トライアングル・フリート   作:アンギュラ

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大変長らくお待たせ致しました。


超兵器戦続編です。


それではどうぞ


最悪を吐き出す二つの火口  VS 超兵器

     + + +

 

 

「…………。」

 

 

もえかは、直前のブリーフィングの場面を思い返していた。

 

 

 

   ▽ ▽ ▽

 

 

 

メアリースチュアートの艦橋には、もえかや真冬を含めた各艦の士官クラスが集まっている。

 

 

「恐らくですが、敵の艦隊旗艦はヨトゥンヘイムの可能性が高いでしょう。」

 

 

 

「何故だ?」

 

 

 

「ムスペルヘイムは、敵の総旗艦を守護する要です。となると、必然的に北極海へ急行出来る位置にいるのが自然となります。大西洋に現れた敵の旗艦がニブルヘイムだった事と、北極海へのアクセスを考えるならこちらの配置はヨトゥンヘイムになると読むべきです。」

 

 

 

 

「実際、ヨトゥンヘイムとはどの様な艦なのですか?」

 

 

 

もえかの問いにヴェルナーの表情が曇る。

 

 

 

 

「ヨトゥンヘイムと言うよりも、中央の戦艦部…つまり超兵器ナハトシュトラールのデータが存在すると言う事なのですが、奴は他の超兵器とは少し違うのです。」

 

 

 

「違う…とは?」

 

 

 

「はい。超兵器にはカテゴリーの他に幾つかのランクがあります。【実働艦隊旗艦】【巡航艦隊旗艦】【方面統括旗艦】【総旗艦直衛艦】【総旗艦】。ナハトシュトラールは、方面統括艦に当たります。」

 

 

 

 

「方面統括旗艦?」

 

 

 

 

「ええ。当該地域に展開する艦隊並びに実働超兵器や巡航艦隊旗艦などを指揮し、それらで対処できない事案が発生した場合に行動する艦艇です。」

 

 

 

 

「回りくどいな…もっとハッキリ言いやがれ。」

 

 

 

ハァ…。と溜め息を付きつつヴェルナーは口を開く。

 

 

 

 

「つまりは、総旗艦直衛艦並の出力を備えた強敵だと言う事です。」

 

 

 

「あ、あのムスペルヘイムと同程度の出力を!?でも、ムスペルヘイム程の兵装は装備されていないんですよね?」

 

 

 

「勿論そうですが、それ故に厄介とも言えます。総旗艦や総旗艦直衛艦はその兵装の強さ故に、破壊に特化していても、¨侵略¨に特化していないと言う事なのです。」

 

 

 

「侵略…ですか?」

 

 

 

「そうです。ヴァイセンベルガーがどこまで超兵器からの精神干渉を受けていたかは解りません。しかし、少なくとも初期段階では超兵器を侵略や領土拡大に利用しようと考えていたことは確かでしょう。」

 

 

 

「成る程…。敵地を利用する為には、道路や建物等が残っていた方が都合が良い。拠点を構築するための資材や資金、そして人手を節約できるしな。大陸ごと吹き飛ばす兵器や都市を消し飛ばす兵器を使用する奴等には不向きだ。」

 

 

 

 

「それ故に、兵装は通常兵器の強化延長版と高出力光学兵器が主体となる訳ですが、大型で場所と重量の嵩む破滅兵器を搭載しない事で、他の兵装の搭載量や弾薬量、そして防御が極めて厚く成ります。現在、我々が把握している統括旗艦はナハトシュトラールを含めて五隻ですね。その内一隻は、バミューダに展開する超兵器艦隊の旗艦であるニブルヘイム。いや、その祖体となった超兵器、元北欧方面統括旗艦グロースシュトラールと言うべきでしょうか。」

 

 

 

「我々に勝算はあるんでしょうか?」

 

 

 

「………。」

 

 

 

ヴェルナーは少しの間口を紡ぐ。

 

 

 

「正直、解りません…。ブラウン博士の分析によれば、これら二隻の超兵器は総旗艦ヴォルケンクラッツァーを元に建造されている可能性があるとの事でした。」

 

 

 

「ヴォル…そんな!」

 

 

 

「正確にはヴォルケンクラッツァーの廉価版と考えるべきでしょう。超兵器建造の成り立ちは、未だに不明な点が多いですが、アレ程の艦を建造するのは容易なものではなかったのでしょう。」

 

 

 

「それでも、敵の総旗艦を元にして造られているなら私達に勝ち目は…。」

 

 

 

「だからこそ勝たなきゃならねぇ…だろ?」

 

 

 

「真冬艦長…。」

 

 

真冬の声に皆の視線が集中する。

 

 

 

「奴が敵の総旗艦に似ているからこそ、ここで奴を沈められなきゃ俺達はヴォルケンクラッツァーに挑む資格すらねぇ。総旗艦直衛艦だっているんだ。ここで勝てなきゃ…この世界に未来は無ぇ。」

 

 

 

純然たる事実が突き付けられ辺りが沈黙する。

 

 

しかし、彼等の目は死んではいなかった。

 

 

 

 

「ええ…その通りです。我がウィルキア国旗に誓って、暴虐の限りを尽くす超兵器を必ず止めます!」

 

 

「わ、私も!これ以上罪もない人達が無慈悲に死んで行くのを見過ごせません!だって…家族や大切な人と永遠に別れるのは、とても辛い事だから…。」

 

 

 

「知名…。」

 

 

 

「もうこれ以上は一人だって失わせたくない!その為に私は、ブルーマーメイドになったんですから!」

 

 

 

「そうか…。なら俺達は進むしかねぇ。」

 

 

 

「ええ…。必ず、大西洋で皆さんと合流しましょう。」

 

 

 

一同は決意を新たにする。

 

 

 

   ▽ ▽ ▽

 

 

 

(ヨトゥンヘイムを沈めるために、ミケちゃん達にもう一度会うために、超兵器尾張…先ずはアレを叩く!)

 

 

 

 

こうした状況を繰り返し経験する度、彼女達の心の中にある死は非常に身近なものに変化し、まるでそれが当然の様に麻痺してしまう。

 

 

故にもえかはその都度思い直すのだ。

 

 

死は大切な者との永遠の別れを指す。

 

 

再び会話を交わす事も、笑い合うことも決して叶わない。

 

 

それは【生者にのみ許された特権】だから。

 

 

母を唐突に失ったもえかにはそれが痛い程理解できた。

 

 

 

 

 

もう一度【お帰り】と言いたかった…。

 

 

もう一度自分に【笑顔】を向けて欲しかった…。

 

 

もっと長い時間、【手を繋いで】歩きたかった…。

 

 

将来の話、恋の話。時に相談し、時にケンカもして…。

 

 

考え始めればキリは無いのだろう。

だが、それらは決して実現することは無いのだ。

 

 

 

永遠に…。

 

 

 

 

彼女は自身をとても臆病な存在であると認識している。しかし、その事に恥じらいは無い。

 

 

 

自らが死ぬ事で、遺された者達の心の痛みを何より理解しているからだ。

 

 

それが今までの熾烈な戦いで、彼女を生者足らしめているのかもしれなかった。

 

 

 

海上での戦いの轟音が、海中にまで響き渡って来る。

 

 

 

 

もえかは、誰一人としてかける事無くこの戦場を終える決意を新たにするのであった。

 

 

 

 

 

 

   + + +

 

 

 

 

 

「遅かったな…キリシマ。」

 

 

 

『悪かったな!お前がナノマテリアルを使ったから、後から見つけるに苦労したんだよ!それに…やられた場所からも遠かったし。』

 

 

 

 

ナノマテリアルの供給が乏しい中で、何故彼女達が船体を復旧できたのか不思議に思うかもしれない。

 

 

 

それらの確保は、ハルナが¨セイラン¨で地中海に急派されることが確定した時点で課題となっていた。

 

 

そこでヒュウガは、火山の近くにナノマテリアルの鉱床が比較的存在しやすい点を見込み、キリシマに調査を指示していた。

 

 

 

その場所とは、イタリア南西部にあるヴェスビオ火山周辺、若しくはその沿岸部の海底である。

 

 

 

スエズ突破の最中に、キリシマは401から借りていた2機目のセイランを遠隔操作し、偵察を兼ねてヴェスビオ火山周辺を調査して、見事ナノマテリアルの鉱脈を発見することに成功。

 

 

その位置情報をハルナへと送信した。

 

 

 

一報を受け取ったハルナは、バミューダでの戦いの最中であり、戦況を打破する鍵が、制空権を握るアルケオプテリクスだと判断、撃墜へと動いて行った。

 

 

 

その後、アルケオプテリクスを撃墜し空の憂いを取り除いたハルナは、後の戦いを他の者達に任せ、海中を移動して超兵器の探知範囲のから脱出し、海上に浮上して音速を遥かに上回る速度で飛行してヴェスビオ火山へと移動を果たしていた。

 

 

 

そして、船体失ったキリシマはと言えば…。

 

 

 

念のため海中に待機させていたセイランを呼び、超兵器に気取られぬ様地中海を脱出、そのままヴェスビオ火山へと向かってナノマテリアルを補給し船体を再構築することに成功した。

 

 

差し迫った危機は一応脱したものの、ウィルキアから提供された情報が通用しない事もあって、二人は状況の把握に努めている。

 

 

 

 

「キリシマ。私の受けた攻撃のデータを送る。お前も敵の詳細なデータを集約して送信しろ。」

 

 

 

『んなこと言ったって…さ!』

 

 

 

ボォン!

 

 

 

キリシマは、敵の放ったミサイルをレーザーで迎撃する。

 

 

 

二隻の大戦艦は、増援の超兵器が登場したことで防戦を強いられていた。

 

 

 

特に、ヴィルベルヴィント ジュラーヴリク 駿河の攻撃は激しい。

 

 

 

ハルナは背後に低空で張り付いているジュラーヴリクを追い払おうと弾幕を張るが、敵は複雑な起動で動き回り、更には…。

 

 

 

 

ガガガガガガガッ!

 

 

 

「くっ…航空ガトリングレールガンか!」

 

 

 

データに記載の無かった兵装による絶え間無い攻撃に思わず眉間に皺が寄る。

 

 

 

「キリシマ送るぞ。」

 

 

 

チ…。

 

 

   ▽ ▽ ▽

 

 

超巨大爆撃機ジュラーヴリク

 

最高時速650km

 

対50cm砲防御装甲

※電磁防壁 防御重力場

 

 

兵装

 

航空ガトリングレールガン

 

航空誘導荷電粒子砲

 

クラスター誘導爆弾投射機

 

多弾頭誘導魚雷発射機

 

長距離多弾頭ASM

 

対空パルスレーザー

 

 

 

   ▽ ▽ ▽

 

 

 

『ハルナ、此方は駿河の情報を送る。』

 

 

「了解した。」

 

 

チ…。

 

   ▽ ▽ ▽

 

 

超巨大双胴戦艦 駿河

 

 

速度55kt

 

 

対80cm防御装甲

※電磁防壁 防御重力場

 

 

 

兵装

 

砲塔型レールガン3基6門

 

三連装300mmAGS12基36門

 

超長距離SSM 多数

 

超怪力線照射装置 左右一基

 

拡散荷電粒子砲 艦首左右に一基ずつ

 

 

新型エレクトロンレーザー艦尾に一基ずつ

 

 

対空パルスレーザー 多数

 

 

57mmバルカン砲 6基

 

CIWS 多数

 

 

   ▽ ▽ ▽

 

 

 

 

『どうだ?』

 

 

「了解した。ヴィルベルヴィントは速力が240ktを超えた以外に変化は無いようだが…。」

 

 

 

『だが、脅威なことに変わりはない。あんな速度【シマカゼ】ですら出せないぞ!しかも奴等…さっきから殆ど攻撃を外さない!』

 

 

 

「確かに…レールガンと光学兵器以外は威力こそ落ちるが、命中精度と射数は小笠原の比ではない。」

 

 

 

 

彼女の言う通り、相手は高命中率を誇る兵器を多用していた。

 

だが、バミューダ沖で使用された重力兵器や光子兵器、そして核兵器等を敵は使用して来なかった。

 

 

単艦のポテンシャルは、謎に包まれているヨトゥンヘイムを除き、大戦艦である彼女達の方が上であることは疑いようが無いだろう。

 

 

 

しかし裏を返せば、起爆の際に周囲を巻き込む兵器の使用は自身の身すらも焦がしてしまう。

 

 

 

自爆による損傷と、過度のエネルギー使用に伴う隙は、超兵器にとって最大の弱点でもあり、異世界艦隊にとって最大のチャンスを造り出しているのだ。

 

 

 

その僅かな隙を埋めるが如く、相手は殲滅兵器の使用を控え、通常兵器を強化した兵装で、ハルナ達を一方的に袋叩きにしている。

 

 

 

 

だが、そこに立ちはだかるのが彼女達の絶対防御であるクラインフィールドであろう。

 

 

 

核兵器すら効かない無敵のフィールドは、飽和してしまうまであらゆる攻撃のダメージを吸収する。

 

 

 

ハルナ一隻に集中していた攻撃が、キリシマの登場で分散したため、辛うじてフィールドの回復に余力を残す事が可能となっていたのだった。

 

 

 

よって超兵器と言えど、兵器としての¨根本的問題¨に直面していく訳で…。

 

 

 

 

ボォンボォン…………。

 

 

 

「ジュラーヴリクの砲撃が止んだ…。」

 

 

 

¨弾切れ¨である。

 

 

 

全長250mのジュラーヴリクは全長が350mを超えるアルケオプテリクス程、光学兵器以外の砲弾を搭載することが出来ない。

 

 

 

更に、小型艇と駿河からの攻撃は分散している為、ハルナの演算とフィールドは回復しつつあった。

 

 

 

 

「今しかない!」

 

 

 

ハルナは瞬時に転回し、全砲門をジュラーヴリクへと向ける。

 

 

 

その中のひとつにはアルケオプテリクスを撃墜せしめた電子撹乱ミサイルが含まれていた。

 

 

 

「墜ちろ!」

 

 

 

バシュ!

 

 

 

電子撹乱ミサイルを含めた凄まじい数の弾頭がジュラーヴリクへと殺到して行く。

 

 

 

電子制御を主体としている航空機にとっては、致命的な打撃となるだろう。

 

 

 

ハルナは、超兵器の撃墜を確信した。

 

 

 

だが、

 

 

 

ゴゥオオ!バダバダバダ!

 

 

 

「!」

 

 

 

弾頭が直撃しようとした直前、ジュラーヴリクは、瞬時にあり得ない程横方向へとスライドし、ハルナの放ったミサイルは、一瞬超兵器の姿を見失う。

 

 

 

そして直ぐ様、弧を描いて軌道を修正しようとする弾頭群を、砲弾を吐き出しきって身軽になったジュラーヴリクは、対空パルスレーザーで次々と撃ち落として行く。

 

 

 

 

「なんだ、あの機動性は…。」

 

 

 

 

ジュラーヴリクは、ハルナですらも驚愕させる程の複雑な軌道で逃げ回り、遂にはすべての弾頭を撃ち落としてしまった。

 

 

そして、ハルナから距離を置いた超兵器は、ある艦の下へと近付いて行く。

 

 

 

 

「あれは…デュアルクレイターか?」

 

 

 

 

 

デュアルクレイターの飛行甲板上部へと移動したジュラーヴリクは、そのまま着陸体勢に入る。

 

 

 

 

ハルナのコアが、それに対して警鐘を鳴らしていた。

 

 

 

「まずい…あれは只の強襲揚陸艦ではない。超兵器専用の大型砲弾を搭載できる¨補給艦¨か!」

 

 

 

 

見誤っていたとしか言いようがなかった。

 

 

 

 

どんなに強力な兵器であっても、燃料や砲弾が無ければ只の鉄の塊に過ぎない。

 

 

ハルナの光学兵器やクラインフィールドですらもエネルギーは無限ではない故に、艦隊には通常安全地帯に補給艦が配備されている。

 

 

 

デュアルクレイターの異常性は、単艦での戦力や見た目が補給艦とは程遠いものであり、重要性が高いにも関わらず最前線にいる事なのだが、長年の人類との戦いで、人類と霧の艦隊双方が補給が必要になる状況に置かれていなかった為に、彼女の演算に補給艦と言う存在が浮上して来ていなかったのである。

 

 

 

「くそっ…!」

 

 

 

バシュ!バシュ!ビィン!

 

 

 

ハルナは、必死にデュアルクレイターに向かって攻撃を加えて行くが、敵の迎撃能力は群を抜いていた。

 

 

 

「キリシマ!デュアルクレイターに攻撃を集中させろ!」

 

 

 

『無理だ!小型艇が邪魔で接近できない!』

 

 

 

「っ…!」

 

 

 

ハルナの眉に刻まれた皺が深くなる。

 

 

   ▽ ▽ ▽

 

超巨大双胴強襲揚陸艦デュアルクレイター

 

カテゴリーC

 

最大船速 28kt

 

 

対46cm砲防御装甲

※電磁防壁 有

 防御重力場 無

 

 

 

主兵装

 

45cm噴進砲

 

30cm噴進砲

 

38.1cm砲

 

57mmバルカン砲

 

装甲は対46cm砲防御

 

 

   ▽ ▽ ▽

 

ウィルキアから当初もたらされた情報によるデュアルクレイターのスペックである。

戦艦並みの武装を有しているものの、到底ハルナ達の戦力には及ばない。

 

 

 

 

しかし、彼女達が改めてスキャニングを行ったら超兵器のデータからは、過去のデュアルクレイターとは最早別物と言って良いほど強化が成されていた。

 

 

 

チ…チ…。

 

 

彼女はスキャンを元にデュアルクレイターのデータを修正して行く。

 

 

 

 

   ▽ ▽ ▽

 

 

超巨大双胴強襲揚陸艦デュアルクレイター

 

カテゴリーunknown

 

最大船速 41kt

 

 

対61cm砲防御装甲

※電磁防壁 防御重力場

 

 

主兵装

 

80cm噴進砲

 

45cm噴進砲

 

250mmAGS

 

感応式機雷敷設魚雷

 

多目的ミサイルVLS

 

57mmバルカン砲

 

CIWS

 

RAM

 

対空パルスレーザー

 

 

   ▽ ▽ ▽

 

 

 

戦力的にはやはり大戦艦には及ばないものの、防御と迎撃能力が飛躍的に向上しており、旋回性能も非常に高い。

 

 

更には、デュアルクレイターの手足と言うべき小型艇だが、小型レールガンや光学兵器、そして高性能ミサイルや魚雷を搭載しており、本体であるデュアルクレイターの火力不足を補っていた。

 

 

 

そして現在、デュアルクレイターは甲板の一部のハッチを開き、何やらチューブの様な物を二本、ジュラーヴリクへと接続している。

 

 

 

チ…チ…。

 

 

 

「火薬の反応と高エネルギー反応…弾薬と、光学兵器並びに防壁発生装置へのエネルギーの装填か…キリシマ!フィールドに余裕があるなら小型艇への攻撃を中断してデュアルクレイターに攻撃を集中……何!?」

 

 

 

『おい!どうしたハルナ!』

 

 

 

「奴が…動き出した。」

 

 

 

二人の視線の先には、混乱に乗じて再び連結を開始しようとするヨトゥンヘイムの姿が写った。

 

 

 

戦艦部を先頭に巨大な三隻の艦船が縦一列に並び、衝突しないようゆっくりと接近して行く。

 

 

 

ゴゥオオ…ガシュン!

 

 

プッシュゥー!

 

 

 

 

巨大な砲身が連結され、結合部から蒸気が吹き出し、全長1kmを超える巨大な砲身が完成したのである。

 

 

 

「…………。」

 

 

 

『…ルナ!おい、ハルナ!聞いてるのか、ハルナ!』

 

 

 

「ああ…。」

 

 

 

『流石に不味いぞ!何とかして旗艦にダメージを食らわせないと。若しくはコイツらの内一隻でも撃ち…。』

 

 

 

「駄目だ…。」

 

 

 

『何だと!?』

 

 

 

「キリシマ、超兵器はヒュウガの解析通り、大戦艦での処理域を超えて来ている。格上との遭遇をシュミレートしていない我々では勝てない。」

 

 

 

『じゃあどうするんだよ!』

 

 

 

「堪えるしかない。逃げ回って堪えて、そして全員が合流するのを待つしかない。」

 

 

 

『そんなみっともないマネ、大戦艦である私達が出来るわけ無いだろ!』

 

 

 

「だがするんだ!」

 

 

 

『は、ハルナ…お前。』

 

 

 

彼女にはらしくない語調に、キリシマは思わずたじろぐ。

 

 

 

 

「少しだが、人類の事を理解出来た気がする。人類は格上である私達に戦略と数を以て立ち向かって来た。結果としては我々の圧勝であったが、かなりの時間を割いた事は確かだろう。そして陸地に追いやられて尚、彼等は機会を待ち続けた。私達に対抗するチャンスをな…そしてそれは訪れた。」

 

 

 

『401…か。』

 

 

 

「ああ。我々もそうする時が来たのやもしれん。ウィルキアの艦長が言っていた【超兵器を倒すには世界の協力が必要】と言うのはこの事だったのだ。単一の存在では勝てない。ならば全員で当たる他はない。だから私達がするべき事は超兵器艦隊を壊滅させる事じゃない。機会をまつんだ。」

 

 

 

『理解出来なくはないが私は…。』

 

 

 

「キリシマ…何故人間はあんなに必死で私達に挑んで来たのだろうな…。」

 

 

 

『何だよ急に。』

 

 

 

「私達の前に没した人間の数は、恐らく千や万では下るまい。その一人一人には、大切な者を持つ者だっていた筈だ。なのに立ち向かって来た。死ねば二度と再生は叶わぬと知っていながら…。」

 

 

 

『………。』

 

 

 

「私は今、彼等の気持ちを少し理解出来た様な気がする。敵の刃が大切な者へと至らぬ様にする為の¨覚悟¨。そして同時に…。」

 

 

 

ハルナのコアは、遠く離れた海にいる蒔絵の姿を投影させる。

それと同時に、彼女のコアに漠然として捉えられていなかったものが鮮明に浮かび上がって来た。

 

 

 

 

「大切な者に二度と再会出来ぬ¨恐怖¨。これらを強く知覚した。」

 

 

 

『ハルナ…。』

 

 

 

「そう…私は今、【恐い】のだ。自身を失い、蒔絵に会えぬ事が恐くてたまらないのだ…。」

 

 

 

 

『っ…!』

 

 

 

キリシマは驚愕する。

 

長年連れ添った姉妹艦の中でも、特に感情の起伏に乏しかったハルナの声は震えていた。

 

 

まるで本当の人間が恐怖し、今にも泣き叫んでしまうかの様に。

 

 

 

そんな彼女に触発されたのか、キリシマのコアにも不安の二文字が浮かび上がる。

 

 

それと同時に、直接的な戦闘力を持たなくとも、彼女達の精神的支柱である蒔絵の存在が如何に大きなものであったのかを痛感させられる事となった。

 

 

 

 

現状は停滞し、それを打破する鍵はシチリア島南西部で戦うもえか達の動きに掛かっていることは言うまでもない。

 

 

 

 

キリシマはシチリア島へと視線を向け、向こうで戦う者達を思う。

 

 

兵器である自身が、まさか他者の…しかも人類にこう言った感情を抱く日が来るとは想像もしていなかったであろう。

 

 

 

それは正に¨祈り¨にも似た¨期待¨に他ならなかった。

 

 

 

 

 

   + + +

 

 

ポーン…ポーン…。

 

 

「タカオ、アクティブソナーを使用!」

 

 

 

「何!?それじゃ敵に自分の位置を知らせていみてぇじゃねぇか!」

 

 

 

真冬は、もえかの行動に驚愕を覚えた。

 

 

尾張から発艦した航空機達は、しきりに海中を攻撃し、水柱が何本も撃ち上がる。

 

 

 

 

異世界艦隊とハルナの合流を阻まんとする超兵器艦隊の攻撃は苛烈さを増していた。

 

 

 

特に尾張の攻撃は凄まじく、弁天の主砲の射程範囲外から大口径砲とミサイルを手当たり次第に撒き散らし、発艦した航空機達からの攻撃も激しさを増す。

 

 

 

その余りにも凄まじい砲火に、弁天だけではなくメアリースチュアートも、接近すら叶わない状況が続いていた。

 

 

 

 

更にそれだけではない…。

 

 

 

「平賀!知名の奴にアクティブソナーの使用を止めさせるように伝え…。」

 

 

 

ボォン! ボフォオ!

 

 

 

「くっ!あぁっ!」

 

 

「きゃああっ!」

 

 

 

弁天の防壁に突如砲弾が直撃し、すぐ近くをヴィントシュトースが有り得ない速度で通過して行く。

同時に、砲弾が来た方角とは反対側の空間からいきなり炎が吹き出し、弁天を包み込む。

 

 

 

光学迷彩戦艦パーフェクトプラッタの火炎放射砲である。

 

 

 

プラッタ級の位置を把握でき、尚且つ機動力があるタカオを海中に追いやり、メアリースチュアートを尾張が引き付けている事で自由を得た二隻の超兵器は、狙いを弁天へと絞り込んでいた。

 

 

 

「くそっ!鬱陶しい…。」

 

 

 

超兵器の中では低級であるが、二隻同時の相手は弁天にとって過剰と言う他はない。

 

 

 

真冬は回避と迎撃の指示を飛ばして逃げ回る。

 

 

超兵器戦の初陣となった弁天にとっては苦しい我慢の時間は続いていた。

 

 

 

   + + +

 

 

 

 

「艦長、弁天が!」

 

 

 

「………。」

 

 

 

エミリアの悲鳴に、ヴェルナーは苦い表情を浮かべる。

 

 

 

(正直余裕がない…。何か打開点は無いのか…。)

 

 

 

 

尾張の正確なアウトレンジ攻撃は、メアリースチュアートを疲弊させる。

 

 

 

彼の本音は、勿論弁天を援護したいと思うところであろう。

 

しかし弁天へ近付けば、双胴と言う特性を有する尾張の凄まじい砲火がほぼ一点に集中する事を意味していた。

 

 

 

故に、戦略的に重要である空母が敢えて尾張と対峙することで、弁天へ向かう砲撃を分散させている訳だが…裏を返せば、完全に二分した超兵器をメアリースチュアート一隻で相手にするのは困難であり、況して此方に砲撃を集中させている尾張の攻撃を捌くので手一杯な状況であった。

 

 

 

「知名艦長…。」

 

 

 

彼は海中に追いやられたもえかを思う。

 

 

 

状況の打開の鍵はタカオが握っていることは明らかだった。

 

 

 

一方、上空では一宮が率いる航空隊が激しい空中戦を繰り広げている。

 

 

 

 

「よぉしいいか!ビビってハグレちまったらお陀仏だ。俺のケツにピッタリ付いてこい!タカオを攻撃してる攻撃機を狙う。里中と三嶋の小隊は俺達攻撃隊を援護しろ!」

 

 

 

『『はっ!』』

 

 

 

航空隊は美しい編隊を組、敵戦闘機の間を掻い潜りながら海中にいるタカオを袋叩きにしている攻撃機達に照準を絞って行く。

 

その間は凄まじい数の戦闘機が一宮達に殺到するが、里中耕吉と三嶋武男

率いる戦闘機小隊が露払いをし、ミサイルや航空バルカン砲の直撃を受けた敵機が火を噴き上げながら海へと堕ちて行く。

 

 

 

「いいか!ギリギリまで引き付けろ!」

 

 

『た、隊長!しかし、凄い数の敵機です!』

 

 

 

「馬鹿野郎!勇気を奮い起こせ!露払いの三嶋達を信じるんだ!今は目の前の事だけに集中しろ!……今だ、俺に続け!FOX2!」

 

 

 

『は、はっ!FOX2!』

 

 

バシュオォ!

 

 

 

空対空ミサイルが白い尾を引きながら敵機へと飛翔する。

 

 

 

 

(奴らにとってタカオはよっぽと邪魔な存在らしいな。対潜攻撃に夢中でろくに回避する素振りすらみせない。…だが!)

 

 

 

ボォンボォンボォン!

 

 

 

ミサイルは敵機に次々と命中。

鋼の機体が瞬く間に千切れて四散し、ボチャボチャと海面に無惨な姿を晒す。

 

 

 

 

(これはチャンスだ。タカオの居場所が割れているせいなのか、敵機が一ヶ所に集中してる。叩かない手はない!)

 

 

 

一宮は、編隊の立て直しを指示し旋回すると、再び敵機の群へと突っ込んで行った。

 

 

 

 

   + + +

 

 

「対潜弾多数、来るわ!」

 

 

ボォンボォン!

 

 

 

「あぐっ!」

 

 

超兵器と航空機からの容赦ない攻撃で、タカオの頭上の海中は引っ掻き回され、衝撃が船内を激しく揺らす。

 

 

 

重巡洋艦が潜航すること自体は極めて驚愕の事実であるが、潜水艦とは異なり突起の多い船体は、海中を自在に進むのには不向きであり、また隠密性に於いても船体形状や騒音の観点からしても不利であった。

 

 

 

更にアクティブソナーの使用によって周囲に自らの存在を知らしめていることで、海中に潜むメリットはほぼ皆無と言っても良いだろう。

 

 

だが、もえかは敢えてその行動を選択した。

 

 

 

「タカオ、私達の現在位置は?」

 

 

 

「弁天に近付きつつあるけどいいの?私達と一緒に航空機の群を呼び寄せてしまうわよ?」

 

 

 

 

「¨アレ¨に気付かれる訳にはいかない。この爆音を利用してうまく誘導して!」

 

 

 

「了解。でもまだ問題があるわ。」

 

 

 

「解ってる。パーフェクトプラッタの位置がまだ掴めない…。」

 

 

 

 

キリシマが離脱し、タカオが海中に潜った事により、パーフェクトプラッタを視認出来る存在が居なくなった。

 

 

その為、異世界艦隊のレーダーには超兵器の存在が写しだされなくなり、再び敵の自由を許している状態が続いていたのだ。

 

 

 

「パッシブソナーから周囲の爆音を取り除いて超兵器の足取りを聞き取れないかな…。」

 

 

 

「とっくにやってるわ。でも動きが解るのは味方の動きとヴィントシュトースくらい。さっきパーフェクトプラッタが弁天を襲撃したみたいだけど、周囲からは何も観測出来なかったわ。」

 

 

 

「何らかの偽装工作を施しているのかな…。ねぇタカオ。逆にピンの反応が¨全くしない¨地点を洗い出せる?」

 

 

 

「どう言うこと?」

 

 

 

「この世界は音で満ちている。戦闘の音だけじゃない。波の音だってあるし…艦が動けば普通なにがしかの反応がある筈なの。もしそれが全く無いんだとしたら逆に不自然じゃない?」

 

 

 

「成る程…確かに試してみる価値は有りそうね。」

 

 

 

ポーン…ポーン… 。

 

 

 

タカオは再びピンを打ち、演算をソナーへと集中させる。

 

 

すると…。

 

 

 

「!」

 

 

 

「どう?」

 

 

 

「見つけた!この海域のある場所に、全く音が反響しない地点があるわ。それも高速で移動してる…。」

 

 

 

「…いる。タイミングと位置を合わせて!絶対気取られちゃ駄目!」

 

 

 

「解ってるわ。」

 

 

 

 

タカオは全センサーと演算を集中させる。

 

 

 

 

「近い…。」

 

 

 

「じゃぁ…。」

 

 

「待って!まだ目標には達していない!」

 

 

 

「………。」

 

 

二人に極限の緊張が走る。

 

特に海上での救助が主任務であるもえかには、艦橋の外に見える海中の暗闇や頭上の爆音と行った潜水艦の乗組員が受けるのと同様ストレスは堪えるに違いない。

 

 

 

 

「もう少し…もう少しで…。」

 

 

 

彼女の言葉に、もえかは額に汗を滲ませながら沸き上がる焦りを抑え込む。

 

 

 

その時だった。

 

 

 

「来た!超兵器二隻、目標地点に到達!」

 

 

 

「機関停止!アクティブソナーも切って!」

 

 

 

ゴオオ…………。

 

 

 

 

海中でタカオの船体が停止し、頭上には航空機からの対潜攻撃の音だけが虚しく響いた。

 

 

 

 

 

   + + +

 

 

 

超兵器は弁天に接近し、苛烈な攻撃を加え続けていた。

 

 

 

だが、

 

 

 

《!》

 

 

 

海中から聞こえていたソナーの音が突如として消滅したのである。

 

 

 

二隻は速度を落とし、弁天に牽制程度の砲撃を加えながら辺りを警戒し、それに呼応するかの様に、航空機達も対潜攻撃を中断する。

 

 

 

もえかの読み通り、彼等わはタカオの存在を意識していたのだ。

 

 

 

しかし、凄まじい対潜弾の爆音が海中を支配し続け、中々探知することが出来ない。

 

 

 

彼等は葛藤していた。

 

 

距離を取ろうと動き出した処への奇襲か若しくは隙を突いてタカオ自体が距離を取って浮上するか…。

 

 

 

または、裏をかいてその場に留まり、浮上ないし奇襲のタイミングを窺っているか…。

 

 

 

いずれにせよ、長期間タカオを見失う事は彼等にとって不利なりうる事は明らかだった。

 

 

 

 

 

故に彼等の出した結論とは…。

 

 

 

 

バシュッ…ズボォウン!

 

 

 

タカオを見失った地点への攻撃の再開である。

 

 

 

 

しかし、安直な理由でそうした訳ではなかった。

 

 

先ずはタカオ位置についてだが、彼女船体は潜航するには大きく、エンジンが発する騒音も巨大であるため、401の様に潜航しながら自由に動けるわけではない。

 

 

故に、奇襲を狙って移動する可能性が低い以上、タカオはその場に留まっている可能性が高かった。

 

 

 

そして何故、急にソナーや機関を停止したか。

それは隠れたいからではない。

 

 

¨時間を稼ぐ¨為だ。

 

 

なんの為に?

 

 

超兵器が現状で最も恐れるべき兵器は超重力砲であろう。

 

 

 

だが、このような至近距離からロックビーム無しでは、機動力が勝るヴィントシュトースやパーフェクトプラッタに当たる可能性は低い。

 

しかもどちらか一隻を捕まえたとして、もう片方の超兵器や航空機がフリーの状態ではかえってタカオに不利状況になってしまう。

 

 

故に彼等は、ロックビーム無しでの超重力砲発射を狙っているのだろうと踏んだ訳だが、それだけなら彼等がここまで焦る必要は無いのかもしれない。

 

 

 

 

だがもし、タカオの狙いが¨彼等ではない¨としたらどうだろうか。

 

 

 

思えば不自然だった。

 

 

 

タカオが当初攻撃を仕掛けたのは¨尾張¨だった筈なのだ。

 

 

なのに潜航した途端、タカオは此方に反転し、あたかも《自分はここにいるぞ》と言わんばかりにソナーを使用して接近してきた。

 

 

 

そして尾張本体から航空機を引き離し、海中に対潜攻撃をさせることで超兵器達のソナー感度を低下させ、そのタイミングで姿を眩ましたのだ。

 

 

勿論超兵器達は、攻撃の手を緩めてタカオを探すだろう。

 

 

もしその¨時間¨こそが、彼女の狙いだとしたら…。

 

 

 

完全に意表を突く形で尾張が狙撃されてしまう。

 

 

 

艦隊旗艦であるヨトゥンヘイムがいるシチリア島へ異世界艦隊を向かわせない為に、現状で最も力を有する尾張が沈む事は許されない。

 

 

二隻の超兵器と航空機達は、苛烈な攻撃を海中に叩き込んで行く。

 

 

 

すると…。

 

 

 

ゴオオ…。

 

 

 

当たりだ。

 

 

 

最後にタカオを探知した付近から、重力子エンジンの発する独特の音が響いてくる。

 

 

 

彼等は更に激しい攻撃を海中に放って行く。

 

 

 

だがその時。

 

 

 

バジィイ…グゥオオン!

 

 

 

突如、超兵器の後部に何かが着弾し、スクリューが抉り取られていった。

 

 

 

そして…。

 

 

 

ボォン!

 

 

 

爆音が轟いて、海上に二本の煙が立ち上る。

 

 

超兵器は、予期せぬ攻撃によって被弾し、炎上していた。

 

 

 

 

   + + +

 

 

 

「やったの!?」

 

 

 

「ううん、漸く足掛かりを掴んだだけ…油断せずに行こう!」

 

 

 

「解ったわ!」

 

 

 

もえかはタカオに向かって大きく頷くと、一度大きく息を吸い込む。

 

 

そしてカッ!と目を見開いて声と共に一気に息を吐き出した。

 

 

 

「反撃…開始!」

 

 




お付き合い頂きありがとうございます。


最後は正に化かし合いと行った展開でした。



果たしてハルナ達は、もえか達の合流まで耐えられるのか…。


異世界艦隊は、尾張を突破できるのか?



次回まで今しばらくお待ちください。


それではまたいつか。



































とらふり! もえかのアブナイ【ミケ日誌】


もえか
「見える…。」



タカオ
「どうしたのよ藪から棒に…。超兵器の行動でも読めたの?」




もえか
「ミケちゃんは今、大好きなカレーを食べている。勿論デザートには黒蜜がたっぷりとかかった餡蜜とセットで!」




タカオ
「カレーと餡蜜…合うとは思えない組み合わせだけど…って、今の私達の状況となんの関係性も無いでしょ!?大体どうしてそんなことが解るのよ!」



もえか
「ミケちゃんはここぞって仕事の終わりには必ず辛口のカレーを食べる。それは間違いない。そして、口の中に広がったピリリとした感覚を餡蜜の優しい甘さで癒して行く。その瞬間がミケちゃんにとって最も至福な時間なの。」



タカオ
「色々突っ込みたいけど、とにかく続けて…。」



もえか
「そしてお風呂ははれかぜメンバー最速の273秒で済ませ、歯は右の上から磨いてイルカの刺繍が入ったピンクのパジャマを来て、そしてとても可愛い寝顔で眠る。寝言でムニャ~とか言っちゃって…。」




タカオ
「もうダメ、突っ込ませて!我慢できない!最後の方は絶対部屋に忍び込んで見てるでしょう!?それはストー…。」




もえか
「ああっ!聞こえなぁい!ああっ!時系列的には同時進行なのに、随分永いこと会ってないみたい。早く…ああっ早く!ミケちゃん!」




タカオ
「ダメだ…早く超兵器倒して会わせてあげないと…。」

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