はいふりの映画が、製作会社の都合で遅れてしまい。
設定を組めずにいましたが、最高のストーリーを劇場で拝見し、漸く時間が動いた気がします。
亀更新で申し訳ありませんが、このあとの話は少しお待ち下さい。
それではどうぞ
+ + +
欧州
ドイツにあるキールに到着した異世界艦隊一行は思わず溜め息を付いた。
「ここが、国際ブルーマーメイド連合本部……」
明乃の視線の先には、海の上に建てられたドーム状の建物があり、回りを艦艇がぐるりと囲むさながら人魚の神殿であった。
「私も初めて来ましたが、緊張してしまいますね」
真白も思わず、建物を見上げる。
『貴君らに継ぐ!そこで停船されたし!』
突如スピーカーから声が聞こえたと思いきや、多数のスキッパーがどこからとなく現れて異世界艦隊を囲んだ。
「な、なんだ!?やる気かっ!?」
「待てキリシマ!ここは従って様子を見よう。先のヴィルヘルムスハーフェンの件もある。ヘタに刺激しては逆効果だ」
『千早艦長の言う通りよ』
「宗谷室長……」
『全艦、聴いて頂戴!国際ブルーマーメイド連合には私から話をさせてもらうわ。それまで、迂闊な動きはしないように!砲も動かしてはダメよ!』
真霜の言葉に一同が頷く。
停船した異世界艦隊にスキッパー隊の隊長格の女性が口を開いた。
『貴君らの所属とここに来た理由を言え!』
「我々は超兵器討伐を目的に結成された異世界艦隊よ!キールには、補給並びに今回の件に関して国際ブルーマーメイド連合本部【クリスティアーネ・アスペルマイヤー】本部長に説明をするために来たの!」
スキズブラズニルの甲板に降りてきた真霜がスキッパー隊の隊長に叫ぶも、隊長は未だに疑いの眼差しを向けている。
『それを立証する証拠はっ!』
「巨大なドッグ艦やそれぞれの艦艇の形状を見て解らないの?」
『違う!貴君らが我々を本当に害さないかの確証が欲しいのだ!』
「――っ!」
真霜は無理もないとは思いつつも、まるで怯えた仔猫のような言動に少し苛立ちを覚えた。
しかし幸いな事に、あらゆる苛烈な現場を見てきた彼女にとっては、恐れるには至らない。
すぐに冷静さを取り戻した真霜は再び声を張る。
「解ったわ!これよりそちらのスキッパー隊がこちらに乗艦して内部の点検をすることを認め、乗員は武装を解除して全員を甲板に集める様にするわ!これで良いかしら?」
『!!!』
スキッパー隊の隊長は一瞬目を見開いた。
全て織り込み済みだったのだ。
事前に漏洩してはまずい軍事情報は、スキズブラズニルの別区画に移動してナノマテリアルで扉を壁に偽装。
あらゆる探知機も反応しないようヒュウガのテコ入れも完了していた。
真霜が手を挙げると、それぞれの艦から乗員達がぞろぞろと甲板に整列する。
それを見計らったかのように、銃を抱えたスキッパー隊がスキズブラズニルと護衛の艦艇に乗り込み、乗員を取り囲む。
「検閲が済むまで大人しくしていろ!念のため各々の艦長は前へ出て貰う!」
明乃たち艦長クラスとガルトナー達は、すすんで前へ進み手を挙げた。
数十分後……
「検閲は完了、武装を解除しての対応も本当だった。入港を許可せよとの通達もあった。貴君らは速やかに準備をされたし」
「解ったわ」
スキッパー隊が去った後、異世界艦隊は海上に浮く様に建てられたブルーマーメイド本部の真下へと移動する。
「うわぁ凄いね艦長!私達ドームの真下に居るよ!」
「うん……」
各国にあるブルーマーメイドの中から飛び抜けた才能を持つ者だけが集まる憧れの本部に皆が興奮する中に於いても、明乃の表情は優れなかった。
キールでの補給が終われば、彼等はバルト海へ赴き、あのムスペルヘイムと同等と言われる総旗艦直衛艦【テュランヌス】との戦いが待っているのだから。
スキズブラズニルがドーム中央へと差し掛かると、ワイヤーで吊られた天上の一部がゆっくり降下来て海面に着水する。
そこに居た人物を見た一同は直ぐ様襟を正して敬礼をする。
「お初に御目にかかります。クリスティアーネ・アスペルマイヤー本部長」
「ええ」
アスペルマイヤーは軽く返礼を返すと、一同を見渡す。
ショートの金色の髪に鋭い藍色の瞳
純白の制服に付けられた数々の勲章
五十を軽く過ぎていると言うのにその麗人たる見た目は若く、威厳と気品が漂う美しさが垣間見えた。
異世界艦隊組のブルーマーメイド一同に緊張の表情が浮かぶのに対し、アスペルマイヤーは眉一つ動かさずにその眼光で一同を見渡す。
「宗谷室長」
「は、はい!」
「直ぐに説明を聴きたいわ。その為に来たのでしょう?」
「わ、解りました。つきましては、10分後に各世界の代表者と、実際に超兵器と相対した艦のブルーマーメイド隊員数名を集めて出頭し、事ここに至るまでの経緯をご説明致します!」
「解りました。こちらの準備は出来ています。急ぎなさい」
「はっ、はいっ!」
アスペルマイヤーはそれだけを言い残すと踵を返して去って行く。
「はぁ……」
緊張が解れた一同からは、溜め息が漏れた。
「宗谷室長がアレだけ緊張するの解るかも……なんかオーラが違うよね?」
「うぃ。なんかビリビリ来た……」
「わ、儂は興奮しておるぞ!あの憧れのアスペルマイヤー女史をこの目で見られるとは!」
芽衣やミーナ達もそれぞれの反応を示す中、真霜はよろめきそうな足を何とか踏ん張って一同に向き直る。
「聞こえたわね?各艦代表者は速やかに出頭の準備をして!」
「ウィルキアからは私とシュルツ艦長、そしてブラウン博士とエドワード外交官で向かう。筑波大尉とヴェルナー副長はナギ少尉と共にスキズブラズニルに残ってくれ。異論は無かろう?」
「はっ!了解致しました司令!」
ガルトナーの意向によりウィルキアのメンバーが選抜される。
「こちらは俺とイオナ、それにヒュウガで向かう。その間の指揮を副長に預ける」
「はい!指揮を預かりました!」
「私達ブルマー組は宗谷室長と真冬艦長、そして私とモカちゃんは確定として、美波さんはどうする?」
「ウィルキアからのお達しでな、艦長に関してのアノ話題は今のところ伏せておくように言われている。まぁウィルキアの判断次第で公表となれば正式に出向く事になるかもしれないが、今のところ最初から行く必要は無いだろう」
「解った。じゃあシロちゃん、あなたに指揮を預けます!」
「はいっ!指揮を預かりました。艦長、その……」
不安げな表情を浮かべる真白に彼女は頷いた。
「解ってる。多分警戒されるんだと思う。だから千早艦長もヒュウガさんだけじゃなくてイオナさんも同行させたんだろうから」
「ええ、ウィルキアもフリッツ少尉や江田さんを護衛に入れてますからね」
異世界艦隊の軍事技術の高さは、昨今世界に対して求心力が低下しているブルーマーメイドにとっては喉から手が出るほど魅力的に違いない。
彼等の所属が名目上ブルーマーメイド預かりになっている事を大義名分として、彼等から強制的に技術を絞り取ろうと上層部が画策していてもおかしくは無いのだ。
故に、突如とした拘束に備えて対人戦にも秀でたメンバーを抜粋し、更には戦闘に備えて現場を指揮出来る者を艦へ残した。
それをブルマー組に強制しなかったのは、彼女達が反乱分子とされない為の措置であると同時に、ブルーマーメイドの援護なしでも我々は超兵器を打倒して世界の人々を救うと言う意思の現れでもあるのだが――
支援を断たれた彼等の行く末はほぼ決まりであろう。
明乃を含めた全員に重苦しい空気が流れるのであった。
+ + +
会議室には各代表者とブルーマーメイドの上層部数名がが集まっており、江田とフリッツはドアの外での待機である。
「さて……報告は日本支部を経由して入っては来ているが、如何せん断片的ね。あなた達がこの世界に来た経緯と超兵器に付いて説明して頂戴」
「解りました」
ガルトナーと群像は、自身の世界情勢と、世界の移動時の説明をし、博士は超兵器に関する説明を各艦が記録していた映像を交えて説明した。
「素晴らしい……」
上層部からは思わず溜め息と期待の声が上がると同時に、異世界組の面々の警戒心が上昇する。
彼女達の期待は超兵器を打倒しうる希望が生まれた事によるものなのか、それとも――
【超兵器や異世界艦隊の技術】を手中にして、失墜したブルーマーメイドの地位を確固たる物に出来る期待か――
後者であるなら、例え超兵器を打倒したとしても、将来に待つものは力ある者の支配のみなのである事は間違いない。
「……」
エドワードは、彼女達の表情や耳打ちまでもを粒さに観察して考察する。
やはりと言うべきか、彼が注視しているアスペルマイヤーは、他の上層部とは違い一切表情を動かさない。
そればかりか、たまにこちら側に視線を向けて表情や仕草を観察していたりもする。
(こちらの意図を探っているのか?宗谷室長といい、やりにくい事だ……)
エドワードが眉を潜めたと同時に博士の説明が終わり、照明が明るくなりかけた時、アスペルマイヤーが動いた。
(しまっ――!)
「経緯は理解した。一先ずは超兵器の話を抜きにして、諸君らが今後どうしたいかをお聞かせ願えないか?」
「――っ!」
彼女の言葉に全員が目を丸くし、エドワードは内心で舌打ちをする。
ブルーマーメイドのトップたる程の人間が超兵器の危険性を理解していない訳では無いだろう。
だとするなら、議題の核心は必然的に異世界艦隊の身の振り方になる。
具体的に可能性は2つだ。
1つ目は、兵器技術の提供とその影響についてだろう。
超兵器を打倒するには、異世界艦隊だけではなく、ある一定の装備を備えたこの世界の艦艇にも協力を仰ぐ必要があった。
それらの兵装は即ち、打倒後の世界においては最強の兵器となりうる。
それを独占的にブルーマーメイドが持つ意味は大きい。
2つ目は異世界艦隊自身が仮に元の世界に帰還出来ないと仮定して、彼等の身柄をどうするかの案件だろう。
正直、強力な兵器も使いこなせなければ意味を成さない。
それらを熟知している彼等の存在は、ある意味世界各国の興味を引いている事は言うまでもない。
ブルーマーメイドは、彼等の知識ごと身柄を押さえて実権を握らなければならない訳だ。
話題についてはこんなものだろう。
しかしながらエドワードは焦りを抱いていた。
本来ならば、説明を終えた流れで彼がブルーマーメイドの立ち位置を問い、それに対するこちら側の意図を主張するつもりだった。
しかし――
「ご覧いただいた通り、超兵器の力は絶大です。さらに北極海の超兵器が起動すれば、そもそもこの星の生物は死滅するでしょう」
「……」
「我々の最優先事項は、全ての超兵器を打倒してこの世界の人民を存続させる事にあります。勿論、ご協力を頂くのに際してある程度の技術提供は致しましょう。ですが、それらの技術は防衛に特化していたとしても支配に特化したものではありませんし、不用意な改良を施されぬよう蒼き鋼と協力して開発を行っております。」
「………」
「尚、我々は断固として超兵器打倒後の世界へ駐留する事を良しとしてはおりません。我々をここに飛ばした技術が存在している以上、帰還の道もまた存在しうると考えられます。よって我々は超兵器打倒後の世界に関しては、何ら干渉するつもりはございません」
エドワードの言――
これは言わば、譲れぬ主張と言うものだ。
国家間交渉においても、まずは双方の明確な立場を明らかにするのは必定である。
だが知っての通り、アスペルマイヤーの第一声が¨異世界側の立場を明確にする質問¨であった。
交渉に際して、後手に回って相手の意見を受けつつ反撃するのは基本中の基本であるが、奇しくもアスペルマイヤーが奇襲的タイミングでこちらに立場の要求をした事で、相手に考える隙を与えてしまったのだ。
仮にだ――
ブルーマーメイド本部が異世界艦隊の戦力吸収による世界実権の掌握が目的だと仮定した場合、先のエドワードの主張は真っ向からこれに反する事になる。
引いては世界の海を守護し、軍拡競争を抑制してきた正義の組織に反抗する理由として全世界に認知されかねず、危険分子として身柄の拘束と兵器の奪取が現実味を帯びてしまい、結果としてブルーマーメイドがオーバーテクノロジーを用いて世界の実権を握る構図が完成してまうのだ。
また逆に、エドワードがブルーマーメイド側のその主張を先に引き出せていた場合。
ブルーマーメイドがある種、世界を支配しかねない構図にNoを突き付ける事で、こちら側の主張が正義を帯びてくる。
同じ台詞の後か先かでこの様に結果が変わってしまうのだ。
エドワードはその恐ろしさを外交を通して痛いほど理解していた。
していたと言うのに――
「………」
この世界にブルーマーメイド名目で活動している負い目とでも言うべきか、照明が切り替わるタイミングでの異世界側の発言は些か無作法と言えよう。
アスペルマイヤーはそれを見事に突いて見せたわけだ。
「異議を申し立てる様で申し訳ないが――」
(来た……)
アスペルマイヤーの周囲に座っている上層部が動いたのを見て、エドワードは身構える。
「この映像や被害現場を見聞する限りでは、防衛特化の兵装では些か不十分に思えるが?」
「そうです!蒼き鋼の――とまでは行かなくとも、やはりウィルキアの攻撃技術は必須事項と言わざるを得ない!」
「もしそれが超兵器からもたらされた技術の一端であるとするなら、超兵器技術に対する情報の開示も必須!」
「帰還の道への具体的な根拠を説明出来ない以上、彼等の存在は危険なのでは?」
「異世界からもたらされた技術や彼等の身柄は、ブルーマーメイドで占有し管理すべきでしょう!」
彼女達が口にする言葉に異世界の彼等だけでなく、ブルーマーメイドの面々も苦い表情を浮かべた。
交渉に於いては完全に敗北――
誰しもがそう思った。
「本部長!ご決断を!」
「そうね。では申し上げておくわ」
アスペルマイヤーは、一呼吸を置いてその鋭い眼差しをエドワードへと向ける。
「我々ブルーマーメイドは―――」
全員が固唾を飲むのが聞こえる程の静寂
「異世界艦隊を我らに受け入れ、超兵器討伐に全力を傾ける事とする」
「――!」
その場にいる全員が驚愕した。
「勿論、各国への体面上はブルーマーメイドに主権があることは説明しよう。だが、飽くまでそれは超兵器打倒と異世界艦隊の帰還までの話だ。我がブルーマーメイドは、過剰戦力となりうる技術の拡散は決して望まない。故に、超兵器の打倒と異世界艦隊への帰還をもって過剰な軍事技術の完全なる破棄を目指すものとする」
彼女の言葉は、異世界組の不安を払拭するのには十分であった。
つまり、彼等が帰還するまでのバックアップを全面的に得られる訳である。
しかし、上層部がその話を納得する訳などない。
「本部長!なにをっ!ブルーマーメイドが世界を抑制する絶好の好機なのですよ!?」
「超兵器無きあと、彼等の軍事技術は危険です!我らが彼等の身柄を含めて管理しなければなりません!」
エドワードの考えた通りに場は荒れた。
しかし、紛糾する上層部に反してアスペルマイヤーの表情は揺るがない。
「確かに帰還の件に関しては何ら確約も確証もない。だが、彼等とて人間だ。食わずしては生きられない。故に、仮に帰還が叶わなかったとしても、彼等の生活を保証する限り、彼等はブルーマーメイドの監視の下で武力を公使すること無く有続ける。他国への引き渡しや交戦するよりも現実的だ」
「しかしっ!」
「まだ納得が行かないと?現状をよく見て、代案が有るなら示して頂きたい」
「くっ――!」
有無を言わせぬ彼女に上層部達は歯噛みをする。
+ + +
「中は盛り上がっているようだな」
「その様ですね……」
外で待機しているフリッツと江田は、ガラス張りの窓から海を見つめていた。
「はぁ……それにしても暇なものだ。一刻を争う事態に纏まれないのはどの世界でも一緒だな。一服でもしたくなる」
フリッツが、タバコを取り出して口にくわえた。
「こ、コホン――!」
「ん?」
会議室の扉の前にいた二人のブルーマーメイド隊員が咳払いをする。
「チッ!禁煙ってやつか。いつ死ぬかも解らないのに健康に気を付けろとは笑えない冗談だ」
「仕方ありませんよ。この世界では平和が続いていました。長生きして人生を楽しむ為にそうなったのでしょうから。私には羨ましい限りです」
「そう言えば江田。お前はタバコを吸っていたが止めたのか?特攻隊の¨トクテン¨って奴だったんだろ?」
「あっ、いやぁ……タバコはやめてって言われてしまいまして……」
「これだから所帯持ちって奴は……」
「なっ!私達はまだ結婚は――!」
「まぁいい。それよりも¨例の件¨だが、日本のブルーマーメイドから連絡があった。今夜仕掛けるぞ」
「このタイミングでですか?」
「このタイミングだからだ。この話が纏まるか否かに関わらず、バルト海には早急に行かなきゃならないからな。憂いは残すべきじゃ無いとの司令の判断だ。勿論、お前のトコの艦長も了解している」
「そうですか。¨辛い結末¨になりそうですね……」
「やむを得んだろう。超兵器の次に危険なのは、味方の中に潜んでいる敵なのだからな」
「でも、やっぱりやりきれませんよ」
「そう言う所がまだお子様だなお前は――待て!」
フリッツの表情から一気に感情が消えたのを悟った江田は緊張の糸を再び張った。
左右に延びる廊下の先から複数のブルーマーメイドの隊員がこちらに向かってくる。
「やはり来たな……江田っ!大戦艦ヒュウガに至急合図を送れ!」
「解りました!」
「全く……後から上手く¨暴れた言い訳¨を考えてくれたら良いがな」
フリッツは苛立ちを込めた表情を浮かべて彼女達に相対した。
+ + +
アスペルマイヤーは話を早急に終わらせるつもりであった。
「あなた方に言い分が無ければ、これで会議を終了して異世界艦隊への物資補給を開始して――」
「いいえ本部長!いや¨元¨本部長!あなたの命には従えません!」
「どういう事かしら?」
「こう言う事です!」
アスペルマイヤーの額には銃口が向けられていた。
「説明を聞かせて貰いましょうか?」
「貴女は甘いのです!超絶なる兵器による抑止こそ世界の安定には必要。対話などと言う非確定的な要素などにいちいち振り回される心配もない!」
「本気で言っているの?」
「本気ですとも!貴女もご存知でしょう!?各国が既に超兵器の打倒でなく¨鹵獲¨に動いている事にっ!」
「なっ!」
異世界艦隊の面々に衝撃が走った。
「米中露の3国だけの話ではない。今や彼らに同調した国々がこぞって資金を調達して支援を行っている。軍備を増強する為にっ!本部長!綺麗事では最早済まされないのです!手を打たねば、世界に超兵器技術の拡散を許しかねないのですよ!?」
「成る程、それで手始めに異世界艦隊の技術を奪取し、バルト海に展開する総旗艦直衞艦を鹵獲、それを元手に北極海に向かうと言ったところね?確かに軍備を増強するよりかは現実味がある」
「そこまで解っていて何故!?」
「解らないの?あなた方は既に超兵器の術中にハマっているのだと」
「な、何をッ!」
「列強……つまり米露が我々同様に異世界艦隊との接触に積極的でない理由よ」
「まっ、まさかっ!」
「情報部によれば、米露の資金や物資の流れに不自然な所がある。そのどれもが超兵器が世界同時多発テロを行ってから。その意味は解るでしょう?彼らは異世界艦隊と超兵器の戦闘に目を取られている隙に超兵器技術の一部、若しくは¨超兵器その物を所持¨している可能性が高いと私は見ている」
「!!?」
その場にいる誰しもが驚愕すると同時に、シュルツはある種の確信と焦りを滲ませる。
(そうか、恐らくはハワイの後には超兵器から米国に何らかの接触があった。だから大西洋で接触して来なかったのかっ!だがそれよりも……)
彼の焦りの理由は勿論、技術の拡散である。
当所の読みでは、各国は戦力差が歴然とした超兵器相手に萎縮し、各国に留まるだろうと見ていた。
牽いては、異世界艦隊が超兵器を撃滅する事と彼等自身の技術を秘匿とする事で余計な超技術との接触を抑え、新たな戦闘の火種をも抑制しようと考えていた訳だが、彼等が既に超兵器を所持している可能性があるとなれば話は変わってくる。
確立され、脳に蓄積された理論は、データや紙媒体とは異なり削除や焼却は不可能であり、技術拡散を止めるのが困難であるからだ。
ギリッ!っとシュルツが歯を食い縛るなか、幹部の女性は錯乱したかのようにアスペルマイヤーへと食い下がる。
「解っていて何もしなかったのですか!?貴女はそれでも――」
「人魚よ」
「――っ!」
彼女は淡々と言い放つ。
「私達は海の平和を護ること。武力で武力を押さえ付ける事ではないわ」
「何が違うと言うのです!?」
「現実に武力鎮圧を行えば、それは同時に武力大きさイコール支配と言う構図を証明してしまう事になるのよ。我々は最後まで、超兵器に劣っていてもそれに挑み、そして生き残らねばならないの」
「理想を並べて実現できる事じゃない!」
「では覆してみなさい!」
「!!?」
アスペルマイヤーは銃口に額を近付け、彼女を鋭い目で見詰めた。
「彼等がっ!異世界艦隊が常識を遥かに超える超兵器相手に立ち向かい!護り!勝利している事実を覆してみなさいと言っているのよっ!」
「くっ……!」
何も言い返せなかった。
現実に起き、観測してしまった事象を覆す事など出来はしない。
それは、アスペルマイヤーが言った通り、未来で武力鎮圧を強行した際に起きる世論の同行にも直結しうるものでもあった。
だが――
「もう、引けないのですよ。私は引き金に指をかけてしまった……だからっ!」
涙を浮かべながら決意の表情を浮かべる彼女に対し、アスペルマイヤーは視線をそらさぬまま口を開いた。
「異世界艦隊の諸君!………許可する!」
パァンッ!と乾いた音が部屋に響く。
「………!」
驚いた表情を見せたのは、発砲した側の女性幹部であった。
なぜなら、銃口から飛び出た銃弾は彼女の額の手前で空中に浮くかのように静止しているのだから。
そして、その要因は直ぐに見当がつく。
「異世界艦隊!貴様らっ!この様な事をしてっ!これはブルーマーメイド……いや、世界に対する重大なテロ行為だぞ!」
「何を言ってのですか?確かに私達は、ブルーマーメイドの長から¨許可する¨と言質を頂きました」
エドワードの返答に女性幹部が目を見開く。
「馬鹿なっ!そんな話は聞いていない!貴様らがでっち上げた狂言だろう!」
「いいや、私は異世界艦隊に世界を侵略しない事と、超兵器討伐への協力。そしてその自衛手段の供与とオーバーテクノロジー拡散の防止を確約した上で自衛の権限を与える約束をしていたのよ」
「なっ……!」
「勿論、真意は話を聞かねばならないとは思っていたのだけれど、超兵器技術拡散の可能性を知った彼らの反応、そして戦闘映像を包み隠さず報告した事を加味して許可を出したのよ」
これは嘘だ。
彼女が言った通り、その場限りの出任せに過ぎない。
しかしだ。
それを現実にしてしまう力を言葉が秘めている事を、この場にいる者は良く理解していた。
アスペルマイヤーが最後に放った台詞に繋げる為、【許可する】と言う漠然とした回答の中から、シュルツや群像、そしてエドワードが同様の答えを導きだして即座に実行に移す。
危害を加えず、飽くまでも自身の自衛行為と、指示母体であるブルーマーメイドの長を護るために、メンタルモデル達にクラインフィールドの展開を指示し、銃弾を止める。
そして、国家を持たない異世界の彼等が¨勝手¨に行った自衛行為を、あたかもアスペルマイヤーが異世界艦隊を¨世界の法律の範囲にいること認めて¨の許可で行ったかのような返答を切り返し、アスペルマイヤー自身がそれに後付けで理由を付け足した。
この一連のやり取りには数秒も掛かってはいない。
生死を決める判断を瞬時に下さねばならない状況におかれた彼等の経験と、海を護る為に他国間との話し合いを繰り返す内に磨かれたアスペルマイヤーの話術が生んだ軌跡とも言えよう。
だが、相手が簡単に引き下がるのであれば苦労は無い。
「まだだっ!これからここに制圧部隊が来――」
「いや、来ませんよ」
「なにっ!?」
彼女が動揺したと同時に、会議室のドアが開け放たれ、江田とフリッツが入ってくる。
「フリッツ少尉、報告を」
「はっ!相手の銃器は大戦艦ヒュウガにより無力化。こちらは鏑木医務長より供与された小型麻酔銃により現場を制圧。死傷者有りません!」
「よしっ!」
シュルツは大きく頷き、アスペルマイヤーの方へ顔を向ける。
「ありがとう。感謝するわ」
「いえ、ご意向に従ったまでです」
その様なやり取りの中、女性幹部は床に膝を付いて項垂れていた。
「そんな……私はっ!」
「世界は今、恐らく貴女の様に考える事が最善だと思うのでしょうね。でも、諦めてはいけない。人間のような過ぎた力を持つ者は¨爪と牙を以て制する¨事を肯定してはいけないのよ。だから我々人魚がいる」
「…………」
「連れて行きなさい!彼女達の処遇は、バルト海での戦いの後に決定する!」
「!!?」
江田と共に入ってきた見張りの隊員に向かって放った言葉に、女性幹部は目を丸くした。
「何故です!何故直ぐに処分を下さないのですか!」
「今回の事が明るみに出たら、間違いなく世界の価値観は最悪の方向に変わる。だから、現状で貴女達を罪に問うことはない」
「ば、バカなっ!そんな甘い事で、世界を護れるとお思いですかっ!」
「思っていないわ」
「え?」
思わぬ答えに女性幹部の表情が固まる。
「最終的にどうすべきかを決定するのは人々自身よ。でもね、安易に気持ちのまま決定すれば最後の瞬間に必ず後悔する。私はそんなヒトの心を幾度となく見てきた。だからこそ、少しでも後悔の無い道を選ぶために私達は海を往くのよ」
「貴女は、まさかっ――!」
「ええ。私もバルト海へ行くわ」
「そんな!貴女自ら!?もし何かあれば――」
「その時が来れば……お願い。でも、もし私達に勝利があったなら信じなさい。崩壊を招く力を持たずとも護れると言う事を」
「………」
彼女は項垂れながら連行されていった。
「さて……」
アスペルマイヤーは、一同に身体を向ける。
「今後の方針を決めましょうか」
「そうですね。ではブルーマーメイド連合が所有している最新のバルト海の情報を提供していただけますか?」
「そうね……」
エドワードからの言葉に1つ間を置いた彼女はモニターに情報を写した。
「これは……」
モニターに写し出された光景にウィルキア陣営の表情が一気に曇る。
「超兵器カテゴリーA【超巨大水上要塞ヘル・アーチェ】まさかここに居たとは……」
「やはりそうなのね?形状が大部異なるから違うと思ったのだけれど……これは数日前に突如現れたのよ。あなた方から詳細を説明して頂けるかしら?」
「解りました。博士!」
「はい、此方をご覧ください」
モニターがヘル・アーチェに関する画面へと切り替わる。
▽ ▽ ▽
超兵器水上要塞ヘル・アーチェ
全高500mに達するレーザー主砲塔を海上油田施設に偽装した航空甲板支柱4基によって囲んだ海上要塞である。
防御
対象超兵器の超兵器機関出力は主に防御に割り振られており、強力な防御重力場を展開している為、この防御を突破する事が勝機に繋がる。
兵装
航空甲板からの大量の航空機
各種AGS多数
多目的ミサイル発射機多数
太陽光凝集砲
補助兵装
防御重力場
下降気流発生装置
浮遊式太陽光偏光鏡
備考
太陽光凝集砲は本体より射出される鏡によってレーザー主砲ヘッドの後頭部に集められ、エネルギーの一定量蓄積を以て発射される。
多角回頭によって太陽光凝集砲には死角は存在しない。
鏡が無くとも主砲発射は可能であるが、エネルギーチャージに時間を要する。
▽ ▽ ▽
一通り説明を聞いたアスペルマイヤーは視線を博士へと向ける。
「ふむ、詳細は把握したわ。この超兵器は性質上¨日中のみ¨の運用になっているわね。それと我々ブルーマーメイドが運用している海上要塞艦とは違って動けない。そこが弱点なのでしょう?」
「仰る通りです。夜襲をかけるのであれば、相手は巨大な的でしかないのですが、今回は少し話が違うようですね」
「やはり形状が変わっているのが関係しているのかしら?」
「はい」
実の所、ヘル・アーチェ本体の形は変わってはいない。
イメージし易い形状を例えるなら、扇風機であろう。
塔の部分は縦のメイシャフト、そして先端には送風装置の代わりに、あらゆる角度に回頭可能な円筒状の太陽光凝集装置と巨大なレーザー発射口が一体になった物が乗っている。
その頭がちな形状故に、倒伏を防ぐ事と防御重力場を発生させて耐久性を上昇させる意味合いで四方に航空甲板を備えた補助支柱が存在してるのだが、今回はこの部分に変更があった訳だ。
かつてシュルツがサハリンの北方にて対峙した際には、支柱は露出しており、それらを死守する為の帝国艦隊が多数存在していた。
だが今回は、巨大な航空甲板から下に、恐らく海底まで延びているであろうドーム状の障壁が覆っており、直接的に支柱を叩く事が困難になっている。
しかも最悪な事に――
「テュランヌスはこの¨ドームの中¨に隠れている。これでは直接攻撃を与えるのは難しいでしょう。ここに敵航空戦力が加わるとなると……」
「厄介ね」
「待ってください!」
「どうしたの?岬明乃はれかぜ艦長」
アスペルマイヤーの鋭い視線が明乃に向けられ、彼女は少し気圧されながらも口を開く。
「は、はい!相手の旗艦も要塞も動けないのであれば、超重力砲を直接撃ち込めば良いのではと――」
「不可能では無いでしょうが、難しいでしょう」
「千早艦長……」
群像は明乃に向かって頷く。
「敵は重力兵器によって超重力砲を相殺出来る事を既に見抜いている。勿論、発射の際に生じる隙についても」
「あ………」
「お分かり頂けたと思いますが、航空戦力主体の相手――しかも、重力兵器が搭載可能な兵器が投入されていた場合は迂闊には使用できません」
「そうですか……」
落ち込む明乃をよそに、真霜は6年前の海賊による【海上要塞奪取事件】の事を思い返していた。
海上にて物資の強奪や違法な取引にて金を巻き上げていた海賊連合が、廃棄予定であったブルーマーメイドの海上要塞艦と食料危機打開の名目で海上でもある程度の農耕を可能にした海上プラントを奪取した事件である。
国家を相手に襲撃を企てた海賊は、洋上に拠点を構築すべく、要塞能力と食料の自活能力を合わせ持たせる為に計画したテロであったが、当時の明乃達学生とブルーマーメイドの連携によって鎮圧された。
しかし、要塞攻略は容易ではなく大和型4隻の主砲をもってしても陥落には至らず、結果として小型艇の出入口を大和型の主砲で破壊して穴を開け、2代目晴風が内部に侵入して破壊工作を行う作戦にて事態を打開した訳だ。
そこで真霜は気付いた。
「超兵器が内部にいると言う事は、¨超兵器用の出入口¨が存在している事でもあるんじゃないかしら?そこを叩けば――」
「確かに……装甲が薄い可能性は有り得ます。内部に侵入すれば、巨体を持つ超兵器は身動きが取れない」
「死角の無いレーザー主砲も、旗艦に向けては撃たないと筈。これなら――」
「楽観は早いですよ」
シュルツの言葉に、場が静まり返る。
「艦隊旗艦であるテュランヌスは、3隻の総旗艦直衛艦の内兵器が最も貧弱です。搭載兵器の種を見ても、我々が今まで戦った艦艇の中にも強力だった者いる。では、なぜ奴が総旗艦を守護する3隻に加わっているのか」
「航空戦力ですね」
――ええ
明乃の言葉にシュルツは頷く。
「暴君を意味する名前とは裏腹に、指揮能力は非常に高く、航空機も最新鋭の者が多い、加えてその巨大さ故に、¨航空機型超兵器¨を格納している可能性もある」
「成る程、空を埋め尽くす航空機と航空機型超兵器、当の旗艦は指揮に徹して城塞の中、まさに王と言う訳ね。それで?私達ブルーマーメイドに勝機はあるのかしら?」
アスペルマイヤーの問いに博士が前へ進み出る。
「これ等の情報などから、現状のブルーマーメイドに城塞突破は不可能でしょう。ですから欧州のブルーマーメイド艦隊には敵航空機の排除を優先して頂きます。その為には、兵装の一部変更作業および、回避能力向上の改装を時間の許す限り行います」
「とても現実的とは思えないわね。キールにあなた方が来た以上、敵も待ってはくれないわよ?」
「お任せ下さい」
「ガルトナー司令……」
ガルトナーにはこの疑問が来る事は想定済みだったらしい。
最も、異世界艦隊のみでの戦闘には限りがある以上、いずれはこの世界の艦艇にテコ入れをせざるを得なかった。
故に、日本を出発後からスキズブラズニルのドックをヒュウガの協力によって改装を施し、最低限の装備を高速で装着出来る様にしていたのだ。
「スキズブラズニルの全ての区画を解放しますので、即時ブルーマーメイド艦隊を受け入れられます」
「解ったわ。詳しい説明は更に詰めて行くとして、早速取り掛かって頂戴。改装が終了した艦艇から習熟運転を開始します」
――了解!
一同は一斉に動き始めた。
欧州解放に向けた動きが一気に加速して行く。
+ + +
その夕刻
スキズブラズニルで改装作業が急ピッチで進む中、ブリーフィングルームでは険しい表情のシュルツと一人の男が向かい合う。
「水戸殿。今夜なのですね?」
水戸と言われたシュルツと差ほど歳も代わらない紺色のスーツを着た東洋風の優男の人物は、淡々とした表情で口を開く。
「ええ、佐々井君とハイネマン君の事前調査と、横浜海洋学校長 宗谷真雪女史と宗谷真霜女史の通信を傍受し、大戦艦ヒュウガにブルーマーメイドの機密情報を調査を依頼した結果を踏まえ、バルト海での戦いの前に憂いを払いたいであろうガルトナー司令の意図を組んで決意致しました」
「しかし私は、騒ぎや混乱は望んではいませんよ」
厳しい表情のシュルツにたいしても、水戸は動じない。
「ご心配には及びません。欧州ブルーマーメイドはレイガナーズを中心に習熟運転と改装に気を取られており、はれかぜ 月黄泉 グラーフツェッペリン 401は海上にて見張りの任についております。シュルツ艦長には所定の時間にフンディンを率いてはれかぜに接近して頂きたい」
「………」
「何かご不満がおありですか?」
「岬艦長が心配です。彼女はソレを何より恐れている……賭けの要素が多い作戦を承認するわけには行きません」
「許可は降りています。司令と宗谷室長の命を否定なさるおつもりか?」
「くっ――!」
「………」
水戸は初めて会話に間を開けた。
「シュルツ艦長。これが我々軍属の運命です。大義の為にご決断下さい」
「【大義】?あなたの最も嫌いな言葉でしょう?本心を語ってください!
「 ¨元¨中将ですよシュルツ艦長。でもそうですね。私にしてはらしくはない……」
水戸は表情を崩し、少し困った様に笑うと、ポケットからタバコを取り出して火を付けた。
「ここは禁煙ですよ」
「まぁ、よいでは有りませんか。携帯灰皿持っていますし、それより……」
彼は一度会話に間を置くように深く煙を吸い込み、目を細めて吐き出す。
「そうですね、今回は不確定要素が多い、緻密な調査と部下の¨口達¨によって分析と作戦立案を行う私としては些かお粗末でしょう。ただ……」
「ただ?」
「ただ一連の超兵器の事案は新たな段階に入りつつあります。最早、人間が予想しうる事象を超越しています。でも賭けてみたくなったのです」
「何をかけるのです?」
「ヒト種が微々に残した¨人間性¨ですよ。大戦艦ハルナが好きそうな言葉を借りるなら……【絆】でしょうかね」
「絆、ですか……。本当に成功しますか?」
「【信じてくれ】としか言えないのは嘘ではありません」
「そうですか……中将、タバコを一本頂けますか?」
「お止めになったのでは?」
「ええ。でももし作戦を成功させる事ができたなら、絆の力が証明出来たのならその時は……」
「ご協力頂けると受け取ります」
「はい」
タバコを一本受け取ったシュルツはブリーフィングルームの窓から見えるはれかぜを見つめた。
(どうか、どうか無事に明日を……いや、今は言うまい)
キールの夜は慌ただしく、しかし静かにふけていった。
お付き合いありがとうございます
この話を作るのになぜか苦戦しました。
やっぱり時事ネタとか社会情勢を突っ込んで行くスタンスは難解だと改めて思いました。
因みに、江田が未成年で煙草を吸ったり煙草に関する内容が複数出てきましたが、あくまでシュルツ達の時代はWW2時代なので、煙草はかなり高級な嗜好品だという事と受け取って頂ければ幸いです。
特に特攻隊出身の江田でありますが、史実にて特攻隊のメリットとして、軍隊なのに髪が伸ばせて、女性にモテて、煙草が吸えることだったらしいです。
だだ、大戦末期はそんなメリットなど消し飛ぶくらい若い方々は、この世と別れなければならない不安に駆られ、それを名誉だと刷り込まれて散って逝きました。
フリッツのこんな時に健康かよと言うセリフと、大切な人とずっと居たいから煙草を辞めたんだろうと推察される江田の心境の変化なども時代背景やストーリーと絡めて楽しんで頂けたなら幸いです
とらふり!
明乃
『シロちゃああん!』
真白
『岬……さん!』
もえか
「あれ?何で劇場版のラストシーンを見ているの?」
真白
「な、知名さん!?そ、それは2章の後半なのに、最近艦長の出番が少ないなと思って……それで」
もえか
「ふぅん……」
真白
「なんでそんなに睨むんだ!あっ、さては妬んでいるな?私と艦長が劇場版でベッドシーンと抱擁をした事が妬ましいんだな!?そう!私は艦の母、艦長が父!私達は夫婦も同然だ!あなたは確か艦のお姉さんだったか?小姑だ!夫婦の間に小姑とは野暮だぞ!」
もえか
「………」
真白
「どうした?や、やめろプレーヤーからディスクを抜くんじゃない!ん?別なディスクを……まさか!」
明乃
『モカちゃああん!』
もえか
『ミケちゃん!』
明乃
『本当にモカちゃんだ……』
もえか
『無茶するんだから……』
もえか
「フフッ……」
真白
「やめろぉおお!最終回のシーンを流すのはやめろぉおお!見たくない!夫が他の女に寝取られるシーンなんて見たくない!」
もえか
「あぁもう、ミケちゃんはいつまで経っても甘えん坊さんなんだから、こうして甘えさせてあげるのも【本妻】の勤めだよ宗谷さん」
真白
「ぐぅ……」
もえか&真白
「……」
真白
「不毛だ」
もえか
「不毛ね」
真白
「はぁ……本格的なバトル回になる前に艦長成分を補給しますか?」
もえか
「賛成よ。じゃあミケちゃんの部屋に行っちゃいましょう」
ガチャン!
真白
「艦長いらっしゃいますか?じじっ、実は不安なので今日は一緒に、ねねっ寝ましょうかなと――」
もえか
「ミ、ミケちゃん!きっと色んな事で不安だよね。昔みたいに一緒に寝よ――」
キリクマ
「ん?なんだ?」
真白&もえか
「………」
キリシマ
「ち、違うんだ!ミカンにアケノは甘いものが好きだから部屋に行けば一杯お菓子が食べられると聞いて来たわけでは――」
真白&もえか
「ガルルル……!」
キリシマ
「や、や、やめろぉおお!!」