グレモリー家の次男   作:EGO

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Extra life 70 家族旅行!? ⑤

そんなこんなで琴の屋敷にあがった俺たち。相変わらずの広さだが部屋の場所は覚えている。まぁ、結構お世話になっていたからな、忘れるわけがない。

「なるほど、お休みを利用して旅行をしているのですね」

「そういうことだ」

俺はざっくりとここに来た経緯を説明していたところだ。てか、そうとしか説明出来ない。

すると、琴が訊いてくる。

「それはそれとして、あの刀はどうしたのですか?」

あの刀ってのは、今の斬魔刀のことだろう。

俺は異空間から真・斬魔刀を取り出す。同時に右手に漆黒の籠手が装着された。

「これがそれだ。色々あってこうになった」

「……………」

琴は真・斬魔刀を見て目を丸くしていた。そりゃ日本刀がこうなれば驚きもするだろう。俺はこっちのほうが使いやすいけどな。

「リリス殿には母上が2人もおるのか!?」

「うん。ロセママとセラママ」

「よろしくお願いします」

「よろしくね☆」

視界の先ではリリスが鈴にロセとセラを紹介していた。鈴も興味津々という様子で2人を見ている。時々琴の方も見てくるが、何かを考えているのかもしれない。

「母上も先が思いやられるの」

「そ、それはどういうこと!?」

ぼそりと漏らした鈴の一言に琴は慌て、セラとロセが無言で俺を睨んできていた。

「?」

リリスはよくわからない様子で首を傾げている。ここにいる味方はリリスだけかもしれない。

何てことを思いつつ、真・斬魔刀を異空間に、話を旅行に戻す。

「で、これから京都を回ることになっているんだが……」

「なら私に任せるのじゃ!京都の名所を案内してやるぞ!」

鈴が任せろと言わんばかりに胸を張って言った。京都に案内がいてくれるのはありがたいが、

「大丈夫なのか?1回、迷子になっただろ?」

俺がわざとらしく訊くと鈴は赤面しながら返してきた。

「あ、あの時は慌てていただけじゃ!は、恥ずかしいことを思い出させるでない!」

「慌てていたって言うよりは、荒れてたじゃね?」

「まだ言うかーっ!」

鈴はそう言いながら腕をブンブン振り回して俺に向かってくるが、右手で鈴の額を押すことで接近させないようにする。

「うおぉぉぉっ!」

「届かんなぁ」

俺と鈴がじゃれていると俺の左脇腹に突っ込んでくる少女が1人。

「むー」

頬を膨らませて俺をかわいく睨んでくる少女、リリスだ。何だろう、妬いたのか?

空いている左手でリリスの頭を撫でながら、鈴を押さえる。いまだに腕を振り回しているが、疲れてきたのか速度が落ちてきている。

見かねたセラが助け船を出してきた。

「ほら、シドウも遊ばないの」

「ヘイヘイ」

俺はそう返して右手を退けるが、

「のぉっ!?」

足を踏ん張っていた鈴は勢いよくこけた。右手を退けたばかり、左手はリリスを撫でているので受け止めることも出来ず、鈴は俺の胸に飛びこむ形になった。

「す、すまぬ……」

「別に構わんよ」

右手で鈴の頭を撫でる。右に鈴、左にリリス。なんだこの両手に花みたいな状況は………。

「それではどうしましょうか?鈴ちゃんに案内を頼むにしても、琴さんは?」

ロセがこの家に残ることになりそうな琴に訊くと、琴は笑顔で頷いた。

「私はこれから仕事なのでちょうど良かったです。しばらく鈴のことをお願いします」

そうか、琴はこれから仕事か。まぁ、セラから聞いた限りでは忙しい部署だろうからな。………俺が滞在中は1日中ここにいた気がするんだが、あの時はサボっていたのか?

俺は素朴な疑問を感じたが鈴と琴の厚意を受けることにしたのだった。後で八坂の姫さんにあいさつしておいたほうがいいかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

てなわけで京都にcome back!謎のテンションなのは許せ。

「さて、まずはどこに行きたいのじゃ?」

「そうだな。とりあえず清水」

「ビールみたいな感覚で言うことなの?」

鈴の質問への俺の返しに突っ込むセラ。ロセはリリスのお土産を見てる。っと、戻ってきたな。

「買えたか。『何を?』って訊くのは野暮かな」

「京都といえば八ツ橋です!」

「ウマウマ!」

テンション高めのロセと、試食で大量に食ってきたのか、ハムスターみたいに頬を膨らませているリリス。相変わらず抜かりがないと言うか、何と言いますか。

そんなこんなで清水寺に到着したのだが、

「ふっふっふっ!この寺のおみくじは全て超大凶に替えさせてもらいました!」

褐色の肌に陰陽師的な衣装、顔面に五芒星(ごぼうせい)をつけた変人。何かの袋を肩からぶら下げている。そしてその背後には見覚えのある黒ずくめの集団。

ま た か !

俺は嘆息しながら生命エネルギーをゼロに、そして神速で行動を開始する。

まずは超大凶だけが入った箱を回収。

次に近くの店にあった大きめの袋を回収。

そしてその袋の中に超大凶を全て入れ、陰陽師的な変人がぶら下げていた袋と入れ替える。

普通のおみくじが入っていると思われる袋の中身を箱に戻して、箱を元の場所に。

ついでに袋の料金を店に払い、セラたちの元に戻って生命エネルギーを元に戻す。

この間、僅か3秒。俺も器用になったものだ。

「シドウ、首尾は?」

「あー、大丈夫。袋の中身は入れ替えた」

「さすがシドウさんです。仕事が速い」

「な、何をしたのじゃ!?まったく見えなかったぞ!?」

「パパ、速い!」

俺たちが何てことを言っていると、陰陽師的な変人が女性観光客に言った。

「さぁ、超大凶を引くのです!」

「え?え!?」

「何か面白そうじゃん!引いてみなよ!」

「え~っと、じゃあ1回だけ……」

友人に勧められるがまま、女性観光客がおみくじを引き、中を確認する。

「末吉?超大凶ってなんですか?」

「なに!?」

女性の結果に陰陽師的な変人は混乱していたが、

「すり替えておいたのさ!」

俺の口から反射的にその言葉が出てしまった。横のセラたちも驚愕している様子だ。

陰陽師的な変人が俺に指をさしてくる。

「あなた、何者!?」

「地獄からの使者、ミスターブラックッ!」

なお、今の俺に黒要素はない模様。言ってる場合じゃないな。遠くからパトカーのサイレンが聞こえてきている。

「日本の警察は優秀だな」

そう言った矢先に警官が到着、陰陽師的な変人と黒ずくめの集団は連行されていった。いわゆる業務妨害ってやつか?俺が証拠を消した気がするが、警官に挑んで殴りにいっていたからどっちにしろ公務執行妨害でお縄になったようだ。

「うむ、人間はよく分からぬ」

「まぁ、観光を楽しもうぜ」

「それもそうじゃな」

こうして、俺たちは名も知らぬ誰かの逮捕の瞬間に立ち会い、そのまま京都観光を楽しんだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜。

再び俺たちは琴の屋敷にお邪魔したのだが、

「にゃははは…………シドーウ」

「シドウしゃん……」

琴がお酒を出してくれのはいい。年も年だから問題ないが、いかんせんセラとロセが酒に弱い。酔いながら俺の腕に絡みついてくるのは慣れたけどな。

「はぁ………」

俺はため息を吐きながら2人を退かして酒を飲むのだが、問題はもうひとつ。

「あぅ~、どうすればいいんでしょうかぁ~」

琴だ。こっちも酒に弱い。で、琴の謎の言葉を言いながらモジモジしていた。今さらだが、琴って以外と胸があるな。

俺が何てことを考えていると、琴に声をかけるヒトがいた。

「まあまあ、気長にやれば良いんじゃよ」

なぜか来ていた八坂姫だ。なぜいるのかは本当に謎だが、俺たちが来ていると知っていたから琴が教えたんだと思う。どちらにせよ、あいさつに行く気ではあったけどさ。

で、鈴とリリスは琴が用意していた料理を食べていた。

「リリス殿、おいしいか?」

「うん!おいしい!」

と言いながら食べていき、またハムスターみたいになっているリリスと料理を薦めまくる鈴。仲良しだねぇ。

俺が2人を見ていると、八坂姫が微笑みながら何かを呟いた。

「ふふ、琴が惚れるわけじゃな」

「え?」

よく聞こえなかったので聞き返すと、八坂姫は言ってきた。

「今、あの子たちを見ていたシドウ殿の表情(かお)はとても優しいものじゃった。鈴が懐くわけじゃな」

ああ、そう言ったのか。確かに、時々イッセーたちからも雰囲気変わったって言われるな。何か、ヴァンパイアの国での一件の後に比べて優しい感じになったとかどうとか。リアスは、自分が子供の頃によく見せた表情みたいだって言っていた。

「はぁ、子供が出来たからですかね?」

俺は疑問符を浮かべながら言うとリリスを見る。相変わらず頬が大変なことになっているがまだまだ食べている。口元が大変なことに……。

「リリス、おいで」

俺が手招きするとリリスはトコトコと走り寄ってくる。

「ん?」

「もうちょいキレイに食べな。大変なことになってるぞ」

口元を拭きながらそう言い、リリスは頷いてまた食事に戻っていった。

「シドウ………」

「うふふ………」

「シドーさまぁ……」

酔った3人の寝言を聞きながら旅行3日目の夜は更けていったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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