トライアングル・フリート   作:アンギュラ

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大変長らくお待たせいたしました。

それでは超兵器戦の続きをどうぞ


曇天の空に一条の光  vs 超兵器

   + + +

 

 

バミューダ沖

 

水平線に夕日が沈む頃。

 

夕焼けの空よりも遥かに鮮やかな深紅の機体がペガサスに迫る。

 

 

「改アルケオプテリクス接近!す、凄まじい弾幕を張って突っ込んできます!」

 

 

超長距離空対艦ミサイル バルカン砲や大口径ガトリング砲 更には魚雷迄、改アルケオプテリクスはそれらをペガサス一点に集中して放ってきた。

 

一隻を標的にするにしては余りにも過剰な弾数。

 

 

「少し持てば良い!全ての防壁を展開しろ!」

 

 

シュルツの怒号が響き渡る。

ペガサスにいる全てのクルーが改アルケオプテリクスの接近に備えた。

深紅の凶鳥は、音速でペガサスに迫る。

 

 

「爆煙が晴れた!?て…敵超兵器、高度低下!爆弾槽開きました…殲滅爆撃…来ます!」

 

 

「進路そのまま!絶対に気取られるな!総員、対爆防御!」

 

 

全員が手近物に捕まり、体勢を低くする。

超兵器の期待がみるみる大きく迫ってきた。

 

 

(もう少し…もう少し…今だ!)

 

 

「大戦艦ハルナ!頼みます!」

 

 

改アルケオプテリクスがペガサスに差し掛かり、爆撃槽から滝のように爆弾が投下され始めた時、ペガサスの直ぐ脇の海中から一発のミサイルが飛び出した。

 

ミサイルは改アルケオプテリクスの爆弾投下用ハッチの中に飛び込み、そして…。

 

 

ビギィィィン!

 

 

起爆と同時に強力な¨電磁パルス¨が超兵器内部で放射され、飛行を制御しているシステムを焼き切った。

 

 

「各種システムは無事か?」

 

 

「は、はい!簡易クラインフィールドが電磁パルスから本艦を護ってくれました!」

 

 

一安心したシュルツは直ぐ様超兵器に視線を向ける。

システムを焼ききられた改アルケオプテリクスは、ただただ惰性で飛行する鉄の塊に成り果てていた。

 

すると、超兵器放たれたミサイルが飛び出した海中から、一機の¨航空機¨が姿を現す。

 

 

〔超兵器の飛行 兵器 動力のシステムは完全に停止した…。しかし、超兵器機関だけは未だ健在のようだ。〕

 

 

セイランに乗ったハルナだった。

 

 

 

 

   + + +

 

 

現在より少し前…。

 

 

ハルナは上空から戦場を見つめる。

 

 

(成る程…。上空から直接目視での観測。センサーでの感知による観測では理解できない互いの思考も、こうして客観的に観測すれば理解できる。人類はこうした多角的観点から物事を把握することで戦術を生み出すわけか…。見たところ、あの航空機型超兵器の存在が場を乱しているようだが、何か策は有るか…。)

 

 

彼女は、航空機を撃墜しつつも戦場の観測を継続する。

 

 

(!)

 

 

視線の先には、深紅の体で空を我が物顔で飛行する超兵器の姿が写った。

ナエメラルド色の瞳を輝かせ、彼女は観測を始める。

 

 

(ペガサスを爆撃する気か?防壁の作動率としてはギリギリと言えるが…。)

 

 

超兵器がペガサスに対して爆撃を開始。

 

凄まじい爆煙に包まれる味方を眺めながら、彼女は兵器らしく情に流されることのない視点で観測を継続した。

 

 

 

(大した爆撃能力だ。それにしても成る程だな…。)

 

 

瑠璃色の瞳がより輝きを増す。

 

 

(航空機型は防御重力場を発生させられない筈だが、奴はそれを展開した、¨爆撃直前¨にな。そして直後には防壁を展開していない…。)

 

 

ハルナのメンタルコアはたアルケオプテリクスを撃墜する計画を演算していく。

 

 

飛行型超兵器は防御重力場を展開¨出来ない¨

理由は簡単だ。機体を浮かせる為の揚力は、前進する際に主翼に風が当たる事で発生する。

よって、自分を中心に重力を外側の方向にしてしまう防御重力場の展開はは、航空機としての根本を揺るがしかねない問題なのである。

 

 

しかし、アルケオプテリクスは、殲滅爆撃を行う際、爆撃の直前に防御重力場を形成していた。

それを展開していない丸裸の体で、敵の真上を通過する事は、同時に被弾のリスクを負うことになる。

 

艦が受ける被弾とは違い、空中を飛行するアルケオプテリクスにって被弾は、即墜落に直結し、自らの運命を決する事になるのだ。

 

 

故に、爆撃弾を投下する直前には、自身の高度を犠牲にしてでも防壁の展開は必須になる。

 

アルケオプテリクスは、爆撃の命中精度をあげるために降下していた訳ではなかったのだ。

 

 

そして、爆撃の混乱に乗じて防壁を解除し再び加速、隙を突かれる前に猛烈な飽和攻撃を再開、これが一連の手順だった。

 

 

それ故、超兵器とペガサスが最も接近し、尚且つ超兵器が無防備なる瞬間…それは爆撃開始直後、アルケオプテリクスが加速する為に防壁を解除するほんの僅かの時間だけだった。

 

 

(僅だが隙はある。だが決定力がない…。)

 

 

ハルナの言う通り、爆撃されているペガサスが攻撃を行ったとしても、あの巨体に決定打を与えるのは正直微妙なところだろう。

 

良くて相討ち、下手をすれば沈められる。

 

ハルナが行った場合も同様だ。

 

 

セイランに搭載された空対空侵食ミサイルの本数では、精々機体の数ヵ所に穴を開けるのが精一杯、対空レーザーも電磁防壁に阻まれてしまうとなれば無意味。

 

 

撃墜こそされなくても、相手を追い込むことは叶わない。

 

 

(奴を落とすには正攻法では不可能…となれば、別の角度からのアタックが必要か…。だが、侵食弾頭意外にこれと言った兵器は……これか。)

 

 

電子撹乱ミサイルβ

 

ヒュウガと蒔絵による合作で、強力な電磁パルスとジャミング派が制御系統を完全に麻痺、若しくは使用不能にする兵器。

 

 

彼女が、現在艦隊が使用している兵器リストを検索した結果発見した兵器であり、播磨との戦いでどんな攻撃も凌いできた彼の艦の動きを止めた兵器でもある。

 

 

(これで奴を一時的にでも麻痺させることが出来れば、墜落させられるかもしれんな…。たとえ超兵器機関が生きていようとも、飛行が出来なきなければ奴は只の巨大な鉄の塊に過ぎん。だが…電磁パルスが余りにも広域に作用すれば味方にも影響が出る。強さの調整はヒュウガにしか出来ん…。)

 

 

 

〔ヒュウガ、少しいいか?〕

 

 

〔ハルナ!?今は手一杯なんだけど?〕

 

 

〔考えがある…もしかしたら改アルケオプテリクスだけでも何とかなるやもしれん。しかしそれにはお前の協力が必要だ…頼めるか?〕

 

 

 

   + + +

 

 

そして現在…。

 

ハルナの計画は成功し、電磁撹乱ミサイルは、超兵器内部で炸裂。

 

アルケオプテリクスは最早なにも出来ずただ惰性で飛行するのみであった。

 

そして更に、それは異世界艦隊にとって嬉しい誤算を生じる事となった。

 

 

「艦長!改アルケオプテリクスが、ニブルヘイムのいた方向へ向かっていきます!直撃コースです!」

 

 

 

「何!?」

 

 

シュルツは思わずニブルヘイムの方角を見つめた。

 

 

光子魚雷の起爆によって発生した水蒸気が、超兵器の巨体を覆っている。

恐らくその中心にニブルヘイムがいるのだろう。

 

アルケオプテリクスはその水蒸気の中心に向かって墜落していく。制御システムを焼かれた今、主翼を動かす事もままならなくなっているのだ。

 

 

 

「偶然とは言え、これは好機だ。上手く共倒れしてくれると良いが…。」

 

 

言葉ではそう言っていても、シュルツはの心は一向に落ち着かない。

 

 

ニブルヘイムは、仮にも彼の世界に於いて、帝国の総旗艦であったヴォルケンクラッツァーを守護するために幾度となく立ちはだかってきたムスペルヘイムと同型艦なのだ。

 

 

(何もなければ良いが…ん!?)

 

 

彼は目を凝らして超兵器の方角を見つめる。

 

光子魚雷の爆煙が晴れ、ニブルヘイムの巨体が再び姿を現した。

 

 

「あ…あれは…なんだ!?」

 

 

シュルツは驚愕した。

 

煙の晴れたニブルヘイムの艦首には、筒状の大型砲門のが、艦橋の両脇には、固定された細長く先端が三角になっている砲台が出現していた。

 

その内、艦首の大型砲台に赤黒い光が不気味に輝き出す。

 

砲門の照準は、前方のアルケオプテリクスに向けられていた。

 

 

《我ハ焦ガレル。 暗ク 寒ク 堪エ難イ悪臭ガ蔓延ル常闇カラ…。斯クモ美シイ主ガ放チシ光二我ハ焦ガレル…。 我ハ決意ス…必ズヤ下卑タル存在ノ駆逐ヲ成シ。 其ノ肢体ヲ御身二捧ゲ奉ランコトヲ…。》

 

 

「!!?」

 

 

《気高キ始祖鳥ヨ…。一足先二行ケ…死者の国(ニブルヘイム)へ…。》

 

 

 

ニブルヘイムの艦首に輝く赤黒い光が、一層眩しく不気味に光り…。

 

 

 

ブゥォォォォォン!

 

 

直径数十mはあろうかと言う光の束が、アルケオプテリクスに向かい、その巨体を真ん中から貫く。

その様は、蒼き鋼超重力砲に似ていた。

 

 

貫かれた超兵器は、そのまま真っ二つに¨切断¨される。

 

直後に…。

 

 

ボォォォオン!

 

 

超兵器機関が爆発したのだろう。

 

猛烈な対消滅反応による爆発で、二百mは有るであろうその巨体が瞬時に蒸発、消滅した。

 

それは辺りに凄まじい爆圧を撒き散らし、味方であった残りの航空機達を残らず凪ぎ払っていく。

 

 

超兵器直下の海面は空中での爆発で一気に直径数百m、深さ数十mも窪み、それが大波となって海を引っ掻き回した。

 

 

「し、至急防壁を展開しろ!急げ!」

 

 

ペガサスは防壁を展開する。

しかし、衝撃波を受けることが出来ても、海面のうねりを止めることは出来ない。

 

押し寄せる高波に、艦は大いに揺れた。

 

 

「ぐっ…ォアァァ!」

 

 

「きゃあぁぁ!」

 

 

艦内に悲鳴が轟く。

 

激しい揺れの中、博士は必死に手近な物にしがみつきながら、シュルツになんとか歩み寄る。

 

 

「うっ…ぐぅ!か、艦長。あれは恐らく…フォーゲルシュメーラに搭載されていた物と同様の超大型レーザー砲です!」

 

 

「なっ…!あのシュトゥルムヴィント級の二番艦を¨舜殺¨したあの兵器ですか?」

 

 

シュルツはいよいよ参ってしまう。

 

当然だろう。

なまじ超兵器の実態を知っているだけに、その兵器の脅威を認識出来てしまうのだから。

 

超兵器フォーゲルシュメーラ

 

岬明乃の両親が亡くなる切っ掛けとなった超兵器である。

異世界艦隊のクルー達は、一通り超兵器リストに目を通しており、敵の性能はある程度は熟知して入るが、やはり馴染みの薄い航空機型は理解の範疇外にある事は確かだろう。

 

フォーゲルシュメーラは飛行型超兵器で、博士が《グロースシュトラールの航空機版》と位置付けがされている。

この超兵器の最大の武器は《ホバー砲》

 

いまいちイメージが沸きにくいネーミングではあるが、言わば¨ホバーリング¨しながら放つ大型レーザー砲と言うことだ。

 

そう、この超兵器が先程消滅したアルケオプテリクスと決定的に違う点は、通常飛行の他にホバーリングが出来る点にある。

 

フォーゲルシュメーラは、細長い本体から四つの指向性ジェットエンジンが配置されている。

ドローンの羽をジェット化したとイメージしてもらえば良いだろう。

 

その指向性エンジンで、上下左右のあらゆる方向へ自在に移動でき、空中にホバーリングすることも可能なのだ。

 

そして機体の下部には、大型の筒状レーザー砲台があり、飛行する様はトンボともいえる異形の形をしていた。

 

その大型筒状レーザー砲台こそホバー砲なのである。

 

360°どの方向へも自在に旋回、発射が可能であり、発射の際は自身の真下から照準対象に対して角度を変えながら放つ方式を取る。

 

その様子は、正に¨海を叩き割る¨と言う形容が最も近い。

 

更に、このレーザー兵器は余りの高威力の為、¨電磁防壁が意味を成さない¨。

 

つまり、当たれば終わりなのである。

 

それは、前途のシュルツの言葉にもあったように、彼の艦隊が撃沈に成功した、超兵器シュトゥルムヴィントの二番艦ヴィルベルヴィント。

 

それを米国がサルベージをして復元し、味方艦隊に組み込んだ。

 

ホバー砲はそのヴィルベルヴィントを、ものの¨数秒¨でスクラップにしてしまった程の威力なのである。

 

 

「厄介だな…。」

 

 

シュルツの額にジワリと汗が滲む。

博士の顔色も完全に青ざめていた。

 

 

「か、艦長。あの巨大レーザー砲を《Ωレーザー》と呼称し、各艦に警告した方が良いかもしれません!それに、艦橋の両側に出現したのは、恐らくはプラズマ砲です。更にεレーザーを加えれば、ニブルヘイムは電磁防壁を貫通しうる兵器を三つも備えていることに成ります。その旨も各艦に知らせなければ被害は免れません!」

 

 

「解りました…ナギ少尉!至急、各艦に量子通信で伝達しろ!」

 

 

「は、はっ!」

 

 

ナギは急いで、味方へ通信を送る。

 

シュルツは、その間もニブルヘイムをにらみ続けていた。

 

 

   + + +

 

 

光子魚雷の衝撃波は、海中にも及ぶ。

 

 

401は、クラインフィールドを展開してこれを防いでいた。

 

 

「さっきの話聞いたか?」

 

 

「ああ、どうやら敵の旗艦が本性を現したらしいな…だが、俺達のやることに変更はない。予定通り、超兵器潜水艦アームドウィングの発見と撃沈を遂行するだけだ。」

 

 

 

「それには先ず、取り巻きのレムレースの撃沈を目指すと言うわけですね?」

 

 

「そうなるな。だから…。」

 

 

クルーと会話をする群像だが、彼は艦長の椅子に座ってはいない。

 

彼の特等席にすわる者、それは…。

 

「頼むぞ¨艦長¨。」

 

 

「うん…頼まれた。」

 

イオナだった。

 

彼女は、普段群像が座る艦長隻に座っていた。

 

普段と変わらない人形の様な表情に、杏兵が不安そうな視線を向ける。

 

 

「群像…本当に大丈夫なのか?¨イオナ一人¨に任せちまってよぉ…。」

 

 

「心配ない。まぁ…説得には苦労したがな…。」

 

 

群像は少し困ったような笑い方で答えた。

 

実際、イオナは群像の提案に珍しく難色を示したのだ。

 

 

  ◆ ◆ ◆

 

 

「あなたに出会い…そしてあなたに従う。これは私が受けた唯一の命令…私の存在意義。群像の今の提案は私の存在を根底から覆す…承服できない。」

 

 

「そうかもしれない…だが、超兵器が俺達人類の戦術を熟知しているなら、必然的に¨霧の戦法¨は相手に有効な筈だ。かつて霧の艦隊に我々人類が敵わなかったようにな。小笠原での戦いのように一対一なら兎も角。多勢に無勢では流石に部が悪い。アームドウィングと対等な土俵に上がるためには、先ず連携をとっているレムレースの撃破は急務なんだ。」

 

 

「…………。」

 

 

「イオナ…。」

 

 

イオナは無表情のまま動かない。

 

思考しているのだろうと群像は思った。

 

 

彼の命令は、自らの指揮から解き放たれ、自由にして構わないと言う矛盾する内容ものだったからだ。

 

 

だが、これはイオナが…いや、霧の艦隊である彼女達¨全員¨が、いずれ乗り越えなければならない事であると群像は確信している。

 

 

人類と霧の艦隊が対等となるには、彼女達が人類を海から駆逐するよう縛っている¨絶対命令¨アドミラリティーコードの軛から解き放たれる必要がある。

 

 

勿論、群像は本国や他国の首脳陣の様に、霧の艦隊の壊滅や隷属を望んでいるわけではない。

 

彼女達を一つの意思ある¨生命体¨として、自らの意思で行動することを望んでいるのだ。

 

故に、イオナが上位命令に反して自ら行動することは、群像の描いた世界の実現において重要な意味合いが生まれてくる。

 

 

しかしながらイオナ自身は、脱け出し難い思考の迷宮に入り込んでいた。

 

 

(私の存在意義を否定する命令…でも私は、命令によって群像に従わなければならない。そうしたら私は、群像の命に従うと言う命令には従えなくなる。私はどうしたら…解らない…。)

 

 

彼女はコアに熱を帯びる様な感覚を覚えた。

極めて難解な問題に対して思考が追い付かない事もあるが、イオナにはその事にも増して、思うことがある。

 

 

(群像は…私の事が邪魔になった?もう…一緒に居たくない?)

 

 

勿論、彼女のコアは99

.9%彼がそんなことを考える人物ではないと結論を出している。

 

 

だが…彼女はどうしても残り0.1%の可能性を捨て去ることが出来ない。

 

 

イオナは群像から貰った懐中時計をギゅっと握り締める。

 

 

(あなたにとっての私って…何?)

 

《無論…兵器ゾ…。》

 

 

 

(!?)

 

 

彼女の表情は驚愕と不安を合わせた顔に変化する。

 

 

《貴様ハ兵器…貴様ハ道具。ソノ事実ハ揺ルガシヨウガナイ。貴様ノ艦長モ無論、ソウ考エテイル。》

 

 

 

(違う!群像は!群像は…。)

 

 

 

《何故、奴ダケガソウダト言エル?奴トテ同ジ人類ゾ…。道具ヲ使ワネバ生キテハ行ケヌ…。貴様ハ命ヲ育ミ、命有ル者ヲ生カス事ガ貴様ニ出来ルカ?出来ヨウ筈モ無イ…。》

 

 

 

(嫌…。)

 

 

 

《貴様ハ只、破壊スルタメノ兵器ナノダ。人類ハ自ラノ生存ノ為ニ兵器ヲ欲ス。ヨリ有能ナ兵器ガ現レレバ劣ル者ハ淘汰サレル。》

 

 

 

(嫌…。)

 

 

《貴様ハ…¨破棄¨サレタノダ。》

 

 

 

(イヤァァァ!)

 

 

 

イオナのコアが悲鳴をあげる。

沸き上がる感情で、自らをコントロールすることが出来ない。

 

いつからなのか…。

 

恐らくは彼女達の世界の硫黄島で、タカオと群像が楽しそうに話しているのを見た時に感じたモヤモヤした感情。

 

自分より優れている存在である大戦艦が加入したことによる焦り。

 

それらが、彼女の発展した感情プログラムの深い所に根付き、知らぬ間に大きくなっていたのだろう。

 

 

今や彼女のコアは、群像の事を正常に評価できないレベルにまでに成りつつあった。

 

 

(感情シュミレーションにerror…。修正プログラム作動…修正不能。再起動…error…再起動…error…error…errorerror…err…。)

 

イオナの表情から完全に感情が抜け落ち、同時に401の作動にも異常が見られ始める。

 

艦内の照明が不規則に暗明を繰り返し、重力子エンジンの示す波形が激しく乱高下を始めた。

 

 

「おいおい…なんかヤベェんじゃねぇか?」

 

 

「これは、小笠原の時と現象が酷似しています。イオナの感情プログラムに何か異常が有るのでは?」

 

 

 

「イオナ!どうした!?しっかりしろ!イオナ!イオナ!」

 

 

 

……

 

…………

 

………………。

 

 

 

 

氷の海

 

 

 

 

《嫌い…嫌いよ!》

 

 

そこに悲痛な叫びが響き渡る。

 

 

《嫌い…大嫌い!》

 

 

(誰?…あなたは誰なの?)

 

 

イオナの問いかけに返事はない。

 

その声は、ひたすら悲しみと怨嗟を含み、止むことはなく氷の海を支配する。

 

 

《嫌い…嫌い!大嫌い!嫌い、嫌い…大嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い!》

 

 

 

(あ…くっ…。)

 

 

イオナは痛覚など無い筈のコアにズキズキするような痛みを感じた。

 

何故かは彼女自身にも解らない。

 

しかし、イオナは声の主の感情が何となく理解できてしまうのだった。

故に彼女は呼び掛ける。

まるで泣いてしまった妹を諭す姉の様に…。

 

 

(泣かないで…。)

 

 

《嫌い!》

 

 

(悲しまないで…。)

 

 

《大嫌い!》

 

 

(お願いだから、ずっと一緒に居て欲しい…。)

 

 

《嫌ぁぁぁああい!》

 

 

 

(お願いだから…一人では…駄目!だって私達は、この世でたった一つの…え?たった一つの…何?)

 

 

もうすぐ口まで出掛かっている言葉を、彼女は何故か口に出来ない。

そして無情にも、彼女の思いは届かず、声の主は渾身の怨嗟を感情を露にした。

 

 

《何もかも…消え去ってしまえぇぇぇぇ!》

 

 

ビカッ!

 

 

(うっ…。)

 

 

突如、イオナの目の前に広がる氷の海に、赤黒い閃光が迸り、彼女は思わず目を閉じる。

耳には、声の主が発した叫びが、何度もこだまし、イオナのコア何度もチクリと刺すのだった。

 

 

 

 

……

 

…………

 

………………。

 

 

(ここは…。)

 

 

目を開けた彼女は、回りに纏わり付く闇に動揺する。

そして…。

 

 

(寒い…。違う、これは以前の…。)

 

 

メンタルモデルでの彼女が、本来感じる筈の無い強烈な悪寒にイオナは眉を潜めた。

 

 

 

《驚いたわ…。》

 

 

(!!?)

 

 

イオナが声のする方角に視線を向けると、後ろ姿で顔こそ見えないものの、純白のウェディングドレスを着た女性が立っていた。

 

 

(あなたは…誰なの?)

 

 

《その質問は無意味よ。プロテクトを施してしてあるわ。でもまさか、私の¨最後の記憶¨に侵入されるとは思わなかった…。》

 

 

(私は何もしていない…。)

 

 

《あなたの事では無いわ。…ソレの事よ。》

 

 

イオナは、後ろを振り返り、そして驚愕の表情のまま後ろへ飛び退いた。

そこにあったものとは…巨大な目玉。

 

 

縦に切れ長の瞳孔と赤く充血した眼球。

 

その獰猛な視線がイオナに向けられている。

 

 

《破棄サレシ者ヨ…。》

 

 

《無粋ね…。去りなさい!》

 

眼球が、言葉を発する前に、白い女性は手を翳す。

 

すると眼球の周囲に六角形の壁が瞬時に出現し、それを包み込んで闇の彼方へと飛ばしてしまった。

 

 

《大したものね…。私が構築した防壁をこうも簡単に突破されてしまっては立つ瀬が無いわ…。それにしても、本当に無粋ね。まさか、私と¨あの娘¨の記憶まで覗かれるとは思わなかったわ。これが¨嫌悪¨と言うものなのかしら。決して良い思い出では無くとも、あの娘と私の記憶に土足で入り込むのは許容し難いわ。》

 

 

イオナはその場を動けなかった。

 

白い女性が発する言葉は、口調こそ穏やかなものであっても、イオナが畏縮してしまうほどの、凄まじい威圧感を纏っていたからだ。

 

それを察した白い女性は、突き刺さる様な雰囲気を和らげる。

 

 

 

《ふふっ。ご免なさい。別にあなたを怖がらせるつもりは無いわ。それに怖がる必要も無いのよ?だってあなたは¨もう一人の私¨なのだから。》

 

 

(!!!?)

 

 

《久しぶりね、もう一人の私。そして初めまして…イ號401いや、イオナ…と呼ぶべきかしら?。あなたにとっては不本意かもしれないのだけれど、これが真実よ。》

 

 

(もしかして、潜水艦の私のコアがデュアルコアなのは…。)

 

 

《その通り。》

 

 

(そんなことが出きるのは…。もしかしてあなたは…。)

 

 

白い女性が振り返る。

 

 

(霧の艦隊 総旗艦¨ヤマト¨。)

 

 

黒く艶のある長い髪にウェディングドレスを纏い、落ち着いた大人の女性の顔が此方を向いた。

 

 

《そう…私はヤマト。霧の総旗艦。今は訳あって船体は所有してはいないわ。》

 

 

ヤマトは穏やかな笑みをイオナに向ける。

対照的に、彼女の表情は暗くなった。

 

 

(私は…あなたに作られた存在?)

 

 

《そうよ。あなたが見た私の記憶の断片。ソレが私が船体をもっていない理由。そして、私があなたを造った理由よ。私はあの娘を諦めてしまった。でも、もしかしたら…あの人の息子である千早群像なら…。だから彼と共に歩む存在を…あなたを造ったの。私のコアの一部をあなたに移譲して。》

 

 

(!?)

 

イオナは驚愕する。

 

無理もない。彼女の言葉が真実だとすれば、イオナ自身は、言わばヤマトの分身、若しくは401をベースとしてヤマトと融合した新たな存在とも言えるからだ。

 

不安が沸き上がるイオナを余所に、ヤマトは穏やかな笑みを崩さない。

 

 

《その表情。あの人の息子の影響で、感情プログラムが複雑に発達しているのね。此ならあの娘も…。》

 

 

(超戦艦ムサシ…。)

 

 

《…………。》

 

 

(解る。だって私はあなたの…。)

 

 

《そう、そうね。それなら、あなたが今成すべき事、そしてあなたと私の関係性の事も解るわね?》

 

 

(…うん。私が滅びればあなたが。あなたが滅びれば私も滅びる。)

 

 

《ご免なさい…。》

 

ヤマトは本当に申し訳なさそうに、謝罪をした。

だが、イオナは首をかしげる。

 

 

(何故謝るの?私はただ、命令に従うだけ。)

 

 

《そう…そう言う事なのね?…あなたの感情プログラムはまだ成長の余地がある。》

 

 

(成長?)

 

 

《ええ。あなたの感情は、まだ成熟した人間のソレには至っていない。故に、方向が定まらず安定しないの。彼の事を信じきれないのもそう。そしてそれは揺らぎとなり、さっきのアレの侵入を許してしまう。私がいくらセキュリティをアップグレードさせても、これでは意味が無いわ。》

 

 

(どうすればいいの?)

 

 

《どうすれば?あなたのコアはとっくに結論を導き出しているわ。あなたの今の問いは、私に結論を聞く為じゃない。何故その結果に至ったのかを理解する為の行為なのよ。》

 

 

(でも…私は群像に…。)

 

 

《信じなさい。》

 

 

(え?)

 

 

真剣な眼差ししで見つめてくるヤマトの瞳から、イオナは目を離せなかった。

 

 

《あなたのコアの選択を信じなさい。そうすれば、結論は自ずと付いてくるわ。》

 

 

(解るの?)

 

 

《いいえ…解らないわ。喩え私が未来予知に近い演算が出来たとしても、理解を超えた未来を許容できない以上、そんな未来予知には意味などないわ。いい?これだけは信じて。¨運命¨など信じてはいけない、ソレは信じるものではなく切り開くものだからよ。》

 

 

 

(…………。)

 

 

《私もかつて、選択を誤ってしまったわ。あの娘を諦めてしまった。でも次は決して諦めない!》

 

 

(ヤマト…。)

 

 

《戻りなさい。彼らの下へ。決して目を背けては駄目。》

 

 

(!!?)

 

 

イオナの身体が光を放ち、身体が宙に浮き、ヤマトの姿が遠くなっていく。

 

(ヤマト!待って!まだ…私は!)

 

 

《イオナ、あなたが得たその感情を大切にして!私も、あの娘も持ち得なかったその感情を!あなたは…千早群像の艦なのだから!》

 

 

(ヤマト!お願い!もう少しだけ話を…!)

 

イオナは浮遊する身体をどうすることも出来なかった。

ヤマトの姿はどんどん小さくなり、遂には見えなくなった。

 

 

ヤマトはイオナが去っていった方角に視線を向けながら一人暗闇に佇む。

 

 

《あなたが早く、その感情に気付けると良いわね…良き航海を、メンタルモデル…イオナ。》

 

 

……

 

…………

 

………………。

 

 

 

イオナの意識が現実に引き戻される。

 

 

(私は…誰かと会話をしていた?ログをチェック…完了。会話の記録はある。でも会話の一部内容と相手の情報にプロテクトが掛かっていてアクセスが出来ない…。)

 

 

イオナがモヤモヤとしたら感情を抱いていると、急に放たれた怒声が聞こえてきた。

 

 

「全く群像ったら!女の子にそんな言い方したら駄目でしょう!」

 

 

いおりだった。

彼女は腰に両手を当てて、群像に向かって叫んでいる。

どうやら心底ご立腹の様だった。

 

 

「重力子エンジンに妙なリップルを起こしていたから何かと思って翔んできてみれば、イオナにそんなことを言ってたなんて!群像は無神経過ぎるよ!」

 

 

「おいおい…落ち着けって。」

 

 

「杏兵は黙ってて!」

 

 

「…はい。」

 

 

「何故だ?俺は別にイオナの気持ちを害する事は言っていないと思うが…。」

 

 

 

キョトンした顔をしている群像に、さっきまで捲し立てていたいおりは、呆れた顔で今度は頭を抱える。

よく見ると、群像と同様に状況を理解できていないらしい杏兵や僧と、対照的にいおり同様呆れた表情の静の姿が窺える。

 

少し冷静さを取り戻したいおりは、イオナの背後に回り、彼女の頭をそっと撫でた。

 

 

「あのね群像。今イオナは傷付いてんの!解る?」

 

 

「傷付いている?何故だ。」

 

 

「はぁ…。イオナにとって群像の命令は¨特別¨なの。あんたがさっきいったのは、自分の指揮から外れていいから勝手にしろって言われてるみたいなもんじゃない。最近はタカオやヒュウガ達も居るしさ、きっと自分が不要になっちゃったから群像がそんなことを言うんだって思ったんだよイオナは。」

 

 

「!」

 

 

「イオナが自分の艦長からそんなことを言われて傷付かないと思う?あんたのやったことはそう言うことなの!」

 

 

 

群像はイオナの下に歩みより、彼女の顔を覗き込んだ。

 

 

「イオナ…。」

 

 

「…群像?」

 

 

「イオナ!気が付いたのか…良かった。」

 

 

自分の無事に安堵する群像を見て、彼女はとても不思議な気持ちになった。

 

 

(群像…私の事心配してくれたの?何故かは解らない…でも何かコアがポカポカするような感じがする…。)

 

 

 

《あなたのコアはとっくに結論を導き出しているわ》

 

《信じなさい。自分のコアの選択を…。》

 

 

(!!!)

 

彼女のコアが、深層意識での誰かとの会話を再生する。

 

イオナは深刻な顔で自分を見つめてくる群像に眼差しを向けた。

 

 

 

「イオナ…済まなかった。君を不安にさせてしまって。言い訳になってしまうかもしれないが、俺はイオナを一度たりとも不要に感じたことはない。君は、あの閉塞した世界から俺を引きずり出してくれた大切な存在なんだ…。」

 

 

(大切な存在…。)

 

 

既に結論は出ている。

 

あの声の言う通りだった。彼女のコアは初めから、群像が彼女を裏切らないと結論を出している。

 

それを発達途上の感情プログラムの揺らぎが不安を増長させ結果、群像と言う存在を彼女自身が信じきれていなかったに過ぎなかったのだ。

 

 

「だから将来、俺達が霧の艦隊をアドミラリティーコードから解放して君達が自由な意思で物事を判断出来るようになったとき、君には自分の意思で俺と一緒にいるかどうかを決めてほしかったんだ。」

 

 

「群像…。」

 

 

「俺は、全ての事が終わっても、君と共に世界を見て回りたい。イオナ…君はどうしたい?意思を聞かせて欲しい。」

 

 

「私は…。」

 

 

艦橋が静まり返る。

無理もない。イオナと群像の様子は、正に告白やプロポーズをしているカップルの様であった。

 

思わぬ展開に、女性陣は顔を真っ赤にし、男性陣は二人の様子を固唾を飲んで見つめる。

 

その時だった。

 

「!?」

 

群像を含む401クルー全員が驚愕した。

 

 

イオナの頬を一筋の滴が流れていく。

 

 

メンタルモデルイオナは泣いていた。

これにはいつも冷静な群像ですらも、狼狽えてしまう。

 

「い、イオナ!?どうかしたのか?俺はまた気分を害する事でも…。」

 

 

「ううん。違うの…。群像、私は…あなたの艦。あなたと共にあり続けることが、私の存在意義。これは私に与えられた唯一の命令。そして…私自身が自らに課した命令。」

 

 

「イオナ…それでは。」

 

 

イオナは、潤んだ瞳で群像を見つめ、少し桃色に変化した頬で拙いながらも笑顔を造った。

 

 

「群像…私があなたの航路を開く。群像は私の行き先を決めて。私は、何処までも、どんな時でもあなたと共にある。」

 

 

群像は、彼女が見せた年頃の少女と何ら変わらない表情に、一瞬だけ驚きの顔を見せるが、直ぐに優しい笑顔ををイオナへと向けた。

 

 

「宜しく頼む…イオナ。」

 

二人は笑顔で見つめ合う。

その様子にいおりと静は顔を赤らめ、杏兵は口笛を吹いて、僧は頷いている。

 

 

霧のメンタルモデルの彼女がまた成長した瞬間だった。

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

そして現在。

 

 

群像の提案を承諾したイオナは、行動を開始する。

 

401クルーは、イオナの指示があった場合のみサポートをすることになった。

 

 

「何かあれば遠慮なく言ってくれ。これでも、一通りはこなせるよう訓練は受けてきたつもりだ。」

 

 

「うん。解った。」

 

 

「ご謙遜を。この艦に艦長より優秀な方などいませんよ?」

 

 

「そんなことは無いさ。皆各分野で俺より秀でた者ばかりだ。そうでなくては、誘いはしなかったさ…よし!イオナ、頼む。」

 

 

「ガッテン…頼まれた。それじゃあ皆…『掛かるぞ!』」

 

 

「「了解!」」

 

 

群像の口癖を真似るイオナに、クルーから笑顔で返事が帰ってくる。

 

潜水艦同士の戦いで、負けるわけにはいかなかった。

 

 

「重力子エンジン並びに、クラインフィールド作動。作動パターンを、機関長四月一日いおりの行動から参照。各種兵装のチェック…完了。各種センサーチェック…完了。情報収集の行動パターンの一部を八月一日静から参照。誘導パターン並びに操舵の一部を橿原杏兵、織部僧より参照。総合指揮のパターンの一部を艦長、千早群像より参照。401、システムオールグリーン……発進。」

 

 

 

401が再び動き出す。

クラインフィールドが展開され、重力子エンジンから発する轟音を極小にした。

 

霧の技術によって産み出された401は、史実の伊號四〇一とは桁違いの加速で、あっと言う間に水中での巡航で50ktという水上艦を上回る速度に達する。

 

 

「各種センサーを起動。策敵開始……磁気センサーに微弱な反応を検知。数は六。敵は今、一ヵ所かたまっている。光子魚雷の衝撃波を緩和する目的があった模様…。攻めるなら今。」

 

 

401後方の一部が展開、それは重力子エンジンの出力を最大限に発揮し、一時的に全速以上の高速を出すことができるフルバーストモードへの移行を示していた。

 

 

 

 

 

「フルバーストモードへの移行を確認。エネルギー充填完了まで残り127秒。」

 

 

 

「おいおい…。敵に突っ込む気か!?」

 

 

「霧には元より、戦術と言うものは存在しませんでしたから。このまま突撃…と言うことなのでしょうか?」

 

 

「信じよう。イオナはさっき、行動の規範である思考ルーチンの一部に、俺達の思考を取り入れると言っていた。以前の霧の様なオーバーテクノロジーに頼った力押しとは異なった戦術を取っていく筈だ。」

 

 

群像は、となりにいるイオナを見つめながら答えた。

その落ち着いた様子からは、これから困難が訪れる事など微塵も考えておらず、彼が彼女を信じていることを周りに理解させるには十分だった。

 

 

「フルバースト起動まで残り73秒。蓄積された経験から、敵の次行動パターンを推測、対策を検討中…完了。音響魚雷の周波数を変更。」

 

 

重力子エンジンの稼働音が更に高まっていく。

反撃の準備は刻一刻と整いつつあった。

 

 

 

一方の超兵器潜水艦レムレースの集団は、海中に僅に響く401のエンジン音に気付いていた。

 

 

ガチャン…。

 

一隻の魚雷発射官が開く。

 

音響魚雷を放ち、再び行方を眩ますつもりなのだ。

 

他の超兵器も発射官に魚雷を装填、攻撃の準備を整えていく。

 

 

その時だった。

 

海中を何かがひた走ってくる。

 

魚雷か…。

 

超兵器達は警戒を強めた。

しかし、此方に真っ直ぐ突っ込んできたものは…。

 

 

 

ゴォォォォォオ!

 

 

物体が海中を掻き分けて進んでくる。

 

 

それは、魚雷よりも遥かに巨大な¨潜水艦¨だった。




お付き合い頂きありがとうございます。


アルペジオ中心の話でしたが、次回はミケちゃん達の活躍を描いて参りたいと思います。

尚、1.5章に架空兵装の紹介をいれましたのと第一話の冒頭部分を付け加えましたので、宜しければご覧ください。


それではまたいつか




























とらふり! 1/144ちょうへいきふりいと



播磨
「来たぁぁぁぁ!漸く来ましたホバー砲!あの海を叩き割る感じサイコー!」


荒覇吐
「チャージに要するに時間も短いし、威力も十分だしね。それにしても、ホバー砲使う時って必ず、味方を消滅させてるわね。前にいた世界でも敵側に落ちたヴィルベルヴィントを消滅させるために使ってたし…。」


シュトゥルムヴィント
「ああ~。アレうちの妹が、めちゃくちゃトラウマになったって嘆いてましたよ。」


荒覇吐
「やっぱり…。」



???
「お疲れぇぇぇぇぇ!」


荒覇吐
「あっ…アルケオプテリクス!?お、お疲れ様ぁ~。」


アルケオプテリクス
「クソォォォ!もう少しで奴等を根絶やしに出来たと言うのにぃぃぃぃ!」


荒覇吐
(大分荒れてるわね…。こう言うとき話し掛けると厄介だわ。播磨ですら知らんぷりしてるくらいだもの。そんなことだから誰とも艦隊組んで貰えないのよ。一緒にいたアルウスの苦労が目に見える様だわ。)


シュトゥルムヴィント
「お、お疲れ様でした。活躍見てましたよ!新型ボディ格好良かったです!」


アルケオプテリクス
「んだとぉぉぉぉぉ?」


荒覇吐
(あいつホント馬鹿ね!今話し掛けたら…。)


アルケオプテリクス
「俺より高いところから高みの見物とは良い度胸だなぁぁぁぁぁ!ええええ?」


近江&播磨&荒覇吐
「防御重力場展開!」


アルケオプテリクス
「喰らえぇぇぇ!視界も希望も何もかも見えなくなるほどの俺の怒りをォォォォォ!」



ボォォン!ズゴォン!ボゴォオン!!


シュトゥルムヴィント
「ギィィヤァァァァァアアア!」


近江
(味方に止めを刺されて、心中穏やかじゃないようね…ああなったら弾切れになるまで収まりそうも無いわ。それじゃ私は次なる動向を見守るとしましょう。ニブルヘイムだけが、切り札ではないと言うことを思い知るといいわ。)

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