リアスたちの学校が休みの日。
俺、シドウは毎日をゆるく過ごしていた。そして、今、俺の部屋の中では、
「ロセママ、あーん」
「ありがとうございます。あーん」
リリスとロセが一緒にポテト○ップスを食べていた。まぁ、俺もいただいてあるんだがな。謎の中毒性と言うべきなのか、たまに食べたくなる。
リアスたちはイッセーの部屋で何かしらしていることだろう。貴重な休日、のんびりしないと損だ。
兵藤夫妻は夕飯の買い物に出掛けた。たまには二人でフラフラしたいそうだ。
俺はふと時計を見る。時刻は午後3時、毎日変わらず平和で良いなぁ。
俺がそう思っていると、兵藤宅のインターフォンが鳴った。
ピンピンポーン、ピンピンポポーン。
謎のリズムだ。どうやって押しているんだ?
俺は疑問に思いながら、部屋にいる二人に一言告げてから、来客を確認するために玄関に向かった。
玄関前に到着するとリアスとイッセーも降りてきた。二人も気になったようだ。
「お兄様、今日誰か来る予定はありましたか?」
「俺の記憶にはないな。急でも連絡が入ると思うんだが」
「だったら松田か元浜、桐生辺りですかね?あいつらなら連絡なしで来てもおかしくないですから」
イッセーが言った三人はこいつのクラスメートだ。前の二人は男子で駒王学園エロ三人組(残り一人はイッセー)として知られていて、最後の一人は女子で、俺たち悪魔や天使のことを知る一般生徒だ。ちなみに、そいつらのクラスはロセが担任らしい。
俺はそう思い返しながら鍵を開け、ゆっくりと玄関を開ける。そこにいたのは、
「ソーナ?珍しいな、おまえが来るなんて」
ソーナだった。彼女がここに来ることは稀だ。どうして来たのかも気になるところだが、どこか疲れていそうな表情をしていることも気になった。
「あら、ソーナじゃないの。どうかしたのかしら?またゲームをやりに来たの?」
リアスが玄関を開けながら訊くと、ソーナは表情通りの声音で言った。
「リアス、シドウ様、助けてください………」
『ッ!?』
ソーナの突然の要請に俺たちは驚愕した。ソーナが救援を求めてくるなんて、俺は初めてだぞ!?
「とりあえず、あがれよ。話はそれか……」
「シドォォォォォウッ!」
「ぐべらっ!?」
ソーナを中に入れようと玄関を全開にした瞬間、どこからか現れた何かに抱きつかれて家の中に押し戻された!
なかなかのダメージ、だがこのくらいでは倒れん!
俺は首を動かしてその何かを確認すると、俺の胸に顔を埋めているのは魔法少女、もとい魔王少女だった!
「セラ!?おまえ、何でここに!?」
俺が訊くとセラは顔を上げて笑みを浮かべながら言った。
「シドウに会いに来たのよ!もう限界だったんだから☆」
何がどう限界だったのかを訊きたいところだが、いつまでも寝ているわけにもいかないので、セラにはとりあえず退いてもらってリビングに案内した。
「シドウには映画に出てもらいたいのよ☆」
開口一番にそう言うセラ。病院で言っていたやつだな。そういえばそんな話もあった。危うく忘れるところだったよ。
「パパ、『えいが』って何?」
俺の膝に座るリリスが訊いてきたので、俺は俺なりの答えを教える。
「まぁ、テレビドラマみたいなものかな。かけてるお金とかが桁違いだけど」
「ふーん」
リリスは俺の解答に頷いたがあまり興味はなさそうだ。
ソーナが先程と変わらない声音で言う。
「昨日から『シドウに会いたい』とくずってしまい、ろくに仕事をしてくれないのです。連れてきてもこうなると思ったのでどうにかしようとしたのですが、ダメでした」
ソーナが疲れているのはセラを説得しようとしたからか。ソーナのことだ、結構粘ったんだと思う。ゼイメファの胃に穴が開いていないことを祈る。
俺が同僚の健康を心配しているとロセが言った。
「シドウさんが映画に………。大丈夫なんですか?」
ロセの心配もその通りだ。下手に顔を出すとこれからの任務に支障が出るかもしれない。だが、
「俺は別に構わない。てか、面白そうだ」
俺が笑みを浮かべて言うとセラは満面の笑顔になった。
「そうこなくっちゃ☆撮影は来週からだから準備を忘れないでね☆はい台本」
セラはそう言うとどこからか取り出した台本を俺に渡してきた。そして、ギャスパー、イリナ、朱乃を見た。
「三人にも手伝って欲しいのよね。リアスちゃん、借りてもいいかしら?」
セラが訊くとリアスは頷いた。
「私は構いません。あなたたちはどうかしら?」
リアスが訊くと、
「冥界の映画に出れるなんて新鮮ね!」
ノリノリのイリナ。
「私も構いませんわ。たまには楽しみませんと」
なぜかSっぽい笑みを浮かべる朱乃。
「ま、また僕もですかぁぁぁぁっ!?」
驚愕するギャスパー。てか『また』ってことは、前にも何かあったのか?
セラは三人の返答(?)に頷くと、ソーナにも言った。
「ソーたんと眷属のみんなにも協力してもらうから、そのつもりでいてね☆」
ソーナが疲れている要因は案外そっちなのかもしれない。てかソーナたちにも映画出演を依頼していたのかよ!?
「それじゃあ、来週よ。忘れないでね?」
セラはそう言うと一つ咳払いした。
「シドウ、せっかく人間界に来たんだから案内してよ。と言うよりもデートに行きましょう!」
セラはそう言うと問答無用で右腕を引っ張って外に連れ出そうとしてきた!が、俺の左腕を引っ張って止める者がいた。
「待ってください!シドウさんとのデートは私が行きます!」
ロセだ。こっちもデートに行きたいようだ。そして今度は俺の足にしがみついてくる者もいた。
「デート、リリスも!」
リリスだ。恋人二人だけじゃなくて娘からもデートに誘われた!?
俺は休暇が退屈しなさそうだと思うと、少しだけ嬉しく思った。だが、
「頼むから引っ張らないでくれ!体が裂けるっ!」
『あ、ゴメン』
三人は俺の言葉で手を離してくれた。まぁ、この程度で千切れるほどやわじゃないけどな。
こうして、俺の映画出演が決まったのだった。
誤字脱字、アドバイス、感想など、よろしくお願いします。