天パー侍と絶刀の少女   作:悪維持

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第肆話 侍と錬金術師の邂逅

キャロルside

 

 

 

『すまねぇな、お前さんを危険なヤマに付き合わせちまって』

 

 

「気にするな、オレも進んで受けた事だ……オレはオレで動き、お前もそれを実行する。…ただそれだけの事だ」

 

 

 

オレは玉座に座りながらとある友人と連絡をとっていた。そいつは悲観しながら謝ってくるが……オレはなんとも思っていない、むしろ協力したいくらいだ。

 

 

 

「グレモリーの小娘がちょくちょく邪魔をしてくるが、……もしあのじゃじゃ馬がヘマをして、戦争に繋がれば……今度こそ世界は終焉を迎える…………」

 

 

『…………わかった、後でサーゼクスにお前さんが来るって連絡しておくよ……もう、あんな戦争は御免だからな……』

 

 

 

ッ!?しまった、オレとした事が安心させる処か返って不安にさせるとは……!

 

 

 

「……辛い事を思い出させてすまない」

 

 

『気にすんな……じゃあな、また』

 

 

「あぁ……また」

 

 

 

そう名残惜しそうに通信を終え、オレは深くため息をはいた。

 

先ほど連絡をとっていた友人の名はアザゼル、堕天使陣営の総督をしている男でオレが心を許せる友人の一人にして……

 

 

 

 

 

片思いの相手だ…………

 

 

 

 

ーー回想ーー

 

 

 

……そいつと出会ったのは数千年前、オレが弟のエルフナイン、配下の自動人形達と共にこの城を完成させた翌日に次元の歪みから傷だらけの状態で現れ、昏睡状態となっていた。

 

 

人外を助けても、奴らはオレ達人間を見下すに決まっている……

 

 

そう思って暫くの間、様子を見る事にした。治療はエルに任せる事となり、時々ガリィやミカに手伝いをさせながら監視する様に仕向ける。ファラとレイアには外の世界で何が起こっているのか偵察を命令し、判明したのは三大勢力の派閥争いだった。

 

 

やはり奴らは己の事だけしか頭には無いと改めて知った。この男も同じではないかと疑いの目を向けた……だが、この男……いや、アザゼルは違った。

 

 

それはコイツを療養して2日が経過し、オレが様子を見に行った時の事だった。オレが部屋にやって来た瞬間に、アザゼルはゆっくりと瞼を開け、部屋の辺りを見渡した後……オレを見つめるとこう言った…………

 

 

 

『おいおい……堕天使の俺には似合わない綺麗な女神様だな…………』

 

 

 

そう告げられた瞬間にオレは身体中が熱くなるのを感じ…頭から蒸気を発しながら気を失ってしまった。

 

 

数時間後、意識を取り戻しエルに何があったか尋ねてみるとオレが気を失った後、ファラ達があの男を地下牢に閉じ込めたと教えてくれた。

 

オレは警護担当のレイアと共に男を閉じ込めている地下牢に向かった。

 

もしかすればオレを騙す為の嘘だとすればその場で処理する考えだったが……あろうことかアイツは笑いながらこう言った。

 

 

 

『そうだよな……堕天使の俺が天国に行けるハズねぇよな……でもよ、お前さんの様なすんげぇベッピンさんだったから綺麗な女神様と勘違いしちまったんだ……本当にワリィな』

 

 

 

どうやらオレを騙すつもりも無く、本当に思った事を口に出していたらしい。オレはそれを知った瞬間……胸が高鳴るのを感じた。

 

 

その後も地下牢に閉じ込めたアザゼルの事が頭に離れず……食事が喉を通らず、夜もおちおち眠れず、ボーっとしたりと……変な行動をとる様になってしまった。

 

 

オレのあまりの変わり様にファラは母性に目覚めたのかオレの体調を心配したり、レイアはオレがおかしくなった要因がアザゼルにあると考えて尋問を繰り返したり、ガリィはオレへの対応が可笑しいのを見て目眩がしたのか休んで寝込んだり、ミカは……ミカはいつも通りだな……と自動人形達も混乱していた。

 

 

そんな日が5日過ぎた頃、オレは気分転換に書庫へと足を運び本をあさりながら読んでいた。すると、一冊の古い本が目に入った。それはパパがオレ達の為に買ってくれた童話集だった。懐かしいのを見つけたオレは本をペラペラと飛ばし、ある物語に目をつけた。

 

 

 

それは魔女に呪いをかけられ、永遠の眠りについたお姫様を隣国の王子が仲間と共に助けに向かい、そして二人は愛し合い結婚するという物語だった。

 

 

 

愛……?もしかすればオレは……アイツを……あの堕天使に恋愛感情を抱いているのか!?

 

 

 

いや、あり得ない!オレは森羅万象を司る術を身につけた錬金術師だぞ!?それも人外の……堕天使の男に恋心を持つなんて…………

 

 

 

 

でも…否定しようとすれば……忘れようと思うと…………何故か儚く感じ、心が痛む…………

 

 

 

 

そして数日が過ぎ、オレらしくも無く……この胸の濁りをエルに話してしまった。オレが姉なのに、困ったら弟に頼るなんてな……

 

 

 

すると、エルは微笑みながらオレにこう告げる。

 

 

 

『別に可笑しい事じゃないと思いますよ?恋と言うのは自分で気づかない所でも相手の事を考えてしまって、好きという感情を抱いてしまうものだとボクは思います。だから姉さんは姉さんの方法で恋を頑張ってみたらどうでしょうか?』

 

 

 

オレのやりたい事………エルにそう言われたオレは少しずつではあるが地下牢に赴き、アザゼルと話す様になった。

 

 

アザゼルの話を聞いてみたら……自分も戦争で部下や多くの戦友を失い感じた悲しみ、守れなかった悔しさ…戦争を肌で感じたその悲惨さ……そして、何故生き物は上を目指したがり、殺し合わなければならないのか……そればかり、戦場で考えていたらしい………

 

 

そして、オレも気がつけば自身の過去を話す様になった。

 

 

 

パパが残した錬金術の研究技術を受け継いで弟と共にこの居城とファラ達を作った事。

 

 

 

錬金術の技術で、オレ達姉弟は人間よりも寿命が長引いた事。

 

 

 

そして、錬金術を使ってパパが実現できなかった『世界を知る』をオレ達で実現させる事。

 

 

 

 

過去の事を話していたら……何故か心が軽くなった。こうして誰かに話すのはエルとファラ達だけだったからな……

 

 

そして、アザゼルもオレの話を聞いて少し笑みをこぼしながら言った。

 

 

 

『すげぇな……弟さんと一緒に親父さんの意思次いで、こんなバカデケェ城も建てて……そんでもって親父さんのできなかった事やりとげようとするなんてな…………それに比べて……俺は何もできなかった………目の前で消えてく仲間を救えなかった……情けねぇ…………俺に、俺にもっと力があれば………!』

 

 

 

アザゼルは顔をうつむけながら泣いた……救えなかった仲間に対する懺悔と、自分だけが生き残ってしまった後悔………そして自分の不甲斐なさに対する怒りを感じた。

 

 

戦争を知らないオレが慰めても……同情されて余計にアザゼルを追い詰めるだけだ……ならオレはオレのやり方でやるだけだ、そう思いオレは牢の扉を開け、アザゼルに歩み寄って優しくも強く抱き締めながら、こう呟いた。

 

 

 

『なら……お前みたいに悲しい思いをした奴等に手を差しのべろ………別に死んだ仲間や辛い事を忘れろなんて言わん。なら、自分みたいに辛い目や心に深い傷を負った奴等を救ってみろ……そうすれば、少しでも死んでいった仲間に顔向けができるじゃないか………もし、お前が困っていたり、自分でも解決できない事が合ったら……オレが協力するし、力になる……だから、もう自分を悲観するのは止めてくれ…………これがオレからお前に唯一できる頼み事で…………オレへの願いだ……』

 

 

 

ーー回想終了ーー

 

 

 

出来るなら……アイツの願いを……三大勢力との和平を成立させて人外と人間が共存できる世界を実現させてやりたいし、アイツの心の支えとなりたい。

 

 

そして……アザゼルが嫌いな戦争を二度と起こさせたくない………これ以上、人外同士で戦争をすれば…間違い無く多くの死者が出る処か、またアイツが悲しむし、戦争を望まない人外達も二の舞にさせたくない………

 

 

 

もうアイツの……アザゼルが泣く姿なんて見たくないんだ………!!

 

 

 

「姉さん?姉さん!」

 

 

「エルか……」

 

 

 

回想に浸っていたら、ふと弟のエルが部屋に入室していた。

 

 

 

「どうしたの?泣いていたみたいだけど…」

 

 

 

オレとした事が……また、泣いてたんだな……

 

 

 

「あぁ……ちょっとな、話は変わるが……ガリィは戻って来たのか?」

 

 

「はい、それと例の男性も連れて来たと報告がありました」

 

 

「そうか……」

 

 

 

その報告を聞いたオレは涙を拭って玉座に背を凭れ、頬杖をつく。すると扉から性根が腐った声が響いてくる。

 

 

 

「マスタァ~♪【終末の四騎士】が一人、ガリィ・トゥーマーン。ただいま任務から帰還致しましたぁ~☆」

 

 

「同じく【終末の四騎士】……ファラ・スユーフ、レイア・ダラーヒム、ミカ・ジャウカーンも御座しましてございます」

 

 

「入れ………」

 

 

 

オレが入室を許可すると扉が少しずつ開き、そこからオレの配下である四人の自動人形達と、銀髪の天然パーマに黒い半袖シャツとズボン、その上に白い着物をはだけさせ、腰には木刀をさした死んだ魚の目をした男がやって来た。

 

 

ガリィが送ってきた映像の男で間違いは無いだろう。それに、ターゲットとも木刀一本で互角で張り合えたんだ……ただ者では無い事だけは確かだな……

 

そう思っていたら、銀髪の男が口を開いた。

 

 

 

「アンタがガリィの言ってたマスターって奴か?」

 

 

「まぁな……オレがこの居城、【チフォージュ・シャトー】を治める錬金術師……キャロル・マールス・ディーンハイムだ。そして横にいるのは弟のエルフナインだ」

 

 

「初めまして、エルフナイン・マールス・ディーンハイムです。エルとお呼びください」

 

 

「そうか、俺の名前は坂田 銀時……まぁ、こう言うのもなんだが……異世界から来た侍だ」

 

 

「異世界?」

 

 

「さ、さむらい?」

 

 

 

銀髪の男ー坂田 銀時は異世界から来たと語ってきた。エルは侍と言う単語に頭を傾げていた。まぁ……聞いた事のない単語だからな……そう思っていたらミカが未だにわからないエルに歩み寄って、話しかけた。

 

 

 

「エル、サムライってのはスゴいんだゾ!仲間を護ったり、自分のルールとか作ったりとっ~てもスゴいモノなんだゾ!!」

 

 

「そ、そうなんですか?」

 

 

「うん!アタシもさっき教えてもらったんだゾ!!」

 

 

 

何かこっちもこっちで白熱してる……まぁ、そんな事よりも…………

 

 

 

「ガリィ、状況報告の方を…………」

 

 

「えぇ、ターゲットを補足した所をそこの天パーがやって来て、それで戦闘が勃発して張り合ってる最中に問題お嬢様御一行が邪魔してターゲットは逃亡………ですからこの天パーを連れて来た……というのがガリィちゃんからの報告です♪」

 

 

「おい、てめぇ天パーに恨みでもあんのか?そんなに天パーが嫌いかコノヤロー」

 

 

「えっ?天パーだから天パーって言っただけですけども?それの何が悪いのかしらぁ?天パー侍さぁん♪」

 

 

「そうかそうか…表出ろコラァ!!勝負じゃああああああ!!!」

 

 

 

ガリィの報告 (若干性根が腐った内容) に、坂田が青筋をたてながら木刀を抜いてケンカが勃発した……こいつの性根の腐った性格は……オレ似なのか………そうじゃないのか…………頭痛がしてきたと思っていたらファラが二人を止めに入る。

 

 

 

「銀時様、マスターの御前です……お怒りをお沈めくださいませ……………ガリィ、おふざけもその辺にしなさい!」

 

 

「……わーったよ」

 

 

「けっ!」

 

 

 

流石はファラだな………話を戻そうとオレは咳払いをした。

 

 

 

「話は戻るが……坂田、お前は異世界から来たと言ったな……それはどういう意味だ?それとお前は何者なんだ?」

 

 

「あぁ……順におって説明するからよ~く聞いとけよ。それと、俺への説明が終わったらこの世界の事を教えてくれるか?」

 

 

「わかった……約束しよう」

 

 

 

そう約束し、坂田は自身に起こった出来事を語りだした。

 

 

 

 

坂田は江戸と呼ばれる世界の住人である事。

 

 

 

 

その江戸では天人(あまんと)と呼ばれる宇宙人がやって来た事。

 

 

 

 

天人がやって来た事によりこことは違う文明の進歩が始まり、坂田はその世界で【何でも屋】を営んでいた事。

 

 

 

 

そして、坂田は神の手違いで死亡し……この世界へと飛ばされた事。

 

 

 

 

未だに信じられない発言だが……この男は嘘を語っているとは思えない……それが事実なのだと理解して信じる事にした。

 

 

 

「………と、これが俺が今、説明できる所ぐらいだな…」

 

 

「そうか……感謝する…………」

 

 

「あり?意外と信じてくれんだな……」

 

 

「未だに宇宙人が現れたとは信じられないが……お前の口振りで嘘を語っているとは見えないからな……さて次はオレの番だな……」

 

 

「あぁ、頼むわ」

 

 

 

坂田が自身の事を話し終えたので約束通り、オレはこの世界での出来事を話した。三大勢力と幾万年前に勃発した戦争の事、この地を我が物顔で管理しているグレモリーの小娘の事、そして人外を狩る奴等の事を………

 

 

 

「……以上がオレが把握している、この世界の現状だ。あの小娘の管理不始末のおかげで……あの町ははぐれ共に溢れ……指名手配されていたりよからぬ事を目論む上位悪魔や堕天使共の隠れ簑となった…………もし、あの小娘がヘマをすれば……幾万年に決着した戦争がまた始まり、多くの罪も無い人外や人間達が死ぬ事になる」

 

 

「そうか………何処の世界でも戦争はあるもんだな………キャロル…俺もこの件に乗るぜ、せっかく何年も前に終わった戦争を、もう一回とおっぱじめる訳にはいかねぇだろ?」

 

 

「………オレ達に協力してくれるのか?」

 

 

「まぁな、俺は頼まれた事は何でもやる万事屋だ……それと条件がある」

 

 

「……条件?」

 

 

 

坂田は何処か決意のある顔をオレに向けながら、協力する条件を言ってきた。

 

 

 

「俺はこの世界に来て、まだ住む所も決まっていねぇ……だから此処に住まわせてくれねぇか?もちろん衣食住付きで協力料はお高いぜ?」

 

 

 

坂田はニヤッと笑いながら、指で金のマークをした。いやはや……こんな奴は初めてだな……

 

 

 

「いいだろう………その依頼金は任せておけ」

 

 

「交渉成立だな……それでなんだがよ…聞きてぇ事がある」

 

 

「なんだ?大概の事は答えてやる」

 

 

「俺があのビルで戦ったガキは何者なんだ?お前もそのガキに用があるんだろ?」

 

 

「その事か……それについてはエルが専門だ……エル、坂田への説明は任せるぞ」

 

 

「は、はい!あ、あの!よろしくお願いします!!」

 

 

「おう、よろしくな」

 

 

「それと、お前には【終末の四騎士】全員をつける……四人共、くれぐれも坂田をサポートしてくれ」

 

 

「畏まりましたわ」

 

 

「派手に承知しました」

 

 

「がんばるゾ!!」

 

 

「まぁ、マスターのご命令であれば仕方ありませんね?」

 

 

 

これで良し……そう言えば()()()にも声をかけるとするか…………オレは玉座から立ち上がり、テレポートジェムを床に投げ、転移術を発動させた。

 

 

 

「それじゃあ、仕事の方は任せたぞ坂田……オレは少しばかりここを離れる。エル、オレが留守の間……シャトーを頼む」

 

 

「うん、気をつけて」

 

 

「無茶すんなよ」

 

 

「あぁ……」

 

 

 

そう言い残し、オレは知り合いの所へ向かうためシャトーを後にした。

 

 

 

 

 

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キャスト

 

 

坂田 銀時:杉田智和

 

 

 

アザゼル:小山力也

 

 

 

キャロル・マールス・ディーンハイム:水瀬いのり

エルフナイン・マールス・ディーンハイム:久野美咲

ファラ・スユーフ:田澤茉純

レイア・ダラーヒム:石上静香

ガリィ・トゥーマーン:村瀬迪与

ミカ・ジャウカーン:井澤詩織

 

 

 

 


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