学園祭最終日
今日も学園には多数の観光客や学生の親族の方達が賑わっていた。そこにとある音が聞こえていた。
「あれは何だ?」
一人がその音の正体を見ようとした。
ザッザッザッザッ
近づくとそれは、大勢の人間が歩いてくる音だった。彼らは軍服を身に纏い、腰に軍刀を提げ進む姿に周りの者達は感嘆の声をあげた。
彼らはこのグループを何かのイベントだと勘違いしたのだ。
そこに更に、
キィィィィーーーン
という金切り音が響き渡った。
これを見ていた人々は近くの湖の底より何か光る物体が上がって来るのが見えた。
軍人達はその物体に相対するように抜刀し、構えた。
ザッバァッーン
と湖より現れたのは現代の技術者では造ることが出来ないロボット否兵器だった。観客の中に麻帆良大学工学部の者がいた。彼はこの兵器を見たことがあった。
「あれは!麻帆良大学工学部で天災超鈴音と共同で造った災害時支援用無人機じゃないかぁ!でも、あれには救助用の器具は積んであってもあんな武器なんて積んでいない筈なのにぃ!」
湖より現れた兵器は、
キュピーン
と音をたて、観客の方に砲先を向けた。そして、
ダン、ダダダダダ!
機銃を乱射し始めた。
「ぎゃあ!」
「ガハァ!」
何人かが機銃の犠牲になった。そこから、
「うわぁぁぁ~~~っ!逃げろぉ!殺されるぞぉ!」
「「「うわぁぁぁ~~っ!」」」
その場所はパニックになった。
現在この者達に助け合いの精神は無い。ただ、自分が生き残る事を優先として動いているが故に、
「あっ、ああ。お父さん!お母さん!何処ぉ!」
こうして子供が取り残されたのだ。兵器は一体ではなく今のところでも10は容易に超える数が存在し軍服の者達はそれの対処に終われている。この少年を助ける者は存在しない。それどころか、
「うえぇぇぇん。お母さ~ん!」
先ほどの機銃で犠牲になり死にかけた女性の側に少年よりも幼い少女がいた。
それを見た少年は少女の側へ駆け寄り、
「逃げるんだ!」
「でも、お母さんが!」
「ぐっ、
女性は命を削って喋っているのがわかった。女性は少年に目を会わせ、
「この子…のこと…お願いします。」
「はい!」
少年は少女の手を掴み、引っ張って走り出した。
彼らはこの場所から離れた。しかし、子供の足は他と比べても遅い。すぐに兵器に追い付かれた。
少年は少女を見て、
「僕が気を引く。だから!君は行くんだ!早く!」
少女は少しずつではあるがここから離れ始めた。
少年は少し安堵した。だが、それがいけなかった。火器が爆発して飛んできた金属片に額を少し切ったのだ。命に別状は無い。しかし、子供にはその痛みは尋常なものではなかった。
「あ"あ"っあ"~~!」
額から流れた来た血で視界が赤く染まる。
まだあの兵器は目の前にいる。イタイ、アツイ、イタイ、アツイ、イタイ、アツイ、イタイ、イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ………あっ、あ!タスケテ!
ガシャンガシャン
兵器はこっちに向かって来る。
「もう駄目なのかなぁ。あの子は無事に逃げられたのかなぁ。」
兵器がこちらに砲先を向けた。砲先が光を放ち、少年は目を閉じた。
だが、衝撃は来なかった。少年は目を明け自分の前に守るように立っている男を見た。
「待たせたな。」
あっ、ああ。来てくれた。貴方は来てくれた。こんな僕のために貴方は!危険なときにいつも何処からか現れる無敵のヒーローが!
少年は心から安堵し、意識を失った。
「ラダマンテュス。」
「お側に。」
「この少年を頼む。」
「了解いたしました。」
少年を男の側にいた者に託し、男は兵器に立ち向かった。
「来るがいい。天災の走狗よ!明日の光は奪わせぬ!」