トライアングル・フリート   作:アンギュラ

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お疲れ様です

説明回になりそうです

設定を回収しきれるか不安ですが言ってみます。

どうかお付き合いよろしくお願いいたします。


それではどうぞ


心情性疑心波浪

   + + +

 

 

彼等の働きは驚異的だった。

 

上陸の許可が降りた事で、ドリル戦艦シュペーアの乗組員だけでなく、沖合いに居た超大型ドック艦【スキズブラズニル】からの支援もあり、救出作業はとてもスムーズに行われたからだ。

 

 

だが、もっと驚異的だったのが、蒼き艦隊の働きである。

 

見た目は普通の十代から二十代の女性たちだが、大きな瓦礫を片手で動かしたり、ビルの上の階まで飛び上がったり、出血が酷い負傷者には謎の銀色に光る粉の様なもので、擬似的に血管を再現して止血し、その間に応急処置をしていたのだ。

 

 

さらに彼女達はまるで瓦礫の中を透視しているかのように的確に負傷者を見つけ出し、回りにいるブルーマーメイドの隊員や鋼鉄の艦隊の乗組員裁ちに位置を伝えている。

 

その人智を越えた様子に、ブルーマーメイドやウィルキアの艦隊の面々も唖然としている。

 

シュルツもまたそうだった。

 

 

 

 

(彼等は一体何者なのだ?後でブラウン博士に解析を依頼したほうが言いかもしれんな…)

 

 

 

 

 

一方の蒼き艦隊の艦長千早群像は表情を険しくしていた。

 

それはまるでこのような惨劇をあまり目にしたことの無いような様相だった。

 

 

明乃たちも負けては居られない。

 

夜の襲撃とあって、助け出された人も寒さに震える。

 

美甘や鶫が炊き出しを行い振る舞い、楓や麻侖も毛布や水の支給を手伝う。

 

明乃ともえかは、真白と共に現場に到着した真霜に、先程の二隻の艦長との会話の内容を報告している。

 

 

報告を聞き、迅速な救助をしてくれた両艦隊であるが、真霜は眉を潜める。

 

 

 

 

 

(なぜここまで?彼らには私達にここまでする義理があるのだろうか…。これはますます話を聞かなければならないわね)

 

 

 

 

被災者は、仮設の住宅が出来るまで避難所やスキズブラズニルから提供されたテントなどで暮らし、負傷者一部は不充分な設備ではあったが横須賀基地内で預かることで決定し、ひとまずは事態を収拾に漕ぎ着けた。

 

 

  + + +

 

 

襲撃の翌日

 

横須賀基地も襲撃されて会議室が使えないため、食堂の一角を借りてブルマー ウィルキア艦隊、蒼き艦隊との事情の聴取兼情報交換が行われることとなった。

 

 

その場にいた真霜がまず口を開く。

 

 

「皆集まったわね。この度の巨大艦艇からの襲撃と、ウィルキア、蒼き艦隊双方の出現。正直迷ったわ…。自分の頭が変になったのかとも思った。でももう、これ以外に結論が出せなかったのも本当よ」

 

 

 

眞霜は、意を決してその結果を言葉にする。

 

 

 

「これは私の個人的な見解だけど、あなた達はこの世界と似て非なる【別の世界】から来た…と考えるのが自然だと考えたの」

 

 

「!」

 

 

「!!!?」

 

 

その場に居る全ての者が、驚愕または困惑の表情を浮かべた。

 

 

無理もない。

 

彼女の言動は、¨通常¨であるなら、気が触れたと捉えられても仕方がない無いようであったからだ。

 

 

しかし、真霜はそれを知りつつも言葉を紡いで行く。

 

 

 

 

 

「理由はいくつかある。あなた達が¨光の中¨から突然現れた事、【ウィルキア共和国】や【蒼き艦隊】などの国家や組織は耳にしたことが無かった事、そして私達の世界には存在しない兵器を使ってきた事。その敵に対してあなた達の対応はとても慣れているように見えたから…どうかしら?」

 

 

 

「ウィルキア共和国が存在しない!?…成程」

 

 

 

シュルツ顔には驚愕の色を浮かんだが直ぐに表情を戻す。

 

 

 

 

「解りました。私もたった今、あなたと同様の意見に達しました。横須賀に最初に着いた時、あなた方の組織の方、確か…岬明乃さんと言いましたか?その方が言っていた【ブルーマーメイド】という組織は聞いたことが有りません。それにこれ程の襲撃を受け、軍が動いた形跡がない。私の知る日本では横須賀には大規模な軍港が存在していましたが、見た処それもない。市街地の建物の様子もまるで別物でした。極めつけは、我が祖国が存在しないというあなたの発言。どうやら我々は異世界へと移動してきたと言う話もあながち嘘では無いようです…」

 

 

 

シュルツは群像に視線を移すと、彼も群像も頷く。

 

 

 

 

「俺達もです。ブルーマーメイドという組織は知りませんし、人類が¨海で普通に活動している¨という点も違う。それに我々の知る敵は、地上への攻撃は行わない。さらに横須賀には大規模な壁があり、湾内と外洋を隔ていたがそれもない。極めつけは、あなた方の秘書官補佐という方から伺った、日本には¨軍務省¨と言う組織が存在しないという点に於いて、この世界が異世界なのではと疑っていたのです。1つ確認ですが宜しいですか?」

 

 

 

「私に答えられる範囲であれば構わないわ」

 

 

「はい、ではここは¨西暦2056年¨で間違いないでしょうか?」

 

 

 

「…いえ、ここは2016年よ」

 

 

 

「「!!?」」

 

 

二人は真霜の答えた年号に驚く。

 

 

「我々の世界は今年2056年です…」

 

 

「我々の世界は1943年…それぞれが違う時代からこちらに飛ばされてきたと言うことでしょうか…」

 

 

 

(過去と未来から?まさかとは思っていたけど…未来から来た蒼き艦隊は置いておくとしても、ウィルキアと言う国が存在した記録が無い事と、彼等の技術が私達よりも上な事を考えると、同じ時間の延長線ではなく、やはり全くの別世界から来たと考えるべきなのかしら?)

 

 

 

真霜は眩暈にもにた感覚をどうにか抑え、深く溜め息をつきながらも話を次に進める。

 

 

 

「どうやら、お互いにここに至るまでの経緯の説明から始める必要があるわね…。色々聞きたい事はあるとは思うけど、取り敢えず話を聞いてから質問する時間を改めてとりましょう。いいかしら?」

 

 

 

真霜の言葉に全員がうなずきを返す。

 

それを確認した彼女は、自分の世界についての説明を始める。

 

 

 

「それでは、先ずは私達から説明するわ」

 

 

  ▽ ▽ ▽

 

 

今から100年ほど前、日露戦争の後日本はプレートの歪みやメタンハイドレートの採掘などが原因でその国土の多くを海中に失い、それにより海上都市が増え、それらを結ぶ海上交通などの増大により海運大国になった。

 

 

 

その過程で軍艦は民間用に転用され、戦争に使わないという象徴として艦長は女性が務めた。これがブルーマーメイドの始まりで今では隊員の殆どが女性よ。

 

 

   ▽ ▽ ▽

 

 

真霜が大まかに自分の国の状況を説明した。

 

 

「成程…これで得心が行きました。我々が¨奴¨と戦っていた時に、あなた方の国の航空機を一機も見かけませんでした。それは第一次大戦後に大規模な戦争が無かったため軍拡競争が起こらず、¨航空機¨の開発が遅れたためだったのですね?」

 

 

「【航空機】と言うのはあの空を飛ぶ兵器のこと?」

 

 

「ええ、我々の世界は¨第二次世界大戦¨があり、戦争の主役は戦艦から航空機になりつつありますから」

 

 

「第二次世界対戦…戦争が文明の発展に繋がるなんて皮肉としか言いようがないわね……」

 

 

「ええ、同感です。本来は、私達のような軍属の出番の無い世界であれば良いのですが……」

 

 

 

一同はシュルツの言葉に押し黙る。沈黙を破ったのは真霜だった。

 

 

「こうしていても始まらないわね…。それでは気を取り直して次は蒼き艦隊について話を聞かせて頂けるかしら千早艦長?」

 

 

 

 

「解りました。先ずは、我々の成り立ちから説明致します」

 

 

 ▽ ▽ ▽

 

 

西暦2039年、温暖化の影響により地上での版図を大きく失った俺達人類の前に、突如として世界各地へ霧と共に第二次世界大戦時の軍艦を模した正体不明の大艦隊が現れ、強制波動装甲から発する、あらゆる攻撃を受け付けない無敵のフィールド。

 

光学兵器や着弾箇所にタナトニウムと言う物質を崩壊させる物質と小型なブラックホールを発生させ、侵食するようにえぐりとる【侵食弾頭兵器】。

 

 

現代の科学力をはるかに超える兵器と、独自の意思を持ち乗員無くして動くそれらをいつしか人類は彼女たちをこう呼んだ、【霧の艦隊】と。

 

 

その勢力により、¨人類は海上から駆逐¨され、シーレーンも海を隔てた長距離通信も絶たれ人類は各地に孤立余儀なくされ、事態の打開策も見出せぬまま、経済活動や政治・軍事の混迷により人類同士での内乱も生じ衰退へ直進していった。

 

それが俺達が住んでいた世界です。

 

 

それから17年後の西暦2056年、士官候補生だった俺とその仲間達は、突如無人で横須賀に戻ってきた人類側についた“霧の艦”潜水艦イ號401に乗り込んだ。

 

 

 

 

【この閉塞した世界に風穴を開けるために……】

 

 

 

 

 

そして霧の艦隊は、数年前からメンタルモデルという人形のインターフェースを持ち始めた。

 

俺達のここにいるイオナ…いや、イ401もメンタルモデルを持って意志疎通をとることが出来ます。

 

しかしその見た目とは裏腹に戦闘能力は高い。

 

俺達は霧に対抗出来ゆるかもしれない兵器

¨震動弾頭¨のサンプルと設計図を、資源と、尚且つ量産可能なアメリカに届ける任を受け、そのサンプルを受け取りに横須賀に向かう途中の霧の重巡洋艦タカオと遭遇しこれを退ける事に成功。

 

そしてそのサンプルを受け取った直後に、霧の大戦艦ハルナとキリシマが横須賀に湾内し此を撃沈、無力化した。

 

そして震動弾頭の開発者である刑部蒔絵邸に霧のメンタルモデル、ハルナとキリシマが侵入。

 

メンタルモデルが刑部蒔絵に接触した可能性を危惧した政府によって、差し向けられた陸軍に、刑部蒔絵やハルナとキリシマは追い詰められていた。

 

俺達は政府の意向に背き、その軍事作戦に介入して陸軍を撤退させ、3人を救出した。

 

俺達クルーとイ401のメンタルモデル¨イオナ¨や、蒔絵とハルナ達が対話によってわかり合い絆を深めた事から、俺は霧がメンタルモデルを持ったことによって我々人類と対話し解り合えるのでは無いかと考えたんです。

 

 

 

そこで俺達は蒼き艦隊の本拠地である硫黄島に向かい、日本近海を照海している、霧の東洋方面第一巡航艦隊旗艦の【大戦艦コンゴウ】を硫黄島に招き、実際に対話をしてみようと計画していた。

 

 

硫黄島ではメンタルを形成した大戦艦ヒュウガと横須賀沖で対戦した重巡洋艦タカオが既に待っており、硫黄島で霧を構成している未知の物質¨ナノマテリアル¨や物資の補給及び、ヒュウガの力を借りてイオナの船体の補修等のメンテナンスを行った。

 

そして、いよいよ大戦艦コンゴウのメンタルモデルとの対話を待つばかりという時、

硫黄島の近くで謎の高エネルギー反応を検知し様子を見に来た所、謎の光に吸い込まれ、気付けばここに居たのです。

 

 

  ▽ ▽ ▽

 

 

群像が話終えると、辺りは静まり返っていた。

 

 

ウィルキア、ブルーマーメイド両陣営共にあまりにかけ離れた世界観に言葉を失ってしまったのだ。

 

 

ただ、ウィルキア陣営の一人、緑色の軍服に白衣姿で眼鏡をかけた女性だけは、群像の話に興味を抱いた様だった。

 

 

彼女は、群像の隣に座っているセーラー服の少女へと視線を向ける。

 

 

 

美しい銀色の髪に、白い肌。

そして宝石の様に透き通った翡翠の瞳。

その整った顔立ちとは対照的に、彼女はまるで人形の様に動かず、瞬きすらしていない。

 

 

 

「よろしいですか?私はエルネスティーネ・ブラウンと申します。ドイツ出身でウィルキア艦隊で兵器に関する研究をしています。千早艦長の隣にいるあなたはメンタルモデル…なのですか?」

 

 

「そう。私は千早群像の艦イ401のメンタルモデル¨イオナ¨」

 

 

「成程…あなたに質問なのですが、聞く処によると、あなた方は人類を滅ぼさんとする存在であり、つまりは人類の敵。この世界の人々や我々に危害を加えないという保証はありますか?」

 

 

ブラウン博士の問いは蒼き鋼以外の陣営からするれば至極当然の疑問であった。

 

 

真霜は、場の雰囲気が一気に張り詰めるのを感じる。

 

 

一同の視線が集中する中でもイオナは表情1つ崩さず、それは回りに彼女がまるで完成度の高い¨人形¨の様な印象を与え、人類とはまるで別物であると信じさせるには十分だったであろう。

 

 

「少し違う。我々は¨アドミラリティ・コード¨によって海洋に進出する人類を駆逐し、陸に押し止めること。ただ…それだけ。だから陸への攻撃は行わない。人類を全て滅ぼすと言う意味には至らない」

 

 

「アドミラリティ・コード…とは?」

 

 

「我々の行動を決定づける、最重要命令。私達はその命令からは逃れられない。でもこの世界にはアドミラリティ・コードが存在する気配がしない。存在しない以上、私達には人類に敵対にする理由がない。それに私にはアドミラリティ・コード以上の命令がある。それは、¨千早群像に出会いそして従う¨こと、私は群像の艦だから、彼の命令に従う」

 

 

 

彼女の言葉は、非常に殺風景な印象を与え、言葉もシンプルではあったが、それでこの場の人間を全て信用させるには弱かったのかもしれない。

博士はまだ納得していない表情だが、余り時間をとってはいけないと思ったのか次の質問をぶつけて来る。

 

 

 

 

 

「…解りました。今はそれでいいでしょう。ですがまた機会があれば、あなた方の話を詳しく聞かせて頂ければ幸いです。それと最後の質問ですが、市街地での負傷者の治療の際に見せた、あの¨銀色の粉¨の様なものについてと、あなた方の兵装について教えて下さい。兵器について研究している身にとってはとても興味深いものでしたので」

 

 

博士の質問にはイオナの代わりに群像が口を開く。

 

 

 

「銀色の粉は¨ナノマテリアル¨と言います。色々なものに代用や変形が可能の万能なものです。我々の艦だけでなく、メンタルモデルの体、後は兵器にも使われています。治療を行った【大戦艦ヒュウガ】の話によれば、ナノマテリアルで擬似血管をつくって一時的に出血を抑え、その間に裂傷箇所の処置を行ったとのことでした。また兵装は先程説明した、¨侵食弾頭兵器¨そして対象を原始レベルで破壊してしまう霧の切り札である【超重力砲】です。あれは一度使うとメンテナンスが必要ですが…」

 

 

「超重力砲…」

 

 

博士だけではなく、ウィルキア陣営の表情が曇る。

 

 

「あぁいえすみません…。我々のイメージした兵器と少し印象が異なっていたものですから…でも大体は理解出来ました。また話を聞かせて下さい」

 

 

 

「ええ、いつでもお答えします」

 

 

 

二人の会話にシュルツも異議は無いようだ。

 

しかし真霜はそうはいかない。

眉間を指で抑え、し苦悩の表情を見せる。

 

 

「私はまだ気持ちの理解が追い付いていないのだけれど…。あなた方が差し迫る脅威ではないことだけは理解出来ました。それでは次に、ウィルキア共和国のシュルツ艦長にお話を伺っても?」

 

 

「それでは、お話しましょう」

 

 

シュルツの表情が一段と険しくなる。

 

 

 

   ▽ ▽ ▽

 

 

私達の世界は突如として、侵略されました。

 

 

 

それも私達の¨祖国ウィルキア¨によって…。

 

 

我々の国王陛下も観覧に来ていた大規模な軍事演習の最中に、突如軍事クーデターが起きたのです。

 

 

 

そして、民衆や世界の承認も受けず、一方的にウィルキア帝国の設立を宣言した。

 

 

我々は陛下を連れ、同盟国である大日本帝国へと避難しました。

 

 

しかし、既に全世界には帝国の魔の手は伸びており、賛同する親帝国派が様々な国々で軍事クーデターを起こしていたのです。

 

 

日本もその例に漏れてはいなかった。

 

 

日本に避難した我々を待ち受けていたのは、日本軍による理不尽な拘束でした。

 

 

しかし我々は、帝国の一方的な行い反発する反帝国派の軍人による手引きにより、日本を脱出したのです。

 

 

脱出の最中にクーデターの首謀者、ウィルキア帝国の国家元首で元国防軍大将兼国防議会議長であった、【フリードリヒ・ヴァイセンベルガー】からの¨世界統治宣言¨を聞くこととなったのです。

 

 

ヴァイセンベルガーは、ウィルキア共和国をウィルキア帝国と改名し、帝国に従わない全ての国に対し、徹底的な破壊をもたらすと世界に向けて宣言しました。

 

勿論各国も黙っているはずがありません。

帝国に対し、大規模な反抗作戦が行われる予定でした。

 

 

 

しかしそれらの計画は、¨ある兵器¨によって悉く失敗し、ついに世界は帝国の前に膝を折ることとなったのです。

 

その兵器を我々は【超兵器】と読んでいます。

 

 

昨日の横須賀を襲撃した艦もその一隻です。

 

 

 

その名は…

 

 

超巨大航空戦艦【ムスペルヘイム】

 

 

 

あのような船を多数用意していた帝国は、瞬く間に世界を制圧してしまいました。

 

 

しかしこちらのブラウン博士が、超兵器に関する研究を進めてくれたお陰で、我々は各地で超兵器を撃破し、徐々にではありましたが、帝国の支配下にあった国々を解放していきました。

 

 

 

そして、いよいよ我が祖国ウィルキアの首都であるシュバンブルグに巣食っていた強力な力を持つ超兵器を撃沈し、首都を奪回するに至りました。

 

しかしヴァイセンベルガーはそれでは終わらなかった。

 

囚われる事を恐れた奴が密かに潜水艦で北極海に向かったとの情報が入り、ウィルキアだけでなく、全世界の有志連合の艦隊が北極海に集結しました。

 

 

 

そしてそこでヴァイセンベルガーは、ある超兵器を起動させたのです。

 

その名は

 

 

 

超巨大戦艦【ヴォルケンクラッツァー】

 

 

 

 

 

ヴォルケンクラッツァーは北極海に集結した。およそ数万隻もの艦艇を、¨一瞬で消滅¨させてしまいました。

 

 

 

その忌まわしき兵器の名は【波動砲】

 

 

この兵器は¨大陸や地殻すら破壊¨してしまう正に究極の兵器です。

 

ヴォルケンクラッツァーに対抗できる戦力は最早我々だけでした。

我々は誰しも死を覚悟し、そして決戦に挑み、多くの人命を失いながらも奴を沈めることに成功した。

 

 

筈だったのです…。

 

 

 

しかし、北極海からの帰航の際に同胞の国の機関から我々に一報が入りました。

 

 

沈んでいた筈の超兵器達が海底から¨姿を消した¨…と。

 

 

それを確かめるために我々は、首都シュバンブルグで撃沈した超兵器の調査をしようと舵をきった瞬間、我々の前に巨大な光が現れて我々はそれに飲み込まれ、そしてそれが収まった時、目の前の光景に自分の目を疑いました。

 

 

 

なにせ、以前沈めたはずの超兵器が目の前に存在していたのですから…。

 

 

ここから先はあなた方もご存じかと思いますが…。

 

 

   ▽ ▽ ▽

 

 

シュルツが息を吐く。

 

それを確認するように、群像が口を開いた。

 

 

 

 

「私達がその…超兵器を攻撃した際に何か壁の様なものに攻撃が阻まれました。あなた方の艦にも発動していましたね。あれは私達で言う所の強制波動装甲が発するフィールド、通称【クラインフィールド】と同様のものなのですか?」

 

 

「クラインフィールドがどういうものか我々は完全には理解していませんが、あれは【防御重力場】です。理屈としては重力によって、実弾の弾道や起爆時の衝撃波などを反らし、自艦へのダメージを軽減するための装置です。高出力艦になるほど性能は優れ、まるで砲弾を弾き返しているかの様に見えます」

 

 

「成程、やはり少し仕組みが違いますね。私達のクラインフィールドは自艦へのダメージを一定量蓄積する事により、蓄積量をオーバーするまではダメージを受けないフィールドですから」

 

 

この世界の人間にはまるで荒唐無稽な会話を続けるシュルツと群像を尻目に、真霜は天を仰いだ。

 

常識を遥かに凌駕する兵器に対して海難救助が主な業務のブルーマーメイドが実際にどこまでの対応ができるかは未知数であったからだ。

 

 

しかし、だからと言ってただ民間人がやられているのを見ている訳にも行かない。

 

 

どうしたものかと頭を抱えた時だった。

 

 

「宗谷室長」

 

 

 

気付くとシュルツと群像が真霜に視線を向けている。

 

 

「あっあぁ、ごめんなさい…少し頭が混乱してしまって…どうされましたか?」

 

 

「ええ、我々の今後について少し提案が有ります」

 

 

 

シュルツから今後の鋼鉄と蒼き鋼の処遇や超兵器への対応についての提案がなされる。

 

 

(ホント、前途多難ね……)

 

 

真霜は自分達のこれからを想像し、痺れた頭を抱えることとなったのである。




お付き合い頂きありがとうございます

捌き切れなかった印象がありましたがすみません。






次回までしばらくお待ち下さい。




















とらふり!

真霜
「自分の道を行きなさい。日本の人魚達!」


シュルツ
「君にはそれが出来る!」


群像
「世界に風穴を開けることが…」



明乃
「風穴…ねぇ美甘ちゃん!」



美甘
「はいはい解った解った、風穴繋がりでドーナツだね?ミケ艦長ホントに甘いの好きだよねぇ…」




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