グレモリー家の次男   作:EGO

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life02 会談開始だぜ

魔法使いとの契約で忙しくいているある日の深夜。俺たちはオカルト研究部の部室にいた。件の吸血鬼との会談のためだ。

この場にいるのは、リアスと眷属全員、ソーナとその女王(クイーン)の"真羅椿姫"副生徒会長、アザゼル、イリナ、そして見慣れぬシスターが一人。

目鼻立ちがはっきりしている北欧的な顔立ちの二十代後半のシスター。

そのシスターがこの場にいる全員へ挨拶をする。

「挨拶が遅れました。この地域の天界スタッフを統括しております"グリゼルダ・クァルタ"と申します。今後とも何とぞよろしくお願いできたら幸いです」

「私の上司様です!」

イリナが追加情報をくれるがグリゼルダと言えば

「確か、ガブリエル様のQ(クイーン)でしたね。女性エクソシストの中じゃ五指に入ると聞いてます」

「恐れ入ります。レヴィアタン様の騎士(ナイト)の耳に届いているとは……光栄です。それとタメ口でかまいませんわ」

「わかった」

グリゼルダ・クァルタ、四大セラフガブリエル様のQ(クイーン)でガブリエル様がハートのスート(セラフによってスートが違う)なこともあり"クイーン・オブ・ハート"と呼ばれているそうだ。

第一印象は優しそうな女性だが室内で一人だけ彼女を見てビクビクしているヒトがいる。

「あらあら?ゼノヴィアったら、顔色悪いなどわね?」

イリナが言う通りゼノヴィアの様子がおかしい。

事実ゼノヴィアはグリゼルダを極力視界に入れないようにしている。

そのゼノヴィアの顔をグリゼルダが両手で押さえ込む。

「ゼノヴィア?私と顔を合わせるのがそんなに嫌なのかしら?」

「ち、違う。た、ただ……」

「ただ?」

「で、電話に出なくてごめんなさい」

ゼノヴィアの謝罪を受けてグリゼルダは手を離す。

「よく出来ました。せっかく番号を教え合ったのだから、連絡ぐらいよこしなさい。食事ぐらい出来るでしょう」

「ど、どうせ小言ばかりだろうし」

「当たり前です。また一緒の管轄区域になったのだから心配ぐらいします」

何か姉妹の会話を見ているようだ。

にしてもゼノヴィアにも苦手な相手がいたのか……

そんなこんなで後は吸血鬼を待つだけととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから更に夜は更けていき、外は静まりかえり皆も静かにし始めた頃、外から異様な冷たさを感じ取った。この場にいる全員がそれを把握したようで旧校舎の入り口のある方向を見ていた。

リアスが立ち上がる。

「来たようね。相変わらず吸血鬼の気配は凍ったように静かだわ」

そう言うとリアスは木場に目で合図を送る。それを受けて木場は立ち上がり一礼してから部屋を出る。

吸血鬼は初めて来た場所には招待されないと入れない。

吸血鬼は鏡に映らなず、影もない。

吸血鬼は流水(川など)を渡れず、ニンニクを嫌う。

吸血鬼は十字架、聖水に弱い。

吸血鬼は自分の棺で眠らないと自己の回復が出来ない。

これが純血の吸血鬼の特徴だ。

ハーフのギャスパーは鏡に映るし、影もある。川も渡れるし、ニンニクは現在克服中。そして段ボールでも眠るなどの違いがある。これはおそらく人間の血が濃いからだと解釈している。

そんなわけで木場は吸血鬼を招待しに行ったわけだ。

イッセーたち眷属はリアスの傍らに並び、真羅副生徒会長はソーナの背後に、イリナもグリゼルダの背後に、朱乃は給仕係として台車の前に移動。俺とアザゼルは堂々と座っている。

問題のギャスパーはというと

「………………」

複雑な表情をしていた。自分を迫害した奴らに会うわけだからな。ギャスパーの家の者ではないらしいがかなり緊張しているんだろう。

二分ほど待つとドアがノックされる。

「お客様をお連れしました」

木場の応対で扉を開き、客を招き入れる。

姿を現したのは中世のお姫様が着るようなドレスに身を包んだ人形のような少女だった。

作られたような美しさがある人間味の感じられない怪しい雰囲気を漂わせている。金色の髪に真っ赤な双眸をしているが、それ以上に気になるのが生気を一切感じられない肌の色合いだ。

見た目はイッセーたちと同じ年頃に見えるが吸血鬼も悪魔も見た目を変えられるからな。年齢は何とも言えない。

そして何より影がない。まさしく純血の吸血鬼だな。

その少女の背後にはスーツ姿の男女、ボディーガードかなにかだろう。

吸血鬼のボディーガードもまた吸血鬼だろうな。

俺がそんな事を考えていると少女が口を開く。

「ごきげんよう、三大勢力の皆様。特に魔王様の弟君に妹君お二人、そして堕天使の前総督様とお会い出来るなんて光栄の至りです」

リアスに促され、リアスの対面の席に少女が座ることになったが、座る前に少女は名乗る。

「私はエルメンヒルデ・カルンスタイン。エルメとお呼びください」

いかにも高貴そうな名前の響きだな。

アザゼルがあごに手をやる。

「カルンスタイン。確か吸血鬼二大派閥の一つ、カーミラ派の中でも最上位クラスの家だ。久しぶりだな、純血で高位のヴァンパイアに会うのは……」

カーミラ派か。

吸血鬼のやっていることは悪魔と似ているがかなりの違いがある。

お互い教会を敵にしていた時も共闘はせずに悪魔と吸血鬼は極力不干渉をしていた。それは様々な勢力と和平を結んだ今もだ。

そんな吸血鬼も一枚岩ではない。簡単に言うと男尊主義のツェペシュ派、女尊主義のカーミラ派の二つに分かれている。それが二大派閥ってわけだ。分かれたのは数百年前の話だがそれは今も続いている。

今日来た彼女はそのカーミラ派の吸血鬼というわけだ。

そんな彼女にリアスが質問を始める。

「エルメンヒルデ、いきなりで悪いのだけれど、私たちに会いに来た理由を聞かせてもらえないかしら?今まで接触を避けてきたあなたたちが私たちの元に来た理由は?」

エルメンヒルデは一度だけ頷くと口を開いた。

「ギャスパー・ヴラディのお力を借りたいのです」

………ッ!?

俺たちは声にこそ出さなかったが全員が驚いていた。

ここまで直球にギャスパーを狙ってくるとは思ってもいなかったからだ。

やはり例のゲオルグを倒したとかいう力が狙いか?

俺たちがそんな疑問を頭によぎらせていた時、アザゼルがエルメンヒルデに訊く。

「率直な質問に率直な答え。すまんが説明してもらおう。吸血鬼の世界に何が起きた?」

こうして吸血鬼との会談が始まったのである。

 

 

 




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