グレモリー家の次男   作:EGO

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Extra life 46 シドーとリリス 冥界入り

シドーは困惑していた。紙切れに触って光に包まれたと思ったら、空の色が紫色になっているからだ。それに、森の雰囲気も何か違う、そんな気がしてならなかった。

シドーの横にいたリリスもキョロキョロと辺りを確認していた。

「リリス、ここどこだ?」

シドーが訊くと、リリスは不安そうではあるが答えた。

「多分、冥界」

「めいかい?」

シドーが聞き返すとリリスは頷いた。

ある意味でシドーの里帰りな訳なのだが、記憶が曖昧なシドーには初めて来る土地だ。そんなところにいきなり来させられたのだから動揺することも無理はない。

シドーは目を閉じて周辺の気配を探る。

近くに何かいるわけではなさそうだ。

シドーはそれがわかるとホッと息を吐いた。いきなり敵だらけの場所に来たわけではないからだ。

リリスは周囲を見渡し、遠くで点々と光る何かを見つけた。

その何かを指差しながらリリスは言う。

「シドー、あっちに町がある」

「なら、行ってみるか。何か分かるかもしれない」

「うん」

リリスは返事をすると例の如くシドーの背中に飛び付いた。シドーは日本刀の柄と鞘の端を持つようにして、リリスが乗りやすくした。

「少しは楽だろ?」

「うん」

リリスがぎゅっとシドーに掴まり直すと、彼はその町に向けて歩きだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

歩くこと約一時間。シドーとリリスはその町に到着した。ちなみに、リリスはシドーの背中で揺られて眠ってしまっている。

二人が来た村は裏京都程の賑わいはないが、そこに住むヒトたちの笑顔に溢れていた。

シドーは村民を見ながらある物にも注目していた。

彼の視線の先には村から少し離れたところにある塔が映っていた。

村の入口に立っている二人に、ヒゲを生やしたダンディな中年男性が声をかけた。

「お二人さん、旅の方かい?」

突然の質問に二人は一瞬間抜けな表情になったが、すぐに持ち直してその男性に言った。

「ああ、この子と一緒に旅をしている最中だ」

シドーはそう言うと背中で眠るリリスを見せた。

「俺はシドーだ。で、こっちはリリス」

「リリスちゃんに、シドーさんか」

男性はそう言うと少しだけ表情を陰らせた。

「あの、何か?」

シドーが訊くと、男性は調子を戻すように咳払いをして話を続けた。

「シドーさんか、あなたのお名前が、少し前に亡くなられた当主様のご子息様にお名前が似ていたものでね……」

シドーは直感的に、このヒトは見ず知らずの誰かのために泣けるヒトだ。顔も見たことがないであろう人物の死をここまで悼むことができる。このヒトは優しいヒトだ。

シドーは彼を見てそう思った。

シドーは男性に村外れにある塔を指差した。

「あの塔は何だ?」

シドーが訊くと、男性は笑んで答えてくれた。

「あれは電波塔さ。次期当主様がこの村に設置するように言ってくださったんだ」

「次期当主様ってのは?」

「リアス・グレモリー様。旅をしているのなら知らないかもしれないけれどね」

「リアス・グレモリー………」

シドーはその名前を反復してみた。どこかで聞いたことがあるような気がしたのだ。

考えてもわからないので気のせいで片付けると、シドーは女性に訊いた。

「ここはどこだ?」

「グレモリー領の端の田舎町程度の認識で良いですよ。シドーさん」

「わかった。で、あんたは?」

「この町の町長です」

男性はそう言って頭を下げた。シドーも応えるように頭を下げた。

二人がほぼ同時に頭をあげると、町長が言った。

「シドーさん。その子を家で休ませてさしあげましょうか?あなたもお疲れでしょう?」

「俺は問題ないが、リリスは休ませてやりたいな」

シドーは素直にそれに応じて、町長の家に厄介になることにした。

「ではこちらです。道の舗装は進めていますが、まだ完全ではないので足元にお気をつけください」

「わかった」

シドーは言われた通りに足元に気を付けながら町長の後に続いた。

 

 

 

 

町長の家までの道中、シドーは町の様子を見ていた。

道には古ぼけた外観のお店と思われるものと建設途中と思われる大きめの建物などもある。

「あれは建設予定のスーパーですよ。あれも次期当主様がお声をかけてくださいましてね」

シドーが興味深そうにその建物を見ていたためか、町長が説明してくれた。

「その次期当主、なかなか良い奴なんだな。会ってみたいもんだ」

シドーがそう言うと、町長は続けた。

「次期当主様は人間界におりますから、滅多なことではここには来ません。前回も奇妙な縁があったから来てくださったのです」

町長が懐かしむように言っていると、正面に周りの家々と比べると少しだけ大きめの家が見えてきた。

「あれが私の屋敷でございます」

「質素に暮らしているんだな。町長の家は豪華なものかと思っていたんだが……」

シドーが何となくでそう言うと、町長は返した。

「大きな町ならそうかもしれませんが、ここは田舎町ですから。あのぐらいがちょうど良いのです」

「なるほどね」

そうこう話しているうちに屋敷に到着、シドーは早速上がらせてもらった。

屋敷にいくつかある寝室の一つを借りて、そこにリリスを寝かせると、シドーは町長のいる部屋に行った。あることを申し出るためだ。

「町長、一つ良いか?」

「何でしょうか」

町長は書類の整理を一旦止めて、シドーに視線を向けた。町長と目があったことを確認するとシドーは口を開いた。

「ここで世話になるからには何か仕事をくれ。前にいた場所だと『はぐれ狩り』をやらせてもらっていたが、それでも構わないから、何か仕事をくれ」

シドーは町長へ何かの形で恩を返そうと考えていた。いきなり来た旅人に部屋を貸してくれたのだ、それぐらいしなければならない。

そんなわけでシドーは仕事があるかを訊きに来たのだ。

町長はしばらく考えると、シドーに言った。

「では、お願いします。近代化は進んでいるとはいえ、田舎町だと問題は多いですから」

「おう、任せろ」

こうして、シドーとリリスは、この田舎町に滞在することが決まったのだった。

 

 

 

 

 




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