グレモリー家の次男   作:EGO

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life13 最強の邪龍だぜ

滅びの球体が消え、あとに残ったのは……グレンデルの頭部の右半分だけだった。

だがそれでもグレンデルは笑っていた。

『あのあとに言われてたんだった。バアル家の血筋が持つ滅びの魔力ってーやつぁ邪龍の魂すらも削るってな。こりゃ、効いたぜぇぇぇ!』

あのあとってのは俺が吹き飛ばした時だろうな。

グレンデルは哄笑をあげた。

『なーに、また体を新調すりゃいいだけの話だ!何せ、魂さえ無事なら俺はいくらでもボディを取り替えられるからよぉぉぉ!聖杯ってーのは本当に便利なもんだぜぇぇ!』

体を新調するか……だから頭だけにしたのにこんなに速く復活したのか。

グレンデルは不敵に漏らす。

『でもよぉぉ!こんな状態でやるってーのもおつかもしれねぇよなぁぁぁ!こっからが本番だ!一匹でも多く噛み殺してから消滅ってのも楽しそうでよぉぉ!グハハハハ!』

『……ッ!』

グレンデルの一言に全員が戦慄していた。

頭半分、目も見えてない。そんな状態でも戦意をたぎらせてやがる!イカれてるってか頭のネジが足りてないだろ!

俺はブレードをグレンデルの上に展開し打ち込む。

床に釘で打ち付けるように固定され、動けなくなったグレンデルに大剣を作り出しながら近づく。

「こっちは急いでるんでな。今度こそ完全に消し飛ばしてやるよ」

俺はそう言いながら大剣を突き刺そうとした瞬間、俺は異常なまでのプレッシャーを感じてその場を飛び退く。

そのプレッシャーを放っている張本人の黒ずくめの男……クロウ・クルワッハはどうやら今部屋に入ってきたようだ。

クロウ・クルワッハは歩きながら言う。

「グレンデル。一度ひけ」

『……ッ!クロウの旦那か。チッ!これからってときによ!あんた、邪魔するってーのかよ!?』

「その体では長くは保たん。さっさとボディを乗り換えろ」

『うるせぇぇぇよ!黙っててくれや!こいつらともっと殺しあわせてくれよぉぉぉ!』

グレンデルはまだまだ元気そうにクロウ・クルワッハに啖呵を切るが、クロウ・クルワッハはそんなグレンデルに鋭い眼光を向けるだけだ。

「やりたければ俺を倒さなければならない。……ということになるが?俺はかまわん」

『………ッ』

クロウ・クルワッハの迫力にあのグレンデルも黙るしかない様子だ。

グレンデルはしばらく考えるように黙っていると、口を開いた。

『ここであんたとやり合おうなんざ思っちゃいねぇよ。やるならベストな状態で潰しあいてぇしな。いいぜ、交代してやんよ』

グレンデルが指示を聞いた……だと。

だがすぐにそれに納得してしまうほどの力がクロウ・クルワッハにはある。

その瞬間、クロウ・クルワッハが消えた。正確には異常なまでにまでの速度でグレンデルの前に移動したのだ。

そのクロウ・クルワッハは俺がグレンデルに打ち付けたブレードを手刀であっさり砕くと指を鳴らした。するとグレンデルの下に転移魔方陣が展開する。

野郎、転移するきか!逃がすかよ!

俺とゼノヴィアは同じ事を考えたのかグレンデルに同時にオーラを放つがクロウ・クルワッハにあっさり防がれてしまった。

転移の光に包まれるなかでグレンデルが吠える。

『クソがきども!運がねぇな。おまえらじゃ、クロウの旦那には勝てねぇ。ま、生き残ったら、またやろうや。殺し合いってやつをよ?グハハハハ!』

それだけを言い残して、グレンデルはどこかに転移されてしまった。

残ったクロウ・クルワッハが俺たちに言う。

「ここから先に行かすわけにはいかないのでね」

俺たちが構えた瞬間、突然上の階に繋がる階段から白い閃光がこの部屋に突っ込んできた。

何かデジャブを感じるが、あのとき同様いいタイミングだよ。

白い閃光の正体……それは鎧姿のヴァーリだった。

「おまえがクロウ・クルワッハか」

「ああ、そうだ。現白龍皇」

それから無言で睨み合う両者。二人からは凄まじいまでのプレッシャーが放たれていた。

アザゼルが言う。

「ヴァーリ!遅ぇじゃねぇか。カーミラの領地から俺よりも先に出たのに、なぜここまで遅れた?」

確かにヴァーリの速度ならもっと速く俺たちと合流していてもおかしくない。

ヴァーリが言う。

「いろいろとね。途中で妨害されていたのさ。あの男……ユーグリット・ルキフグスにな」

……そうか。ユーグリットもここにいるのか。だからヴァーリも遅れたと。

アザゼルは再度問う。

「美猴たちは?」

「……はぐれ魔法使いの集団魔女の夜(ヘクセン・ナハト)だったか?そこに属している聖十字架の使い手に捕まってな。あいつらはそいつの相手をしている」

聖遺物(レリック)が聞いて呆れるな。神滅具(ロンギヌス)聖遺物(レリック)は全部禍の団(カオス・ブリゲード)に関与しちまってるじゃねぇか、聖書の神よ!」

アザゼルがそう吐き捨てているが、俺も同感だよ。

俺たち"邪なるもの"に対してだけならまだしも全勢力の良い奴にまで振るわれてるわけだからな。

とりあえずひとつぐらいは回収しておきたいな……。

俺がそんなことを考えているとヴァーリがイッセーに訊く。

「キミはクロウ・クルワッハに勝てる自信はあるか?」

「あいつのオーラから察するに……おかしいぐらいに強いのは理解できるぜ」

「現時点ではキミよりも遥か格上の存在だろう。と言っても俺も勝算があるようでないとも言える」

あのヴァーリがそんなことを言うとは……クロウ・クルワッハがどんだけすごいかはオーラからわかってはいたが、以外に思ってしまった。

ヴァーリは続ける。

「だが、俺はこの先にいるはずであろう者にようがあってな。できるだけ、消耗をしたくないんだ。……このドラゴンを追い求めていたんだが、それはそれだ。今はどうしてもこの先に行かなければならない。そこでだ」

何となくヴァーリの次のセリフがわかったぞ。それはおそらく

「共同戦線か?」

「嫌か?」

どうやらイッセーも俺と同じく気がついていたようだ。

「いや、悪くねぇ。ギャー助の身内を助けるのにも苦戦しててよ。俺も無駄に消耗したくないのが本音だ」

それを聞いてヴァーリは笑った。

「交渉成立だな。ふっ、ロキ戦以来か」

ロキか……もうあの頃が懐かしく思えるな。

アザゼルが言う。

「こいつらでダメならどうしようもねぇ。ここは二人に任せて俺たちは回復するべきだ」

「援護したいところだけれど、私もあれをもう一度撃つにはちょっと休ませてもらったほうがいいわ。どちらにしても二天龍が暴れるなら、私たちのサポートが逆に邪魔になるで

「賛成だ。俺はまだまだいけるがこの下にはおそらくリゼヴィムがいる。あいつの"特性"だとあの二人は戦力にならないかもしれない。休ませてもらうぜ」

イッセーは俺たちの意見を確認したところで呪文を唱え紅の鎧を纏った。

イッセーの全力全開、あれでもクロウ・クルワッハに通用するかどうかわからない。

その後、イッセーとヴァーリは俺たちやクロウ・クルワッハに聞こえないほどの声で話し、それを終えると同時に動き出した!

イッセーとヴァーリは即席ながらいいコンビネーションで攻撃をしていき一撃いれるが、大きなダメージにはなっていないようだ。イッセーの攻撃は避けられ、ヴァーリの魔力攻撃は背中から生やした羽で防いでいた。

次はヴァーリが直接攻撃に移り、イッセーは後方に下がった。

ヴァーリがクロウ・クルワッハの気を引き付けているうちにイッセーはキャノンにオーラを集めていた。

それを確認したヴァーリは魔力弾を放ち、クロウ・クルワッハはそれを弾くが、ヴァーリはそれを再びクロウ・クルワッハに当たるように操り攻撃し続ける。クロウ・クルワッハが再びそれを防いぎ少し態勢が崩れたところでイッセーの砲撃が放たれた!

「クリムゾンブラスター+アスカロン!」

なるほど!ただの砲撃ではなく龍殺し(ドラゴンスレイヤー)の力を乗せた砲撃!それならダメージが通るはずだ!

その砲撃をクロウ・クルワッハは背中の翼を使って自身を包み込み防ごうとする!

そんなクロウ・クルワッハを容赦なくイッセーの砲撃が飲み込んだ。

その砲撃が止みそこにあったのは……片翼が根本から吹き飛んだクロウ・クルワッハだった。体のあちこちから煙が上がり、皮膚が剥がれ漆黒の鱗が見えていた。

今の一撃でもあれだけしかダメージがないのか……次元が違うなホントに。

クロウ・クルワッハは鼻で笑った。

「いい攻撃だが、暗黒龍と称された俺を突破するには火力不足だ」

イッセーでも火力不足ですか……俺たちの攻撃通らなくね?

ヴァーリが言う。

「キリスト教の介入で滅んだの聞いていたが、聖杯でここまで強化されて復活するとはな」

「いや、他の邪龍はともかく、俺は一度も滅んでなどいない。キリスト教の介入が煩わしくてかの地を去っただけだ」

それってつまり……

「兵藤一誠の攻撃を素の状態で喰らったのか……今まで何をしていたのだ?」

俺が思ったことをヴァーリが質問する。その質問にクロウ・クルワッハは真っ直ぐにに答えた。

「修行と見聞を兼ねて人間界と冥界を見て回っていただけだ」

「……っ。人間の世界や冥界で知識と肉体の鍛練に励んでいたのいうのか!」

ヴァーリはその返答に驚いていたが、すぐに笑い声をあげた。

「くくくっ。ははははははっ。なるほど、どうやら、俺以上に戦闘と探求を追い求めるドラゴンがいたようだな。リゼヴィムのもとにいるのも強い者と戦うためだな?」

ヴァーリの言葉にクロウ・クルワッハは笑みを浮かべた。

「ドラゴンの行き着く先を見たいのでね」

「俺と似たタイプか。ますます興味を持ったよ、クロウ・クルワッハ」

今回の騒動で戦いへの考えがいろいろ変わるな。グレンデルみたいに死ぬまで戦いたい奴とか、こいつらみたいに何か目的があるからとか……平和が一番だと思うんだがね。

突然アザゼルがアーシアの肩に手を置いた。

「このまま時間をかけていられん!アーシア!」

「は、はい!」

「最終手段だ!呼べ!ファーブニルを!」

………よ、呼ぶのかあいつを……。

「は、はい!わかりました!」

アーシアは素直に応じて黄金に輝く龍門(ドラゴン・ゲート)を展開するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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