一話目、どうぞ!
アーシアは黄金の輝きを放つ
「我が呼び声に応えたまえ、黄金の王よ。地を這い、我が褒美を受けよ!お出でください!
その呪文を唱え終えた矢先に魔方陣がいっそう強く輝いた!
光が弾けたあとに姿を現したのは黄金の鱗を持つ巨大なドラゴン。
そいつは開口一番にこう言う。
『……おパンティータイム?』
……やっぱりか~。てか何で疑問形?
俺の心のうちを知ってか知らずか、アーシアは答えた。
「そ、そうです!おパンティータイムです!」
アーシア、何かやけくそになってないか?
「……なんだ、何が起きた!」
ヴァーリが気になったのか、振り返えろうとする。
「ヴァーリ!悪いことは言わん!振り向くな!これから起こることは気にしたら負けだ!」
そのヴァーリが振り返ってこないように釘を刺す。
ヴァーリとアルビオンが龍王があんなのと知ったらショックを受けるだろう。
ドライグが俺たちにも聞こえるように声を発した。
『アルビオンよ、彼を言うとおりだ!絶対に耳を傾けるな!死ぬぞ、心が!』
ドライグが俺に肯定し、アルビオンに注意をする。
『ど、どういうことだ、赤いの……?まさか、乳か!?乳なのか!?はぁはぁ……く、くるちぃ……』
アルビオンが過呼吸気味になっていた。あっちもあっちで精神的に追い詰められてるんだな。
『い、いや、違う酷さだ……。ファーブニルはもう俺たちが知っている昔のファーブニルじゃない!』
ドライグがファーブニルをボロクソに言っているが、その通りだからなぁ。昔のファーブニルがどんなのかはよく知らないが……あれよりはマシだったんだろう。
アザゼルがファーブニルに言う。
「ファーブニル!おまえと契約しているとき、おまえにくれてやったアイテム。その中に魔弾タスラムのレプリカがあったはずだ!あれを出せ!クロウ・クルワッハと同じ神話出身のアイテムなら効くはずだ!」
確かにそれならクロウ・クルワッハにも効くかもしれない!アーシアには悪いがあるなら早く出して欲しかった。
アザゼルの願いにファーブニルは応じる。
『いいよ。でも、俺様、欲しいものがある』
「またパンツなんだろ?アーシア……悪いが頼めるか?」
「は、はい!」
俺の言葉にアーシアが頷き、ポシェットの中を探り一枚のパンツを取り出した。
だがファーブニルはそれを見て頬を膨らませた。
明らかに不満顔なんですけど!?何だ!?パンツ以上のお宝を見つけちまったのか!?
『違う。俺様、今日はおパンティーって気分じゃない』
『……ッ!』
ファーブニルの発言に事情を知る全員が驚いていた!
「じゃ、じゃあ、何が欲しいってんだ!?アーシアのブr…」
「黙ってろ!」
「ぐぉっ!」
アザゼルが何か言おうとしていたが、言い切るまえに顔面に上段回し蹴りを決めダウンさせる。
「しかし、ファーブニル!おまえ何が欲しいってんだ!」
「シドウさん!俺、わかりました!」
「イッセー、マジか!?……いや、聞かないでおく」
「いや、そこは聞いてくださいよ!俺の予想が正しければ……アーシアの脱ぎたて……」
「おりぁぁぁ!」
「ぎゃぁぁぁっ!」
変なことを言おうとしたイッセーの顔面に跳びけりを決め黙らせる。
「…………で、何が欲しいんだ?」
『俺様、アーシアたんのスク水が欲しい』
…………滅んでしまえっ!
「バカか!?バカなのか!?こんなところにスク水なんか持ってきてるわけ……」
「あります!持ってきてますぅぅぅ!」
俺の言葉を遮って、アーシアが涙声で叫んだ。
そのアーシアの手には"あーしあ"と刺繍されたスク水が握られていた!
『なにぃぃ!?』
先ほどダウンしたアザゼルも含めて全員が驚いていた!
「いや待て!何で持ってんだよ!?ここには海も多分プールもないぞ!?」
俺の質問にアーシアは切なそうな声で答える。
「……ソーナ会長さんがここに来るときにおっしゃったんです」
『おそらく、ファーブニルは次の宝物にアーシアさんのスクール水着を所望するはずです。プールで黄金の龍王は並々ならぬ視線をアーシアさんに向けていました。いま彼が一番欲するのはスクール水着とみて間違いありません。……持っていきなさい。役に立つはずです」
「そ、そうなのか…さすがはソーナ……なのか?」
「お兄様の言うとおりです!私はソーナを越えられるのかしら!?」
リアスが心底悔しそうに言った。
その横ではゼノヴィアが感嘆の叫びを発した。
「さすがは生徒会長だ!なんて冷静で的確なアドバイスなんだ!」
「私、ソーナ会長を尊敬しちゃうわ!」
イリナに関しては泣いていた。
嘘だろ!?たったそれだけで泣けるのか!?てか仮にもいまは戦闘中だよな!?
「ファーブニルは泳ぎたいのか」
クロウ・クルワッハは変な誤解をしていたが、もうそれでいいよ!
ロスヴァイセは息を吐く。
「もう何も言うことがありません。……一言、酷い」
その通りでございます……。
「あげます!」
意を決したアーシアがスク水をファーブニルに献上する。
ファーブニルは巨大な顔を近づけて……。
『パックンチョ』
スク水を食べ始めた……。
『なめらかかつ爽やかな口当たり』
もうやだこいつ!
「木場……グラム貸せ……この変態ドラゴン叩き斬ってやる!」
「シ、シドウさん!?それはさすがに無理です!」
「だぁぁぁ!くそ!どうしてこうなった!?」
『こっちに聞かないでください!』
俺のストレスが限界を迎えそうな中、一人の少女の痛々しい言葉が俺たちの耳に届いた。
「……イッセーさんと結婚したら子供は五人欲しいです。うふふ、もうパパったら、またエロゲをやるなんて、いけないパパですねぇ……」
「や、ヤバイ!ちょ、誰かアーシアのケアを!早く!
「お兄様も落ち着いてください!」
俺たちの会話をよそに、スク水を頬張り終わったファーブニルは口を大きく開けた。
『あーん。今週のビックリドッキリアイテム発進』
そんなことを言ってファーブニルの口から出てきたのは……大きな筒のようなものだった。
アザゼルはそれを無反動砲のように肩に担ぎ、構えた。
「こいつがタスラムのレプリカさ。さーて、クロウ・クルワッハにこいつがどこまで効くか撃ってみますかね!」
アザゼルがクロウ・クルワッハに狙いを付けて、タスラムから光の砲弾を放った!
砲弾は空中でジグザグに動き回り、クロウ・クルワッハ目掛けて飛んでいく!
「ほう、タスラムか。懐かしい。必中する魔の弾。回避は不可能。昔の俺であれば脅威だっただろう。だが、今の俺ならば……」
クロウ・クルワッハは両腕を巨大なドラゴンのものに戻し、正面から受け止めようと構えた。
巨大な両手で捕らえようとした瞬間、タスラムの砲弾は軌道を変え、下から潜り込むようにクロウ・クルワッハの腕を避けた!
そして隙だらけのあご先に激しい爆音と共にヒットした!同時にまばゆい黄金の輝きも生まれ、室内を照らした。
凄まじい光に目がくらむが……光が止み俺たちの目に飛び込んできたのは頭部から煙を上げるクロウ・クルワッハだった。
……今の一撃は確実に当たったはず。だが奴からのプレッシャーはまだ途切れていない。ということは……。
煙が消え、そこにあったのは……巨大なドラゴンの口でタスラムの砲弾を噛んで止めたクロウ・クルワッハだった!
アザゼルが呆れながら言う。
「……止めたのか……」
クロウ・クルワッハはタスラムの砲弾を床に吐き捨てると、両腕と顔を人間体に戻していった。
ここまでの攻撃で損傷させたのは、衣類と片翼だけか。
クロウ・クルワッハはひと息吐くと言う。
「………頃合いか。これまでのようだ」
踵を返し、壁に寄りかかってしまった。同時に先ほどのプレッシャーを感じなくなった。
怪しく感じたヴァーリが問う。
「やめるのか?」
「最低でも十数分だけ時間を稼げと言われただけだ。……次に会うときは本気でやりあいたいものだ」
クロウ・クルワッハはそれだけ言うと黙りこんだ。
俺たちは頷きあうと足早に立ち去っていく。
クロウ・クルワッハは追撃をしてくることはなかった。
ただ奴はギャスパーに視線を送っていただけだ。
イッセーやヴァーリではなくギャスパーに……なぜだ?
ドラゴンの考えていることはまったくわからん。それはドラゴン族以外の誰であれそのはずだ。
俺はそう考えながら最下層への階段を下りていくのだった。
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