グレモリー家の次男   作:EGO

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life11 第二階層だぜ

上の階をルガールとベンニーアに任せ、階段を下りていくなかでゼノヴィアが呟く。

「……シトリーの戦力増強は凄まじいな。ゲームをしたら次はかなり食い込まれるんじゃないか?」

俺が言う。

「ソーナのほうが眷属のバランスは上だな。火力重視じゃこれから大変だぞ。リアス」

リアスが息を吐いた。

「わかっています。私はソーナをなめたことなんて一度だってありはしません」

それはそうだろうな。ソーナは兄の俺よりも長くリアスと一緒にいる。お互いのことは知りつくしているだろう。

階段を下りていくと再び開けた空間に出た。

第二階層にいたのは

「来た来た。主どのがおっしゃった通りだ」

「うむ、噂のグレモリー眷属」

「強化された我々にとってはいい相手になりそうだ」

上の階の連中と比べると格上の雰囲気を醸し出している吸血鬼三人。鎧などは身につけず普通の衣服を着ている。

「クーデター派の上役の直属の戦士だろう。純血ではないだろうが、吸血鬼の特性を色濃く持つ戦士だ」

アザゼルが解説してくれる。

さて、いい加減働きますかね。

俺がそう思って前に出ていこうとすると俺よりも速く二つの影が飛び出していった。

「お先に」

「失礼します!」

ゼノヴィアとイリナのコンビだ。

二人は瞬時に敵との距離を詰め聖剣と量産聖魔剣を交錯させて吸血鬼の戦士に斬り込んでいく。

イリナが使っている量産聖魔剣は、木場が天界に提供した聖魔剣をもとに作られたものだ。量産と言っても聖魔剣なので十分強力だ。

「くっ!聖剣か!」

吸血鬼もそれに気がついたのか身体を霧に変えて攻撃を避ける。だが二人の攻撃はそれだけでは終わらず、そのまま聖なる波動も飛ばしていった。

後方にいた吸血鬼の男が身体をコウモリに変えてそれを避けた。

「伸びろっ!」

ゼノヴィアが二撃目とばかりにデュランダルの刀身を鞭状に変えて、吸血鬼を切りつけた。

「ぬわっ!」

その吸血鬼はそれを受けるがあまり効果が通っていないようだ。

あれが聖杯による強化の影響と見るべきだろう。

あのままやればそのうち倒せるだろうが今は時間がない。

「皆、先行け。すぐ追い付く」

「おい、リッパー。わかってるのか?この下には間違いなくクロウ・クルワッハがいる。お前が抜けるのは……」

「俺は一度マリウスに調べられてる。もしかしたら俺の滅びの耐性をつけられてるかもしれない。だったら龍殺し(ドラゴンスレイヤー)を持ってる木場や、火力だけなら俺よりも上のゼノヴィアを行かせたほうがいいだろ?」

「それもそうだが……」

「速攻で終わらせて、すぐに追い付くさ」

「……私も残ります」

俺の発言に小猫が進言した。

「私に考えがあります。それを実行できるまで……」

「俺が時間を稼げばいいんだな?」

「はい」

「アザゼル、そういうわけだ。頼むぜ」

「わかった。行くぞお前ら!」

アザゼルの叫びに前に出ていた二人はすばやく反応して、戻ってくる。

俺はブレードを作り出し二人と入れ替わりに一気に最高速度で敵との距離を詰める!

「なっ!」

「おぅら!」

俺の速度に一瞬反応が遅れた奴の首に狙いをつけ一閃する。

そいつが崩れ落ちると同時にまだ後ろにいる皆敵を睨んだまま叫ぶ。

「いいから行け!ヴァレリーを救いたいんだろう!」

俺の言葉に頷いたかはわからないがリアスたちが駆け出し階段に向かった。

吸血鬼は行かせまいとリアスたちのほうに向かおうとするが俺が割ってはいる。

「行かせるか!」

「こっちのセリフだ!」

わざとブレードを大きく振り距離を取らせる。

それと同時にリアスたちが階段に消えた。

「おのれよくも!」

「まずは貴様からだ!」

残った俺と小猫そして吸血鬼二人。お互いに距離をとり出方を見る。

「小猫、準備はどれくらいだ?」

「二分もかかりません」

「わかった」

俺はそれを確認すると再び斬り込んでいく!

「何度も同じ手をくらうと思うな!」

一人は身体を霧に変えて避けるが別にあんたは狙ってない。俺の狙いはもう一人のほうだ。

もう一人のほうは身体をコウモリに変えて避けようとするが、俺はそれを確認したらブレードを大剣に変えて壁を壊さない程度の威力で斬撃を飛ばす!

結果的にコウモリの三分の一ぐらいを消し飛ばせた。

コウモリが元の姿に戻ると

「く、くそぉぉ……」

左腕でなくなっていた。身体をコウモリに変える、それはつまりコウモリを消してしまえば身体も消えるということだ。大剣をブレードに戻し、右手で持つ。

あとは霧のほうだが………

「もらったぞ!」

俺の背後に身体を元に戻しながら出現する。

この瞬間を待ってたんだよ!

俺はブレードをすばやく逆手に持ち替え後ろ向きのまま突き刺す!

「ぐぅお……」

刺さった瞬間に再び身体を霧に変えられる。

さて、そろそろかな。

俺は小猫をほうを見ると小猫の体が淡い白色の光に包まれていた。

その光が膨れ上がり大きくなっていく。光が何かを形作り始めた。

そして光が収まるとそこにいたのは……黒歌に似た女性。白い着物を着て、猫耳、二又の尻尾、つまり……

「小猫か?なにそれ」

俺の質問に小猫(?)が答えた。

『近隣に存在する自然の気を集めて、自身の闘気と同調させることで強制的に成長させました』

声は完全に小猫なのか…それはいいが、な、なるほど。強制的な成長か……。

『白音モードと私は呼んでいます』

白音モードか。よく黒歌が呼ぶ昔の名前だな。にしても色々な意味でデカい。イッセーが喜びそうだ。

白音モードの小猫が音もなく前に出て俺の横につく。

「それでどっちやる?何ならお膳立ては俺がやるが」

『まだこの力は使い慣れていないので敵を一ヶ所に集めてくださると助かります』

「オッケイ!」

俺は再び飛び出しとりあえず左腕がない吸血鬼に斬りかかる。

先ほどのことが相当堪えたのか今度は元の身体のまま避けていくが腰が引けてるな。という訳で今度は右!

「ぐわぁぁぁ!」

両手を失いフラフラになった奴はそのまま倒れこんだ。こいつはほっといてもう一人は……

「ま、まだだぁぁぁ!」

かなり焦ってきているのか霧にならずに正面から来るが俺はそいつを飛び越え小猫の横に戻る。

「一ヶ所に集まったぞ。あとは頼んだ」

『では、いきます!』

小猫がそう言うと前に出る。小猫が右手を横にすると、その先に大きな車輪が出現した。

その車輪は白い炎に包まれていく。

『火車。猫又が操る能力のひとつです』

……火車か。確か死者をあの世に誘う妖怪、猫又のもうひとつの姿と言われていたな。死体から起き上がって吸血鬼になったあいつらには効果抜群だろう。

小猫は宙にいくつもの火車を出現させると、それを吸血鬼たちに放っていく!

火車は勢いよく回転しながら高速で吸血鬼たちに迫っていく!

「見知らぬ技だが、この程度!」

両手が無事な吸血鬼は余裕で避けるが、両手がない吸血鬼は避けきれずに直撃した。その瞬間、吸血鬼を白い炎が包み込んだ!

「う、うわぁぁぁ!」

絶叫をあげながらその吸血鬼は灰になった。なんかあいつ両手切り落とされたり、灰にされたりってかわいそうに思えてきたぞ。

残った一人がそれを見て驚愕の表情になっていた。

「な、なぜだ!?我らは炎すら寄せ付けない体を手に入れたはずだ!?」

弱点を克服したと思ったらこれだ。そりゃ驚くな。

小猫は無慈悲に言う。

『無駄です。その炎は死者を燃やし尽くすまで決して消えることはありません。仙術の応用により取り込んだ自然の気を浄化の力に変えていますから。弱点どうこうではありません。あなたたちの存在理由そのものから作り替えない限り、炎はあなたたちを燃やしていきます』

匙のヴリトラの炎の真逆ってことか。匙は呪い殺し、小猫は清めて消し去るか。

「ならば、攻めるまで!」

残った一人が回避を諦め小猫ちゃんに殴りかかるが、その拳が小猫に触れた瞬間灰になった!

『……今の私は浄化の力そのものです。触れただけで消えてしまいますよ?』

「すごいけど、イッセーは触れないかもな。触れた瞬間あいつが消し飛びかねないぞ?だかその力なら邪龍相手でも通用しそうだな」

俺が小猫にも聞こえるように言ったと同時に

「ちくしょおぉぉぉぉぉ!」

最後の一人も消し飛んだ。

それを確認すると小猫は息を吐いた。

「イッセーの前でやってやれば、触れないにしろ喜びそうだな」

『この状態はあまり長い間維持できないんです』

小猫がそう言い終わると同時に彼女を包んでいた光が止み、元の大きさに戻ってしまった。途端に力が抜けたように崩れ落ちた。

「……ふぇ」

俺は小猫を抱き留める。

「お疲れさん」

俺はそう言うと小猫を背中に回しおんぶする。

しかしすごい成長だな。消耗がすごいのはこれからどうにかしていけるだろうし、鍛えれば邪龍相手でも十分にやっていける。

それにしてもさっきから下から振動を感じてるからな。リアスたちは相当派手にやっているようだ。皆のほうに急ぐとしますか。

俺はそう決めると小猫をおぶったまま階段を駆け下りた。

 

 

 

 

 

 

 




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