《 side hachiman 》
奉仕部宛に届いた、某心がぴょんぴょんする系日常萌えアニメのキャラクターを名乗る人物からの一通のメール。
雪ノ下「これって貴方のことよね······?」
雪ノ下がなんとも言えない表情で尋ねてくる。
八幡「············だろうな」
さすがにここまで特徴が表されていると、さすがの俺も言い逃れはできない。
雪ノ下「えっと······、この人はなんと呼べばいいのかしら?ラビットハウスさん?それともパン作りさんの方がいいかしら」
八幡「いや、コ〇アさんと呼ぼう」
と俺は青山
雪ノ下「なにか貴方に馬鹿にされたような気がするのだけれど············」
雪ノ下が不満気にこちらをジト目で見てくる。
雪ノ下「まあいいわ。そのコ、コ〇アさん?は貴方の知り合いなのでしょう?」
八幡「お前、俺に女子の後輩がいると思うのか?」
雪ノ下「············ごめんなさい······、私また貴方に酷いことを············」
八幡「うん、今の対応の方がよっぽど失礼だけどね」
ほんとにこの子は······。以前はどうだったか知らんが、最近は冗談だとわかっているから、別に良いけど。
雪ノ下「冗談はこの当たりにして、本当は心当たりがあるんじゃないの?」
八幡「ないとは言えんが、可能性は低いと思うぞ」
俺の唯一の心当たりは確かおバカさんだったはずだ。そんな奴が総武高校に入れるとは思えんのだが。
雪ノ下「そう、とりあえず1度部室に来てもらいましょう。貴方、月曜日は練習無いのよね?」
うちの部活は週に一度、月曜日を完全OFFとしている。提案者は俺。理由は適度な休みは必要だし、勉強の時間も必要だからだ。茂野が多少文句ありげだったが論破してやった。やったぜ。
八幡「そうだな、ならその日にするのか」
雪ノ下「貴方が良ければそうしようと思っているのだけれど」
八幡「分かった、ならその日は部室に行くわ。由比ヶ浜にはお前から伝えといてくれ」
雪ノ下「ええ、わかったわ」
それだけ伝えると、俺はグラウンド整備に戻った。
――― ――― ―――
あれから日は経ち、今日は約束の月曜日。俺はこの日のために、早く起きてまであることをしてきた。
そんな朝、俺が学校に向かい歩いていると、茂野が後ろから声をかけてきた。
吾郎「オッス、比企谷」
八幡「······お前、よく俺だと分かったな」
1発で見抜かれてしまった。俺の朝はなんだったのか。恨めしそうに呟いてしまった。
吾郎「まあな、なんかお前だなーって。あとオーラがそんな感じだった」
お前はZ戦士か。俺の気なんてスカウターで表示したところで、『戦闘力······たったの5か······ゴミめ······』とか言われておしまいだよ?
というかこいつは見た目とかあんま気にしなさそうだから、考えるだけ無駄か。
諦めて茂野と一緒に歩いていると、またも後ろからアホそうな声が聞こえた。
由比ヶ浜「やっはろー!ノゴロッち!」
案の定由比ヶ浜だった。こいつなら俺のしてきた事が無駄じゃないかどうかわかるかな。
吾郎「おう、おはようさん」
由比ヶ浜「ヒッキーもなんとか言ってよ!······え、えっと、ヒ、ヒッキー······ですよね?」
どうやら俺のしたことは無駄では無かったようだ。
八幡「おう、おはよう。由比ヶ浜」
由比ヶ浜「あっ、うん。おはよう!······て、違うよ!スルーしないでよ!」
心当たりがあるが面白そうなのでシラを切ってみる。
八幡「どうしたんだ、由比ヶ浜?いつも思っていることだが、今朝はより一層騒がしいな」
由比ヶ浜「毎朝うるさいと思ってんの!?て、違うよ!どうしたの、ヒッキー。いつもと違うじゃん」
八幡「俺はいつも通りだぞ?」
由比ヶ浜「全然違うよ!アホ毛はないし、なにより目が腐ってない!」
ここで、ネタばらし。今日俺が朝早くに起きてしてきた事とは、アホ毛の削除と目を腐らせないようにすることだ。
八幡「どうだ、俺だと分からなかったか?」
由比ヶ浜「全然分からなかったよ。ノゴロッちと話してたからヒッキーだな、って思ったから声かけたんだけど、見たら別人かと思った!」
八幡「そうか、うまく行っているようでなによりだ」
その後も歩きながら由比ヶ浜が俺に尋ねてくる。ちなみに茂野は田代と喋っている。
由比ヶ浜「でもどうやったの?」
八幡「アホ毛の方はな一家相伝の秘伝の技で治してもらった」
由比ヶ浜「そんなのあるんだ!?」
八幡「母親の方の秘伝なんだが、普段は愛くるしさの象徴のようなアホ毛だが、そういったものが望まれない場も当然ある。葬式とかな。そんな時に使うワザなんだとか」
由比ヶ浜「どんな風にしたらなくなるの?」
八幡「俺はよく分からん。小町は母親から受け継いでいて、朝してくれたんだよ。あまりの早業にどうやったのかさっぱりだ」
まじで瞬きしてたら、終わってた。小町はもうマスターしているようだった。
由比ヶ浜「ヒッキーは習ってないの?」
八幡「俺は母親に『あんたはこの奥義を悪用しそうだから』とか言って教えてもらえなかった」
人の生死に関わらねーだろ、と今でも思う。
由比ヶ浜「じゃあさ、じゃあさ、その目はどうやったの?」
八幡「これには複雑な工程があったの。前提条件として、小町曰く俺は野球をしている時はそんなに腐ってないらしい」
心当たりがあるのか、由比ヶ浜は思い出すように頭を捻り始めた。
由比ヶ浜「あー、確かに野球してる時はけだるげな感じはあるけど、腐ってはないよね」
八幡「でな、ここからが俺が考えたのだが、血の繋がっている小町があんだけ綺麗な目をしてるんだから、俺にもその素質はあるのではと思った」
由比ヶ浜が相槌を打ってくる。
八幡「まずこれがいつもの俺な」
そう言って俺は力を抜いて目を腐らせる。
由比ヶ浜「あっ!いつものヒッキーだ!」
八幡「最初に全身の力を抜きます」
由比ヶ浜「うんうん」
八幡「次に、何か楽しいこと、胸踊ることを想像しながら軽く目を閉じます」
由比ヶ浜「それで?」
八幡「最後になんかこう、うまい具合に瞼に力を入れ、限界まで目を見開きます」
由比ヶ浜「ほんとだ!すごい!」
八幡「だろ。俺もやってみて上手くいくとは思わなかった」
しかし、由比ヶ浜は不思議そうな顔をする。
由比ヶ浜「でもなんでいつもそういう風にしないの?」
八幡「アホ毛はともかく、目の方はめちゃくちゃ疲れる。瞬きのたびに力入れなきゃだし、なにより次の日は脱力感でいつもの3倍腐る」
由比ヶ浜「まあいいんじゃない。もちろんその目のヒッキーもかっこいいと思うけど、やっぱりいつものヒッキーの方が好きだな」
······この娘は自分が何を言ったのか気づいてないのかしら······
八幡「お、おう······、なんだ、その······あ、ありがと、な······」
由比ヶ浜「あっ、や、やっぱいまのなし!いや、別にヒッキーのことはそうなんだけど、で、でもそうじゃないっていうか······」
八幡「お、おう」
由比ヶ浜が頬を染めながら早口で捲し立てるもんだから、危うく勘違いしそうになる。あと俺も恥ずかしいのでやめて頂きたい。
八幡「························」
由比ヶ浜「························」
俺たちはその後空気を読めない茂野が戻ってくることを切に願いながら学校に向かうのであった。
やっぱりなんかこの後もしんどそうですわ······。
次回の投稿は1月23日(月)00:00の予定です。
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