グレモリー家の次男   作:EGO

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life02 現状確認だぜ

あれから一時間ほどが経ち出発する時間となった。

集合場所はもちろん兵藤宅の転移魔方陣だ。今回は直接カーミラの領土に行けるようにアザゼルが交渉してくれたようだ。それに今回は緊急事態のため特例として許されたそうだ。

ちなみにみんな防寒着を来ている。向こうはこっち以上に寒いそうだから、正解だろう。

そして各々が最終確認を済ませたことを確認すると朱乃が転移魔方陣を操作する。その瞬間魔方陣の光が強まり俺たちを包み込む。

さーて、そんじゃあいつらを助けにいきますか。ユーグリットの野郎はいるかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

転移の光が止み、視界が回復するとそこは広い空間だった。

「よう、来たか」

その声に反応して振り向くとそこにはアザゼルがいた。

「さっそくで悪いが移動するぞ。詳しくは車内でする。エルメンヒルデ、案内を頼む」

アザゼルがそう言うと、傍らから姿を現したのは先日の吸血鬼の少女だ。

「かしこまりました。皆様、よくぞお越しになられました。手前どもはギャスパー・ヴラディだけでよかったのですが……」

相変わらず言葉の刺がすごいな。多分みんな同じような事を考えてると思うぞ。

エルメンヒルデはそんな事は知らずに話を進める。

「到着早々で申し訳ございませんけれど、車まで案内いたしましょう」

その言葉を言い終えると同時に転移してきた部屋を抜け、階段を上がっていく。ここは地下だったらしい。にしても寒いな。防寒着を着てるのにスゲェ寒いぞ。

階段を上りきり石造りの建物内を歩いていき、ついに外に出た。

深夜の街に雪化粧か……いいもんだな。

だいたい同じ季節を巡る日本とルーマニアだがこっちはもう雪が降っているのか……この寒さなら納得だけどな。

俺たちの前にいるエルメンヒルデはそんな寒さでも息が白くない。純血の吸血鬼だからだろうな。証拠にハーフのギャスパーは

「さ、寒いですぅ……」

ぶるぶると震えていた。……ハーフと純血の差って分かりやすいな。

「わぁ……」

アーシアが感嘆の息を漏らしていた。彼女の視線の先には、城下町とそれの中央にある立派な城だ。教会育ちのアーシアにはこんな景色も新鮮なんだろうな。

そんな城下町をよく見たら近代的な建物もいくつかあるな。いくつかと言っても数えられないぐらいだがな。

ゼノヴィアは逆に冷静に呟いた。

「あれが吸血鬼の本部か。昔は尻尾も掴めなかったのに、悪魔になってから来られるなんてね」

それだけ各勢力の関係図が変貌したってことだな。

俺たちは領地の端にある監視塔に転移していたようだ。

俺たちはそれだけ確認すると塔を抜け出て、用意されていたワゴン車に分かれて乗り込む。運転はアザゼルとロスヴァイセだ。俺も免許は持っているが、今はアザゼルが俺の監視役ってことになっているからアザゼルと乗っているってわけだ。

「………悪魔の趣味はわかりませんわ」

エルメンヒルデをはじめとした吸血鬼がルガールを見て一様に嫌悪と畏怖の表情をしていた。ルガールの種族のせいだな。

そんなことがあったが俺たちは出発する。

同時に車内でアザゼルが説明を始める。

「情報によると今回のクーデターでツェペシュの新しいトップはヴァレリー・ツェペシュになった」

「男尊のツェペシュのトップがハーフの女性になったのか……どうせ禍の団(カオス・ブリゲード)がそう仕組んだんだろうが」

俺の発言にアザゼルが返す。

「まぁそうだろうな。禍の団(カオス・ブリゲード)と手を組んでいるのは、ツェペシュの反政府グループだ。現政権への不満と聖杯の恩恵に目が眩み、テロリストの言葉に乗っかっちまったんだろうさ。カーミラに攻撃したのもそいつらだ」

「そんでツェペシュの方からカーミラに援助要請があったのか。カーミラ的にもツェペシュの王に貸しを作るのは願ったり叶ったりだろうな」

「そんで後は通信の通りだ。流石に俺だけじゃ出来ることも限られてくるからな。リアスたちを迎えに行くのも含めて、お前たちを召喚したってことだ」

アザゼルはそう言うと髪をかきながら続ける。

「どうにも荒事になりそうだ。まずは話し合いをするつもりだが、戦闘することも頭に入れておいてくれ。カーミラ側もクーデター沈静に参戦するっていうからな。報復の相手がわかったんで、あいつらもやる気だ。すでにカーミラのエージェントが配置され始めてる。俺たちはそのど真ん中に飛び込むことになる。最悪の場合は中央突破しなければならない。………あの野郎が関わっているのなら、ろくでもないことになる」

……あの野郎。 アザゼルが珍しく憎々しげに言ったそれが余計に不安を掻き立ててくる。

イッセーが息を吐いてからアザゼルに言う。

「この手のイベントには毎回遭遇しているので。皆、覚悟してきてますよ」

それを聞いて車内のメンバーは頷いた。

「頼もしいやら、申し訳ないやら。何か複雑だな。なぁ?アザゼル」

「だな……ま、俺たちはリアスたちと合流してあわよくばヴァレリーを連れ出せればいい。あとは吸血鬼が勝手にやってくれるだろう」

「ヴァレリーは僕がっ」

それを聞いたギャスパーは決意を新たにしていたが、俺はそんなギャスパーの目をみて言う。

「ギャスパー、気負うなよ。先輩や先生を頼れ」

「シドウ先生……。はい!」

会った当初はいつも怯えていたあいつがここまで男を見せてくれるとは……嬉しいもんだな。

俺がリアスの眷属の成長に喜んでいるなか車はカーミラとツェペシュの領土を繋ぐ橋を抜け、さらに進んでいく。

 

 

 

 

 




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