グレモリー家の次男   作:EGO

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Extra life 55 映画出演 セラフォルーと共演編 ②

セラから映画出演の話を聞いてから1週間。

「シドウせんせぇぇぇぇいっ!離してくれださぁぁぁぁいっ!」

「おまえも男だろうが!根性見せろ!」

泣きながら抵抗するギャスパーを無理やり引きずって、俺たち(俺、朱乃、イリナ、ギャスパー)は人間界にある無人島に来ていた。セラから座標指定の連絡がきたので転移で即移動、即到着だったぜ。

「それにしても、ここ日本だよな?」

「ええ、そのはずですわ」

俺と朱乃はそんな会話をしながら周りを見渡した。島ではあるが、船がつけられそうな場所はなく、岩礁だらけ。砂浜はないな。山と森も険しそうだ。

「まさに絶海の孤島ってやつね!」

イリナは興味深そうにキョロキョロしているが、ここ、人間界だからね?

「うう……、あの時のトラウマが……」

ギャスパーは抵抗を止めたが若干やつれて見える。この島で何かあったのか?

「さて、セラはどこだ?」

俺がギャスパーを無視しながら周りを見渡す。

すると、こちらに近づいてくる気配を感じた。かなりの数だが、全員悪魔のものだ。って、いつからこんなにオーラの検知が得意になったんだ?

俺が復活してからの変化に首を傾げていると、森の中からセラとソーナたち、撮影スタッフと思われるヒトたちが出てきた。

「シドウ、それにみんなも待ってたわよ☆」

セラがいつも通りのテンションで横チョキしながら言ってきた。元気そうで何よりだ。

「待たせたな。ってわけでもないか。撮影はある程度進んでいると見える」

俺はソーナたちを見ながらそう言った。ソーナとその眷属たちが衣装と思われるものを着ており、少し疲れているように見える。

「そうなのよ☆ソーたんたちとのシーンを撮っていたの。もうすぐ終わりだけどね☆」

「早く終わってほしいです………」

『全くです』

いつも通りのテンションのセラと、テンション低めのソーナたち。

「どんなシーンを撮ればそこまで疲れるんだよ」

「ずっとお姉様との戦闘シーンです。匙と椿姫(つばき)留流子(るるこ)の出番はまだでしたが………」

セラとの戦闘!それは疲れるな。昔の俺でも逃げるのが精一杯だったのに、本気の戦闘とは……。

俺がソーナたちの頑張りに感服していると、監督と思われる男性が言ってきた。

「あなたがシドウさんですね。お話はセラフォルー様から聞いています。早速移動しましょう」

「ああ、わかった。で、最初は何をするんだ?」

俺が訊くと監督は続けた。

「念のために確認を。あなたはセラフォルー様とは別ルートでこの島に来たもう一人の主人公の役です。この島に眠る龍王に家族を殺された『復讐者』という設定で、ターゲットを追ってやってきたこの島でセラフォルー様と出会い、少しずつ惹かれていく。ここまでは理解できていますか?」

「台本は読んできたからその程度なら。で、朱乃たちは俺を止めようとする龍王の手下役、だったな?」

俺が後ろの3人に訊くとそれぞれが頷いた。

「私は龍王に仕える堕天使役でしたわね」

「私は龍王を倒そうとしたら逆に操られる天使役でした!」

「僕は段ボールヴァンパイアの役ですぅ。またああならないことを祈りますぅ」

朱乃とイリナはノリノリだが、ギャスパーは段ボール箱に隠れてそう漏らしていた。前に何があったんだろうか。

俺はギャスパーの言動に疑問を抱きつつ、スタッフに案内されて森の中を移動し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

てなわけで、俺は島の上空に悪魔の翼を展開しながら待機していた。一応悪魔としての仕事なのでドラゴンの翼は自重させてもらった。

で、俺の格好ってのが某シティを守る弓野郎のまんまだ。まぁ、パーカーの色が黒いし、武器も弓じゃなくて用意されていた西洋剣だがな。それを鞘にいれて腰に帯刀している。

俺は呑気にそんなことを考えていると、耳にいれておいたインカムから指示がきた。

『シドウさん、それでは始めます』

指示がきたのでフードを深くかぶり、顔が見えないようにする。

『それでは、アクション!』

監督からの号令とともに翼を消し、重力に従って頭から落下していく。

風を切りながら落下していき、少しずつ地面が近づいていく。ある程度の高度まで落下すると、足をしたにして落下に備えて、そして、

ドォォォオオンッ!

激しい激突音とともに島の岩礁地帯に軽くクレーターになるぐらいの勢いで降り立った!片ひざと片腕をつくような態勢、いわゆる『スーパーヒーロー着地』だ。若干膝が痛い……。

俺は痛みに構わず立ち上がり、ゆっくりと島を見渡した。

「………ここか」

ぼそりと呟くようにそう言うと、そのまま島の中央に向かって歩きだした。

『カット!』

監督の号令で足を止め、次の言葉を待つ。

『よし!オッケイ!』

一発でいいのか!?こう、何回もやってようやくって感じを想像していたんだが……。

俺が心の中で驚愕しているとセラが言った。

「シドウ、なかなか上手じゃないの!びっくりしたわ!」

テンション高めに言ってくるセラ。まぁ、演技ってのは得意だな。

「10年間自分を偽ってきたんだ。誰かを演じるくらい簡単さ」

いつかの潜入任務のことを思い出しながらそう言うと、セラは苦笑した。

「あはは、何事も経験って言うのかしら?でも、上手なことに変わりないわ」

「そうか、ありがとうな」

俺たちが喋っていると監督からの指示がとんできた。

『では次のシーンに移ります!移動しますのでついてきてください!』

そんじゃ、次行きますか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

てなわけで、移動完了。俺の映画初戦闘シーンだ。で、相手は、

「シドウ様、よろしくお願いします」

「ああ、頼む。って、真羅(しんら)と戦うのって初めてか?」

「そうですね」

ソーナの『女王(クイーン)』、真羅椿姫(つばき)だ。妙に体にフィットするような戦闘服、てか全身タイツに思われそうな格好をしている。どっかの影の国の女王様?あっちは槍だった気がするんだけど?

それは置いておいて、台本には『敵幹部との戦闘』とセリフがちょろっとだけ書いてあった。多分戦闘はアドリブなんだと思う。

彼女の神器(セイクリッド・ギア)って、かなり特殊なものと聞いているんだが、どんなのだっけな?

で、相手はもう一人。

「またこんな役回りなんですね………」

段ボール箱に隠れたギャスパーだ。出て来てバロールモードになればいいのに。なんでならないんだろうか。

今回の撮影は、俺VS真羅、ギャスパー。というハンデマッチ。まぁ、問題ないか。

俺たちはそれぞれ所定の位置に移動し、得物に手をかける。俺は腰に帯刀している西洋剣に右手をかけ、真羅は長刀を持ち、ギャスパーは段ボール箱に入っている。

まぁ、即戦闘ってわけでもないんだがな。

『アクションッ!』

監督の号令で演技を始める。

まずは真羅のセリフだ。

「あなたですか、我らが主に牙を向いているという者は」

とても冷たい声音で言ってきた。なかなかいい演技するじゃん。

真羅の演技に感心しながら俺が答える。

「ああ、おまえらに用はない。斬られたくないのなら………退け……!」

俺はそう言いながら抜刀して真羅に斬りかかる!もちろん真羅にも受けれるように加減をしてやっているから、ちゃんと止めてくれるはずだ。万が一当たっても、刃が潰れているから怪我はしないはずだ。多分だけどな!

俺の剣と真羅の長刀がぶつかり合い、そのままつばぜり合いになる!

どうにか加減して互角に競り合っているように見せる。これがまた難しい!

俺が真羅を押しきって少し下がらせると、勢いのまま斬りかかっていく!すると、

「『追憶の鏡(ミラー・アリス)』!」

真羅の前に盾になるように鏡が発生した!俺は構わずに鏡を叩き壊すが、

バリーンッ!!

鏡が砕け散る音ともに衝撃が放たれ、後方に吹き飛ばされた!そのまま勢いよく後ろにあった岩に激突する。

今のが彼女の神器(セイクリッド・ギア)か。カウンター特化のものも珍しいな。リアスたちが嫌いそうだ。

真羅が言う。

「その程度の力で我らの主に勝とうとでも?はっきり言って無理ですよ」

ここら辺のセリフも書いてあったな。まぁ、こうなるようにしたわけだけど。

俺はわざとらしくふらつきながら立ち上がり、切っ先を真羅に向けた。

「まだだ……。この程度、あの時の苦しみに比べれば、軽い!」

それを見た真羅がギャスパーに言う。

「やれやれ、執念とはここまでヒトを愚かにするのですね。段ボールヴァンパイア、決めてしまいましょう」

真羅が振り向いた瞬間、

「ギァァァアアアアッ!?」

『ギー!ギー!』

ギャスパーが入った段ボールが怪鳥に連れ去られた瞬間だった!え!?これは台本にないっていうか、聞いてない!

俺が表情に出さないように困惑していると、真羅が続けた。

「どうやら、彼も仕事のようです。まぁ、良いでしょう。あなたは私一人で倒します!」

真羅はそう言いながら突っ込んできた!

「俺も負けるわけにはいかねぇんだよっ!」

俺と飛び出し、一気に間合いを詰めていく!そして、

ザンッ!

俺と真羅がすれ違う瞬間、お互いが放ったの一撃が交差した。

「ぐっ……!」

俺はうめき声を上げながら膝をつく。あいつ、まじで一撃入れてきたんだけど!?

少しイラつく俺の背後で真羅が言った。

「私もまだまだ、甘い、ですね………」

彼女はそう言うと崩れ落ち、動かなくなった。俺はふらつきながら立ち上がり、剣を納刀して先に進んでいく。

ギャスパー、おまえのことは忘れない。

 

 

 

 

 

 

 




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