グレモリー家の次男   作:EGO

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Extra life 49 シドーとリリス クリフォト狩り

シドーとリリスがあの町を出て早くも1週間。

彼らは行く先々で『クリフォト』に襲われ、その度にそれらを退けていった。おかげで町や村に厄介になることはできず、その八つ当たりのように見つけた拠点も片っ端から破壊していっていた。

そして、今も、

「あれも拠点か」

「多分そう。ちょっと臭いする」

シドーが岩に隠れながら山の中腹にある砦を見て言うと、リリスが鼻をひくつかせながら返した。

リリスがそう言うならそうなのだろう。シドーはそう結論づけると、リリスに告げた。

「リリス、ここに隠れてろ。何かあったら、まぁ逃げるなり戦うなりしてくれ」

リリスはこくりと頷くと、近くにあったリリスがギリギリ入れる大きさの穴に潜り込んだ。

シドーは日本刀を異空間にしまい(リリスから教えてもらった)、その砦へと近づいていく。

シドーが砦を眼前に捉えると、見知ったローブを着た見張り台の悪魔が言った。

「貴様、何をしている!」

シドーはそう言われると、見張り台からは見えないように俯いて笑みをこぼした。

「何をしていると訊いているのだ!」

見張り台の悪魔が急かすように言ってくると、シドーは顔を上げるが、少し不安そうな表情をしていた。

「魔物に襲われて逃げてきたんだ!頼むから開けてくれ!」

切迫したような声音で乱暴に砦の門を叩く。見張り台の悪魔も少し慌てながら周辺を警戒した。

「頼むから開けてくれ!あいつがいつ来るかわかったもんじゃないっ!」

シドーは懇願するように見張り台の悪魔に言うと、その悪魔は耳元に魔方陣を展開して一二言やり取りすると、シドーに告げた。

「わかった!今開けてやるから騒ぐな!」

「本当か!?ありがとう、ありがとう!」

シドーはわざとらしく何度も頭を下げて礼を言うと、門が開くのを待った。同時に左手の指先の宙に小さめの穴を開け、いつでも刀を取り出せるようにする。

そして、門が開いた瞬間、

「やれやれ。まぁ、けいさ………」

門の中にいた悪魔がそう呟いたと同時にシドーは飛び出し、その悪魔の顔面を殴り抜いた!

バァァアアアンッ!

凄まじい打撃音と共に悪魔は吹き飛んでいき、壁に叩きつけられて体が潰れた。同時に、指先に開けた穴を広げ、そこから日本刀を取り出す。

砦の中にいた悪魔はゾロゾロと砦の一階のホールに集まり始めた。数としては30人程。全員がローブを着て、得物を持つ者と魔方陣を展開する者と様々だ。

シドーは重心を少し落とし、日本刀に右手を添える。そして告げた。

「『クリフォト』テメェらを殲滅する」

同時に飛び出し、真正面にいた5人の首をまとめて刈り取った!

5つの首が宙を舞った瞬間、シドーは納刀して跳躍した!

彼に魔力弾や氷、雷が殺到するが、それらを全てを切り払い、集団のほぼ中央にいた悪魔に馬乗りになりながら着地すると、そのまま顔面を殴り潰し、立ち上がりながら袈裟懸けに居合い斬りをして前にいた悪魔を斬り伏せた!

周りの悪魔たちは魔力で攻撃しようとしたが、誤射を恐れて一瞬攻撃を躊躇った。その瞬間、シドーは再び居合い斬りの構えを作ると、今まで以上に大きく溜めてから振り抜いた!

彼を囲んでいた10人の悪魔たちの上半身と下半身が別れ、床にずれ落ちた。

シドーは納刀して次に行こうとすると、彼の足元に魔方陣が展開されると、そこから火柱が上がり彼の体を包み込んだ!

「ガァァアアアァァァッ!」

彼らは全身を焼かれる痛みで苦悶の声をあげた!だが日本刀だけは落とさず、少しずつ右手を動かしていった。

それをみた悪魔たちが嗤う。

「ざまぁないな。我々とてただ殺られるわけではないのだ。貴様の情報は我々にも来ている。ここに入れたのは貴様を葬るためなのさ!被害は大きいが、貴様を葬ることが出来れば軍備を整えられるからな」

自慢するようにペラペラ喋る悪魔だったが、その表情が固まった。

シドーが右手を日本刀に添えているからだ。

シドーは炎に焼かれながら抜刀して炎を切り裂いた!

炎の檻から解放された彼は、体のいたるところに火傷を負っており、床に片ひざをついた。だが、刀を杖代わりにしてすぐに立ち上がると敵を睨んだ。

悪魔たちはゾッとしながらシドーのことを睨んだ。自分達の中でも一番の者が作った魔方陣の攻撃をあっさりと打ち払ったのだ。それでもシドーを睨み返すことだけはできた。

シドーはゆっくりと立ち上がると、逃げてきたんだを鞘に納めて構えを取り直した。そして、

フッ!

悪魔たちの視界から消え去った!悪魔たちがシドーを探して周囲を見渡すと、

ズバッ!

「ギァッ!?」

ズバッ!

「ギィェッ!?」

ズバッ!

「なッ!?」

ズバッ!ズバッ!ズバッ!ズバッ!ズバッ!

次々と悪魔たちが切り裂かれ、砦の壁と床を真っ赤に染め上げていった!

「な、なんだ!?何が起こっているんだ!?」

「くそ!くそ!くそぉぉぉぉっ!」

悪魔たちは驚愕しながら魔力弾を周囲にばらまくように放っていくが、どれも当たる気配はなく、一方的に切り裂かれていくばかりだ。

悪魔の数が残り一人になった時、ついにシドーは足を止めてそいつを碧い瞳で睨んだ。

「き、貴様はまさか!ありえない!ありえない!生きているはずがない!」

残った悪魔はシドーを見て驚愕の声をあげた。今、シドーの髪と日本刀の刃は返り血で赤く染まっており、顔には不気味は笑みを浮かべていた。

悪魔の前には、三竦みの戦争中に各勢力から恐れられた『斬り裂き魔』が立っているのだ。

その斬り裂き魔(シドー)が悪魔に告げた。

「ここもテメェで最後だな。俺らの邪魔をするからこうなるんだ」

「ち、ちくしょうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

悪魔は半狂乱の叫びをあげながらシドーに突貫するが、シドーはゆっくりと重心を少し落とし右手を日本刀に添えた。

「あああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

悪魔がオーラを込めた右ストレートを放った瞬間、

ズバッ!ズバッ!ズバッ!

刹那の時間で放たれた三回の斬撃で右手を斬られ、首を跳ねられ、体を脳天から両断された。

シドーは拳を放とうとする態勢で固まった悪魔に背を向け、ゆっくりと納刀すると同時に悪魔の体は崩れた。

「はぁ………はぁ………くそっ」

戦闘終了と共にシドーはそう吐き捨てるように言うと、そのまま床に倒れた。今回はダメージを受けすぎたようだ。

シドーが消えそうな意識を懸命に保っていると、砦の門が吹き飛んだ!

シドーは敵の増援かとゾッとしたが、すぐに安堵の息を漏らした。門があったところに立っているのは、見慣れた黒いドレスを着た少女、リリスだ。

「シドー!大丈夫!?」

珍しく慌てながらシドーに近づいてくるリリスに、シドーは右手を上げて答えると、すぐに意識を手放した。

「シドー!シドー!」

リリスはシドーに声をかけるが、反応しないことに焦り始めるが、何かを思い付いて、砦の一室にシドーを運ぶと、そのまま砦の中に進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後。

「くっ!………いてぇ…………」

シドーは体の痛みに耐えながら体を起こそうとするが、

「すぅ………すぅ………」

彼の体に乗っかりながら眠るリリスのせいで動けなくなっていた。

シドーはそんな彼女を起こそうと手を伸ばすが、あることに気がついた。両手に雑ながらも包帯が巻かれているのだ。見てみると、両手だけでなく、その他火傷を負った箇所にも包帯が巻かれている。

シドーは首を動かして周りを確認した。彼が寝ている場所の近くの机に医療品と思われるものが放置されている。リリスのことなので適当に使ったのかもしれないが、効果はあったようだ。

シドーはゆっくりと優しくリリスを撫でた。リリスはくすぐったそうに笑うと、ぎゅっとシドーに掴まった。

シドー個人としては一刻も早く移動したいところなのだが、この状態ではまともに動けない。

彼はそう判断するともう少し休むことを決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三時間後。

シドーは目を覚ました。ここに近づいてくる気配を察知したのだ。数も多く、オーラの質も先ほどの奴らよりも強い。

「リリス、起きろ。出発だ」

「うぅん?出発?」

リリスは目を擦りながら寝ぼけ眼になってシドーに聞き返すと、シドーは頷いた。

「ああ、敵が来てるようだ。すぐに逃げるぞ。今回ばっかりは消耗しすぎた」

シドーはそう言うと寝ぼけているリリスを脇に担ぐが、あることに気がついた。

「俺裸じゃねぇか!?」

シドーは全裸なのである。そう、全裸なのである。考えてみれば当然だ。ドラゴンの身を焼く炎に晒されれば、どんな服でも灰になる。

驚愕するシドーにリリスが寝ぼけながら言った。

「シドー……そこに服、おいてあるぅ……」

「あ!?あ、これか!」

シドーは言われた通りにその服を手に取るが、それを見た瞬間に体が固まった。

「これ、クリフォト(あいつら)のローブじゃねぇかよ!?」

クリフォトのメンバーがよく着ている黒いローブ。リリスが用意したのはそれだった。

シドーはこれから殺して回る連中のローブを着ることに若干の抵抗を覚えたが、『背に腹は代えられない』と自分に言い聞かせてリリスを降ろすとすぐにそのローブを身につけた。サイズはピッタリで動きやすい。

「ふにゅ……」

再び寝ようとするリリスだが、シドーはそれに構わず部屋の窓に貼られた鉄格子を切り裂いた!

そして窓を蹴破り、外を確認する。砦の二階部分だったようで、思っていた以上に高い。だな、下にも外にも敵はいない。

シドーはリリスを抱っこすると、その窓から飛び降りる。

地面にうまく着地すると、素早く翼を展開すると一瞬にしてはるか上空へと飛び上がり、上から見えた森の方向へと飛び去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 




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