この思いは。   作:如月の夢

4 / 6
お久し振りです……
更新が不定期にも程がある。


一色の one step ahead

後悔、きっとそれは、誰にも経験があるのではないでしょうか。

どうしてあの時。

こうしていたら。

こうだったなら。

誰だって、言ったことがあるセリフだと思います。

私にだってあります。

後悔の最も嫌なところは、

読んで、字の如く、ことわざあっての如く。

後から来るところです。

何故、こんなことを突然言い出したか、と言いますと。

 

 

 

 

あの図書館の一件以降、"私は先輩にあっていない"

 

 

 

 

 

あれから、既に一ヶ月はたっている。

なぜ、こんなにも合っていないのか。

それは、

 

"私は彼のそばに居ていいのか"

 

頭に浮かんだこの言葉に、全ての行動を躊躇ってしまうのだった。

 

 

私は、多くの男の子に、"可愛い私"を見せ続けた。

その行動は、数多くの好意を受け、行為を受け、敵意を受けた。

しかし、今更やめれるわけもなかった。

 

 

結衣先輩は、凄くいい人だ。

初対面でも、あぁ、この人は優しいんだろう。

そう思わせる、オーラがあった。

気弱な所があるけど、最近は、自分の意見も言っているそう。

人に気を掛けれる優しさ、でも、自分を曲げない。

気づいたら、同性から見ても、彼女は素敵になっていた。

 

雪ノ下先輩は、容姿端麗、頭脳明晰、大和撫子。

そんな言葉の似合う、とても届かない存在。

しかも、先輩や結衣先輩との関わりで、とても明るい表情をするようになったそうだ。

 

そんな二人が、そんな凄い二人が、心の底から大切にしている存在はやはり。

 

「たく、何がぼっちなんですかあの人は……」

 

 

こんなはずじゃなかったんだけどな。

そう呟く声は、風にかき消される。

そうじゃないだろう、そう言い聞かされる気分だった。

確かに、違和感はあったんだ。

中学生の時、同性の友達が減ってきた時点で、気付きはじめた。

とてつもない、後悔をする予想はあった。

それでも、気づいたらそんな事も忘れていた。

いや、忘れたつもりだったのか…

 

「いろは?」

隣りから、学友の声がする。

どうやら、既に帰りのSHRすら終わっていたらしい。

「ごめん、何でもないの、ありがとう。」

「あ、ちょっといろは。」

悪いけど、今は頭がいっぱいだ、人に構っている暇がない。

私は知らぬ間に、こんなにも追い詰められていたんだ。

「早く帰りたい。」

口に出した願いは叶わない、なんて言葉を聞いたことがある。

こんな事も、神様は見事に拾ってくる。

「いろはちゃん、ちょっといいかな?」

この子は誰だったか、そんなことすら、思い出せない。

「ごめん、ちょっと今日は帰りたいんだけど、なにか急なこと?」

「ううん、別に絶対必要な事じゃないから、いいんだけどね。」

その言われ方をすると、何故か気になる。

「内容だけでも聞いとくよ。」

聞いてはいけない、本能がそう告げていた。

「その、ね?」

彼女はとても言いにくそう。

嫌な予感がする。

大抵の場合、この予想は。

 

「先輩について、教えてもらいたいんだけど。」

当たるもので。

 

「"葉山先輩"の事?」

これは疑問ではなかった、合ってるよね?そういう意味で聞いた。いや、そうであって欲しかった。

 

 

 

「"比企谷先輩"の事」

ほら、世界は私に厳しいのだ。

 

 

 

「なんで?」

「そ、その……」

照れる彼女を見て、完全に理解する。

「好き……なんだね。」

「…うん。」

「そっか、そうだよね。」

「?」

あんな先輩を好きになる、それは、珍しい気もするが、そうではない。

人として、かなりの価値がある。

その価値を知った人間の殆どは、彼に惹かれてしまうのだろう。

「いろはちゃんは葉山先輩が好きなんだよね?だったらさ」

息が詰まる、心が悲鳴をあげる。

「ちが……」

頭が回る、世界が回る。

吐き気がする、身体に何かが這いずり回るよう。

「…は…ゃ…!」

なにか叫んでるのは聞こえるが、耳には入らなかった。

そして、世界が暗転した。

 

 

 

 

ここはどこだろう、体が浮いているようだった。

夢か、そう判断するのは早かった。

「っ……」

突然目の前が光る。

その光が消えた時、目の前には、見慣れた背中が。

「先ぱ……」

先輩!そう叫ぼうとした声が、途中で出なくなる。

その背中の隣には、知らない女の子が寄り添っている。

心臓に、刺されたかのような痛みが走る

「やめ……やめて!お願いだから、もうやめて!」

そう叫んでも、悪夢は止まらない。

「やだ、そんなのやだ。」

 

「私の、私の居場所なの!そこから離れて……」

 

「私が居たいの!頑張るからさ!ねぇ!」

 

 

 

「まって!いかな」

ごんっ、と何かとぶつかる。

「痛った……」

どうやら、おでこを強く打ったようだった。

すぐさま頭は、情報の整理を始める。

独特の薬品の匂いからして、ここは保健室だろう。

ベッドに運ばれたらしい。

そして、勢いよく起き上がった為、当たったもの、恐らく人なのだろう。

横を振り向くと、額に手を当て、痛そうに蹲っている。

その頭には、見た事のあるアホ毛………………

え?

「せ、せせせせ、先輩!?」

「痛てぇな、一色。ゆっくり起き上がれよ…」

状況整理が追いつかない。

「どうしてここに。」

恐る恐る聞いてみる。

「平塚先生に、こき使われててな。それが終わってようやく帰れる、って思ってよ。帰り始めたんだが、廊下を歩いてる時、倒れているお前と、必死に呼びかけている女の子を見つけてな。かなり焦ったんだぞ?」

「そ、そうなんですか…すいません。」

「お、おう。」

 

 

 

「先輩」

「ん?」

「私のこと、いつまで待っててくれますか?」

これは殆ど、そういうことを言っているのと、変わりはない。

そんなセリフに、先輩は。

「さぁな、待つ以外にないしな。」

「そうですか。」

 

 

先輩は、こんな私でも待ってくれる。

それに応えよう。

 

周りの男の子に、なんと言われようと、ましてや、女の子になんて言われたって、やり切ってやる。

自分で描いた理想なんだ。

自分自身の手で、満たしてやる。

だって、好きなものを失うより、酷いことはないよね。

手遅れになる前に、急がなくちゃ!

 

鍵をかけていた心を開いた。

切れかけていた、ネジを新たに巻く。

遮るものは、全て千切り取る。

私は、自分の力で成長して、この人の隣に立つんだ。

 

「先輩、私頑張りますね。」




今回は 伊東歌詞太郎さんとかで有名な、
one step ahead

いや、いい曲ですよこれ。


感想お待ちしてます!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。