この思いは。   作:如月の夢

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まさかの副会長視点。


だいじょうぶ。

副会長、基本的に副がつく役職は、微妙な印象を受ける。

一番偉いわけではないが、それなりに偉い。

かと言って、強い権限があるわけでもない。

そんな存在である僕、本牧 牧人は、果たして認知されているのだろうか。

まぁ、そんなことはどうだっていいか。

 

 

 

 

 

僕には、最近気になっている人がいる。

好きとか、そう言うのではなく、心配なのだ。

彼女の名は、一色いろは、1年生なのに、いきなり生徒会長まで登り詰めた人物。

最初の印象は、最悪だった。

リーダーシップは無く、周りに流される始末。

仕事の効率も悪く、はっきり言って、辞めてほしいとまで思っていた。

1年生だから、可愛いから、そんな理由でゆるされる。

 

しかし、彼女は突然として、成長する。

あのクリスマスイベント以降、自信がついたのか、かなり、生徒会長として成長した。

いや、させられたのか。

 

彼"比企谷 八幡"によって……

 

 

 

 

彼は凄い、仕事が早い、人に教えるのが上手い、人の考えを読むのが人一倍上手い。

そんな彼が、噂の彼だなんて知った時は、耳を疑った。

しかし、彼が生徒会活動を手伝ってくれる中で、彼を知り、噂の真相を知ることが出来たような気がした。

あいつに関わった人間は、みんな変わっていく。

会長はもちろんの事、書記ちゃんも変わったし、あの元会長すら変えられている。

そういう僕自身も、少し考え方が変わった気がする。

そんな彼を、会長が好きになることは、決して、おかしい事ではなく。

生徒会でもないのに、彼の仕事は、副会長の僕並みにあった。

と言うか、生徒会を覗きに来た先生が、比企谷を見ても当然のごとく連絡を伝えてるレベル。

生徒会に来た質問を、彼がすらすら答えている。

おかしい、まぁ、彼がすごいことに変わりはないが。

 

ただ、この頃、彼は来なくなった。

いや、呼ばれなくなった、が正しいのか。

会長の覇気が、それに比例するように落ちていた。

二人の関係に、なにかあったのだろうか。

 

 

そんなことを考えながら生徒会室に入ると、先に会長が来ていたようだ。

「こんにちは!副会長」

「あ、あぁ」

突然のことに驚く。

なぜ、こんなにも元気になったんだろう。

「昨日までは、すいませんでした。」

突然謝られ、混乱する。突然が多すぎる。

「私、目に見えて元気なかったですよね……」

「あぁ。」

「私、私はあの先輩と並びたい、だからこれからは全力で行きます。」

それを聞いて、クスっと笑ってしまう。

「ちょ、人が決意を顕にしてるのに笑うって、酷くないですか!?」

「いや、違うよ。」

「何が違うんですか。」

「やっぱり、彼の影響力は大きいんだなって。」

「なるほど。」

「まぁ、なら始めようか、新生生徒会長、一色いろはの進撃を」

「はい!」

 

こんな時を待ってた、ずっと待ってたんだ。

頑張れ。

 

 

それから、彼女の進撃は凄まじかった。

学校行事を、着実にこなして行き。

慌てて、取り残されることもあったし、上手くいかずに、泣いてしまうこともあった。

それでもその度、彼女は成長して行った。

かっこ悪いけど、全力で頑張ってる姿が、一番かっこよかった。

役員の交代により、生徒会を離れたが、それでも彼女の頑張りは伝わっていた。

 

 

そして、僕らは卒業式を迎える

 

 

彼女は本当にやり切った。

いや、彼女には、これからあと一年もあるのだと考えると、まだまだなのか。

卒業式を終えたあと、教室へ向かうと中、後ろから呼ばれる。

「ふ、副会長。」

正体は、息を切らした会長だった。

「僕はもう、副会長ではないよ。」

「それでもです。」

「それで何か用かな?」

「わたし、もう大丈夫でしょうか。」

それはあの時に言っていた、並ぶことについてだろうか。

「うん、全てに誓って言える、君はもう大丈夫だ、何も気にしないで、自分の気持ちを放ってこい。」

「良かったです!それでは、先輩のところに行ってきます!!」

そう言って走っていく彼女は、すごく笑顔だった。

君の笑顔で、彼も救われるんじゃないのかな。

 

 

 

 

廊下を走る、目指すは先輩の元へ。

3年の廊下、先輩がいるクラス、見つけた。

ドアに手をつき、息を整える。

「やぁ、いろは何か用かな。」

葉山先輩が気付き、声をかけてくる。

「せ、先輩を…」

「そうか、分かったよ。」

教室内はざわついている、誰かに告白とかか?誰だ?なんて囁いてる。

当の本人は、寝たふりをしていた。

葉山先輩が肩をたたき、その体を震わせた先輩は、何事かと葉山先輩を睨みつけるが、廊下にいる私を目視すると、こっちに近づいてくる。

「どうした、一色。」

「今日、放課後、屋上で。」

それだけ伝え、私はその場を離れた。

今日、全部を終わらせる。

 

 




今回使わせていただいたのは、BLUE ENCOUNTさんの、だいじょうぶ、です。

すごい元気が出ますよ。


とても短いですが、次話で話を一旦区切ります

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