不死者と英霊達のネギま録   作:羽撃鬼

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第35話 絶殺兇蠍の闘い

『~という感じみたい。』

 

 

立香やロマニは絶句していた。

それもそのはず当時未だ全盛期ではないヴァルゼライドが英霊として現界しており魔力は十分の状態のエミヤを打ち勝ったというのだ。信じられないのも無理はない。

 

 

「えっと、じゃあエミヤはどうなの?」

 

『どうとは?』

 

「いや、そのヴァルゼライドさんがこっちにいることについては。」

 

『その事か。何、戦力としては申し分ないと思うが、個人的には会いたくないな。あの頃の私は黒歴史そのものだしな。』

 

「そうなのか。」

 

『では私は業務に移る。』

 

「業務?」

 

『先程の話を聞いたこちらに残った戦闘狂どもが荒ぶっているのだ。少し鎮圧にしてくる。私だけでは確実に負けるがな。まぁ酒でも作って渡せば少しはもつだろう。』

 

「そう。頑張って。」

 

『ああ。ではな。』

 

 

そうしてエミヤはカルデア内の戦闘狂どもの生け贄となったのだ。エミヤ南無~。

 

 

「それでこれからどうするんだい?」

 

 

ロマンがこれからの方針を聞いていた。

 

 

「観光しながら考えましょう。俺達に今出来ることは無いんだから。というか星辰奏者(エスペラント)勢から発せられる圧力がスゴすぎて疲れた。」

 

「それもそうか。僕でもそうだったし。じゃあ僕のおすすめの場所でも行こうか!ほらほらサーヴァントの皆も楽しんでいこう!」

 

 

ロマンの先導で俺たちは学園祭を楽しむ事になった。

 

 

 

久しぶりな3-A勢

 

 

「えー!超りん。転校しちゃうの!」

 

「ハハハ、ワタシの故郷は遠くもう会うのは難しいネ。」

 

 

こんな感じで送別会をしていたのだ。超鈴音いわく学園祭中はいるらしいが、

 

 

「超さん。本当に会うのは難しいんですか?」

 

 

このクラス唯一の男であるアランが聞いた。

 

 

「そうなのネ。物理的には難しいのネ。」

 

「そうですか。」

 

 

アランは超鈴音の言葉に考え込んだ。そして、

 

 

「物理的には難しいのなら超さんの故郷とは何処なんですか?」

 

 

アランの言葉に3-Aの皆はうんうんと聞きたそうにした。

超鈴音は待ってましたとばかりに、

 

 

「実は、ワタシは未来の日本から来たのネ。そしてこの口調はキャラ作りの一貫だったのだ!」

 

 

爆弾発言と共に片言言葉を止めた。

 

 

「「「ハァーーーっ!」」」

 

 

超鈴音の言葉に殆どが叫んだ。

それから彼女の言葉は冗談の一つとして受け入られ、騒ぎ、終了した。

殆どの生徒が寝落ちした中、少し離れた場所で、数人の生徒が対峙していた。

 

 

「超鈴音!お嬢様に危害を加えるかもしれない貴様を見逃してはおけん!」

 

 

大きい野太刀を持った少女が超鈴音の前で構えていた。

 

 

「まぁまぁ刹那さん。自らを偽っていたけれどクラスメイトに危害は加えたくないのは理解してほしいものだね。私の願いのためにここは退いてくれるかな?」

 

 

超鈴音が合図すると鎧を纏った集団が現れた。

 

 

「ああこれ?魔術師どもに対抗するために買ったものでね。ワーグナーとか言うらしいヨ。ごめんエセ口調が出たみたいだ。死なない程度に殺れ!」

 

 

超鈴音の言葉に鎧の集団が襲いかかった。

 

 

“Zwangvolle Plage! Müh' ohne Zweck!”(ああ、苦しい。なんと無駄な徒労であろうか)

 

“Das beste Schwert, das je ich geschweisst,(心血注ぎ、命を懸けた、我が最高の剣さえ)

 nie taugt es je zu der einzigen Tat!”(竜を討つには至らぬのか)

 

 

いくら刹那が優れた剣の使い手でもワーグナーが扱う武器は銃であり、手数が足りないのだ。しかもこのワーグナーはかつて紅き翼を撤退に追い込んだという逸話さえ持つ。ただの少女が勝てるわけないのだ。

 

 

「くっ!見ていられん。」

 

 

ここで本来、超鈴音側に着くはずだった銃使いの少女が刹那側に参戦した。しかし、ワーグナーの数は少なくとも20体で、少女達は二人、英雄さえ苦しめたこの兵相手には多勢に無勢を体現していた。

 

 

「ほらほら、降参しないと本当に死んじゃうよ。ん?」

 

 

少女達を追い詰め、煽っていた彼女の耳に靴音が響いた。

ここは結界を張っているため、来るのは裏の関係者のみだ。だが現れたのは平凡なクラスメイトだった。ただ服装が異なっていた。

 

 

「おいおい。私は眠いんだ。こんなとこでドンパチするんじゃない。」

 

 

彼女達の前に現れたのは星辰アドラーの軍服を着た長谷川千雨だった。

 

 

「その軍服。貴方もそうだったのか!」

 

「あ~。超、お前本格的に演技止めたんだな。つーか、何でここにワーグナーがいるんだよ。もしかして魔を断つ剣(ダインスレイフ)もいんのかぁ?」

 

 

超鈴音の言葉に飄々と聞き返した。

 

 

「長谷川さん。」

 

「長谷川。」

 

 

ボロボロの少女達はこの状況でもいつも通りの彼女の名を呟いた。

千雨は彼女達の方を向き、

 

 

「何だよ。てめぇ等、相手との実力差もわかんねぇのか。ハァー、仕事増やすんじゃねぇ。ほら、さっさとここを離れろ。」

 

「だが、体がいうことを聞かなくてね。」

 

「あ~。だりぃ。じゃあそこで見ときな。」

 

 

少女達と千雨の掛け合いを見て超鈴音は、

 

 

「何時まで雑談をしてる!もういい!殺れワーグナー!」

 

 

超鈴音の言葉にワーグナーは再び動き出した。

 

 

“Ja denn! Ich hab' ihn erschlagen!”(然り! これぞ英雄の死骸である!)

 

“Ihr Mannen, richtet mein Recht!”(傍観者よ、我が栄光を認めるがいい!)

 

“Her den Ring!”(宝を寄こせ!)』『“Her den Ring!”(すべてを寄こせ!)

 

「長谷川さん。やつらは危険です!」

 

 

刹那は千雨に警告するように叫んだ。

だが彼女は、

 

 

「知ってるよ。一般人にはな。」

 

 

千雨の体から星辰光が溢れ出した。

 

 

「創生せよ、天に描いた星辰を―――我らは煌めく流れ星」

 

千雨が唱えたのは星辰奏者(エスペラント)独自の詠唱(ランゲージ)

 

 

「自賛に耽る光彩陸離の偉丈夫よ。海内無双の狩人よ。」

 

「おまえはたしかに凛々しく気高く勇猛なれど、地母への畏敬を忘れたようだ。耳朶が腐るぞ、何たる愚昧な、驕りに満ちた高言は、総じて聞くに値しない。」

 

「思い出せ、並ぶ者なき剛力も、唯一無二たる俊足も、大地の恵みがあればこそ。」

 

「それさえ知らぬと嘯くならば、よかろうさ――蠍の針をくれてやる」

 

「悶え、苦しみ、乾き、果てろ

改悛の時間は過ぎた。我が毒棘(どくきょく)にて死ぬがよい。」

 

超新星(Metalnova)―――母望之禍、穿て致命の絶殺兇蠍(Suddenstab Antares)

 

 

千雨の星辰光()は五感強化。単純だがそれは強力な力である。ただでさえ星辰奏者(エスペラント)になり肉体が強化されているため、五感の強化で更に強化するようなものだ。

 

彼女の移動は精霊魔術師達の瞬動と同じ速さで動き、魔力を込めた拳と同じ威力の拳を、そして大魔法と同じ威力の突きを繰り出した。だが、これが彼女の通常攻撃だ。

 

 

「何で!ワーグナーがこんなに簡単に!」

 

 

超鈴音は千雨の攻撃で沈んでいくワーグナーを見て現実を受け入れられないようだ。

 

 

「あり得ない。こんなのおかしい。こんな存在、この()()に存在するはずがない!」

 

 

「だが、これが現実だ。」

 

 

千雨は無感動に言った。

ワーグナーを殲滅し、超鈴音の前にたった。

 

 

「超。じゃあな。」

 

 

千雨はセイファートを振り下ろした。

 

 

ガキン

 

 

金属の弾く音がした。

 

 

「なっ!」

 

 

超鈴音を守るように機械の鎧がいた。

 

 

「鈴音!撤退するぞ!君はサーヴァントも連れず何をやっている!」

 

「ゾォルケンさん!」

 

 

機械の鎧ことGFバルバトスは超鈴音を抱え飛び去って行ったのだ。

 

 

「だりぃ。後処理は学園のやつに任せるか。」

 

 

そうして彼女は動けないクラスメイトの方を向いた。そのクラスメイトはワーグナーの中身に絶句していた。

まぁ初めは驚くよな。何せ、ワーグナーの材料は人間だからな。

 

 

「お前らあとは頼む。あ~。情報操作くらいはしてやる。」

 

「「えっ?」」

 

「私は眠いんだ。帰る。」




燃え尽きた気分だ。

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