グレモリー家の次男   作:EGO

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life08 報告会だぜ

あれからしばらく寝ていたんだがアザゼルが戻ってきたとのことで起きてイッセーたち外出組の帰りを待っていた。

「よ、リッパー。暇か?」

「アザゼル……訊くまでもないだろ?」

「それもそうだな。それに今のお前じゃ自由に行動できないんだったな」

「そゆこと」

俺とアザゼルがまずしたのはこんな他愛ない会話だ。

何かあればすぐさまどちらかが切り出すからな、こういう会話をするということはどちらも何もなかったっていうことだ。

「だだいま帰りました」

そんなこんなしているうちにイッセーたちが帰って来た。

「帰って来たな。で、町はどうだった?」

俺の質問にイッセーが答える。

「行きに見たまんまでした。クーデターは誰も知らないみたいです」

「「だろうな」」

俺とアザゼルが異口同音で返す。

するとギャスパーが興奮気味にアザゼルに話しかける。

「アザゼル先生、聞いてください!マリウスさんが、ヴァレリーを"解放"してくれると約束してくれたんです!良かったですぅ。これでヴァレリーを日本に連れていってあげられます!」

ギャスパーの言葉を聞いて俺とアザゼルは、リアス、イッセー、小猫の方を見る。何か言われたとするならば先ほど俺たちと別れ面会に行ったときだろう。

「……面会の時、何があった」

俺が訊くとイッセーが話始めた。

「実は面会の時にギャスパーがヴァレリーを解放するように頼んだんです。そしたらマリウスがそれを承諾したんですが……」

なるほど………解放か。

それを聞いて俺、アザゼル、リアス、朱乃、イッセーを部屋の隅に集める。

ギャスパーに聞こえないようにするためだ。

集合するとアザゼルが言う。

「わかっていると思うが、解放ってのは……」

「はい、やっぱり、よくないことですよね……」

イッセーの呟きにアザゼルは頷く。

「抜き取るつもりだろう、聖杯を。堕天使の技術も流失している。抜き取る技術があっても何らおかしくないさ。何せ奴らのバックは禍の団(カオス・ブリゲード)ときているからな」

抜き取る………か。

宿主から神器(セイクリッド・ギア)を抜き取ると宿主は確実に死ぬ。マリウスのいう解放ってのはつまり。

「マリウスは解放と言ったんだろう?だったらすぐさま行動を起こすはずだ。どうにかしてギャスパーに伝えて、ヴァレリーを連れて逃げるが得策かな?脱出ルートはベンニーアか用意してくれてるだろ」

俺の意見に話を聞いていた全員が頷いた。

うまくマリウスよりも先に行動に移れればいいんだが……

とりあえず話はここまでにして部屋の隅から皆の元に戻り話題を変える。

「ところでアザゼルはここ二日間、何してたんだ?」

「………ハーフヴァンパイアの神器(セイクリッド・ギア)について調べていたんだ。どうにも最近、神器(セイクリッド・ギア)を持って産まれてくるハーフが多いらしい。理由はわからんが」

ハーフの神器(セイクリッド・ギア)所有者か。ギャスパーやヴァレリーもそうだが、少しずつ増えてるのか。所有者が……。

アザゼルは続ける。

「問題は吸血鬼側の研究者が神器(セイクリッド・ギア)に関する知識に明るくないということだ。マリウスのように独学で調べ上げようとする者もいるようだが、それでもレベルが低い。そこで色々と伝えてきた」

「よかったのか?この時期に下手に技術提供したらそれはそれで利用されるんじゃ………てか吸血鬼相手によくできたな。そういうの嫌いそうなのに」

「それもそうなんだが、俺と話した連中はクーデターが起こる前から研究に没頭していた。誇りうんぬんよりも俺の話に耳を傾けていたぞ。聖杯に関してはマリウスが当たっていたようだからな、彼らには謀反の気はなかったんだろう。だから最低限の情報は提供した。この国も神器(セイクリッド・ギア)で危機に瀕しているからな」

「まさかここにも禁手(バランス・ブレイカー)の情報が?」

俺の質問にアザゼルは首を縦に振った。

「ああ、そういうことだ。逃げるために使うならまだしも、力に魅せられ暴走することが問題だ。むこうもそれがわかっていたらしく、それに関しても対策を教えてきた。グリゴリからの派遣も約束したよ。どこも似たような問題を抱えてるな」

それを聞いて全員が苦笑していた。

そこで俺が訊く。

「それでアザゼル。聖杯に関しては何かわかったか?」

アザゼルは悔しそうな表情で言う。

「いや、ダメだった。聖杯はマリウスが独占しているそうだ。少しでも調べられれば対処もしやすかったんだが……」

やっぱりダメだったか……。

するとイッセーが俺に質問してくる。

「冥界は……サーゼクス様のところは今回の件はどうなんですか?報告はされたんですよね」

俺はそれを聞いて思い出していた。

初めてだった。俺の連絡にセラが何も言わなかった。言えなかったのほうが正しいかもしれないが……。

「一応はしたが返信はなしだ。ただですらユーグリットのせいで混乱してたのにそこにリゼヴィムだ。あっちは大変だろうよ。兄さんもセラも身動き取れなくなってる。悪魔にとってルシファーはそれだけデカイ存在なんだ。リゼヴィムは前ルシファーの実の息子だ。それでそいつが行動を起こした。それだけでまた旧魔王派が動き出してもおかしくない」

俺の言葉に全員がしんと静まりかえってしまった。

ようやく掴めそうな平和がまた遠ざかっていく。そんな感覚が俺にもある。皆には皆なりに考えているんだろう……。

すると突然俺たちを不思議な感覚が、そうこれは結界に包まれたときと同じ感覚が襲った。だが嫌な感じではない。見知ったオーラを感じられたからだ

すると天井にシトリーの魔方陣が浮かび、そこから逆さまに何者かが頭を出してきた。

ソーナの騎士(ナイト)ベンニーアだ。

『どうも。外とここを繋げるのに時間がかかりやしたが、何とかなってよかったですぜ』

俺たちとは別行動で頑張ってくれていたからな、この部屋に張ったのは直接ここに移動するためか。一応脱出ルートの確保はできたみたいだな。

そうこうしていると天井から何かが降ってくる。

「きゃっ!」

そんな可愛らしい声を出したのはエルメンヒルデだ。着地に失敗し尻餅をついていた。ルガールとベンニーアは慣れた様子で着地していたが……そのエルメンヒルデはイッセーたちが見ているのに気づいてすぐに立ち上がり咳払いして改まった。

「ごきげんよう、皆様。お元気そうで何よりですわ」

いつかと同じように高圧的だがさっきの出来事のせいで迫力に欠けると思ってしまった。

「エルメンヒルデ、この国に潜入していたのね」

本来俺が言うであろう言葉をリアスが言う。

俺が言ったらまた面倒なことを言われそうだからな。

「当然です。町で城へのルートを工作員と決めかねているときにそこのベンニーアさんと裏路地でお会いできたものですから。……お知らせすることがありますわ」

エルメンヒルデが真剣な表情で伝えてきた。

「間もなく、マリウス・ツェぺシュ一派は聖杯を用いた一連の行動を最終段階に移行すると密告がありました」

………ッ!

それを聞いてギャスパーの顔が引きつる。

「最終段階……まさか」

アザゼルは驚きながらエルメンヒルデに言う。

「ヴァレリー・ツェぺシュから聖杯を抜き出して、この国を完全に制圧するようです。聖杯の力を高めて、この城下町の住民すべてを作り替える計画を発動させるそうですわ」

聖杯の力で住民全員を作り替える?

「そんなことするのか?それってもう吸血鬼と呼べるのか?」

俺の言葉にエルメンヒルデは嫌悪の表情を浮かべていた。

「おぞましい限りです。我々は町に侵入しているカーミラの者はツェぺシュ派の政府側と共に反政府派を打倒するつもりです」

なるほど、あっちも動くわけか。

ギャスパーはそれを聞いて曇った表情となっていた。

「あの……聖杯を抜き出されたら、ヴァレリーは…」

「死ぬ。奴らは最初から抜き取るつもりだったんだろう。所有者が死ねば次の宿主のもとに行ってしまう。そうならないようにするには抜き出して手元に置くしかない」

アザゼルからハッキリ告げられた言葉でギャスパーは崩れ落ちた。

「……そ、そんな。マリウスさんは……」

ポロポロと涙をこぼすギャスパーをリアスが優しく抱いた。

「あそこまでの卑劣漢もそうはいないものよね。……不愉快極まりないわ」

リアスの瞳は怒りの色に満ちていた。

「こうなったら、力ずくでヴァレリーを……」

イッセーが息巻いて言葉を発した瞬間、窓から強烈な光が差し込んだ。

吸血鬼の国に日が射すことなんてまずないはずなのに……

俺たちはすぐさま外の様子を見る。

巨大な光の壁が城を覆うように発生していた。

これはつまり……

「先を越されたな。カーミラ側の動きが察知されてるぞ」

「オリジナルの紋様が刻まれているが、神滅具(ロンギヌス)を抜き取るときに描くもので間違いない!」

「だったらやることは……」

ひとつと言おうとした矢先にエルメンヒルデに遮られる。

「吸血鬼の問題は吸血鬼が解決します。あなた方は脱出してください」

俺はその言葉に嘆息した。

「お前な……この状況でも手を出すなと?」

「はい、そうです……」

エルメンヒルデは強気に笑むが一度瞑目して言葉を続ける。

「と言いたいのですが、我らが女王カーミラがあなた方の援助をお認めになられましたわ」

不満そうな声音だが認めるとかいう問題じゃないだろこれは……。

「ま、俺たちは"ギャスパーの補佐"をするだけだ。それでいいんだろ?」

どうせ俺たちが派手にやったら色々と言ってきそうだがら表向きはそう言っておく。

それにエルメンヒルデは頷いた。

「……その通りです。それではごきげんよう。お手数ですけれど、外と繋げてください」

ベンニーアに転移を頼むエルメンヒルデにイッセーが訊く。

「案外、あっさり任せるんだな?」

「あなた方の実力は買っていますので」

それにエルメンヒルデは皮肉げに返した瞬間、転移魔方陣に"落ちていく"。

「きゃぁぁぁああ!」

魔方陣の先からも悲鳴が聞こえるんだが……。ベンニーアは舌をだして

『繋げた先もどっかの天井ですぜ』

「あんまりいじめんなよ?」

俺とベンニーアのやり取りを他所にギャスパーが皆に訴える。

「救います。僕、ヴァレリーも救いたい!皆さん!どうか!力を貸してください!」

あのギャスパーがここまで男の顔をするとは、まぁ答えは決まってる。

全員がそれに頷き、それぞれがギャスパーに覚悟の言葉を言っていきギャスパーを鼓舞していくなかで俺、アザゼル、ロスヴァイセの年長組はこんなことを話していた。

「あれこそ若さだなぁ~。アザゼル?」

「ほんと、若いっていいねぇ。なぁ、ロスヴァイセ先生」

「私も若いのですが、頑張らせていただきます」

これで全員の意見がまとまったな。

「そんじゃ、オカルト研究部+生徒会新人二名、そして教師三名。本格的に出陣といきますか!」

『おお!』

俺の言葉に全員が勢いよく返事をした。

さぁ、出陣だ!

 

 

 

 

 

 

 

 




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