トライアングル・フリート   作:アンギュラ

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お疲れ様です。

第2話となります

上手くまとめられたかとても不安ですが、どうぞお付き合い下さい


それではどうぞ


灼熱の蹂躙   vs Unidentified ship

   + + +

 

 

市街地は正に地獄だった。

 

彼女達はパニックになった人々を宥めて、避難の誘導する。

 

 

横須賀はもともと海岸のすぐ近くまで切り立った山々に囲まれており。トンネルも多い。

 

 

 

そこに逃げ込めれば、艦砲やあの光の線から逃げられるかもしれなかったからだ。

 

 

 

 

「皆さん落ち着いてください慌てないで!」

 

「怪我をした人にてを貸してあげてください!」

 

 

 

 

彼女達は必死に声を張り上げて少しでも安全な所へと人々の誘導を試みた。

 

 

 

しかしその時、明乃達の上空を高速の何かが飛翔して行く。

 

 

驚くべき事に、それはさながら¨鋼の鳥¨と言うべき形をしていたのだ。

 

 

 

「何ですの?」

 

 

 

楓は、予想外の光景に思わず立ち止まって上を見上げる。

 

 

 

それらはどうやら海上に鎮座している巨大艦の左右に並んでいた平らな甲板から飛び立っている様で、大群で此方に押し寄せて来ており、その中の一つが、腹に抱えていた¨黒いモノ¨を投下して来た。

 

 

 

黒い物体は逃げ惑う群衆のど真ん中に落下し…。

 

 

 

 

ドォォォォォン‼

 

 

 

耳をつんざく轟音と共にソレが爆発した。

 

 

 

灼熱の爆風と炸裂した破片が周囲に広がり、大勢の人々は悲鳴すら上げる事なく凪ぎ払われて行く。

 

 

そして彼等の一部は明乃の達一行にも迫って来ていた。

 

 

 

「来た!来たよ!ねぇ、タマ…」

 

「伏せて‼」

 

 

 

 

志摩は珍しく声を張り、芽衣の頭を地面にくっ付けて自らも伏せる。

 

彼女の叫び声を聞いた明乃達も慌てて地面に身体を伏せた。

 

 

次の瞬間。 

 

 

 

 

ズガガガガガガガガガ‼

 

 

 

 

空中からの突然の銃声が鳴り、それが明乃達の頭のすぐ上を通過して付近にいた人々の身体を次々と穿って引きちぎる。

 

  

 

 

「イヤァァァァ!うぅ…うっ、うぇぇ!」

 

 

 

「やめて!もうやめてお願い!」

 

 

 

 

目の前で起きた事態に付いていく事ができず、もえかは悲鳴を上げ、芽衣は自らに迫った死の恐怖から嘔吐する。

 

 

その時、

 

 

「うわぁぁ!お父さん!お母さん!」

 

 

 

明乃達が振り向くと、そこには少女が泣き叫んでおり、彼女達は駆け寄って状況を確認する。

 

 

 

「どうしたの?」

 

 

 

「お父さんとお母さんが…うわぁ!うっ…うっ…」

 

 

 

 

近くには折り重なるように倒れた二人の男女がいた。

 

おそらくこの子の両親であり、爆発からこの子を守ろうとしたのだろう。

 

 

 

明乃が脈を確認するが既に手遅れであった。

 

二人の頭部から出血が診て取れる。先程の爆発の爆風で飛び散った破片や瓦礫が頭を直撃したことが致命傷になったのだろう。

 

 

 

少女は泣き叫びながら両親の遺体を揺すり続けていた。

 

 

「お父さんお母さんどうしたの?早く帰ろうよ…」

 

 

 

「落ち着いて!ねぇ君、お姉さん達と逃げよう?大丈夫…大丈夫だよ!今はとにかく逃げなきゃ!」

 

 

「イヤ!おとうさんとおかあさんと一緒に行くの!」

 

 

 

「…!」

 

 

明乃は少女を強く抱き締めた。

 

 

過去に両親を海難事故で亡くした経験を持つ明乃は、少女がどんなに不安であるのかが痛いほど理解できてしまっていたのだ。

 

 

 

故に明乃は優しく、そして諭すように語りかけた。

 

 

 

事故当時、救助する為に駆け付けてくれたブルーマーメイドの隊員が、自らを冷たく暗い海から引き上げ、両親が居なくなった事に気付き錯乱してしまった自分を宥めてくれた様に…

 

 

 

 

 

「お父さんもお母さんも必ず起こして連れていく。君は良い子だから大丈夫だよね?だから…だから今は逃げよう?ここはすごく危ないから、ね?お願い……」

 

 

「良い子?」

 

 

 

「うん…」

 

 

「うん…わかった。おとうさんとおかあさん言ってた。良い子にしてれば、絶対に¨神さま¨が助けてくれるって!私お願いするの。【おとうさんとおかあさんがまた元気になりますように】って!」

 

 

 

「うん、そう…だね…」

 

 

「お姉ちゃん?泣いてるの?」

 

 

 

「あっ…ううん。ほ、ほら!今はとにかく逃げよ?」

 

 

「うん!」

 

頷いた少女に明乃は涙を浮かべた顔を無理に笑みに変え、鶫と美甘に彼女を託し、こちらに手を振る少女の姿が見えなくなるまで見送ってから辺りに視線を見渡した。

 

 

 

無惨に破壊され炎に包まれる変わり果てた灼熱の風景。

 

 

 

 

そこには身体中に破片が刺さりうめき声を上げる者、死体を前に泣き叫ぶ者、自暴自棄となり座り込む者。

 

 

 

そして…

 

 

 

 

死体  死体  死体

 

 

 

多くの死と絶望が満ちた世界は、まるで【地獄】が溢れた様だった。

 

 

 

彼女は炎に包まれた街から視線を外して天を仰ぐ。

 

 

 

普段、明乃は現場で【神】に祈ったりは決してしない。

 

 

 

それは困った人を助けるのは、神でも誰でもない¨自分自身¨であると信じているからである。

 

 

 

しかし今回ばかりは、個人でどうにかなるレベルを遥かに超越している事は明らかだった。

 

 

 

明乃は強く願っていた。

 

 

この地獄を…あの少女の様に大切な人の命が簡単に消えてしまうこの状況を終わらせる事が出来るのであれば誰にでも…いや、悪魔媚びても良いとすら思っていた。

 

 

 

(神様…神様どうか助けて!助けてください!お願い!)

 

 

彼女は天を見上げたまま、渾身の力で叫んだ。

 

 

 

 

「おねがぁぁぁぁぁい!」

 

 

 

黒煙が立ち上る灼熱の街に彼女の叫びが響き渡った時、不思議な現象が巻き起こる。

 

 

 

巨大艦が鎮座する手前の海上に青白い色の光が輝き始めたのだ。

 

 

 

それは徐々に広がって行き、横須賀の町を覆い尽くす程に大きくなって行く。

 

 

 

その場にいた全ての者はあまりの眩しさに目を開けていられない。

 

 

 

しかし唐突に光がおさまり、一同がもう一度海上に目を向けた先には、海に浮かぶ大きな街のような構造物と一隻の潜水艦が出現していた。

 

 

 

 

   + + +

 

 

巨大艦からの襲撃直後

 

 

巨大艦からの市街地への攻撃を受け、ブルーマーメイドの艦隊10隻が迎撃に向う。

 

 

 

艦隊からは何発もの速射砲や魚雷が巨大艦に殺到し直撃する。

 

 

 

筈だった…

 

 

砲弾や魚雷は着弾直前に何か¨透明な壁¨にでも衝突したかのように跳ね返ったり、弾道が急激に反れて全く直撃しなかったのだ。

 

 

 

艦隊は理解を超えた事態に何が起きたのか把握すら出来ず、ただ狼狽えるしかない。

 

 

 

直後に巨大艦の艦尾付近が再び発光後、あの緑色の光線が艦隊に殺到した。

 

 

 

驚くべき事に、光線は鋼の船体をいとも簡単に¨貫通¨して艦に修復不可能な大きな穴を穿ち、直撃した箇所は、まるでチョコレートを溶かしたようにドロドロに溶け落ちていたのだ。

 

 

 

 

 

たった今の攻撃で実に7隻の艦が¨瞬時¨に撃沈してしまう。

 

 

 

 

巨大艦の発射する未知なる攻撃に、残り3隻の艦も必死に攻撃を続けようと試みていた。

 

 

 

しかし、巨大艦左右の甲板上から大量の鋼の鳥達が飛び立ち、ブルーマーメイド艦隊の周りを飛び始め、その内の一羽が腹に抱えた魚雷を投下。

 

 

 

一隻の艦は、上空を舞う高速の兵器に気をとられて回避が遅れてしまう。

 

 

その間に、左舷付近に魚雷が直撃し炸裂し、直ぐに発生した浸水の為に艦は傾き始めて遂に船底が天を向いた。

 

 

 

残り二隻も速射砲で応戦するが、高速かつ小回りの利く動きに全く対応出来ない。

 

 

 

それを知ってか知らずか、空中の敵達は次々に爆弾や魚雷の投下を開始し、それらが1つまた1つと艦に命中し起爆、残り二隻も瞬く間に炎上して護衛艦としての役割を果たせなくなってしまった。

 

 

 

だが、彼等の攻撃は止むことはない。

 

 

 

次に鋼の鳥達が標的にしたのは、横須賀基地のドックや指令所だった。

 

 

彼等は、出港準備をしている艦や、基地内に集まってきている隊員達めがけて容赦の無い爆撃や銃撃を開始する。

 

 

 

 

 

 

「いぎゃぁぁあ!あ…熱づ、熱いぃぃぁあ!」

 

 

「凉子ぉぉぉぉ!ちょ…嘘でしょ!?えっ?えっ?ちょ…待っ、やだやだやだ!こっちに来ないで…ぎぃ!?でぇぶぁぁ!」

 

 

「嫌ぁぁぁあ! 私…結婚したばかりで…。こ、こないでぇ!ぃイぎッ…ちょっ…待って待っでぇ!赤ちゃ…お腹だけはぁぁ??ボグェあぁ!」

 

 

「ちくしょう!撃ち堕てしてや…グヒィ?…べげぇうっ!」

 

 

「あぎぃぃ!?わっ私の…私の左腕ぇえ…べぇゲらぁ!?…ボェグォ…へ…」

 

 

 

 

艦を包む灼熱の炎や銃撃により、隊員達は絶望の断末魔をあげてバタバタと倒れていく。

 

 

ここまで僅か15分。

 

 

その15分でブルーマーメイド横須賀基地は事実上の防衛能力を失ったのである。

 

 

 

真白達は先程から自分達を執拗に狙ってくる飛行兵器から逃げるため、かろうじて形を保っている基地の建物の物陰で身を潜めていた。

 

 

 

 

 

 

「一体何が狙いなの?」

 

 

「此方の基地ではなく市街地から攻撃したところをみると、必ずしも侵略が目的とは言いにくいわ。侵略ならまず防衛の要であるブルーマーメイドの基地を攻撃する筈だから」

 

 

 

「でも母さん、侵略が目的では無いなら、これは一体?」

 

 

 

「強いて言うなら¨破壊¨ね。あの艦は先程から微塵も動いていないし、最初の光の攻撃と艦砲以外はあの空を飛ぶ兵器からの攻撃だったから。しかも市街地への攻撃にしたって破壊力は有るけど、やはりこちらも光の攻撃や艦砲よりも空飛ぶ兵器からの攻撃の方が多い。それを考えると、向こうは此方の出方をうかがっているか自艦の兵器がきちんと作動するか¨試し撃ち¨しているみたい……」

 

 

 

真雪は同様している真霜の問いに、冷静に答えていた。

 

 

そんな母娘の会話を聞いていた真白はあることを思い出す。 

 

 

 

 

「姉さん、これは北極海で目撃された正体不明な艦と何か関係が?」

 

 

「写真で見た艦ではないにしても、その可能性は十分有るわ。いずれにしても、長くここに居るのは危険ね…。安全な所へ逃げ込まないと、この道の向こう20m先に機密情報保管用の地下フロアがある。そこに逃げ込みましょう。今応戦している皆にもここに避難するようさっき端末で指示を出しておいたの」

 

 

 

真霜の避難の提案に二人は頷く。

 

 

避難のタイミングを計ろうと周囲に意識を向けた彼女達の耳には、銃撃や爆撃の音が鳴り響いていた。

 

そのたびに今にも崩落しそうな程建物がギシギシ揺れて不快な音をたてて不安を増長させる。

 

真霜の言う通り、このまま1ヶ所に留まるのは余りに危険だ。

 

 

 

3人の額に汗が滲む。

 

 

真白は再び姉に視線を向けると、彼女は指を三本立てていた。

 

 

 

「いい?3つ数えたら向こうの地下に続く階段がある入口迄走るわよ。1・・2・・3走って!!」

 

 

 

真霜の合図で二人は思いきり駆け出す。

 

 

距離は大したことはない。

 

 

もうすぐたどり着く。

 

 

しかしその時…

 

 

 

 

「えっ!?うわぁ‼」

 

 

 

真白が爆撃で吹き飛んできた瓦礫に足をとられて転倒してしまった。

 

 

 

「うぅ、痛ぅ…あぁもうツイてな…え!?」

 

 

 

真白が目の前に視線を向けると、先程から執拗に自分達を銃撃してくる飛行兵器がこちらに向かって来ていた。

 

 

ブォオンと言うプロペラの音が高速で近付いて来るのを聞いた彼女は、自分に死が迫っている事を今更ながら自覚して必死で立とうとするも、どうやら足を挫いてしまったらしく激痛が走ってまた座り込んでしまう。

 

 

道の向こうから真雪と真霜がこちらに向けて何かを叫んでいるが、彼女は頭の中が飛んでしまって何を言っているのか上手く聞き取れない。

 

 

しかし自分は次の瞬間、あの得たいの知れない兵器に体を穴だらけにされ死ぬ事だけははっきりと理解出来た。

 

 

真白は目を固くつむる。

 

 

 

「………ん?」

 

 

しかし訪れるはずの衝撃はいつまで経っても来ない。恐る恐る目を開ける彼女の瞳には、あの飛行兵器は踵を返し飛びさって行くのが見える。

 

 

 

「た、助かった…でもなんで?」

 

 

視線をそちらに向けると、巨大艦の手前の海に青白い光が発生していた。

 

 

 

そして光が消えると同時に、船の上に建物やクレーンなどが沢山ある不思議な構造物が目に入った。

 

 

さながら、海に浮く港とも言うべき物と、潜水艦の姿も見える。

 

 

 

その時だ

 

 

先程から微動だにしていなかった巨大艦が急激に回頭し飛行兵器もそれらに向かって殺到する。

 

 

真白は目の前の光景が本当に現実の事なのか、にわかにはとても信じらず、ただ唖然と眺めている事しか出来ないのだった。




お付き合い頂きありがとうございます。

いよいよ彼らの登場です

次回まで今しばらくお待ちください

それではまた会う日まで





















とらふり!

真白
「艦長…無事でいてください!」


真霜
「なぁに真白。もしかして岬さんの事…。解るわぁ!私も昔は…ね。最も私は告白される方だったけど♪」



真白
「す、凄い!流石姉さんは、ベテランのブルマーだね!私も見習って必ず岬さんに…」


真雪
「岬さんよりもあなた達の将来が心配だわ…」

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