんだけど。

 

「確かに、それにそろそろお昼だからご飯も食べたいね」

 

 今に至るまでに今日はいろんなことが起こっていた。この場所に来たのもそうだし、世界を救ってほしいとお願いされて了承して。防具選びというきせかえをして武器を選ぶ。あ、その前に適性検査もあったんだっけ。今まで経験なんてできるはずもなかったことを連続して体験したんだから身体的にも精神的にも疲れが徐々に溜まってきている。

 

 そんな私の言葉に、雪ちゃんが答える。それは、女の子としてはどうなの? と思っちゃう言葉だった。

 

「……ごはんなんて食パンだけでいい。それより早く銃を撃ちたい……。風穴を開けたい」

 

 怖いよ!! 風穴開けたいって何に!? それとちゃんと栄養は取らなきゃダメでしょ! 雪ちゃんは少しやつれているんだからなおさら!! そんな私の心の声は届くこともなかったけど同じようなことを考えている人がまだこの場にいる。

 

「そういうわけにはいきません。皆さんは体調を崩してしまうと困るんですからしっかりと栄養を取ってください」

 

 それは時雨ちゃん。しっかり栄養を取ってほしい。私の考えていたことと同じようなことを雪ちゃんに向けて注意してくれた。うんうん! その通りだよ! 雪ちゃんは一杯ご飯を食べないとね!

 

 でも少しだけわからない言葉があった。なんで体調を崩されると困るんだろう? 人だったら体調を崩しちゃうのだって仕方ないと思うんだけど……。

 

「そういうこと。1人でも欠けるとその穴をカバーするのが大変になるからね。だからみんなが落ち着けるプライベートルームを作ったんだ」

 

 あ~。そうか。まだ全然戦いとかしてなかったから実感がなかったけど1人でもいなくなってしまうと他の人にかかる負担が大きくなっちゃうんだ。そうなると安定する戦いも安定しなくなっちゃう可能性も出てくる。それは確かに困っちゃうね。

 だから私たちのプライベートルームが用意されたんだ。納得、納得。

 

 ようやく手に入れた剣をまだ使えないとわかった蛍ちゃんは今まで少し黙っていたけど、会話に参加するように口を開いた。

 

「じゃあ、さっさと行こうぜ。早くいけばその分早くこいつを使えるんだろ?」

 

 余程、剣を使って戦ってみたい様子で鞘に収まっている大剣を肩に担ぎ、早くプライベートルームに案内してもらうように催促をする蛍ちゃん。

 私としては早くお昼ご飯を食べたいんだけど、でもそれはとりあえず自分がこれから生活する空間を見てからでも遅くない。この先の目標は違うけど、通過点は同じだから私は蛍ちゃんに同意する。

 

「そうだね。じゃあ博士、お願いします」

 

 そうして私たちは博士の用意し、今紅葉ちゃんがいるというプライベートルームに向かった。プライベートっていうくらいだから一人ひとりに個室があるんだよね? いったいどんな部屋なんだろう。大きいのかな? 小さいのかな? 身近に感じるものだから今までのことよりも期待して博士たちについていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 武器庫を出発して少しするとドアの密集した場所に到着した。多分ここが私たちの生活空間となる場所だろう。それを告げるかのように博士はゆっくりと私たちのほうに振り向いた。

 

「ここが君たちの部屋があるところだ。左からさくら君、蛍君、紅葉君、雪君の部屋になる。完全防音だから外からの音も内側からの音も聞こえないし聞かれないよ」

 

 私の部屋は一番左のドアなんだ。……あれ? 他のドアは機械チックな自動ドアなのにこの部屋だけ木製で手押しのドアになってる。なんでなんだろう?

 それに博士が言っていたことも気になる。完全防音で内側からの声が聞こえないのはわかるけど、外からの音も遮断すると……

 

「へぇー。あ、でもそれだと用事がある時に辛くないですか?」

 

 絶対に使いづらいはずだ。だって部屋の外から誰が呼んでいるのかわからないんだよ? 気軽に遊びに誘えないんじゃない? ……あ、もちろんしっかりと戦いに関係することはやるよ! でも、ずっと戦ってばかりだと疲れるし、みんなと仲良くならないといけないんだから少しは遊ばないとね!

 

 私のそんな問いに博士はもっともだと思っているのか深く頷きながら聞いていた。

 

「確かに、でもその事についても対策済みだよ。部屋にはインターフォンが設置してあるからそれを押せば中に伝わる」

 

 確かにそこには家の外についているようなインターフォンが設置されていた。壁と同系色だが少しだけ暗めな色をしているインターフォン。これなら外から呼び出すのも簡単だろう。

 

「じゃあ、いったいどんな部屋なのか入ってみますか~」

 

 この部屋についての説明はきっともうないだろうと思った蛍ちゃんが自分の部屋だと言われた扉の前に立つ。

 

 それに合わせるように雪ちゃんも。

 

「これからあたしたちが生活する場所になるのかな?」

 

 これから私たちが生活するところ。この空間がきっと癒しの空間になるんだろう。一体どんな風になっているのか私は楽しみになっていた。

 

「そうだね。さっきは言ってなかったけど基本的な生活はこの研究所内でしてもらうよ。詳しいことは紅葉君がいるときにするけど、4つの季節を取り戻すまではね」

 

 あ……。プライベートルームがあるってことはこれから博士の言うように、季節を取り戻すまではここで生活していかないといけないんだ。言われた時点で気が付けばよかった……。

 

 でも、1つだけ気になることがある。それは今日が何日で明日はどんな日であるかということ。

 

「えっと、明日から学校っていうのはどうなるんですか?」

 

 私たちは学生だ。夏休みが終わればまた学校が始まり、勉強や部活動、委員会など様々なことをしなくてはならなくなる。それなのに、きっと私たちがいた世界とは異なるこの場所にずっといないといけないということは将来のことを踏まえると少しだけ不安になる。

 

「そっちも紅葉君がいるときに話すよ。ただ、心配いらないということだけ言っておく」

 

 どんなことがあるのかわからないけど、博士は心配いらないと言った。根拠はぶっちゃけ言っちゃうと全くないんだけど、とりあえずは信じることから始めないとね。詳しいことは後で話してくれるっていうし。

 

「そうですか。わかりました」

 

 今は納得しておくだけにする。

 そんな話をしていると用意されていた部屋に入った蛍ちゃんが大声を上げる。それを感情に表すなら驚きと少しの怒り、といったところだろう。

 

「……おい、いったいどうなってんだ!? おれの部屋と全く同じじゃないかよ!!」

 

 え……? 蛍ちゃんの部屋と同じ? どういうことだろう? そこは蛍ちゃんの部屋で同じも何も……。

 

「本当だ……あたしの部屋と同じ……。マシンも全部……」

 

 そんな私の考えを打ち消すかのように雪ちゃんも同じようなことを言う。もしかして……同じっていうことは自分の家の部屋とってことなの?

 

「え?」

 

 私に疑問が生まれる。本当なのかどうなのか私は自分の目で確認しないといけない。自分に用意された部屋を。だってわかるのは自分の部屋についてだけだから。

 

「私の部屋だ……。博士、いったいどうなっているんですか!?」

 

 見てみれば私も、蛍ちゃんと雪ちゃんの2人と同じような反応をしていた。だって窓の外に見える景色以外全部、私がこの場所に来るまでいた自分の部屋と同じだったのだから。

 こんなのを見せられてしまえば私に疑念が生まれる。どうして? と……。

 

 私たちの疑問はその1つだけ。それが聞ければひとまずは大丈夫だろう。

 

「あぁ、それは紅葉君にも話したんだけど……」

 

 だから博士の説明を待った。もしかしたら博士は敵なのかもしれない。そういう、疑念を抱きながら。……だって女の子のプライベートを覗き見るなんて女の敵以外の何物でもないでしょ。

 

 そう言って博士は紅葉ちゃんに話したというを私たちに教えてくれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえずは納得できたと思う。リラックスできるように私たちの部屋を模倣して作ったということも、これを作るのに部屋を監視していたということも。

 

「そうだったんですか。でも、絶対にこれからは覗かないでくださいね! 女の子にはいろいろあるんですから」

 

 博士の心遣いにはありがたい部分もある。少しでも自分の知っているものがあるということは実際ホッとしたというところもあるから。けど、女の子の生活を監視しているというところに関してはしっかりと注意していかないといけない。うっかり切り落としちゃうかもしれないから。博士の首を。

 

「安心してください。僕がそんなことはさせません。やったら切りますから」

 

 そんな私と考え方が同じだった時雨ちゃんが安心させるように私たちに伝えた。うん! 時雨ちゃんがいるなら大丈夫だよね! 助手なんだもん、博士の命のブレーキにはなってくれる。

 

 まぁ、私は心の声でだったからセーフだったけど時雨ちゃんは言葉にしちゃったから博士が少し怖がっちゃったみたい。

 

「怖いよ!? やらないから安心して!! ……ゴホン。まぁ、そんなわけだから安心してここで生活して」

 

 博士は慌てて手をワタワタさせながら弁明する。顔もかなり焦っている様子で今までだらしないながらもしっかりと私たちをリードしてくれていた人は思えなかった。そんな状態が恥ずかしかったのか咳払いをしてこの話題を終わらせた。……逃げたね。

 

 そんな話をしていると紅葉ちゃんの部屋といわれていた場所から紅葉ちゃん本人が出てきた。あ、騒ぎすぎちゃったかな? けど、紅葉ちゃんの表情は怒っているというよりきょとんとしながら私たちのほうを見ていた。

 

「あら? あなたたち来てたの。音が聞こえなかったからまったく気が付かなかったわ」

 

 さっき言われてたっけ。ここは完全防音で音を通さないって。でも、紅葉ちゃんが不思議がるのはなんでだろう? 先にこの部屋の説明を受けてたんじゃないのかな?

 

「そういえば言ってなかったね。紅葉君……」

 

 やっぱり博士は少し抜けているところがあるみたい。博士はここで私たちにしたような防音の説明を紅葉ちゃんにしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 紅葉ちゃんが話を聞き終わると納得したという風に会話を始める。

 

「そうだったのね。まぁ、集中ができるから好都合ではあるかしら。それで自分たちの部屋とレイアウトが同じであることに驚いたと。今はそういう場面のようね」

 

 確かに音が聞こえなければ自分の集中も乱されない。特に魔法を使う紅葉ちゃんにとっては助かることなんだと思う。……今度魔法の本貸してもらおう。

 

「まったくその通りだよ! あ、そういう紅葉ちゃんはどうだった? 魔法」

 

 あ、部屋から出てきたということは魔法に関してある程度は覗けたってことなのかな? 博士には難しいことだって言われてたからどのくらい時間がかかるのかと思ったけど意外に早かったから少しだけ気になった。

 

「簡単なものだったら、おそらくできるはずよ。ただ、魔法陣を記憶するのが難しいから慣れるまで時間がかかりそうだけれど」

 

 そんな私の問いに紅葉ちゃんは今までの時間で感じたことを話してくる。魔法陣も覚えないといけないんだもんね。書くわけではないから幾分楽だと思うけど複雑すぎるのを覚えるには時間がかかっちゃうか。

 

 紅葉ちゃんの魔法の段階も知れたし、あとは空腹を何とかするかそれとも……

 

「じゃあ、早く練習してみようぜー。おれそろそろ限界だよー」

 

 ずっと蛍ちゃんが言い続けている戦闘の練習をするか。私としてはご飯が食べたいんだけど……。

 

「うん。あたしも。この場所のことはもうわかったから早く撃たせてほしい」

 

 どうやら蛍ちゃんも雪ちゃんもそれに紅葉ちゃんも少しでも早く試してみたいようだった。これじゃあ仕方ないかな。ご飯は逃げないし私もそれに賛成しよう。

 

 蛍ちゃんたちの様子を見た博士は3人がうずうずしていることに気が付いた。

 

「……本当に限界そうだね。蛍君も雪君も、それに紅葉君もか。じゃあそろそろ訓練場に行ってみるかな」

 

 博士のその言葉が私たちを本当の意味で戦いが始まることになるのだが、そこに向かうまでの道のりは重く長いもののように感じた。……お腹が空き始めているからかな?

 

 




雪が怖い……。風穴開けたいってどんなトリガーハッピーですか……。それにさくらも怖いよ!! 何が切り落とすだよ……。言葉にした時雨も怖いですが……。

今回の話は魔法に関しての詳細、3人の思考の怖さが分かった回ですね。

次回もお楽しみに! 月が変わったすぐぐらいに投稿出来たらいいな。

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