俺たちはあれから特に戦闘もなく、無事に地下への階段を下りていた。
外の戦闘はなかなか激しいらしく、城の壁が所々破壊されていた。さすがに地下までは影響はないだろうからあまり気にしなくてもいいだろう。
そんなことを思いつつ階段を下りていくと最初の階層に出る。
天井の光で奥まで見えるが……広い部屋の約半分を吸血鬼の兵士が埋め尽くしていた。
数はざっと見ても百は越えてるな……この部屋広いな、大の男が百人入ってもまだ余裕あるぞ。
アザゼルが手元に光の槍を作り出しながら言う。
「さて、誰がいく?結構な数だ。これからのことを考えると無駄に消耗したくはない」
「アザゼルは下で仕事があるからな、下がってろ」
俺が前に出てブレードを作り出すと、さらに俺より前に出る影が二つ。
「……問題ない」
『ま、ここはあっしらが』
ルガールとベンニーアだ。確かにこの二人なら十分かもな。
「そんじゃ、任せるかね」
俺はそう言ってブレードを消して下がる。
『それじゃ、いきやすぜ』
緊張感に欠ける声音でそう言いながらベンニーアは飛び出していく!
まるでアイススケートをするかのように床を滑り吸血鬼の一団に斬り込んでいく。残像を残しながら高速で動き回る、
『ほらほら死神っ娘のお通りですぜ』
ベンニーアは軽い口調でさらに速度を上げていく。吸血鬼もそれが見切れずに一方的に攻撃されている形だ。
木場がベンニーアの動きを見て感嘆の息を漏らす。
「……あの残像は目で捉えられるけど、超高速の末に生じたものだ。捕まえるのは容易くない動きだよ」
リアス自慢の
『死にやすぜ……あっしの姿を見た者は皆死んじまいやすぜ』
ベンニーアはそう言いながら吸血鬼を切り刻んでいくが、パッと見ただけでは怪我もしていないのに斬られた吸血鬼が次々と倒れていく。倒れてた吸血鬼はまるで魂を抜かれたように動かなくなった。
「あれが噂に聞く
いつぞやに俺たちを襲撃してきた死神ご一行も持っていたんだが誰も斬られなかったからな。
「本人の資質と
俺はゼノヴィアを見ながら言う。
ゼノヴィアは不服そうな顔をしていたが俺が言う前からしっかり見てたな。
俺がこんなことを言った理由は簡単だ。つい先日木場から
「どうにかしてゼノヴィアにテクニックの重要性を教えたいんです!力を貸してください!」
とキャラにもなく必死に訴えられたからだ。
俺がそんなことを思い出しているなか、ルガールがコートを脱ぎ捨てた。シャツの上からでもわかるいい鍛え方をしていると思える肉厚の身体だ。
「…………いくぞ」
ルガールがそう一言呟くと彼の体の節々が脈動し、隆起していく。
肉体の変化に服は耐えきれずにミチミチと音を立てて破れていった。
ルガールの口に鋭い牙が生えそろい、獣のように口全体が突き出していく。爪が鋭利に伸びていき、全身に灰色の体毛が出現していった。
オオオオォォォォォン!
室内に響き渡る獣の咆哮……。今のを聞いた者はすぐさま彼が何なのか理解できるだろう。そうルガールは
「狼男だと!?」
「くっ!悪魔に転生した奴がいたというのか!」
吸血鬼たちが言う通り狼男だ。
ルガールは首をコキコキ鳴らしながら言う。
『俺もシトリーの者としてやらせてもらおう』
そう言うなりルガールは高速で飛び出していき、吸血鬼を紙くずのように引き裂いていく。
「さすが、狼男だ。吸血鬼とやり慣れてる」
「シドウさん、どういう意味ですか?」
俺の呟きにイッセーが質問してくる。
「吸血鬼と狼男は古くから争い、お互いを天敵として認識してるからな。だからルガールは吸血鬼とやり慣れてるんだよ」
俺がそう言うとイッセーは納得してくれたのか頷いた。
俺が説明しているなかでもルガールは一方的に吸血鬼を惨殺していく。逆に吸血鬼の攻撃はどれもダメージになっていない。
『ルガールの兄ちゃんはただの狼男じゃありやせんぜ』
ベンニーアが攻撃をしながら言う。
ベンニーアの言葉を合図にルガールの両腕に紋様が浮かび上がる。魔法の術式に似た紋様から炎が生まれルガールの腕を包み込んでいく。そして炎に包まれた腕で吸血鬼を殴りつけていく。
かすめただけで吸血鬼の体を燃え上がらせ、鎧を溶かしていった。
それを見て驚くイッセーに俺が解説を入れる。
「ルガールは高名な魔女と灰色の毛並みで有名な狼男の一族との間に生まれたハーフ、見ての通り両親の力を最大限活かしてるな。ソーナもいい人材見つけたもんだ」
「ソーナったらいい
リアスもルガールの特徴に舌を巻いていた。実際ルガールのほうがベンニーアより多く吸血鬼を殺してるしな。
ルガールは狼男の俊敏性と
まったく頼もしい限りだね、リアスとソーナがゲームをやったら面白くなりそうだ。
俺がそう考えていると俺たちの後方、つまり上の階から複数の足音が聞こえてくる。全員がそれを察知していた。オーラの質からして敵の増援だな。
『行け。ここは俺とベンニーアに任せてもらう』
ルガールが吸血鬼を引き裂きながら言った。
「任せていいのね?」
リアスの言葉にベンニーアが鎌を振りながら答える。
『そのために派遣された面がありますぜ。新人コンビは能力のお披露目と主役のための足止めが適任なんでさー』
『さっさと悪魔の力に慣れろということだろう。我が主はスパルタだ』
ベンニーアとルガールはそう言いながら攻撃を繰り返していく。
俺たちは頷きあい次の階段へと走り抜ける。
到着したら全員を先に行かせて俺は二人に言う。
「ここは任せだぞ!新入りコンビ!」
ベンニーアとルガールは親指を立てる。
もう言葉はいらないな。
俺はそれを確認すると階段を駆け下りた。
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