グレモリー家の次男   作:EGO

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Extra life 47 シドーとリリス 仕事と修行

グレモリー領の田舎町でシドーとリリスがお世話になり始めて早くも3日目の朝。シドーは、

「これを運べば良いんだな?」

「おう!頼んだぜ兄ちゃん!」

「まかせろ」

身の丈以上の加工された木材を担いで作業用の足場を歩いていた。普通なら重機や男性数十人がかりであげるようなものを、一人で担ぎ上げているのだ。

彼は町長から任された仕事の一つとして、建設の手伝いをしているのだ。悪魔ならば魔力を使えばあっという間と思うかもしれないが、ここにいる者たちはそこまで魔力が秀でているわけではない。そのおかげでシドーも仕事に困らずに毎日働けている。

一方リリスは、

「………暇」

やることもなく、暇を持て余していた。シドーに手伝うと言い出しても、

「これぐらい一人で大丈夫だ。しっかり休んでおいてくれ」

と、あっさり断られ。ならばと町長に訊いてみても、

「さすがに女の子に仕事は頼めないよ」

困り顔で断られた。力だけでいえばシドー以上だが、リリスの外見は少女だ。そんな子供にシドーと同じ仕事は頼めない。

それが町長の判断なのだが、そのせいでリリスは暇をしているのだ。

リリスは三角座りをしながらいつも仕事をするシドーを見ながらボーッとして、時間の経過とシドーの仕事の終わりを待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後。

「よし!兄ちゃん、今日はここまでだ!ありがとうな!」

「ああ。それじゃあな」

シドーは作業班長に軽く右手を挙げて別れを言うと、リリスの方に歩み寄った。

「リリス、終わったぞ。って、大丈夫か?」

「むぅ………」

シドーに声をかけられたリリスは顔を上げるが、今の今まで寝ていたようで、若干寝惚け眼になっていた。

シドーは苦笑しながら片ヒザをついて、リリスに目線を合わせると、彼女の頭を優しく撫でた。

「とりあえず屋敷に戻るぞ。次の仕事を探さないと」

「うん……」

シドーはまだ眠そうなリリスを抱っこすると、町長の屋敷に目指して歩きだした。

 

 

 

 

 

 

町長の屋敷に到着して、町長から借りている部屋にリリスを寝かせると、シドーは町長の執務室を訪ねた。

「町長、建設の仕事は一段落したぞ。次はなんだ」

仕事を貰いに来る態度ではないと思うが、町長は気にせずに続ける。

「仕事と言っても、今は特にありませんね。午後は自由にしてくださって構いませんよ」

シドーはそれを言われてあごに手をやった。今日まで1日中仕事だったが、急に休みを言い渡されたのだ。つまり、やることがない。

シドーは真剣に考えると、あることを思いついた。

「町長、この辺でヒトが寄り付かない場所はないか。そこで体を動かしてくる」

「でしたら、町の南西五キロほどにある場所なんかはいかがでしょうか。足場が悪い岩場なのでヒトが寄り付くことはありません」

シドーはそれを聞いて頷くと「ありがとうな」と一言告げてから執務室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

町から歩いて10分程。シドーはその岩場に到着した。もちろん彼の背中にはリリスがくっついており、とても上機嫌な様子だった。

「♪~」

「なんか機嫌良いな。良いことでもあったか?」

「シドーと久しぶりにお出かけ♪」

リリスの一言でシドーも笑みをこぼした。

言われてみれば確かにそうだ。ここ最近仕事ばかりでリリスを構ってやれていなかった。これからはもう少しリリスと一緒にいてやろう。

シドーはそう考えながらリリスに降りてもらい、左手に持つ日本刀に右手をかけ、そのまま抜刀した。

何人もの悪魔を斬ってきたが、そのたびに血を洗ったり、町に来る旅人や商人から教えてもらった方法で刃を研いだりして手入れをしていた。そのおかげでまだまだ問題なく斬れる。

シドーは近くにあった自分の身長ほどの岩の前に立つと、日本刀を大上段に構え、一気に振り下ろした!

バァァアアアンッ!

凄まじい音とともに岩は砕け散り、周囲に飛散した!シドーはその勢いのまま他の岩も粉砕していき、フッと息を吐いた。

威力は十分だが、シドーは首をかしげた。これでは隙が大きすぎるし、10人斬ったら疲れが出てしまうだろう。それではいざという時に動きが鈍くなってしまう。戦闘中にそれでは、目的を果たす前に死んでしまう。

シドーはそう考えると深く息を吐いた。まったくと言って良いほど日本刀(これ)の使い方が分からなかった。

シドーは抜刀した日本刀を一旦鞘に戻して、じっくりと見る。鞘があるのなら使うしかないが、これで片手がふさがっているため、見方を変えれば邪魔である。

シドーがどう使うか考えてながら唸っていると、リリスが彼に言った。

「シドー、ちょっと貸して」

「うん?ほれ」

シドーは休憩のためにリリスに日本刀を貸すと、少し離れて彼女の様子を見ることにした。

リリスはシドーの見よう見まねで鞘に入れたままの日本刀を振り回していたが、勢いよく振り回しすぎたせいか、それとも鞘にしっかり納まっていなかったのか、鞘が抜けてシドーの方へと飛んで来た!

「ッ!」

シドーはとっさにその鞘をキャッチすると、何かを思いついたような表情になると笑みを浮かべた。彼は立ち上がり、申し訳なさそうにしているリリスに近づいた。

「シドー、ごめんなさい………」

「いや、良いって。ちょっと掴めた気がする」

シドーはそう言いながら日本刀を返してもらうとゆっくりと納刀してリリスを下がらせた。

リリスが振り回しただけでも自分が一瞬危機感を抱くほどの速度で飛んで来たのだ。ならば、抜刀にその勢いをつければ良いのでは………。

シドーはそう判断して再び岩の前に立った。

少し重心を落として、右手でゆっくりと日本刀の柄を握った。瞑目すると集中して、ゆっくりと息を吐いた。

一瞬の静寂、そして、

「ハッ!」

気合い一閃と共に抜刀一閃!

岩が砕けることはなかったが水平に線が入っていた。

シドーはゆっくりと手でその岩の線より上を押すと、そこから上がずれていき地面に落ちた。

「お~」

リリスはパチパチと拍手をしながら結果を確認していた。シドーも岩の断面と日本刀の状態を確認していた。

これなら消耗も少なく済みそうだし、うまくやれば数十人も連続で斬りまくれる。

シドーはそう判断するとゆっくりと納刀した。

「リリス、もうちょっとやって良いか?すぐに終わるから」

「うん。シドーがやりたいだけやっていいよ」

「わかった。ありがとうな」

こうして、シドーは日本刀の練習を続けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 




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