グレモリー家の次男   作:EGO

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Extra life 73 家族旅行!? ⑧

旅行も6日めとなり、俺たちが最後に来たのは沖縄だ。

季節的に台風が心配されていたが、無事に到着して良かったぜ。

そんなわけで、俺たちは沖縄県の入場自由の遊泳場に来ていた。グレモリー関係のプライベートビーチでもいいと言ったのだが、セラが「普通のビーチに行きたい!」とねだったのだ。理由はよくわからんが、まぁ、周りにヒトがいると落ち着く時もあるだろう。

何てことを思いつつ、パラソルを立てたり、シートを敷いたり、いわゆる場所取りに励んでいた。てか、3人とも遅いな。

俺が確認しようと周囲を見渡すと、例のごとく俺に飛び付いてくる子が1人。

「パパ!」

毎度お馴染みのリリスだ。フリル付きの黒いワンピース型の水着を着ている。ロセとセラが沖縄に到着して早々に買ったものだ。リリスもママ2人に買ってもらったので上機嫌な様子だ。旅行中はいつもこんな感じだけどな。

上機嫌そうに俺に頬擦りしてくるリリスに訊く。

「で、ママ2人はどうした?一緒だと思ったんだが」

「えとね、あっちに買い物に行った」

海の家を指差しながら言うリリス。買い物って、また食い物を探しに行ったのか………。確かに時刻は午後4時程。小腹が空いてくる時間だしな。

リリスのママ2人の相変わらずのマイペースぷりに苦笑していたが、ある事が脳裏によぎった。

いつも一緒にいるから気にしないが、2人はかなり美人の部類だろう。そして、海の家に女性だけで2人だけ。……ヤバイ。多分ヤバイ。絶対ヤバイ!

そう判断した俺は即行動に移す。まずリリスを抱っこする。

「にゅっ!?」

リリスが何か変な声を出したが、それは無視!2人がいるらしい海の家を目指してダッシュ!荷物に大事なものは特にないから大丈夫!ヒトが多いから当たらないように、かつ速すぎないように加減しないとな!

走ること数秒。海の家に到着。中を見渡すが2人が見当たらない。

すれ違ったか?いや、だったらすぐに気がつくはずだ。どんな人ごみの中でもセラとロセとリリスは即発見できる自信があるからな!

なのに発見できない自分にイライラしながら目を閉じて集中する。2人のオーラを探り、場所を特定。海の家の裏か!

2人のオーラを検知した俺は軽い駆け足でそちらに回る。海の家の裏に到着しそうになった矢先に複数の男性の声が聞こえた。

「ねえねえ、良いじゃんかよ~♪」

「そうそう、そんな『下らない男』といたってつまらないだろ?」

「だからさ!」

俺は男性には見つからないように角から顔を出す。そこには男性3人に囲まれたセラとロセの姿が!セラは水色のビキニで、ロセは白いビキニか。2人の格好は置いておいて、あれは明らかに不機嫌な時の表情だ。てか、若干キレてるな!理由は、さっきの「下らない男」発言だろ。俺も若干イラッときた。てか、セラとロセに変なやつが声をかけた時点でぶちギレ寸前だ。

俺は自分を落ち着かせるように息を吐いて角から出る。俺を発見したセラとロセはパッと明るい表情になって男性3人を突き飛ばして俺の方へ。

「シドウ!どこ行ってたのよ!」

「シドウさん!どこに行っていたんですか!?」

同時にそう言ってくる2人。手に何も持っていないところを見ると、買い物前に捕まったようだ。

「どこって、場所取り頼んだの2人だろ………」

呆れ気味にそう言うと、2人は「あっ」と声を漏らしていた。普通に忘れられていたのかもしれない。セラならともかくロセもか………。

俺が半目で2人を見ていると、先ほど突き飛ばされた男性、男性Aがメンチを切ってきた。

「邪魔すんじゃねえよ!」

「……………」

俺は無言で男性Aを睨み返す。若干キレ気味なので迫力と殺気がにじみ出ている気がする。

「っ…………」

それを受けた男性Aが狼狽(うろた)えて後退りをする。俺はそのまま男性Aの一歩後ろにいた男性Bと男性Cを睨む。

「ひっ…………」

「………………っ」

2人も俺の迫力に圧されて後退りしている。そこで俺は3人に言う。

「おまえら、俺のツレに手を出すな………!」

俺が静かに、しかし迫力を込めて言った一言に、

「「「す、すいませんでしたぁぁぁぁぁっ!」」」

男性3人は走り去っていった。やれやれ、面倒かけさせやがって………。

俺が嘆息していると、ロセが訊いてきた。

「シドウさん、あの、大丈夫ですか?」

「………?何がだ」

俺が聞き返すとロセの代わりにセラが言った。

「いつも以上に迫力すごいわよ?何て言うのかしら、オーラが体の底から迸っているというか………」

「?」

セラの言葉に首を傾げて疑問符を浮かべた。オーラが体の底からって、何事だよ。人間相手にそんなことするわけないだろ?

俺がそんなことを思慮していると、ロセに抱っこされたリリスがねだるように俺に両手を向けてきながら言った。

「パパの逆鱗、スゴイ!抱っこして!」

「あー、ハイハイ」

とりあえずリリスを抱っこしてっと。逆鱗か、確かにヒト型ドラゴンになったから、あるにはあるからな。逆鱗。この程度で逆鱗に触れるとか、俺のストライクゾーン広すぎない?

「邪龍に体をやったせいなのかもな。逆鱗のツボが広くて浅い。的な」

俺が一応の推測を言うと2人は頷いた。ロセが言う。

「そうなのでしょうね。赤龍帝であるイッセーくんは、オーフィスちゃんが倒され、ご両親が拐われたことで逆鱗に触れたことになりました。しかし、シドウさんは邪龍でとても好戦的なドラゴンです。それが関係しているのかもしれません」

セラが続く。

「とにかく助かったのは事実だし、シドウのことだから逆鱗の制御はそのうちできるようになるでしょ。早く行きましょう。海が私たちを待っているわ!」

「「「オー!」」」

セラの号令に3人で応える。いやはや、やっぱり平和がいちば……。

「キャーッ!」

………今のは、悲鳴か。

俺は再び嘆息した。平和が一番と思った矢先にこれだよ、まったく!

「とにかく、行くか。何かあったようだ」

「そうですね。またあの黒ずくめでないことを祈ります」

「私はまだ見ただけね。その黒ずくめのヒトたちは強いのかしら?」

「また鮭?」

俺の言葉に、ロセ、セラ、リリスが続いてくれた。リリスの鮭って、「キンサモⅡ」のことか?

何てことを思いながらビーチに戻ってみると、そこにいたのは、

「ふははははははっ!逃げろ、逃げるがいい愚民(ぐみん)どもめっ!」

例の黒ずくめの集団と、ちょっとだけ威厳のあるおっさん。ドラゴンを思わせるデザインの兜を被っている。

やっぱりあいつらか……………。

「はぁ………」

今回の旅行何度目かのため息。何で行く先々に現れるのかね。

俺が半目で例の集団を見ていると、セラが訊いてきた。

「シドウ、あれが例の集団ね?」

「ああ、まったく。何で行く先々で………」

俺がぼやいているとセラが続けた。

「ロスヴァイセ、リリスちゃん。向こうに行っていて。ここからシドウ独占権を使うわ」

「ここから使うのか!?ここで!?」

俺が驚愕しているとセラは笑顔で頷いた。本当にやる気のようだ。

「はぁ……。しゃーない。ロセ、リリス。また後で会おう!」

「わ、わかりました。行きましょう、リリスちゃん」

「はーい」

ロセは少し驚きながらもリリスと手を繋いでビーチの向こう側へ。残されたのは俺とセラ、黒ずくめの集団とおっさんだけだ。民間人は早々に避難したようだ。

俺とセラはその集団に近づきながら言う。

「さて、悪者は懲らしめないとな」

「ええ、現魔王レヴィアタンたる私と、そのフィアンセたるシドウ・グレモリーがあなたたちを懲らしめちゃうんだから☆」

惜しい!最初は決まっていたのに、最後で地が出ちゃってるよ!フィアンセ呼びは嬉しいけどな!

「でしょ?」

確認するように訊いてきたセラに、俺は真・斬魔刀を取り出して構える。右手にはいつも通り漆黒の籠手が出現する。

「もちろんだ。おまえと釣り合う男は俺しかいないだろ。せっかくの機会だ。格好いい所みせないとな!」

立ちふさがった俺たちを見て、おっさんが(あざ)(わら)う。

「くっくっくっ、元気なコンビだ。しかし、我が組織最強の防御力を誇るファイナル・デスシーサーを倒せるかな?

さぁ、ファイナル・デスシーサーよ!我が前に立つのだっ!」

誰か、いや何かを呼んだおっさんだが、何もこない。

「おいおい、どうした?そのファイナル何とかは来ないのか?」

俺が訊くと黒ずくめの誰かが言った。

「首領!ファイナル・デスシーサー様はどうやら迷子になったようです!合流できません!」

なぜか元気一杯に報告する誰か。その報告におっさんは目玉が飛び出そうな勢いで驚いていた。

「……なん…………だと…………」

そう絞り出すのがやっとのようだ。迫力も薄れているように思える。そのシーサーが迷子になっただけであそこまで堕ちるものか。

「やれやれ、いい加減仕掛けるか?」

俺が確認を取るとセラは呆れ気味に頷いた。

「やってしまいましょう。早くあなたとデートがしたいわ」

「だな」

俺たちが駆け出すと、覚悟を決めたのか、おっさんは多大なプレッシャーを放った。

「よかろうっ!まずはお主たちを血祭りにあげてくれようっ!この『渦の団(ヴォルテックス・バンチ)』首領たるカイザー・ヴォルテックスを舐めてくれるなよッ!」

おっさんは黒ずくめの出現を率いて攻撃を仕掛けてきた。

こうして、俺とセラの悪者退治が始まったのだった。

 

 

 

 

 

数分後。

俺たちは悪者退治を終えていた。

俺とセラのコンビなら楽勝だったぜ。一応あいつらは刃狗(スラッシュ・ドッグ)に預けた。連絡したらすっ飛んで来てくれたよ。後処理もグリゴリがやっておいてくれるとのこと。

 

 

 

 

 

俺とセラは着替えてから移動して、グレモリー家関係のプライベートビーチに来ていた。今は完全に2人っきりだ。

木の木陰で恋人座りする俺とセラ。とても静かで、さざ波の音だけが周囲に響いている。

セラが俺に背を預けながら俺の左手を握る。

「もしかしたら、こんな当然なことも出来なかったのかもしれないのね………」

俺の左手を握る手にぎゅっと力を入れてくるセラ。俺はその手を握り返しながら言う。

「これからは何回だって握ってやるよ。いつでもな」

右腕でセラを抱きしめる。本来なら二度と出来なかった筈のことか………。何か切なくなってきた。

「ふふ、ちょっと力入ってるわよ」

「痛いか?」

「大丈夫よ」

そこまで言うと俺たちは黙って、ただ相手の温かさを感じていた。考えてみれば、本当にスゴイ人生だったな。

まだ死なないし死ぬ気もないが、そんな事を思ってしまった。

「セラ、また旅行しようぜ。1週間じゃなくて、のんびりと…………」

「そうね。その時は私たちの子供もいると楽しいでしょうね」

「だな……」

そこまで喋るとセラが俺の方に向き直る。目と目を合わせ、見つめあう。彼女の頬が少し赤くなっている。そして、少しずつお互いの顔を近づけ、口づけを……。

「パパ!ママ!」

「「ッ!?」」

俺たちはとっさに顔を少しだけ離す。横の草むらから飛び出してきたリリス。着替えを済ませたのかいつものドレス姿。だが手にシーサーを乗せている。

「す、すいません!止められませんでした!」

遅れて出てきたロセ。って見てたのか!?何か恥ずかしいわ!

俺が頬を赤くしているとリリスがシーサーを突き出しながら言った。

「パパ!これ飼っていい?」

「…………まぁ、俺はいいけど、兵藤夫妻に訊いてみろ」

「わかった!」

いつものスマイルで頷くリリス。この()は毎度フリーダムだ。

 

 

家族旅行か。また来よう。今度はもう少しだけ人数が増えてから、もう少し、平和になったら。

 

 

 

 

 

 

 

 




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