翼が銀時に……それではスタートです!
グレモリー眷属の木場達と対面して連絡先を交換した後、銀時はエルフナインが用意した高級アパートへと到着した。
「おいおい……少しばかり場違いじゃねぇのか?」
銀時はあまりのアパートの高さに、冷や汗をかき顔をひくつかせた。そうこうしても着いた事には変わりはないと切り替え、入り口近くの管理人室へと顔を覗かせると……紫のショートカットの女性がやって来た。
「何か用か?」
「新しくこのアパートに住む坂田 銀時だ……部屋の鍵をもらえるか?」
「坂田……それなら業者から聞いている。それで、何号室の鍵だ?」
「ちょっと待てよ……えっと、 [1010号室] ……って、意外と俺の誕生日と同じだなオイ」
「ほぉ……その口振りだと、10月10日生まれか?」
「まぁ……一応な」
銀時は物心ついた時から親の顔も……名前も……誕生日も知らず、浪人を殺して生きてきた。しかし、恩師や旧友と出会い……鬼から坂田 銀時として……一人の人間として生まれたのが鍵の番号と同じく10月10日である。
「そうか……これが部屋の鍵だ。それと、私はここのアパートの管理人の三月・スカリエッティだ」
「あっそ、そんじゃよろしくなゴリラ」
「おい、誰がゴリラだ」
「え?だってその体格とかでゴリラって呼ばれるだろ?俺の知ってる奴でもストーカーしてるゴリラは居るぞ」
「そいつと一緒にするな!それと、私はゴリラじゃない!!」
「おいおい、別の小説サイトでもゴリラって呼ばれてるぜ?いい加減に受け入れろよゴリラ・ゴリラ・ゴリラ」
「メタな発言は止めろ!それから学名で呼ぶな!!」
あーだこーだと管理人のゴ……三月と口論を繰り広げ……
『おい!今、ゴリラって言おうとしたな!?そんなに私をゴリラにしたいのか!!貴様!!!』
…………た後、銀時はエレベーターを使って [1010号室] へとやって来た。
「さてと………すんげぇ嫌な予感がするのは、気のせいにして……さっさと入るか」
銀時は先程もらった部屋の鍵を使い、ドアを開けて入ってみると…………
「………………」
「え、えぇっと…………その…………」
「いや、何でお前が此処にいんの?」
そこにはシャトーで隔離されているはずの少女がいつの間にか部屋の一室で正座をしながら座っていた。
「あ、あの……これ、ガリィさんから…………もし、貴方が来たらこれを渡しておけって……」
「あ?あの性根腐女子がか?」
少女はすくっと立ち上がって、ポケットから一枚の封筒に入った手紙を銀時へ手渡した。
銀時は手渡された封筒から手紙を取り出して開くと、書かれている内容を読んでみた。
《拝啓、銀時の天パーへ……
この手紙を読んでいるって事はもう、アパートの部屋に入室した頃でしょうね?それなんだけどモノは頼みで、そこにいる女をアンタに任せる事になったからちゃんと守りな!これは私達で話し合った事で、もし断るってんなら金輪際生活に必要なお金やアパートの家賃、そして約束の依頼金はやらないからそのつもりで……
追伸……
ソイツの服とかは知り合いに調達させるから心配いらない事。
それと、ソイツと外出する時は一緒に同行する事。
これらを守る様に頑張ってねぇ~☆
ガリィ・トゥーマーンより》
手紙を呼んだ直後、銀時は手紙を破りながら怒鳴りたい衝動に駆られたが心配そうな顔をした少女の手前とアパートの室内にいるのでそれは押さえた。
また日がくれて、暗くなり騒ぐのもアレなのでご近所迷惑になりかねない。
「……ったく、あの野郎……いや、他の奴等もか、どいつもこいつもホント」
「あ、あの……」
「んあ?あぁ、こっちの話だ」
「いえ、そうではなくて…………」
少女は申し訳ない顔をしながら銀時の前で正座をして、深く頭を下げた。
「え?ちょ、何やって……「この前の事はすみませんでした……!」あ?この前?」
「……何の理由も無しに貴方に手を出してしまった事………私の性で変な濡れ衣を着せてしまった事……それで、いつかこの前の事を謝りたいと思っていて………本当に、本当にすみませんでした!!」
そう言いながら少女は頭を下げたまま、涙をポロポロと流しながら銀時へ謝罪を繰り返した。
「………気にしてねぇよ、てか顔をあげてくれ」
「……?」
「まぁ、ああなったのは俺の不注意でもあるからな。お前自身が責めるこたぁねぇよ」
「……それだけじゃありません…………私は……見ず知らずの貴方に…………刃を向けてしまったんです」
「ッ!?……お前、あの時の事も覚えてんのか?」
銀時の問いに、少女は頷いた。
「少しだけですが……今でも忘れられないんです…………怪物と戦った感覚、人を斬った罪悪感、そして……自分が自分で無くなってしまいそうな恐怖…………思い出すだけでも、辛くて……怖くて……もう、狂いそうなくらい……殺してくれと叫んでしまいたいくらいに…………」
「…………」
「もう、数えきれない程の罪を犯してしまった…………こんな私に……大罪人である私にもう生きる資格なんてないんです!!!」
「…………ッ!」
ーパチンッ!
銀時は少女の頬に、鋭い平手打ちを浴びせた。いつもの様に死んだ魚のような目付きだが今は違う。冷たく光る瞳、地を這うような威圧感を放っていた。明らかに銀時は怒っている、少女はあまりの怒気に叩かれた痛みや罪を犯した哀しみを感じられずに慄いた。
「生きる資格がねぇ?んなもん誰が決めた……お前か?それとも神様か?んじゃ……てめぇがここに居んのは死ぬために来たのか?」
「…あ……ぁあ………」
「命は一つしかねぇ……死んじまったらそれで終わりだ。もし、罪を償いたいってんなら俺が手を貸すし支えてやる…………でもな、今度死にてぇなんてぬかしたら、その時は……勝手に死のうが俺は止めねぇ…………その死ぬ覚悟がお前にはあるか?」
「あ……あぁ…………」
怒気に溢れた銀時の言葉に少女は、大きく首を横に振るった。
銀時は少女の反応を見ると近くに寄り優しく、それでいて放さないよう強く暖かく抱きしめる。
「なら、二度とそんな事を言うな………辛い事、苦しい事があったんなら俺の胸で思いっきり泣け、泣いて泣いて全部ぶちまけりゃ……少しは気分が晴れるだろ?」
「……ひっく……うっ……ゴメン……なさい……ゴメンなさい…………!」
少女は銀時を抱きつき、彼の胸で……声が枯れるまで泣き続けた。銀時は少女が泣き止むまで、暫く抱きしめた。
ーーそして、翌日
「ん……んん……………」
少女はゆっくりと瞼を開け、辺りを見渡すと見覚えのある白い着物を掛け布団がわりにして寝ていたらしい。その隣では、壁に寄りながらグースカといびきをかきながら眠る銀時がいた。
「どうして……この人が…………あ、そうか」
頭をフル稼働させて状況を整理していくと、自分がこのアパートで銀時と生活をする事になったのだと思い出したのだ。すると、扉から黒髪の黄色と黒の縞リボンで短いツインテールにし、黄色と黒を基調としたドレスを着た女の子が入ってきた。
「………起きた?」
「貴女は……」
「私、ミュンツェ・ダラーヒム……姉の頼みで…………貴女の護衛しに来た」
「そうなんだ。私は風鳴 翼、よろしくね」
「ん……よろしく………それと私が居る事は……この人には内緒にしてね?」
「う、うん……わかった」
「ありがと、それじゃ」
そう告げるとミュンツェはその場から姿を消した。変わった娘だなと感じた少女……翼は、掛け布団代わりにしていた着物をたたんで銀時の側へ置いた。すると、銀時の顔が少しばかり近くなったのを感じると胸が高鳴るのを感じた。
(何だろう……この人の……銀時さんの事を考えていたら、ちょっとだけ胸が熱くなって……なんだろう、この感じ……)
翼は胸の奥に疼く謎の感覚に少しばかり、考えてはいたが…………それと同等で犯した罪の重さに自暴自棄になりかけた自分に手を差しのべてくれた事にお礼がしたい……そう思えたがどうやって、何をすれば良いかはわからない……
(ちょっと恥ずかしいけど、これなら……)
そう思いながら意を決して顔を赤くしながら、ゆっくりと唇を銀時の唇に重ねた。
…………そう、キスである。
「これが私にできる……貴方へのお礼……」
そう笑顔で呟いた後、極度の緊張感と羞恥心が消え翼は再び夢の世界へと旅立った。
…………一方の銀時と言うと……
「俺、こういうお礼は初めてなんだけどな…」
実は翼が着物を置いた直後に目を覚ましてはいたが、ずっと狸寝入りをしていた。だから、翼がした事はバッチリと覚えているのだ。向こうはファーストキスであろうが、銀時にとってもファーストキスなのである。
昨日の事はあまり気にしていない事を確認しながらも、銀時は再び眠りについた。
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キャスト
坂田 銀時:杉田智和
風鳴 翼:水樹奈々
ミュンツェ・ダラーヒム:佐藤利奈
ガリィ・トゥーマーン:村瀬迪与
三月・スカリエッティ:木川絵理子