北海道でもう1日を過ごし、俺たちは京都に来ていた。で、京都は4人で回るそうだ。大変そうだが、俺としては別にいいかなって思っている。大変そうだけど……。
俺の心中を知らないセラとロセは前を歩いている。
「京都に来たからにはやっぱり東大寺に行きたいところね」
「私は金閣寺をのんびりと見たいです」
セラとロセがパンフレットを見ながら行きたいところを言い合っていると、
「ねえねえ」
リリスが俺の手を引っ張ってきた。俺が視線を向けると彼女が何かを言いたそうにしていた。リリスも行きたい場所があるようだ。
「行きたいところがあるのか?どこだ?」
俺が訊くとセラとロセも反応した。
「む、リリスちゃんが行きたいところを失念していたわ。どこに行きたいの?」
「リリスちゃんが行きたがりそうな場所。興味があります」
前を歩いていた2人がこちらに戻ってくると、リリスが笑顔で言った。
「鈴と琴に会いたい!」
「「…………………」」
「………………」
リリスの発言にセラとロセは「誰それ?」という表情をし、俺は地雷を踏み砕いたような気がした。
確かにあの親子には会いに行くべきだが、もう少ししてから切り出せば良かったな。その理由は、
「シドウ……」
「シドウさん……」
セラが右をロセが左の肩を顔を俯けながら掴んでくる。
「「そのヒト、誰(ですか)?」」
2人は顔を上げるが、その表情は簡単に言うと怖い。目からハイライトが消えて不気味なオーラを出していた。
そんな2人に俺は歯切れ悪く言う。
「えと、その、俺とリリスがお世話になったヒトだ」
「一緒にご飯食べたり、一緒に遊んだり、あと一緒にお昼寝した!」
メキメキメキッ!
リリスの言葉を聞いた瞬間に2人は手に力を入れてきた!何か鳴ったらダメな音がしているが、そこまでダメージはない。
「シドウ、もう少し詳しく……」
「お願いします……」
2人の迫力を間近で感じながら俺は続ける。
「しばらくお世話になってた
2人は無言で肩を掴み続けているが、俺はそこまで女ったらしじゃないからな!
「「………………」」
「いや、本当だからな!そこは信じてくれよ!」
2人は頷きあうと手放してくれた。今さらだが、女って怖いな。
そんなこんなで裏京都。髪と瞳をブラックのそれにした俺は、リリスをおんぶして慣れた町を進んでいた。
「セラ、ロセ、ついてきてるか?」
「大丈夫よ☆」
「大丈夫です」
相変わらずヒト通りが多い表通り。店はあれからも変わらず繁盛しているようだ。
そんな表通りから一本入り、進んでいくと屋敷が並ぶ区間に出る。その中から見知った屋敷の前まで移動する。
「懐かしいね」
「だな。鈴はでかくなったんだろうか……」
俺とリリスが喋っていると、セラが言った。
「シドウ、親戚のおじさんみたいなこと言ってるわよ」
「あながち間違いでもない気がするがな」
俺とセラがそんなやり取りをしていると、その屋敷の前に到着した。相変わらず大きい屋敷だな。
「ここね?その鈴ちゃんと、琴ってヒトがいるお屋敷っていうのは」
「ああ、引っ越しされてなければな」
俺は苦笑してそう返した。あれから結構経ってるからな。引っ越しされている可能性もある。あの時はそれも考えずにまた会う約束をしていたんだよな。
「とりあえず、あいさつはしておかないとですね。シドウさんの恩人ですし」
「ええ、どんなヒトなのか見極めて、順列をしっかりさせておかないと……」
ロセとセラがそんなことを言いながら静かにオーラを放っていた。琴、怪我しないかな?
家主の心配をしながら屋敷の敷地に入ろうとすると、
「あ!鈴!」
リリスがそう言いながら飛び降りてしまった。そして、その先には、
「リリス殿!久しぶりじゃな!」
リリスとハグしている金髪の狐耳の女の子。そして、
「リリスちゃん!?ということは、シドー様!」
同じく金髪の狐耳女性がいた。どうやら、買い物に行っていたようだ。
「よっ!久しぶりだな。琴、鈴も」
俺が右手を挙げながら軽くあいさつすると、セラとが俺の手を引いて曲がり角へ……。
「ちょっと来て!」
「なになになに!?」
曲がり角の奥まで連れてこられ、セラが顔を近づけてきた!息が当たるほど近いんですが!
俺が「少し離れてくれ」と言おうとした矢先、セラが言ってきた。
「シドウ!あなた、あのヒトが誰か分かってるの!?」
「ただの親バカ?」
「違うわよ!」
「じゃあ誰なんだよ……」
俺がじと目で言うと、セラは少し慌てながら返してきた。
「
琴、あいつ、スゴいやつだったのか。知らなかったし、知るよしもなかった。てか、あんな時々ドジ踏むようなやつが付き人でいいのか!?
「そ、そうなのか。いや、ただの妖狐なのかと……」
「京都の妖狐がただの妖狐のわけないでしょ!」
言われてみればそうかもな。まぁ、あの時は記憶がなかったから、仕方ない。
「とりあえず、行こうぜ。待たせてるだろうし」
「そ、それもそうね」
俺たちは気を取り直して曲がり角から出る。俺たちの視界の先には、
「リリス殿の母君なのか!美しいかたじゃ」
「あ、ありがとうございます」
「あなたがシドー様にお守りを。不思議な術がかけられていると思ったら、北欧のモノだったのですね」
「あのお守り、見たんですか?」
「ええ」
「~~~~ッ!!」
ロセが顔を真っ赤にしていた。まぁ、あのお守りを見られたら恥ずかしいのかもな。とりあえず、話を戻すか。
俺は近づきながら琴と鈴に声をかける。
「改めて、久しぶりだな。元気にしてたか?」
「うむ!久しぶりじゃな。シドー殿」
元気に右手を挙げてくる鈴と、
「お久しぶりです。シドー様」
深く礼をする琴。2人は変わらないようだ。が、琴がセラを見た瞬間に目を見開いた。
「って、セラフォルー様!?どうしてこちらに!?」
うん、そうなるよね。セラは悪魔の外交担当だからね。
俺がそんなことを思い出しているとセラが言った。
「お久しぶりね☆まさか、『私の』シドウがお世話になっているとは思わなかったわ☆」
その一言でロセが睨んできているが、セラは構わずに続ける。
「改めて、シドウの
何て言いながらポーズを決めるセラ。リリスと鈴はパチパチと拍手していた。
「シドー様、セラフォルー様の眷属だったのですね……」
「ま、そういうこと」
俺たちが駄弁っているが、俺はあることに気がついた。いや、当たり前ではあるのだが。
「琴、それに鈴も。今の俺はシドウだ。シドーじゃないからよろしく頼む」
「あ、わかりました」
「シドーのほうが呼びやすいがの」
2人はそれぞれ反応してくれだが、俺は次の確認を行う。髪と瞳の色を元に戻すのだ。
「で、これが今の俺で、フルネームはシドウ・グレモリーだ」
「「………………」」
俺の変化に驚いてか、琴と鈴は黙りこんでしまったが、琴がハッとして言った。
「グレモリーって、あのグレモリーですか!?」
「どのグレモリーかは知らないが、多分そのグレモリーだ」
「母上、誰じゃ?そのグレモリーとは」
鈴はまだ分かっていないらしく、琴に訊くと彼女は返した。
「簡単に言うと、
「な、なんと!?シドー殿は九重を知っておるのか!?」
直ってないし。まぁ、シドーでいいか。リリスからはそう呼ばれているし。
「ああ、同じ家に世話になってる」
「なんと!?」
驚愕する鈴を他所に琴が言った。
「とりあえず、せっかく来てくださったんです。上がってください」
「うむ!上がっていけ。積もる話もあるからの」
琴な呼び掛けに気を取り直した鈴が胸を張って続いた。何か自慢話があるのかもしれない。
「そんじゃ、お邪魔しますかね」
「おじゃましまーす」
俺とリリスはお言葉に甘えて上がり、
「ああ、待ってください!」
「ちょ!?早くない!ねぇ、切り替え早くない!?」
遅れてセラとロセも上がってきた。何だかんだで京都に来たらこうなるとは思っていたけどな!
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