グレモリー家の次男   作:EGO

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life06 偽の涙の真実だぜ

転移させられた先はよくわからない白一色の部屋。

相変わらず俺は縛られている。よく見たらその縄が床に突き刺さって固定されている。そしてあの三人がいない!?

俺がその事に驚いていると例のフードの男が話しかけてくる。

「すみません。あのような方法で」

俺は答えずにフードの男を、この"悪魔"を睨み付ける。

「やれやれ、敵と話す舌は持たないと言ったところですか」

何かこいつ、日本の言葉をよく知ってるな。

「一応言っておくと、我々は彼らに危害を加えたりはしませんよ」

「…………………」

俺は黙って集中する。集中したのはこの縄を切るためじゃない。ここがどこかもわからないのに戦うのはかえって自分の首を締めることになる。それにここでこいつと戦ったらレイヴェル嬢たちを危険にさらすことになるからだ。集中したのはこいつのオーラを感じるためだ。オーラによってはどの家の悪魔かわかるはずだからな。

「聞いてますか?」

男はそう言うが俺は黙っている。

「まぁいいです。あなたとは個人的に話がしたかっただけですよ。だからわざわざ転移先を変えたのです」

深くオーラは感じられたが、どこかで感じたことがある。いや正確にはこれに極めて近いオーラを感じたことがあるだが。にしても誰だったか……それが出てこない。

とりあえず何か聞き出してみるかな。

俺はそう決めると口を開く。

「話がしたいって言ったのか?俺とお前で話すことなんてないだろ?」

「あなたではそうかもしれませんが、私にはあるのですよ」

「やれやれ……で、何だ」

どうせ町の結界とか兄さんたちの動きはどうなんだとかなんだろうがな。

「あなたが引き受けた任務についてです」

…………何でとっくに終わった、もっと言うとその後の決着も付いたものを聞きたいんだこいつ。

俺はそう思いながら話始める。

「旧魔王派の連中は……」

「いえそれではありません」

だがすぐさま俺の言葉は遮られる。そしてそれと同時に俺はこいつがわからなくなった。

こいつは禍の団(カオス・ブリゲード)のメンバーのはずなのに聞きたいことはこれじゃない?旧魔王派についてとかが知りたいのではない?だったらこいつは一体何が知りたいんだ?

俺が頭の中でそんな疑問を浮かべていると男は続ける。

「私が知りたいのは…………グレイフィア・ルキフグスの亡命についてです」

そう言われた瞬間俺の疑問の全てが繋がった。

こいつのオーラはそうか!そうだった!

俺はそう思いながら話を合わせる。

「そんな昔のこと、ほとんど覚えてないさ……」

男はそれを聞いて右手を顎にやっていた。

「そうですか?では質問を変えます。あの任務の後、グレイフィア・ルキフグスは"後悔"を感じていましたか?」

「感じてたら現ルシファーの眷属にならないと思うが?」

俺は即答で返す。

「………………」

「………………」

その後二人とも口を閉じ、しばらくの静寂が俺たちを包み込んだ………すると向こうがそれを破り口を開いた。

「わかりました。まぁ予想通りでしたが」

男はそう言うと俺に近づいてきた。

「少し調べさせてもらいますよ」

俺の胸元に魔方陣を当て動かしていく。

何か調べられてるな。くそ、逃げようにも縄のせいで動けん!

「ご協力ありがとうございます。ではあの三人の元に…」

男がそう言うと一旦離れてから転移魔方陣を展開する。するとすぐに俺と奴は転移の光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その光が止むとまた白一色の部屋だ。見渡すと例の三人はいた。だがギャスパーは倒れている!?

「お前ら何があった!テメェ!何もしないとか言ってなかったか!」

「まったく彼らは制御がしにくいですね。申し訳ございません。こちらの不手際です」

奴はすぐさま謝ってくるが言葉に心が感じられないな!

いや……相手はテロリストだ。それが当たり前だよな。

すると俺の縄が解除される。俺はすぐさま三人の元に移動する。合流出来たがここがどこだかわからない以上下手に暴れなれない。

すると男が口を開いた。

「あなた方にお話があります。着いてきて下さい」

男がそう言うと男の後ろの壁が縦にスライドして奥に大きな部屋のようなものが見えるようになった。

俺たちはそれを確認すると目を合わせ頷きあった。

今は下手に抵抗しないほうがいい、相手に合わせるべきだ。

俺たちはそう決めると何かあったときに俺がすぐに動けるように小猫にギャスパーをおぶらせ、全員が後ろから来るように指示を出してから歩き出した。

 

 

 

 

 

俺たちが部屋に入ると壁が閉まり戻れなくなった。

「こっちです」

男の指示で俺たちは部屋の奥に進む。

そこから進むこと数分………すると何かの培養カプセルが見えてくる。それも一個や二個ではなく、十数個あるのである。中には人の形をした何かが入っていた。

俺たちがそれを懐疑な目で見ていると男が口を開いた。

「これはフェニックス関係者を調べて作り上げた"クローン"です。そして偽の涙の製造元です。これを使って涙を量産し闇のマーケットに流していました。と言っても今は機能を停止させていますが……」

それを聞いた瞬間俺たちは目はそのカプセルに釘付けにされた。正確には何も言えず見ることしかできなくなったと言った方が正しいだろう。

これが偽の涙の真実だと!?

「そんな……何で……そんな…」

レイヴェルはそれを聞いてへたりこみ涙を流していた。

それもそうだろう。フェニックスの力がこんな形で利用されているなんて俺を含めて誰も思いもしなかった。

俺は男を睨み、小猫はただ唖然としていた………

 

 

 

 

 

 




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