《 side hachiman 》
八幡「練習試合?」
田代の勧誘から帰ってきた茂野はそう言った。え、何個か階段すっ飛ばしてね?てか部員揃ってないんですが······
雪ノ下「茂野くん、相手はどこなの?」
吾郎「ああ、帝仁だとよ」
八幡「は?帝仁?」
おいおい帝仁っていたらいつもベスト8に残る県内の強豪じゃねーか。
八幡「なんでそんなとこが部員すらそろってないうちと試合を?」
吾郎「なんでも平塚先生の中学の同級生がそこのOBで今は副顧問らしい」
あー、先生って友達としては見られるけど彼女には······ってタイプだからな。よく今でもそんな関係続いてんな。俺なんて野球関係者以外なんて連絡どころか、クラスメイトの消息さえ知らんのに。多分向こうもだろうけど。そもそもクラスに俺がいた事に気づいてるやつの方が少ないか。
吾郎「んで、俺もさっき練習試合って言ってけど正確には練習試合というよりかは合同練習というかたちらしい」
雪ノ下「なぜそんなことを?」
八幡「恐らく部員が揃わないことを見越して先生が頼んだんだろう。最悪部員出なくてもでれるように。後は向こうがレギュラーでなく、1年生メインだからだろうな。違うか」
吾郎「お前よく分かったな」
八幡「まぁそんなんだよな。出来るだけでも良しとするか」
そんな事だろうと思ったぜ。名門がうちなんかとはそう簡単にする訳ない。きっと平塚先生が頑張ってくれたのだろう。今度、愚痴の一つくらい聞いてあげるか。
そんなことを思っていると電話がかかってきた。以外な事にかかってきたのは、俺の多機能付き目覚まし時計だった。雪ノ下と茂野に断ってから電話にでる。
八幡「はい、もしもし」
戸塚『もしもし、八幡?僕だよ』
はいっ!大天使トツカエルからのお電話でした!何これから天に連れていくっていう神の導きなの?感動のあまり天に召されるの?パトラッシュ······僕もう疲れたよ······。てか戸塚の笑顔を直視したらまじで天に召されるまである。
戸塚『もしもーし、八幡?』
八幡「あっ、ああ。悪い、何のようだ?」
戸塚『実は今偶然材木座君に会ったんだけど······』
材木座ぁぁぁぁ!!!後で覚えとけよ!
八幡「お、おう。それで?」
戸塚『うん、実はグローブを買おうと2人とも思ってるんだけど僕たちのポジションってどうなるのか?』
八幡「あー、そうだな。丁度いいから少し聞いてくれるか?」
俺は戸塚と近くにいるであろう材木座に、今度試合がある事を伝えた。
八幡「それで何だか取り敢えず、戸塚達はこの前ノックした時と同じポジションの物であればいいと思う」
戸塚『ほんとに?僕出来るかな······』
八幡「大丈夫だ。自信を持て」
戸塚『うん!ありがとう!』
あぁー癒されるわー。
八幡「おう、じゃあな」
と言って戸塚との電話は終わった。至福の時間だった。
八幡「ところで田代はどうなった?」
吾郎「あぁ、入ってくれるって」
八幡「まじか?どうやった?」
吾郎「いや、取り敢えず球捕れって言って、座らせて、捕らせて、少し話して、そしたら本当は野球やりたいらしいから、やろうぜって誘った」
八幡「お前······ほんとにスゲーな······」
このコミュ力お化けが。由比ヶ浜でもこんなにスムーズに話進まねーぞ。こいつほど野球馬鹿を体現してるやつもなかなかいねーぞ。
雪ノ下「でもまだ1人足りないんじゃなくて?」
八幡「そうだな······、あてがないわけじゃないんだが······。取り敢えず明日平塚先生に聞いてみるから、取り敢えず保留ってことにしてくんないか?ちなみにいつ試合なんだ?」
吾郎「あーと、確か来週の土曜だったかな」
八幡「今日が木曜だから······。あんまりのんびりはしてらんねーな。最低限のことはしねーと」
吾郎「そうだな、取り敢えず今日はポジションでも決めるか」
八幡「だな。ちなみに雪ノ下、奉仕部の以来は?」
雪ノ下「メールが着てるわ。ただ、奉仕部に頼む内容じゃないから平塚先生に回したけど」
八幡「そうか」
そして今日も日は暮れていく······
――― ――― ―――
八幡「じゃあ、練習始めるか。取り敢えず各自ストレッチから入ってくれ」
ここは毎度お馴染み河川公園。先生と茂野の話では一応部活として認定されたらしいが、諸々の事情でまだ学校のグラウンドが使えないと言われた。じゃあいつもの公園にある野球場をかりることになった。
そして今日ここに8人の野球部員とマネージャーの雪ノ下と由比ヶ浜。それから顧問の平塚先生が集まった。奉仕部は今日はメールが無かったそうなので2人とも手伝いに来てくれた。結局部員はあの1年生3人組以外増えなかったがな。
田代「ちょっといいか?」
誰かに話しかけられた。そういやもう1人増えたな。誰だか分からなかったが、俺がまだ会ってない部員は田代だけなので消去法で辿り着く事が出来た。
八幡「なんか用か?」
田代「あんたってもしかして横浜シニアの比企谷か?」
八幡「ご名答。さぁ、正解したご褒美に何が欲しい?金か?名声か?まぁもっともお前にやるくらいなら俺が貰うがな」
田代「知らねーよ······」
八幡「でも、よく俺なんて覚えてたな」
田代「馬鹿言うな。県内のシニアであんたを知らねーキャッチャーはいねーよ。何度あんたに苦しめられたか」
八幡「そうか?俺よりかはクリーンナップの方が警戒されてたように思えたがな」
田代「それはどのチームもどうやっても一番のあんたの出塁を止められなかったからな。それならまだ後ろの長渕や堂本とかを抑えることを考えた方がよっぽどいい」
八幡「買いかぶりすぎた」
由比ヶ浜「ヒッキーってそんなに凄かったんだ······」
吾郎「次はキャッチボールしようぜ」
一応この部の部長は茂野になっている。ちなみに俺は副部長。面倒くさそうだ······。
キャッチボールか······。俺は誰とやろうか。
高橋「材木座さん。やりませんか?」
材木座「うぬ!高橋、成長したお主の姿見せてみよっ!」
高橋とかいう1年生が材木座とキャッチボールを始めた。確かほかの1年の野口と山本も同じ中学出身だったよな。材木座の後輩だったか。まぁ、あいつは暑苦しいのとうっとおしいことを除けばいい奴だからな。声も良いし。
戸塚「八幡······。僕としてくれない······?」
よっしゃぁぁぁぁぁ!!戸塚よ、何をしたいのか言ってごらん?なんでもしてあげるよ?
――― ――― ―――
八幡「次はノックだな」
吾郎「じゃあ今から言うポジションについてくれ」
そういって茂野は指示を出す。それぞれの個性や経験を恐らく活かせるようにと考えたポジションだということを理解してくれれば幸いだな。
吾郎「じゃあ行くぞ!」
そして俺たちは今日も白球を追いかけたのであった。
――― ――― ―――
『次は帝仁高校前、帝仁高校前』
由比ヶ浜「ヒッキー、ついたよ」
八幡「そうだな」
試合当日、俺たちは帝仁高校に来ていた。まぁ今日は勝てるかどうかよりかは今の俺たちがどんだけ通用するかってのが一番の目的だがな。というか下手したらコイツらなら勝てるかも。茂野もいるし。
そんな甘ちょろいことも考えながら俺たちは帝仁高校のグラウンドに足を踏み入れた。
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