※ヴラドさんの『運命の定めを壊す少女』とのコラボの為、多少手を加えました。
プロローグ
そこはこの世にあってこの世にあらず、転生の空間と呼ばれし亜空間。そこでは、死した人間が転生し異世界で第2の人生を決める場所である。そして、また一人この空間で眠っている男がいた。
「……んあ?何処だ……ここは…………?」
この銀髪天然パーマの男は坂田銀時。『銀魂』の主人公で江戸のかぶき町で何でも屋【万事屋銀ちゃん】のオーナーを勤めており、伝説の攘夷志士の異名【白夜叉】と敵味方に恐れられた侍である。
現在の銀時の衣装はいつもの服装【漫画&アニメ版】で、腰には辺境の星で育った樹齢一万年以上の木から作られ、柄の部分に洞爺湖と彫られた木刀……妖刀・星砕きを腰に装備していた。
銀時は辺りを見渡すが……どこもかしこも暗闇で覆われて何も見えず、しかも誰一人居なかった。
「このパターンって……また『洞爺湖仙人』じゃねぇだろうな?いや、あのアホがやるなら新八と神楽もいる筈……って、それならアイツら何処だ?」
いつも一緒にいる眼鏡と大食いチャイナ娘……
『何で僕だけ眼鏡なんだよ!お前は僕を何だと思ってんだぁぁぁ!!?』
……が居ないのを察すると、時々下らない必殺技習得の為に自分達を呼び出す仙人の仕業では無いと悟った銀時。どうしたモノかと頭を掻き始めた。
「ったく、何だってんだよここは……」
「ここが何処だか知りたい?」
「ッ!いつの間に………「そんなに警戒しなくても大丈夫、何もしないから♪」……へっ?」
突如声が聞こえ、後ろを振り向くとそこには一人の女性が笑顔で微笑んでいた。
女性は二十代前半で赤髪のロングヘアーに蒼い瞳、桃色の着物ドレスに翠色のコートを羽織っていた。女性は笑顔を絶やさず、銀時との距離を対等にする。
「いやぁ~ マジかで見ると良い男にみえるねぇ~?そう思うでしょ?"白夜叉"さん♪」
「……お前、何処でそんなモンを…………」
「誰だって知ってるよ。ワ・タ・シ、神様ですから♪」
「はぁ……神様だぁ?おいおい、お嬢さんよぉ、神様なんてもん本当にいると……「宇治銀時丼あるけど食べる?」……信じます神様!」
女性は銀時が白夜叉である事を知っていた。だが、銀時が白夜叉である事を知っているのは万事屋で働く二人と、悪友にチンピラ警察の三人+α だけである。
明らかに怪しい女性はあろうことか神様と名乗る始末……銀時は呆れて信じようとしなかったが、女性は何処からか銀時の大好物の宇治銀時丼 (ご飯に小豆をぶっかけたモノ)を取り出してみると銀時はあっさりと信じた……この男、甘いモノには弱い男である。
「信じてくれてありがとう。さてと、まずは自己紹介ね。アタシは
「あっそう、んじゃ改めて俺は坂田 銀時「侍でしょ?」…ちょっと?人のセリフ取らないでくんない?」
「あははは♪ゴメンゴメン……ついね、さてとここは転生の間、死んだ人間が新たな生命を得て第2の人生を満喫する所を決める場所なのです♪」
「ふぅ~ん…………おい、ちょっと待て……死んだ人間……って事は…………俺、死んでんの?」
「うん、そだよ」
銀時は薫から死と言う言葉に冷や汗をかく。冗談だと思う銀時だが、薫はキッパリとカミングアウトした。悪びれもなく…………
「う、嘘ぉぉぉぉ!!?ちょっとぉぉぉ嘘だと言って!?銀さんいつの間に死んだの!?何時、何処で、何の要因でぇぇぇぇぇ!?」
「落ち着きなよ、こっちの手違いで銀さんはここに来ちゃったんだよ。つまりは誤認転生って奴よ」
「は?誤認転生……?」
突然、死亡宣言された銀時はパニクるが薫が誤認転生と言った際に銀時は首を傾げた。だが薫はまだわからない銀時に分かりやすく説明を始めた。
「まぁ……間違って、まだ生きている人間を此処に連れて来ちゃったケースを誤認転生って言ってね……」
「んじゃ、俺はその手違いとやらで此処に連れて来られたって事か?」
「そ、それに……あちらさんの責任なのに、お偉いさん等はアタシに銀さんの担当を押しつけたって訳……はぁ、まったく酷いと思わない?」
『本当に迷惑よねぇ?』と言う風にため息を吐く薫に、誤認転生に呆れるしか無い銀時。そんな時、薫が真剣な顔で銀時を見つめる。
「それでなんだけど……銀さん、異世界に行ってみない?」
「異世界だぁ?人を勝手に死なせて、こんな所に連れて来られた挙げ句に何で知らねぇ世界に行かなきゃなんねぇんだよ」
「まぁまぁ、そう言わず……銀さんのいる世界はとても面白いよ?でも、他の異世界に行ってみれば気分転換になるんじゃない?」
「いや、人の話聞けよ!何、修学旅行のしおりに書いてる注意事項みたいな事言ってんの!?」
「悪いけど、銀さんに拒否権無いから♪……ポチッとな」
めっちゃ嫌がる銀時を無視して薫はコートのポケットからスイッチがあるモノを取り出してスイッチを押す。すると上からマジックハンドが出て来て銀時を捕まえた。
「ちょっ!?何?何コレ!?ま、まさか……」
そして空に目掛けて……銀時を勢いよく投げ飛ばした。
「ギャアアアアアア!!?」
「アタシもちょくちょく遊びに行くからねぇ~♪」
「てめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!後で覚えとけよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
真っ暗の空間で断末魔を叫びながら一番星になった銀時を見送った薫は気にせず背伸びをした。すると空間が歪み、そこから灰色髪のロングヘアーに赤い瞳、翠のワンピースを着て白のブーツを履き、首には黒のマフラーを巻いた女性が薫と同じ笑顔で手を振って来た。
「ヤッハロ~♪お勤めご苦労さ~ん」
「あっ、"ヴラド"さん!」
女性ーヴラドがやって来たのに気づいた薫は、まるで姉がやって来た様な素振りで彼女の両手を握った。
「ゴメンね~薫ちゃん……仕事押しつけちゃって」
「大丈夫だよ、ヴラドさんの頼みだもん。アタシはそれに応えるのが仕事だからさ♪そ・れ・に、退屈もしなくて済むし…………」
薫は口にコートの袖をつけて含み笑いをして銀時が飛んで行った方向を眺めていた。ヴラドは笑いながら薫の頭を優しく撫でる。
「それは良ございましたなぁ~♪でもホドホドにね?」
「はぁ~い♪……ところで"陽"は?」
「あぁ~それなら……おっ、噂をすればナンとやらか」
ヴラドが後ろを振り返ると、自分が来た歪みから龍を模した黒く錆びた鎧の怪人と、水色の蛇を模した巨大な鎌を肩に担いだ少年が現れた。
少年は白髪に左目が隠れるまで伸ばしたセミロングで紅い瞳、衣装は白いワイシャツと黒いズボン、中学生が使う黒い上着を羽織っていた。
「どうした?それでよく最強と言えたな…"偽龍帝"?」
「その名前で呼ぶな!俺は赤龍帝だ!!」
鎧の怪人は少年に向かって殴りかかるが、少年はそれを軽く避け、巨大鎌を怪人の胸に斬りつけた後、鳩尾に蹴りを入れる。
「ガハッ!?」
怪人は二、三回バウンドをしながら地面に這いつくばる。少年は鎌を担ぎ上げ、怪人に話しかけた。
「さて……君の罪科だけど、自分が主役の場を創る為に同じ神器所有者である兄を化け物と仕立てあげて迫害し、悪魔に転生した後でリアス・グレモリーと姫島朱乃、紫藤イリナを自分に惚れさせる事が出来た……どうせ狙いはハーレムだろ?」
「それの何が悪い……アイツさえ……あの出来損ないさえいなくなればオリ主である俺が!この兵藤宗二こそがハーレムを作り上げて、世界の英雄になる筈だったんだ!!それをアイツは……龍見一誠とその仲間が俺の何もかも奪いやがった!!夢も野望も何もかも!!!」
鎧の怪人ー宗二は満身創痍に立ち上がり黒いオーラを放ちながら自分の黒い野望を言い放つ。少年は静かに聞いていたが……
「ククク……アハハハ!ハハハハハハ!!」
少年は笑った、黒い笑顔で宗二の野望を喜劇だと思ったかの様に……
「何が可笑しい!!」
「いやぁ……これまで見てきた愚者は下らない理由で異世界に迷惑をかけてきたけど……君は本当に、非常に下らない夢を持ってるんだな…………ってね?」
「てめぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
宗二が少年に向かって再び殴りかかるが、少年は紙一重で避けると同時に距離を離す。
「君が見誤った部分は……彼を甘く見すぎた事だ……例え弱い力でも少しずつではあるが強く、成長する。強くなりたい……強くなって誰かを守りたい………その力を何かの為に役立てたい…………その考えが彼にあって、君には無かったんだよ。そんな中二病な考えだからいつまでも君は舞台の脇役……格下と言われ、永遠に主役にはなれない。それぐらいわからないのかな?……中二病偽龍帝様?」
「黙れ!黙れ!黙れ!!ダマレェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!」
『Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!』
少年の言葉に激昂し、宗二は怒りに任せて赤龍帝の倍加能力で無数の魔力弾を生み出して少年に撃ち出す。しかし、少年は冷静さを失わず、黒い笑みをこぼす。
「さて…その薄汚い鎧と傲慢さ、全部まとめて伐り刻んであげよう。行こうか…
少年の言葉に呼応するかの如く……巨大鎌は怪しく光る。そして鎌を上に掲げ、魔力弾を放つ宗二に向かって少年は口を動かす。
「
少年ー鬼崎は勢いよく魔力弾に接近し、冥蛇神の死鎌 (以降:死鎌) を振りかざす。すると幾万もあった魔力弾はその場で爆発し、黒煙の中から鬼崎が無傷の状態で勢いを殺さずに宗二の目の前に躍り出た。
「こ、このっ!」
『Boost!』
「無駄だよ」
宗二は倍加した力で叩き潰そうとするが、鬼崎は死鎌を顔の鎧に直撃させ素顔を
「グアアアアアッ!?よ、よくも……よくも俺の顔を!!!」
「良かったじゃないか、傷物系は流行るって噂だよ?……知らなかったのかい!」
「アベシッ!?」
鬼崎はその後、宗二のむき出しの顔に目掛けて死鎌の柄を叩き込む。宗二の顔は鼻血を垂れ流して歯は1、2本抜け出ていた。
「まだまだ!【
鬼崎は死鎌に紫のオーラを纏わせて宗二の鎧をバツ型に切り裂く。すると鎧はガラスの様にヒビができ、容易く砕け散った。
「なっ!?」
「はぁっ!」
「ガッ!?」
鎧が砕けた事に驚きを隠せない宗二に、鬼崎はもう一度死鎌の柄を宗二の腹部目掛けて叩きつける。すると宗二は後退りながら腹を抑えて両膝をつけると…………
「オボェェェェェェェッ!!??」
口から汚物と一緒に血を嘔吐した。宗二は小刻みに顔を向け、鬼崎を睨み付けようとするが……当の本人は害虫を見る目で宗二を見下しながら狂い笑う。
「アハハハッ!最高だねぇ♪最強と豪語してた愚者が満身創痍にうちひがれる様……何度見ても飽きないよぉ……さぁ、さぁ!もっと僕にその顔を見せておくれよ……絶望の淵に立たされた顔を!!!」
「ヒッ!?」
さっきまでの冷静さが無くなり、まるで別人のように変貌した鬼崎に宗二は恐怖した……その例えは蛇に睨まれた蛙のように命の危険を間近に感じたからである。
(か、身体が言う事をきかない……こいつ!バ、バケモノだ……!?)
もしこいつに手を出したら死ぬ……その考えが頭をよぎり宗二は一つの行動をとった。
「ま、待ってくれ!」
「ん?」
「こ、これまで一誠やその仲間達にしたことは謝る!た、頼む!どうか……どうか許して……いや、許してください!!今までした事は全部償いますから……ねっ?許してくれ……『ザシュ!』……へっ?」
必死の命乞いを無視するかの様に、いつの間にか右腕が切り落されており、前を見ると血がついた死鎌を肩に担いだ鬼崎の足元には……あった筈の右腕が踏みつけられていた。
「あ……あぁ……あぐぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!???」
右腕から血を吹き出した後に激痛が走り、宗二は右腕があった部分を抑えながら口から
「う、うで……おれのうでが…………」
「見苦しいんだよ、愚者の分際で命乞い?笑わせないでよ………」
「ひっ!?く、くるな……くるな!くるな!こないでくれぇ!!」
宗二は切断された右腕を抑え、だらしない声をあげながら必死に鬼崎から逃げる。鬼崎は戦意喪失した宗二に呆れ、ため息をついた。
「はぁ……でもまぁ、そろそろ
鬼崎は宗二が逃げる方向を目を細めながら見つめる。鬼崎は死鎌の刃を左手で握って切り傷を作り、自分の血を刃に塗らせる。すると赤く染まった刃に水色のオーラが集まり、刃にまとわりつく。
「……食らえ!」
鬼崎はオーラを纏った死鎌を振るうと、ピラミッドを模したエネルギー態が放たれ、宗二に勢いよく迫って行く。
「ヒィィィッ!」
ぶつかる!そう思い、宗二は目を瞑るが……いつまでも来ないので目を見開くとピラミッドは消えており、接触した筈なのに痛みも無かった。
「た、助かった……のか?」
良かったと一息をするが、鬼崎が一歩一歩こっちに向かってくるのが見えた。とにかく逃げようと前を向くとそこには消えた筈のピラミッド態が空中に浮遊していた。そしてピラミッドに穴が出来始め、徐々に広がっていくとブラックホールのような吸引力が宗二を襲いかかり、そして…………
「うわぁぁぁぁっ!?」
宗二は耐えきれずにピラミッドに吸い込まる。必死に脱出を試みて足掻くが入り口にはたどり着けず、空間内を悶え続ける。すると死鎌を担いだ鬼崎が宗二の前に現れた。
「君の罪は永遠に消えない……永遠の闇で苦しみ続けろ」
鬼崎から死刑判決を言い渡され、顔を青ざめる宗二は残った左手を鬼崎に伸ばすも、鬼崎は死鎌を担いだままその場を後にする。
「た、助け……」
「【
「イ、イヤだあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーー!!!!!!!」
最後の命乞いも虚しく、断末魔と共に宗二はピラミッド内部で消滅し、ピラミッドも消えていった。鬼崎は死鎌を担いだまま、無様に消えていった宗二を思いだし嘲笑する。
「いい絶望の顔と断末魔の音色だったな……」
「お疲れ様、陽♪」
「やぁ、薫"
「もちろん、すぐに終わったから問題無いよ♪それにしてもあの子の顔……愚者にふさわしい絶望の顔だっだねぇ~ クフフ……!」
鑑賞に浸っていた鬼崎は、こちらに歩み寄る義理の姉、薫に気づいた。仕事の方は大丈夫かと聞いたが、薫は問題は無いと言い、宗二の絶望を楽しんでいた。すると薫の後にヴラドがやって来るのに気づいた鬼崎はその場で跪く。
「スカーレット様……この鬼崎 陽太郎、遅ればせながら馳せ参じました……」
「いやぁ~♪陽君、見てたよ君の戦いっぷり……ま~た強くなったみたいだねぇ~?」
「いえ、
「アハハハ♪も~う、謙遜しちゃってぇ……やっぱマジメだね、陽君は♪」
礼儀正しい態度を取る鬼崎に、ヴラドは褒めながら肩を優しく叩く。
「それはそうと、どう?私が連れてきた
「全然ですね、あれで最強とは底が知れますよ。所で義姉さん、あの人……確か、銀時さんと言う人の担当になったけどちゃんと出来るの?」
「妙なところにカマかけるね……大丈夫よ、アタシを誰だと思ってんの?アンタの姉ちゃんなんだからさ」
「ふっ、そうだね。心配しずぎたみたいだ……もしかすると適当にヤるんじゃないかなぁ~と思ったけど……大丈夫そうだね?」
「……それ、どう言う意味よ?」
「……さぁ、別に?」
鬼崎の発言にピクピクと眉を引くつかせる薫の顔を見て、急にゾクッと感じたヴラドは、喧嘩に発展する前に二人を宥めながら頭を撫でる。
「はいはい、姉弟口論はそこまでにして……あっ!そうそう、陽君と薫ちゃんに渡したいモノがあるから家に来ない?それでいいでしょ?ねぇ♪」
「御意に」
「はぁ~い♪」
その言葉を皮切りに、三人は空間の歪みに消えていった。
その頃、薫によって異世界に飛ばされる事になった銀時は…………
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!??てゆぅぅぅか!何処まで飛ばされんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!???」
果たして銀時はどんな世界に飛ばされ、そこでナニと出会うのか……それはまだ飛ばされた本人にも知るよしもない事である。
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キャスト
坂田 銀時:杉田智和
鬼崎 陽太郎:潘めぐみ
兵鬼 薫:小清水亜美
兵藤 宗二:宮野真守
ヴラド・スカーレット:阿澄佳奈