俺、シドウ、じゃない。今はブラックの俺にイッセーが殴りかかってきた!が、俺は回避もガードもせずに真正面から受ける!
ガキンッ!
高い金属音が響き渡るが俺はノーダメージ、逆に殴ったイッセーの籠手が砕けているほどだ。
「なにっ!?」
イッセーは驚愕の声を漏らすが、俺は構わずに左拳で裏拳を放ち、イッセーの顎を撃ち抜く!
バアァァンッ!
イッセーの兜を砕く凄まじい快音が響き、イッセーは勢いよく吹っ飛んでいった!そのまま奥の岩壁に激突し、落下してきた岩の下敷きになる。
俺は兜の下で不敵な笑みを浮かべる。
『どうした、その程度か?おまえの覚悟はその程度なのか?』
挑発するようにそう言うと、イッセーが自分に乗った岩を砕いて立ち上がった。
「当たり前だ!おまえなんかに負けられるかよ!」
イッセーがやる気十分で言うと、兜を修復して再び正面から突っ込んできた!初めて会った頃とは段違いのスピードとオーラだが、
『まだまだ甘いな』
俺がそう呟くと同時にイッセーが俺の懐に飛び込んで右拳でボディーブローを放ってきた!
俺はその拳を左手で受け止めると、真・斬魔刀の柄頭でイッセーの眉間を殴り、怯んで少し下がったところに上段回し蹴りを決める!
「かは…………っ!」
イッセーは肺の空気を吐き出しながら吹き飛び、地面を転がりながら勢いを殺していた。イッセーはすぐに立ち上がり、右手をこちらに向けてきた。
「これならどうだ!ドラゴンショットッ!」
その右手からオーラを連続で飛ばしてくるが、俺に当たりそうなものだけを見極めて真・斬魔刀で斬り伏せていく。たまに曲がってくるからな、気を付けないと。
何て思いつつ、イッセーの攻撃を斬り伏せる。それが完了したら左手をあげて宙に数十の北欧の魔方陣を展開する。
『攻撃ってのは、こうやるんだ』
イッセーに告げるようにそう言うと、左手をゆっくり降り下ろしフルバーストを放つ!
「舐めるなっ!」
イッセーはそう言うと再びオーラを飛ばしていくつか相殺していき、うまく避けていく。さすがは超越者候補、このぐらいの攻撃なら対処できるか。
俺は感心しながらもさらに多くの魔方陣を宙に展開する。
『これはどうだ?』
俺は挑発するように言うと、先程よりも苛烈にフルバーストを放っていく。イッセーも対処していくが、少しずつ被弾が増えていっている。
一旦攻撃を止め、イッセーを見る。
「はぁ……はぁ……」
イッセーは息を荒くしながらかけた兜越しに俺を睨んできていた。目には戦意がたぎっているが、限界も近そうだ。だが、イッセーは震える足を踏ん張って立ち上がってみせた。
『ほう、まだ立つか。まぁ、そうでもないと楽しめんがな』
俺が感心しながらも言うと、イッセーは叫んだ!
「まだだ!まだ終われない!終わってたまるか!」
イッセーはそう叫ぶと、両翼からキャノン砲を出現させた。紅の鎧でキャノンを展開ってことは、あれか。
俺は真・斬魔刀に少しオーラを込め、迎え撃つ準備を整える。
「クリムゾン・ブラスタァァァァァッ!」
イッセーが叫びながら砲撃をしてきた!が、俺は軽く真・斬魔刀を振り上げて斬撃を放つ。
イッセーが放った紅のオーラと、俺が放った深緑色のオーラが正面から激突した!
「がぁぁぁあああああっ!」
「………………」
最初は拮抗していたが、徐々に俺のオーラが押し始め、そして、
「沈め………っ!」
俺がぼそりと呟くと同時に完全に押しきり、イッセーに加減した俺のオーラが直撃した。
「うわぁぁぁっ!」
爆発と共にイッセーは吹っ飛び、再び地面を転がる。
俺は鎧を解除して真・斬魔刀を納刀する。納刀すると言っても、鎖に引っ掻けるだけだがな。
それを済ませてゆっくりとイッセーに近づいていく。
「乳龍帝。おまえは弱い。何かを守るなどと言っていたが、おまえは何も守れん」
「………ッ!」
地面に倒れて動けないイッセーは悔しそうな表情で俺を睨んできた。
「さて、あちらも終わったか」
俺はそう言いながら横を見ると、シャドウがスイッチ姫を抱えて現れた。
「ブラック、終わりました」
「ああ、ご苦労だったな」
「なっ!?」
驚愕するイッセーを無視して、俺はシャドウに礼を言いながらスイッチ姫を受け取り、脇に抱える。
「さて、乳龍帝。一つ勝負といこう。なにルールは簡単だ。俺がこの世界を終わらせる前に、俺を倒しに来い。
俺は城で待っているが、俺の配下たちに守護させている。そいつらを倒さないと俺とは戦えない。せいぜい頑張れ」
俺はイッセーにそれだけ伝えると、転移魔方陣を展開する。
「待ってやがれ、すぐに倒してやらぁ!」
イッセーの言葉に俺は愉快そうな笑みを浮かべる。
「ああ、待っているとも………」
俺はそう言うと転移の光に包まれた。
てなわけで、このシーンの撮影は完了。小休止となった。
「シドウさん、容赦ないっすね」
「なかなか、痛かったです」
休憩中にアーシアに回復してもらっているイッセーと木場が愚痴っていた。まぁ、仕方ないか。
「まあまあ、いいじゃねぇか。初めて二人と戦えてちょっと調子に乗ったけどな」
俺は苦笑しながらそう言った。本当に初めてだっけ?
俺がそう思っていると、横から現れた朱乃が言った。
「あの時を除けばそうですわね」
「あの時?」
俺が訊くと、近くにいたギャスパーが言った。
「あの時は絞め殺されるかと思いましたぁ~」
「え?どの時?」
俺が再び訊くと、今度はイリナとゼノヴィアが頷いていた。
「本当に、あの時デュリオがいなかったら、どうなっていたのかしら……」
「ロスヴァイセ先生もなかなか大胆だったな」
「ちょ、俺が置いてきぼりなんだけど……」
俺が困っているとリアスとロセが現れた。
「あの時は大変でした………」
「今思うと、は、恥ずかしいです………」
リアスは心底嫌そうに、ロセは顔を赤くしながら俯いた。
「なぁ、どの時だ?」
俺が訊くと、イッセーを仙術で治療していた小猫が答えてくれた。
「……シドウ先生がリゼヴィムに操られていたときです」
………ッ!
そうか、あの時か!俺ははっきりと覚えてないんだけど、デュリオからも大変だったって聞いたんだった!
「……その時か。すまんな、いらん心配かけて」
俺が言うと、ロセが可愛く睨んできていた。
「あの、何か?」
「謝るのなら、その時以外のものもだと思います」
………確かに。リゼヴィムに捕まった時から無理しまくったからな。てか、そのあとすぐに死んだし……。
「ゴメン……」
俺が素直に謝ると、ロセは笑みを浮かべた。
「分かればいいんですよ」
ロセはそう言いながらうんうんと頷いていた。
俺たちが談笑していると、スタッフがテントに入ってきた。
「それでは皆さん!次のシーンの撮影を開始します!」
『はい!』
こうして、昔のことを思い出しつつ、次の撮影場所に移動する俺たちなのだった。
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