あの会談から数日が経過し、もうリアスたちが出発する日になった。
吸血鬼の王国に行くには、まず魔方陣でルーマニアに、そこから小型ジェット、さらに車で進んでようやく到着という長い道のりなわけだ。
荷物を持ち兵藤家の地下の転移魔方陣に集合したリアスたちは向こうで一度別れ、アザゼルはカーミラの元に、リアスたちはヴラディ家に向かうことになっている。
するとリアスはギャスパーのことを抱きしめた。
「あなたのことは私が守ってあげるから、心配ないわ」
「はい、部長」
ギャスパーもそれに甘えていた。
イッセーからの嫉妬のオーラがすごいんだが、あんぐらい許してやれよ……
するとアザゼルが俺、ソーナ、ロスヴァイセに笑みを向けてきた。
「そんじゃ、学校のほうは頼むぜ♪」
「「「忙しいから(ので)早く帰ってこい(来てください)」」」
「んだよ、つれない反応だな」
俺たちの返答に不満げな感じだが、年末は大変なんだ。俺が行かない理由もそこら辺にあったりする。
それにアザゼルの事だ。向こうで外遊なんてこともあり得る。
「そんじゃお前ら。例のフェニックス関係者を狙っているって連中も不気味だ気をつけろよ」
『はい！』
みんなの返事を確認してから俺にも言ってくる。
「リッパーも頼むぞ。最悪こっちでも戦うことになるかもしれんからな」
「わかってるさ。そうならないことを祈るが……」
アザゼルはそれを聞くとアーシアとオーフィスを呼んだ。
「それとアーシア、例のだがあとはお前次第だ。オーフィスも頼むぞ？」
「はい、が、頑張ります」
「我、アーシアのこと、きちんと見る」
あの件か。あれは確かにアーシア次第だな。オーフィスがいれば何とかなりそうだが。
その後も最終確認を終えてついに出発することになった。
最後にリアスとイッセーが話し、手を握り合っていた。
相変わらずお暑いねぇ～まったく。
リアスたちが魔方陣につき、俺と朱乃で魔方陣の確認もしたあと、室内に転移の光が広がった。
数秒後その光が止んだとき、リアスたちはいなかった。
三人とも、武運を祈るぜ。
それからさらに数日が経った。
俺は向こうからの連絡を待ちながらいつも通り教師として頑張っている。
今は授業をするためにグラウンドに移動しているところだ。
にしても何か嫌な予感がするんだよな。
俺がそう思った瞬間。俺の前方にフードを被った二人組が……気配的には魔法使いだな。
俺は相手に確認するよりも早く奴らの懐に突っ込む！
相手はわかってる。こいつらはぐれ魔法使いだよな。
「なっ！？」
俺のダッシュに反応しきれていない二人だが、俺はそのダッシュの勢いのまま顔面を殴る！
「グぁぁぁ！」
食らった一人は吹っ飛んでいき、地面に三回バウンドしていた。もう一人のほうは俺が振り向き様に
「フン！」
顔面に回し蹴りをいれる！
それで脳が揺らぎフラフラになったところでこっちも全力で殴り飛ばす！
「く、くそ。やはり強い！」
「一旦退くぞ！」
二人はそう言うと転移の光に包まれた。
いつもなら追撃しているところだが今はそうも言ってられない！奴らは必ずレイヴェル嬢に接触してくるはず！
俺はそう決めるとレイヴェル嬢のいる新校舎に走りだした。
走りながら俺は考えていた。こいつらはどうやって結界を抜けたのか、考えられるのはこの町のスタッフが操られてた。もうひとつは誰かが裏切ったのか。
今は考えても仕方ない！今はレイヴェル嬢が優先だ！
俺はそう纏めると走る速度を上げるのだった。
やはりはぐれ魔法使いは校舎の中にも何人もいるようだ。生徒たちが慌てて階段を降りてきている。俺は生徒たちとは逆に階段を駆け上がり、廊下を生徒たちとぶつからないように走り抜けて行く。そしてレイヴェル嬢や小猫たちのいる教室に到着し、扉を開けて中に飛び込む！
「何！？」
「は、速すぎる！下の連中は何をして……」
こっちにも魔法使いが二人か。それに対するように小猫とギャスパーがレイヴェル嬢の盾になるように構えていた。俺はそれを確認したら敵一人の懐に飛び込み腹部に膝蹴りを決め、体がくの字に曲がったらアッパーカットで顎を撃ち抜く！
「シドウ様！」
「待たせたな！」
レイヴェル嬢に答えると二人目が手をこちらに向けてきたが、俺は逆にその手を掴み手前に引っ張り相手の体が前のめりになったところで、顔面を殴る！
少し手が痛くなってきたが構ってられないな！
とりあえず二人とも伸びてるな。話は後でじっくり聞かせてもらおう………どうやって結界を抜けたのかを重点的にな
「で、無事か。三人とも？」
「「「大丈夫です(わ)」」」
「なら、よかった」
俺が安心していると
「キャッ！」
『ッ！？』
「あなた方は油断大敵という言葉は知っていますか？」
一人の女子生徒がローブを被った男の人質に！この魔法使いいつの間に！？いやこの気配は……
「ここまですればどうしてほしいかわかりますね？」
どうにかして助けてやりたいがこいつからは隙が感じられない。くそ！
「わかりますね？」
男が急かすように言い魔力のこもった手を女子生徒に向けながら言う。それを見て俺たちは構えを解いた。
すると俺たちの体を魔力で作ったであろう縄で拘束する。
「ご協力ありがとうございます。ではあなた方四人には来ていただきましょうか」
男がそう言うと女子生徒を解放した。そして俺たち四人、さっき倒した二人、フードの男は転移の光に包まれた。
くそ…情けねぇな……
俺は転移の光の中で自分の無力感を感じていた。
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