不死者と英霊達のネギま録   作:羽撃鬼

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第34話 鋼と錬鉄

英霊となったエミヤが現界したのは明らかに今まで召喚された何処とも異なる場所だった。

 

 

「あれは?」

 

 

空を見上げると太陽とは別に、大きく輝くものが存在していたのだ。

そこに、

 

 

「ぐっ!」

 

 

アラヤより、この時代の知識が急激に送られてきた。

 

 

「ここは私の生きた時代よりも未来ということか!そして、あれは第二太陽(アマテラス)!かつての日本(大和)そのものだと!」

 

 

この時代の知識を得たエミヤはこの時代に召喚された理由を知った。だが、彼は本来アラヤから受けるバックアップを得ていない。理由はこの時代、神秘は旧時代に滅びており、現在はあの第二太陽(アマテラス)から発せられる星辰体(アストラル)がこの世界の現象の根幹と成っているためだ。

神秘らしいものは旧時代の科学の恩恵扱いされており、それは間違っていない。

エミヤは魔術を使えるがそれを可能とするためにバックアップを使いきっているようなのだ。故に、バックアップはほとんど無いものと扱われるのだ。

 

 

「だが、先ずは目的の確認だな。」

 

 

彼の目的はこの停滞した世界に変革をもたらす存在である極晃星(スフィア)の誕生を防ぐことである。

やり方はエミヤ個人に任せるとのこと。

 

 

「自由意志があるのは良いことだがどうすべきか。」

 

 

そうして彼はアラヤの知識にあった鋼の英雄(可能性の一つ)の下へ赴いたのだ。

 

 

 

エミヤがヴァルゼライドを始めて見たのは彼が東部戦線で無双しているを自慢の目で戦場を見渡していた時だった。だが、あろうことか。まるで気配を感じ取ったのかその男はエミヤに向けて目を向けたのだ。そして共に戦っていた審判者(ラダマンテュス)に、

 

 

「ここは任せる。」

 

 

と言い放った。審判者(ラダマンテュス)は、

 

 

「はい。お任せを、大尉。」

 

 

何かを察し、了承した。

そうして、ヴァルゼライドはエミヤがいる場所に向けて飛ぶように向かった。

 

 

 

エミヤは鋼の英雄《ヴァルゼライド》から発せられる圧力を受け、一瞬仰け反った。そして、こちらに一直線に向かってくる男を見て、

 

 

投影、開始(トレース・オン)

 

 

と、使いなれている双剣を投影した。

そして、構え。

 

 

「来い。」

 

 

 

ヴァルゼライドは戦場を監視するように眺める視線を感じ取った。そして、何かをいや、自分に対しての僅かな殺気を感じ、先日下した男に戦場を任せ、殺気を感じた方向へ飛び出した。

因みに頼られた男はあまりの感慨に体を震わせていたが。

 

 

「やつだな。」

 

 

彼の向かった先には双剣を構え、此方の動きを見定めている褐色の男がいた。

剣を抜いているのだから闘う気はあるようだ。

 

 

「だが、解せんな。何故一人でいる。俺を嵌めたいなら数百人規模で現れるのが妥当だと言うのに。」

 

 

ヴァルゼライドの言葉にその男は、

 

 

「私の目的は君だが、私は掃除屋に過ぎんからな。君が世界の改変を望まねば私も君を殺さなくてはすむのだから。」

 

 

世界の改変だと、俺の目的をしっているということか。だが、

 

 

「俺は諦めん!貴様が俺の何をしっているのかは聞かんが俺の邪魔をするならのならば、俺は貴様を倒す必要がある。」

 

 

ヴァルゼライドの言葉に、

 

 

「そうか。残念だが君を殺そう!」

 

 

と言い、剣を握り直し、構え直した。

 

 

「来い。名も知らぬ。男よ!俺は来るべき聖戦に向けて勝ち続けなければ成らないのだから!それが今まで犠牲になる全ての者達の手向けとなるのだ!」

 

 

ヴァルゼライドの咆哮が闘いの合図となった。

彼らは互いの武器をぶつけ合った。エミヤの双剣とヴァルゼライドの双刀がつばぜり合う。ヴァルゼライドの双刀は彼から溢れ出る光が纏い熱を発していた。ヴァルゼライドはまだ星辰光(アステリズム)を発動していない。彼の余りある力の一端が溢れ出ているだけなのだ。それにより、エミヤの双剣が砕かれる。

 

 

エミヤの双剣は宝具の贋作とはいえ、普通の武器よりも優れているのだ。贋作とはいえこれも宝具、故にエミヤは己のが剣を砕かれたことが信じられなかった。だが、彼も英雄。自ら進んで戦った訳ではないが数多の戦場を経験している。だからこそ、

 

 

投影、開始(トレース・オン)!」

 

 

直ぐ様、下がり弓を投影しその自慢の早打ちで、ヴァルゼライドを襲った。しかし、

 

 

「ふん!」

 

 

彼の刀により砕かれるのだ。エミヤが撃ったのも、贋作とはいえ宝具であり有名な刀剣類だ。

 

 

「何てデタラメなのだ。」

 

 

エミヤはヴァルゼライドの技術と圧力に戦慄した。

ここで、エミヤはこの男に対して認識を改める事になった。

 

 

アラヤから得た知識はこの世界の表の歴史背景だった。ただヴァルゼライドが危険な存在となるかも知れないのという可能性を秘めているその原因である神星(迦具土神)星辰光(アステリズム)についての知識は何か邪魔されたように得ていない。故にエミヤは星辰光(アステリズム)を知らないのだ。更に、今は星辰強化措置自体受けている人間が少ない。代表的な者は第一被験者のヴァルゼライド本人以外では彼を崇める審判者(ラダマンテュス)くらいだ。他は未だ、星辰光(アステリズム)の優位性が世に知らしめていないため。生まれてさえいないのだ。

 

ヴァルゼライドはエミヤに向けて、

 

 

「貴様の技術は尊敬に値する。俺と同じ才能が無いにも関わらず努力し続けたのだな。」

 

 

と言った。それに対してエミヤはこう感じた。

才能が無いだと!この力、この技術でか!

 

 

「貴様!どれ程努力したのだ!」

 

 

才能が無いゆえに努力するしかなかったエミヤは同じく才能が無いのにこれ程の力を持つヴァルゼライドに向けていい放った。

 

 

「無論。極めるまで。一つ極めればまた次と言葉通り身を削って!」

 

「何故貴様はそこで止めた?才能が無いのなら努力で、気合いで、根性でそれを補えばいい。」

 

「再度、問おう。貴様は何故諦めたのだ?」

 

 

ナンダ、コイツハ。気合いだと、そんなことで越えられるだと、そんなのはただの理想論だ。現実に出来るはずがない。だが、こいつはそれをやって来たと言うのか。ふざけるな!気合いなどで現状を打破出来るのならば、私はいや俺は守護者などには成っていない!

 

 

そうしてエミヤは静かに詠唱し始めた。そして、

 

 

「何が気合いだ。そんなもので世界が救えるものか!」

 

 

エミヤは詠唱を終わらせた。

 

 

「So as I pray, unlimited blade works!!」

 

 

稲妻のような轟音が響き、空間が塗り替えられた。

この空間を見て、この英雄は察したように、

 

 

「これが貴様の心象か。中途半端に生き急いだ者の末路と言ったとこか?」

 

 

彼の発言に対し、エミヤは自ら選んだとはいえ悲惨な末路を晒した。その先に得た者とはいえ自らの全ての生が否定されたのように感じた。故に、

 

 

「貴様ァ!」

 

 

固有結界のあらゆる場所に刺さっている。剣を英雄に向けて射出した。

だが、

 

 

「ふざけるな。貴様、この程度の意思で俺の道を阻もうとしたのか。そのみすぼらしい心象はともかく、この力を得たことは素直に称賛を送ろう。故に、貴様には俺の全力を持って葬ってやろう!」

 

 

今まで溢れ出ていただけの光が収束していく。

 

 

「創生せよ、天に描いた星辰をーー我らは煌めく流れ星!」

 

 

ヴァルゼライドは星辰光(アステリズム)を発動させる詠唱(ランゲージ)を唱え始めたのだ。彼の詠唱は鬼気迫るもので止めると言うことを考えることが出来ないほどの圧を秘めていた。

 

 

「巨神が担う覇者の王冠。太古の秩序が暴虐ならば、その圧政を我らは認めず是正しよう」

 

「勝利の光で天地を照らせ。清浄たる王位と共に、新たな希望が訪れる」

 

「百の腕持つ番人よ、汝の鎖を解き放とう。鍛冶司る独眼(ひとつめよ)、我が手に炎を宿すがいい」

 

「大地を、宇宙を、混沌を――偉大な雷火で焼き尽くさん」

 

「聖戦は此処に在り。さあ人々よ、この足跡(そくせき)へと続くのだ。約束された繁栄を、新世界にて(もたら)そう」

 

超新星(Metalnova)ーー天霆の轟く地平に、闇はなく(Gamma・ray Kerunos)

 

 

エミヤは黄金の光を纏ったヴァルゼライドの刀の一閃で消滅したのだった。




因みにこの時のエミヤさんは答えは得てません。それより前です。

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