只今、本作品の番外編を誠心誠意執筆中でございます!本編で拾えなかった、そのままにしておくには勿体ないネタをかき集めました。完成次第報告致します!
《 side hachiman 》
結果だけ見れば、目論見通りに行った。しかし、その工程は酷く醜いものだった。
――― ――― ―――
俺たちは肝試しの進行をこちらで操作する事で、一番最後に問題の班を回した。そして、本来の道では崖の方は危険なのでカラーコーンで封鎖してあったが、前の班とかち合わないようにするため、あえて崖の方に誘導した。
俺は指定の場所へ先回りするため、彼女達の様子を少しだけ伺ったが、ショボイ仕掛けに高校生を馬鹿にしている様な事さえ言っていた。ここまでは予想通り。後は俺と留美が上手くやればこの作戦は上手くいく。
俺はあらかじめ最悪の事態の予防策として留美にある事をしてもらうことになっている。
林の間を縫って、彼女たちより先に所定の位置に着いた。もう少しすれば来るはずだ。
足音がする。そろそろだな······。
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「ねえ、なんでアンタなにも着替えてないの?wwバカじゃないのー?ww」
「高校生なのにそんなこともわからないのー?www」
「恥ずかしいーwww」
彼女達は俺も見ると直ぐに、口々に馬鹿にしてきた。普段ならこんくらいじゃ怒る所か、相手の頭の悪さに同情するまである。しかも小学生ごときに。仕方ない。俺も演技のため、仕方なく声を張り上げるとするか。
八幡「はぁ?お前達、何調子乗ったこと言ってんの?」
······やばい、思ったより低い声が出てしまった。俺と器ちいせぇな。まあ、そんなこと周知の事実か。
まさか、キレられると思ってもいなかったのか、彼女達の顔に不安の色がで始める。······畳み掛けるなら今だな。
八幡「てか、お前昨日から割と調子乗ったこと言ってたよな」
八幡「知らねーだろうけど、俺らはっきりいってお前らの事ウザイとしか思ってないから」
八幡「そう言えば、お前ら誰が虐めてるんだっけ?そんな屑共には、お仕置きが必要かな?」
そこまで言うと、いい加減自分の置かれた立場を理解したのか、一気に青ざめ始めた。
八幡「そうだな、お前ら······、5人か。よし2人だけ置いてけ。他のは勝手に帰れ」
そう、これこそ人間の本性が丸見えになる『〇人だけ許してやるよ』作戦である。恐らくこれでこいつらの人間関係はまっさらになる。
八幡「ちなみにお前ら、誰かにチクったらお前らがいじめをしていた事もばらすし、顔も覚えたからな?」
軽く脅しを入れる。まあ、多分大丈夫だろうけど。
案の定、最初に留美が置いてかれることになり、あとの1人で揉め始めた。
どうやら決まったようだ。後はここらで、俺が急にトンズラすれば終わりだろう。
ん?置いてかれる事になったヤツの様子がおかしいな。
「いやぁぁぁぁぁ!!!!!もうやだぁぁぁぁぁ!!!!!」
八幡「おいっ!バカっ!そっちは崖だ!」
崖の方に行きやがった!言葉も聞こえてねえな。なんとか追いつくか······?
くそっ、失敗も失敗。大失敗じゃねーか!!
「きゃっ!」
何かにぶつかって転んだな!もう······追いつい······。おい、葉山。何故お前がいる。
葉山「ごめん。大丈夫、怪我はない?」
そういって葉山にぶつかって転んだ奴に話しかけた。
最初はまた敵が現れたと、怯えるようだった小学生達の顔も見知った味方になってくれそうな人間の登場に安堵の表情を浮かべ始めた。
どうやら最悪の事態だけは防げたみたいだな······。えがった、えがった。······どうやらそうは問屋は卸してくれないらしい······。
「あの人が私たちの事を虐めたの!」
「そうそう!なんか意味わかんない事ばっかいって!まじキモイ!」
相手と対等に戦える味方がついた途端、一気に攻撃的になりましたね。そして、チクったらどうなるのか、説明してあげたのに、もうデータが消えてしまったのかしら。ピンクの悪魔の代表作かよ。
その時の俺は、葉山は表立ってどちらの立場につかず、いつも通り茶を濁すと思っていた。そう、いつも通りに。
葉山「······そうか、君たち、あいつはこういう奴なんだ。最低の奴だから、気にしないでくれ」
は?何言ってんだ、こいつ。
葉山の口から出たのは俺を一方的に非難する言葉だけだった。
こいつは······、嵌めたのか?俺を?何のために?この場で俺を非難してどうする?小学生の間に広まって、俺が処分を受けるかもなんだぞ?俺だけじゃない。事件になれば、小町や親父、母ちゃんにも迷惑をかける。こいつがわからないわけが無い。
どうして······、考えを巡らせ、一つの可能性にたどり着いた時、もうそこには誰もいなかった。
――― ――― ―――
次の日、やはり小学生の中で話題になっているようだった。しかしそれは俺の事ではなく、いじめていた奴らの事に関してだ。どうやらあのグループは昨日何かあって、解散したらしい、と昭和終期のアイドルみたいな事が広まっていた。
その当たりは葉山が上手くやったんだろう。それでもどこからか、後ろ指を刺されるような笑い声は聞こえたがな。
もちろん、それに気づかない雪ノ下や由比ヶ浜ではない。それに昨日俺だけ帰りが遅かった。何かあると思うのが普通だろう。
そして俺は昨日あった事を、伝えた。最初は適当に茶を濁していたが、雪ノ下に感づかれ、やり直しを要求された。
それは近くにいた葉山グループにも聞こえたようで驚きを隠せてなかった。その後は「どうして葉山がそんなことを」というこれもまた当然の事を呟いてた。
それもそうだ。今までは完全中立を謳っていたあの葉山隼人がどちらかを一方的に責めるような事を言ったんだから。しかも自分が発案した作戦のある意味予定調和とも取 れるのに。
だから俺は言った。葉山にも考えがあったのだろうと。
別にあいつをフォローする気なんてサラサラないが、俺が陥れられているこの状況がたまらなく嫌だった。
しかし、雪ノ下の怒りは収まらず、葉山本人に直接問いただした。
もっとも葉山は何も答えなかったが。
これで更に火に油を注ぎかけたが、平塚先生が止め、この話はそこで、辞めさせられた。
これには戸部や三浦も葉山を擁護することが出来ず、千葉に帰ってきたあとも、葉山と話している様子はなかった。
この夏休みの1件は誰もが納得出来ない形でひとまず幕を閉じた。
――― ――― ―――
八幡「なあもういいだろ?早くお前の本心を言えよ」
俺は意識を目の前の葉山に戻す。まだ葉山は何かかんがえこんでいるようだったが、いつまでも付き合ってられん。
葉山「少し俺の話をしてもいいか?」
恐らく、大きく関わることなんだろう。ここまで来て断る理由がない。
八幡「ああ、手短にな」
俺がそう言うと、葉山は重々しく口を開いた。
戸塚「八幡······、僕今回も出なかったよ······」
申し訳ございません!戸塚とのイチャコラ?はそのうち番外編かなんかで書きます!
次回の投稿は2月13日(月)00:00の予定です。
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