グレモリー家の次男   作:EGO

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Extra life 56 映画出演 セラフォルーと共演編 ③

「怖かったですぅぅぅっ!」

あれから無事にギャスパーは帰還した。別に俺たちが助けたわけではなく、バロールモードになって怪鳥を撃破して戻ってきた。

そのギャスパーは泣きわめいているわけなんだが、時間がないので撮影は続行。俺たちは移動して遺跡の前に来ていた。崩れて(つた)まみれになった柱が数本配置されている。そして、俺の眼前には、

「紫藤とシドウの勝負ですっ!」

「先生と勝負は初めてですね」

「また、ですか……」

今さらなことを言ってくるイリナと、ぼそりと漏らす仁村(にむら)、若干諦めムードの段ボールヴァンパイアのギャスパー。次はこの3人を同時に相手することになる。

ちなみにだが、イリナは聖剣であるオートクレールは使わずに、俺が使っているものと同様に刃を潰してある西洋剣を使用する。仁村は人工神器(セイクリッド・ギア)玉兎と嫦娥(プロセラルム・ファントム)』、よくある籠手ではなく、脚甲型のものを使用する。今は消しているけどな。ギャスパーはバロールになればいいのに………。

俺がそんな事を考えていると監督から号令が飛び、撮影が開始された。

「まったく、彼女も詰めが甘いですね………」

仁村がため息を吐きながらそう言う。ソーナの眷属たちって、案外ノリノリなんじゃないか?

「まあまあ、あのヒトらしいじゃない!」

いつものテンションと変わらずに言うイリナ。天使の仕事でグラビアとかやっているって前にイッセーから聞いたし、案外慣れているのかもしれない。

「あんたら、意外と仲間意識ってもんがあるんだな。まぁ、俺には関係ないか」

俺はそう言いながら抜刀する。応えるようにイリナも抜刀し、仁村も玉兎と嫦娥(プロセラルム・ファントム)を装備した。ギャスパーは相変わらずに段ボールにインしている。

しばらくの静寂、そして、

「いくわよ!」

「ええ!」

イリナの合図に仁村が応えて飛び出してきた!

初めてとは思えないコンビネーションで放たれるイリナの剣撃と仁村の蹴りを避けながら、俺は攻撃の隙をうかがう。演技をする。やろうと思えば一気に斬り伏せられるが、設定上あまり強くないんでね。

俺がイリナの上段からの振り下ろしを防ぎ、力任せに押し返した隙に仁村の蹴りが放たれた!

当てないだろうなと思った瞬間、俺のノーガードの腹部に神器(セイクリッド・ギア)で強化された仁村の蹴りが炸裂した!

バァァンッ!

「かはっ!」

肺の空気を吐き出しながら吹き飛ばされ、ゴロゴロと地面を転がる。何だろう、ソーナの眷属たちに恨まれているのか、それとも監督からの指示なのか、マジで当てにくるんだけど……。

俺は腹部を押さえながら咳き込み、ふらつきながら立ち上がる。やれやれ、やられる演技ってのも大変だ。

意識するば当たる場所にオーラを集中してガードできるが、意識外からのものはちょっと痛い。

なんて思いながらイリナと仁村を睨む。

「わぁお、怖い怖い。でも、私たちに勝てるかしら!?」

「今のを耐えたのは褒めてあげましょう」

イリナが俺を挑発し、仁村が冷たく告げてきた。本当にノリノリな二人だな。

「舐めるなっ!」

俺は怒りの表情で飛び出した!同時にイリナも飛び出してきて俺たちは激突する!

ギィィィンッ!

金属がぶつかり合う音が周辺に響き渡り、俺たちはそのまま斬り合いを演じていく!

俺が突きを放てばイリナがそれを反らし、イリナが斬り上げてくれば俺は体裁きで避ける。激しい金属音と火花が散るなかで、そこに仁村も参戦して戦闘は激化していった!

そのまま二人の猛攻にさらされ、柱の一本に背中がつくまで追い詰められた。

そこに放たれた仁村の蹴りを鞘で防ぎ、イリナの剣撃を剣で防ぐ!金属が擦れる音が耳元で聞こえ、若干の不快感を覚える。

二人をパワーで押し、少し柱から離れるが、俺の抵抗はそこまでで、そのまま押しきられ、イリナの斬り上げで空中に上げられると、そこに仁村の跳び蹴りが炸裂した!

ドゴンッ!

「ッ!」

再びマジで当てにきた二人には後で何か言うとして、俺は後ろにあった柱を破壊しながら吹っ飛ばされていく!

再び地面を転がる俺。今日だけで何回倒れるのだろうか。そう思いながら上体を起こそうとするが、力が入らずすぐに倒れる。どうにか首だけを動かして二人を睨む。

「ここまでかしらね」

「そうみたい、決めちゃいましゃうか!」

仁村とイリナか告げてきた。妙に生き生きとした表情だ。本当に二人に恨まれてあるんじゃないのだろうか。

俺がそう思っていると、その二人に魔力弾が襲いかかった!

二人はそれを華麗に避け、俺からも距離を取る。すると、俺と二人の間に入るように誰かが降りてくる。

「あなたたちね!龍王の遣いたちは!」

二人を指差しながら言ったのはセラだ。

セラを見て仁村が言う。

「まさか、彼らもやられたのか。ここを守るのは我々だけのようだな」

「だったら頑張りましょう!ね!段ボールヴァンパイアくん!」

イリナがそう言いながら後ろを向くと、

「だ、誰かぁぁぁ…………」

『ハグハグ』

ティラノザウルス的な何かに食われているギャスパーの姿がっ!って、何で恐竜的なものがいるんだよ!?

驚愕する俺を他所にイリナがこちらに向き直りながら言う。

「彼も大変みたいね。二人で行くわよ!」

「ええ!」

イリナと仁村は頷きあうとセラに勝負を挑んでいった!

俺はここで気絶するらしいので、そのまま目を閉じて上げていた首を倒す。

爆音や金属音がしばらく聞こえていたが、数分して一段落したのか、監督からの合図が飛んでこのシーンの撮影は完了となった。

今度、ギャスパーに何か奢ってやろうと思った俺なのであった。

 

 

 

 

 

 

 




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