ナザリック in オラリオ   作:タクミ( ☆∀☆)

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冒険者

「え、どこかのファミリアに入らないと冒険者になれないんですか?」

 

ギルドの受付で大型のグレートソードを持ったフルプレートの男性が落胆した声音で話していた。

 

「はい、ダンジョンにはモンスターが発生します。神の恩恵を受けていない方では例え低層のモンスターでも太刀打ちできません。そのため冒険者になるにはファミリアに入り、神の恩恵を受けていただきます」

 

屈強なフルプレートの男性に怖じ気付くことなくハーフエルフの女性、エイナは答える。

 

「そ、そうなんですか………。でもこう見えても腕には自信があるんですが………」

 

なんとか粘る男だが、規則によって決められていることは変えられない。エイナは淡々と回答した。

 

 

「あ、でも見たところ冒険者向きな体格ですし、直ぐに何処かのファミリアに入れますよ」

 

目の前で項垂れている男性に堪らずエイナはフォローする。

 

「そ、そうですか。すいません。それではまた来ます」

 

「はい、お待ちしております」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ギルドから出てきたフルプレートの男とエルフにも負けない絶世の美女を連れた二人組が周囲から注目を浴びながら歩いていた。しかし、彼らに声をかけるものは居ない。フルプレートの男はその威容に似合わない大きな溜め息をし、後ろの女性は美貌に不釣り合いな目付きで周囲に睨みをつけながら周囲を警戒している。

 

(は~~~~、どうしようかな。いきなり計画が狂ったよ。息抜きのためにナザリックから出てきたのに冒険者になれないならオラリオで生活も出来ないし。そもそもファミリアに入って正体がバレたら不味いしな。いつかはファミリアも考えていたが今はその時じゃないし)

 

今、アインズは冒険者になるべくモモンとしてプレアデスのナーベラル・ガンマことナーベとともに歩いていた。転移後、ナザリックの防衛等が終わり情報収集、兼アインズの息抜きのためオラリオに来ていた。ただの会社員だったアインズにとって支配者の演技を24時間やり続けるにはとてもできなかった。ナザリックの運営を早々にアルベドに任せ、逃げるように息抜きをするつもりだった。アルベドから従者が居ないのは認められないとの声にしぶしぶプレアデスのナーベラルを連れてきていた。

 

 

町にはこれからダンジョンに行くであろうヒューマンやドワーフ、獣人の男達が意気揚々と歩き、それらの冒険者を相手にした武器屋や酒場・屋台の店員が威勢の良い声で呼び込んでいた。

 

(やっぱりこういうのは良いよな~。リアルじゃ栄養重視の食事で味なんて二の次だし。こんな体じゃなきゃもっと楽しめたんだろうけど。アンデットで良かったこともあるけどやっぱりデメリットもあるよな)

 

アインズがキョロキョロと好奇心と屋台から漂う匂いに興味を引き付けられると、屋台の店員のおばさんと目があった。

 

「そこの冒険者のお兄さん。ジャガ丸くんはどうだい。美味しいよ」

 

「え、いや、私は結構です。それに私はまだ冒険者ではないですよ」

 

アインズはそもそもアンデットで中身は骨なので買ったところで食事ができない。そもそもナザリックに金貨や財宝はいくらでもあるが外貨を獲得していないため無一文なのだ。

 

「そうなのかい?そんな格好してるくらいだから、てっきり冒険者だと思ったんだけど。」

 

「今日、初めてオラリオに来たばかりなんですよ。ギルドに行ったらファミリアに入らないと冒険者になれないみたいで帰ってきたところです」

 

「そうなのかい。それじゃあ、また冒険者になったらまた来ておくれよ。サービスするからさ。───そうだ!!うちのアルバイトに団員を募集している神様が働いているんだよ。今、呼んでくるからちょっと待っててね」

 

そういうと店員のおばちゃんはすぐ後ろにある屋台に戻って行った。

 

(ん、神様が屋台で働いているのか?なんか想像していたのと大分違うな。もう少し敬うものじゃないのか?)

 

アインズが疑問を浮かべているとおばちゃんが小さな女の子を連れて来た。ツインテールのかなり顔が整っている遠くから見ても可愛いと思える美少女だ。その幼い顔に似つかわしくない大きな胸が小走りに走る度に大きく揺れていた。間違いなく本物であろうその胸に、あるダンジョンの少女の顔がぷるぷると震えながら悔しがる姿がアインズの脳裏によぎった。

 

「おばちゃん、彼らかい?」

 

「そうだよ、ヘスティアちゃん」

 

「初めまして、モモンと言います。こちらはナーベです」

 

「こちらこそ、よろしく。ヘスティアって呼んでくれ」

 

ヘスティアは正直悩んでいた。確かに団員は募集していたが、つい最近ある少年が入ったばかりだ。かなりお気に入りの子ともう少し二人で居たいとも邪な思いが浮かぶ。しかも男性はともかく女性が入った場合、万が一にもあの子が誘惑されたら目も当てられない。

 

「君たち、僕のファミリアに入りたいのかい?」

 

「あ、いや、どこのファミリアにするかは決めていないのですが」

 

その言葉にヘスティアはニヤリと笑った。

 

「そうなのかい?実は僕のファミリアに入るには条件があるんだ」

 

「え、そうなのかい?ヘスティアちゃん」

 

とっさに思い付きの条件を語るヘスティアに今まで勧誘を受けていた売店のおばちゃんが驚く。そんなヘスティアの態度にアインズの後ろで控えていたナーベラルが青筋をたてながら腰に持っていた剣を抜こうとしていた。

 

「ま、待て!待つのだ、ナーベよ」

 

アインズが慌ててナーベラルをなだめていると、おばちゃんと話していたヘスティアがふとアインズ達を見て気付いた違和感を口にした。

 

「ねぇ、君達、本当に神々(僕達)の子かい?」

 

「えっ?」

 

(不味い、やはり変装していても神には分かるものなのか?)

 

アインズはしどろもどろになりながら答えを考えていた。

 

「ヘスティアちゃんーーー!!火っ!!火っーー!!」

 

「「えっ?」」

 

ヘスティアが横を見るとジャガ丸くんを揚げているフライヤーの油に火が燃え移っていた。

 

三人が思わず立ちすく。慌てたヘスティアはとっさに側にあった水を振りかけた。その瞬間大きな爆発とともに屋台が吹き飛んだ。

 

 

幸い怪我人は出なかったが無惨にも屋台は全損した。ヘスティアは揚げ物担当から外され、修理費を請求されることになった。時給10ヴァリスというもはやボランティアレベルの給料はせめてものおばちゃんの温情だろう。

 

この騒動でヘスティアからの追求を逃れたアインズはいそいそとナザリックへ帰還するのだった。

 

 




原作とは違い冒険者になれなかったアインズ様。

名声も得られない上に必要なお金も稼げないアインズ様はこれからどうするのか……。

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