ナザリック in オラリオ   作:タクミ( ☆∀☆)

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なんとか冒険者になったアインズ様一行

新たな一歩が幕をあける・・・かも


ルーキー

「初ダンジョンでセーフティポイントまで行った~~~~~~!?」

 

日が沈みかけた夕方のギルドには多くの冒険者達が探索を終え、獲得した魔石を換金のためごった返していた。その中でギルド職員のエイナの声が大きく轟いた。

 

「え、は、はい。ダメだったのでしょうか?」

 

それに戸惑いながら答えたのは前回冒険者になったばかりのルーキー、モモンだ。ちなみに他のメンバーはアインズの命令で渋々ギルドの別室で待機している。と言うのも前回の騒動でギルドから目をつけられているからだ。

 

新たに担当を請け負ったエイナは一週間ぶりに顔をだした冒険者モモンに安堵すると共に大きな溜め息をした。

 

「あのですねぇ、中層に行くには少なくともLv.2の上級冒険者になって、さらにしっかりと準備してからでないと危険なんです。いくらモモンさんがミノタウロスを吹き飛ばすほど強くてもダンジョンでは何が起こるか分からないですから無茶はしないで下さい。命は一つしかないんですから、冒険者は冒険してはいけないんですよ」

 

エイナの勢いに年上であるはずのモモンは小さくなって謝った。

 

「あの本来はLv.2に上がらないと中層に向かうのはお勧めしないのですが、モンスターフィリアの時に見せて頂いたようにモモンさんの実力は把握しているつもりです。ですが念のためステータスを見せていただけないでしょうか?」

 

「え、でもステータスは他人に見せるものでは無いと聞いたのですが・・・」

 

「はい、なので絶対に余計な箇所は見ませんし、口外もしません。もし、約束を破ったらなんでもします。お願いします」

 

アインズは躊躇するがこの女性は自分を心配して話してくれているのだと理解できた。

 

「いえ、そこまでしていただかなくても大丈夫ですよ」

 

そう言ってアインズはフルプレートを脱ごうとした。しかし、突然モモンの動きが止まった。

 

「? どうかされましたか?」

 

アインズは一瞬トラウマが脳裏をよぎった。もちろん彼女は何も悪くない、頭では分かっていてもどうしても不安を拭いされなかった。

 

「す、すいません。少しだけ後ろを向いていただけないでしょうか」

 

「あ、すいません。・・・はい、もう大丈夫です」

 

モモンはエイナから距離をとりフルプレートを脱いだ。もちろんその下にあるのは骨の体だが幻影を見せている。触れられなければ問題はない。

 

エイナはモモンの合図で振り向いた。そこには予想通りエイナより年上のヒューマンが立っていた。顔は東洋系の顔をしており、エイナのタイプという顔ではなかった。体を見るがそこまで筋骨粒々という訳ではない。どこからあのパワーが出るのか疑いたくなる。そしてお目当てのステータスを確認した。

 

 

モモン

 

Lv.1

力:A 801 耐久:B 775 器用:D 574

敏捷:C 683 魔法:I 0

 

 

(冒険者になったばかりでこのステータスはかなり異常なレベルね。ただこれではミノタウロスを倒せる筈はないんだけど・・・。スキル?)

 

エイナはスキル欄をどうしても気になり申し訳無いと心の中で謝りながらスキル欄を見た。

 

《スキル》【】

 

思いの外スキルの欄には何も記載されていない。まだまだ神の恩恵については不明な部分もある。これ以上追求するのは諦めた。

 

「すみません、ありがとうございました」

 

「もうよろしかったですか」

 

「はい、ステータスだけをみるとまだ中層に向かうには早いですが、実績もありますし特例として認めるとしましょう」

 

「ありがとうございます」

 

「た・だ・し、中層に向かうのであればせめてサラマンダーウールは人数分用意してください」

 

そう言ってエイナは割引券をモモンに差し出した。

 

「これは・・・、ありがとうございます。ですがどうしてここまでしてくださるのですか?ギルドは中立と聞いていましたが」

 

「そうですね、本当は同僚にも深入りするなとは言われているんですけど。それでも私が担当している冒険者が帰ってこなくなるんじゃないかと思うと少しでもできることがないかって考えるんです」

 

アインズはエイナの想いに過去の自分を重ねる。

 

「・・・そうですね。仲間が帰ってこないのは悲しいですからね」

 

モモンのポツリと言ったその言葉にエイナは重みを感じた。過去に仲間を失ったことがあるのだろうと推測する。あまり過去を聞くのは野暮だと話を切り替えた。

 

「そうですよ。私を悲しませるような事はしないで下さいね。そのためにモモンさんにはダンジョンの知識をできるだけお伝えしたいのですがお時間をいただいてもよろしいでしょうか?」

 

「ええ、そういうことであれば喜んで」

 

「今、ちょうど別の新人冒険者の方にも教えているんです。ご一緒でもよければダンジョン探索が終わった後にギルドまで来てください」

 

モモンは了承すると、一週間貯めた魔石を換金するため換金所に向かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ダンジョン地下2階、モモンは攻略ルートから外れた奥深くにいた。

 

「ここは行き止まりっと、だいぶこの階のマップも埋まってきたな。」

 

アインズは以前エイナに叱られたこともあり、少しずつ攻略していくことに変更した。エイナとの勉強の約束もあるため日帰りで帰ってくる必要があるのも理由の一つだ。何より上層などであれば地図が出回っているのは知っているが、自分で地図を作製し埋めていくという冒険をする事が楽しかった。どれだけモンスターを倒したところで経験値が稼げないのであれば下に急いで潜る必要はない。日銭稼ぎをするよりも未知を概知にしていくほうが冒険者らしく感じる。

 

「ここは食料庫(パントリー)というやつか」

 

見るとルームの中心にある水晶の樹木から染み出た液体をモンスターたちが摂取している。染み出た液体によって小さな池ができていた。

 

「ほう、なかなか美しいものじゃないか」

 

そうモモンが呟くと控えていた僕達が一斉にモンスターに襲いかかっていた。

 

「ん~、やっぱりぃ~美味しくないよぅ」

 

エントマがポリポリとゴブリンだったものの足を食べている。ギリギリ生きているのかまだ灰にはなっていない。

 

「そんなにこんなものが食いたいんすか?じゃあ手伝ってあげるすっよ」

 

ルプスレギナはパントリーの池に顔をつけていたコボルトの頭を鷲掴みし溺れさせている。

 

マーレはアインズに誉めてもらおうと、池の回りに局地的な地震を起こした。地割れに巻き込まれモンスター達の憩いの場は地獄とかした。そして一瞬にして食料庫(パントリー)など初めからなかったかのように部屋はもぬけのからになっていった。

 

「マ、マーレ。頑張ってくれるのはうれしいがダンジョン内で地震を起こすのは止めような」

 

誉めてもらえると思ったマーレは思いもよらない言葉に垂れた耳をさらに下に垂らした。

 

しばらく探索し約束の時間が迫ってきたためダンジョンの入り口に戻ろうとしているとモモンを呼ぶ声が遠くから聞こえてきた。

 

「あのーー、すいません。以前、ミノタウロスから守ってくださった方ですよね?」

 

モモンはその声の主に目をやるとベル・クラネルが小走りで近づいてきた。

 

「君はクラネル君か?」

 

「あれ、前自己紹介しましたっけ?はい、ヘスティアファミリアのベル・クラネルです。以前は危ないところを助けて頂きありがとうございました」

 

アインズは自分がモモンの時に挨拶をしていなかったことを思いだし焦った。

 

「いや、とんでもない。無事そうで何よりだ」

 

「ベル様、ベル様。この物凄く強そうなお方はどなたですか?」

 

「ああ、リリ。この人は僕がミノタウロスに追われていた時に助けてくれた、・・・えーっと、まだ名前を伺ってなかったですね」

 

まだ自己紹介が済んでいないことに気付きモモンの方を伺う。

 

「自己紹介が遅れました。私はモモン、そして後ろにいるのがルプスレギナ、エントマそしてマーレだ」

 

ルプスレギナは新しい玩具(おもちゃ)を見つけたようにニコニコと手を振った。残りの二人は特な興味もなく無反応だった。

 

「・・・・あれ、マーレ、ちゃん?」

 

「え?」

 

ベルの様子にモモンは戸惑う。

 

「マーレちゃんって、確かゴウン様のお屋敷にいたと思ったんだけど・・・。」

 

そして何かに気付いたようにベルはプルプルとモモンを指差し震えだした。

 

「ま、ま、まさか?ゴウン様ですか!?」

 

「しーー!静かにするんだ。これには深い訳があってだね、お忍びでここにいるんだ。この事は私と君だけの秘密だよ」

 

ベルの口を抑えこそこそと話している二人にリリは疑いの目を向ける。

 

「それでベル君、彼女は君の新しい仲間なのかい?」

 

「あ、はい。ゴ・・・()()()さん。と言ってもまだ最近会ったばかりなんですけどね」

 

わざとらしく話を切り替える二人に疑念の目を向けるが、自分の話を振られたため自己紹介をする。

 

「はい、ベル様のサポーターとして雇っていただいているリリルカ・アーデといいます」

 

「サポーター?」

 

「モモン様はサポーターをご存知ないのですか?」

 

「ああ、まだ最近冒険者になったばかりなんだ」

 

「サポーターというのは要はその名の通り冒険者のサポートをするのが仕事です。ただし、モンスター討伐などの支援はできません。サポーターとは冒険者になれなかった落ちぶれものです。冒険者の後ろで荷物を持ったり冒険者の邪魔にならないように動くのが仕事です」

 

「リリ、そんなことないよ。僕は凄く助かってるから」

 

ベルは必死に否定するがモモンはリリの容姿から確かに冒険者向きではないことを悟る。

 

「ここでお会いしたのも何かの縁です。見たところサポーターは雇っていないようですし、もし残念なことにベル様との契約が切られたときはぜひお雇い下さい。お安く働きますよ」

 

「ああ、私たちのパーティーには必要がない。これがあるからね」

 

そう言ってモモンは小さな袋を取り出した。

 

無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァザック)とは言うものの500kg程度しか入らない袋だがダンジョン探索には役にはたつ。ベル君、よければ一つ貸そうか?」

 

ベルとリリは見たこともないマジックアイテムに驚愕する。特にリリにとってはそんなアイテムが市場に出回ったら仕事など回ってこないだろう。

 

「ベル様!リリはもう役立たずなんでしょうか?」

 

「いやいや、そんなことないよ。リリにはいろいろダンジョンの事とか教えてくれてるし、すごい助かってるよ。モモンさん、申し訳ありません。凄くありがたいお話しなんですけど、お断りさせていただきます。それに最近大切な物を落としたばかりなのにそんな価値のあるもの怖くて持ち歩けません」

 

「そうか?別にたいしたものじゃないと思うが・・・」

 

リリはモモンという男の価値観の違いに圧倒される。もしモモンからマジックアイテムを奪えれば簡単に目標を越えるであろう。しかし、彼の後ろに控えている少女達をチラリと伺う。

リリには分かる。あれは絶対に敵に回してはいけないと。サポーターという弱者の中で培った処世術が警鐘を鳴らし続けている。

 

「ではベル様。換金所が冒険者で混んでしまいます。そろそろ行きましょう。」

 

「え、うん。それではモモンさん。これからもよろしくお願いします」

 

「ああ、お互い頑張ろう」

 

リリに引っ張られるようにベルはダンジョンの入り口に向かっていった。そしてモモンもそれに続き歩きだした。

 

 

 

 

 

「あ、モモンさん。お疲れ様でした。ちょうど今から勉強会を開こうとしていたんです」

 

エイナがギルドに顔を出したモモンに声をかける。

 

「こちらが私のもう一人の担当冒険者のベル・クラネル氏です」

 

「え?」

 

そういうと白髪の少年がモモンの方を顔を向けた。

 

「はじめまし・・・、あれ、モモンさん?」





まだリリはベルの仲間になっていません

分かりにくかったらごめんなさいorz

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