グレモリー家の次男   作:EGO

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Extra life 57 映画出演 セラフォルーと共演編 ④

ギャスパーは例のごとくバロールの力で帰還し、そのまま次のシーンの撮影となった。

「ほら、動かないで」

「………………」

俺は現在、先程の遺跡から移動した森の中でセラに包帯でぐるぐる巻きにされていた。一応、先程の戦闘での負傷を治療してもらっているというシーンだ。

だが、ここまでボロボロにはなっていない。実際腹を集中的に斬られたり蹴られたりしただけだ。特にダメージはないんだがな。てか、巻かれすぎて顔がわからなくなっているんだが……。フードと包帯のせいでろくに顔を出していない気がする。

で、撮影はすでに始まっているのでそんな事は言わずに黙ってされるがままになっているところだ。

「それで、どうしてこんなところにいたの?」

「………………」

「ここは危険なのはわかっているわよね?」

「………………」

初対面の相手に色々と訊いてくるのはセラの地の部分だと思う。実際いつもと変わらない感じに話しかけてくれていた。

「ねぇ、聞いてる?」

「………………」

いい加減答えてやりたいのだが、台本では無言を決め込むとなっているので返さない。後でたっぷり話し相手にはなるがな。

すると、セラがため息を吐くと、俺の背中をぶっ叩いてきた!

「はぁ………。えい!」

「ッ!?」

突然叩かれたので体がびくついてしまったが、セラは笑顔で頷きながら言ってきた。

「そうそう、そうやって反応してよ。こっちも反応に困るじゃない」

「……………」

「もう一回、いくわよ?」

黙りこむ俺にセラが手にオーラを込めながら言ってきた。さすがにそれは痛いので、俺は息を吐いて口を開いた。

「わかった。話すから勘弁してくれ」

「で、どうしてこんなところにいたの?」

セラの目を見ながら質問に答える。

「復讐をするために来た。と言われたら、おまえは納得するか?」

セラの質問に質問で答えるとセラは頷いた。

「別にあなたが戦う理由は否定しないわ。けれど、どうして復讐を?」

「おまえには関係ない」

俺はそう言うとセラから視線を外し、遺跡の方角を見る。するとセラは俺の頭を掴むと、無理やり視線を合わせてきた。

「仲間、いえ、家族の(かたき)討ちのためかしら」

「ッ!」

そう言われた瞬間、俺はセラの手を振り払って視線を外す。てか、これ以上セラと至近距離で見つめあうと照れて顔に出るかもしれん。

「どちらにしても、そのヒトは復讐を望んでいないかもしれないわ」

その言葉を聞いて、俺は怒りを(あらわ)にする。

「おまえに何が分かる!あの龍王に俺は全てを奪われた!家族を、仲間を、全てを!おまえに俺の気持ちがわかるか!?」

俺はそう言いながら立ち上がり、セラを睨んだ。セラは怯まずに俺に言ってくる。

「私にはわからないわ。けれど、これはわかる」

セラはそう言うと俺に歩み寄り、そっと頬に触れてきた。

「あなたの命は一つだけよ。だから、大事にして」

「………っ」

その一言に、俺は演技抜きでやられていた。今のセラの言葉と声の調子は本当に心配しているものだった。つまり、今のは演技抜きのセラの本音だ。

俺は黙ってしまったが、セラは俺から手を離して言葉を続けた。

「とりあえず、あなたはここで休んでいなさい。これからは私一人で行くから、あなたは帰りなさい」

「なんだと!?ここまで来たのに!敵の目の前に来たっていうのに!黙って帰れってのか!?」

俺は興奮しながら言うと、セラは冷静に告げてきた。

「今のあなたは力不足よ。はっきり言うと足手まといなの。いて邪魔なら最初からいない方がいいわ」

それを聞いても俺はセラの胸ぐらを掴んで言う。

「だったら途中で見捨てろ!奴の目の前で死んで、呪い殺してやるっ!」

「だから言っているでしょう!もっと命を大事にしなさい!」

セラはそう返しながら俺の腕を振りほどく。そして、俺は傷が開いたかのように胸を押さえ、片ひざをつく。息を荒くしながら言う。

「はぁ……はぁ……。俺は這ってでも奴の元に行く。止めても無駄だぞ」

「だったら……」

セラはそう言うとオーラを溜めた右手を俺に向けてきた。

「ここで寝てて」

冷酷なまでの声音でそう言うと同時に魔力弾が放たれ、俺は吹っ飛ばされた!背後にあった木に背中から叩きつけられ、ゆっくりと膝から崩れ落ちる。

「テ、テメェ………!」

倒れながらセラを睨み付けるが、彼女は悲しみに満ちた瞳で俺を一瞥(いちべつ)すると踵を返して行ってしまった。

俺は腕を踏ん張り立ち上がろうとするが、力が入らずにすぐに倒れる。

「あの野郎……、何を考えていやがる……!」

俺はそう吐き捨てると意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

シーンと場所が変わり、俺は焼き焦げた集落のセットの真ん中に立っていた。今頃セラは朱乃やギャスパー、ソーナたちとの戦闘シーンを撮影していることだろう。

撮影開始とともに炎と爆発がセットの様々な場所で巻き起こり、その度に俺はふらつき、倒れそうになる。懸命に足を踏ん張り、必死に足を進めていく。

が、結果的に限界を迎えてうつ伏せに倒れる。体を転がして仰向けになり、虚ろな瞳で空を見る。その黒い触手と炎を操る全身鎧(プレート・アーマー)の何かがその瞳に映った瞬間、俺の心に憎悪が溢れ始めた。限界を迎えたはずの体に力が入り、ゆっくりと立ち上がる。

そして、俺は獣のように吼えた!天に向かって。殺すべき(てき)に向かって、俺は全力で吼えた!

「うおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉっ!」

いかん、喉潰れるかも……。

俺の心配を他所に、このシーンの撮影は完了して次のシーンへと移行するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

てなわけで次のシーン。再び移動して島に設置された村のセットだ。

撮影するのは再び俺の回想のシーン。だが、今回は先程のものとはうって変わって、仲間や家族と談笑しているのものだ。

ちなみに、出てくるヒトたちは俺とは特に関係のない俳優、女優さんたちだ。

監督曰く、『ここはあくまで回想シーンだからセリフはないよ』とのこと。つまり、マジで談笑しているだけだ。基本的にそれぞれの苦労話やお笑い話、時々愚痴なんかも聞けた。

このシーンはこの後で俺が大切に思っていたものを思い出すシーンで使うとのこと。

このシーンも無事に終了して、ついに決戦シーンの撮影えと移行することになったのだった。

 

 

 

 

 

 




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