グレモリー家の次男   作:EGO

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Extra life 36 何事も特訓が大事 ③

俺、イッセー、父さん、サイラオーグ四人は、『ゆるキャラ』修行のために山に来ていた。

転移の光が止み、俺たちの目に飛び込んできたのは雄大な大自然だ。緑いっぱいの木々と山々、山の麓には湖が見える。いい場所だ。

俺の横に立つ『バップルくん』ことサイラオーグは、それを見て感嘆の声を漏らした。

「……なるほど、いい山だ。木々もきらめいている」

「確かに、生き生きとしているな」

俺も続いてそう漏らしたが、

「お二人とも、せめて着ぐるみを脱いでから言ってください……」

イッセーが半目になりながら、俺たちに言ってきた。

確かに、俺もサイラオーグも着ぐるみを脱いでいない。『ゆるキャラ』二人が山を見て感動しているのは、端からみたらシュールな光景だろう。

「おいおい、イッセー。せっかく『ゆるキャラ』修行に来ているんだから、脱いだら意味がないだろ?」

俺が言うとサイラオーグが頷き、そしてイッセーに言った。

「兵藤一誠!話はここまでにしてさっそく始めるぞ!まずはあの山の頂上を目指すッ!」

「え、ええええええええ!?山登りからですか!?」

仰天するイッセー。だが、当たり前だろう。サイラオーグが言った山というのは、見た感じだと富士山以上に高そうなのだから。それをまともな装備なしでいきなり登る。さすがはサイラオーグ、なかなかスパルタだ。

「登ってこそ見えるものがある。まずはそこからだッ!」

サイラオーグはそう告げると、山に向かって走り出した。

「あ、ちょっと!待ってくださいよぉぉぉぉぉぉっ!」

何だかんだ言いながらそれに続くイッセー。意外とイッセーもやる気なのかもしれない。

「ふむ、では私たちはここでキャンプの準備をしていよう」

「わかりました」

俺たち親子は、父さんがどこからか取り出したテントを組み立て始めたのだった。もちろん、着ぐるみを着たままで………。

 

 

 

 

 

それから数分後。

「こんなものですかね?」

「ああ、なかなか良い出来だ」

無事にテントを完成させた俺たち。あとは、飯の用意かな?

俺がそう思っていると、父さんが話を切り出した。

「リアスの眷属のロスヴァイセに告白したそうだね」

………やっぱりその話題だよな。俺とセラが恋人なのは知っているから、そのせいだろう。

「はい。少し前に告白を……」

俺が改まって言うと、父さんが俺の肩に手を置いた。

「そうか。しっかり責任を取ってあげなさい。そして、セラフォルーちゃんもしっかり幸せにすること」

父さんは父さんなりに、セラとロスヴァイセを心配しているようだ。だが、無駄な心配だ。

「当たり前です。俺は二人とも幸せにしますよ。できなかったら、グレモリー家の恥ですから」

俺がそう告げると、父さんは震え始めた。

「……シドウにも父親になるのか。これで、グレモリー家、シトリー家は安泰だな!」

そう言って俺を抱きしめてくる父さん。

確かに、俺とセラに子供ができたら、その子は多分シトリー家の次期次期当主(俺たちでいうミリキャスポジション)になるだろうし、ロスヴァイセとの間に子供ができたら、その子はミリキャスの次の当主になるだろうからな。

そこまで考えて思ったのだが、なんか恥ずかしいというか、シュールというか……。

俺と父さんは『ゴモりん』の格好のままだ。そんな俺たちがハグしているのだから、それはシュールな光景だろう。

父さんは俺から離れて湖を指さした。

「ちょうどあの湖に『リリティファ』さんが住んでいるんだが、魚を獲るついでにあいさつをしてきたらどうだい?」

なに!リリティファがこの近くに住んでいるのか!それはあいさつに行かなくては!あのヒトも俺の命の恩人だ!

「はい!行ってきます!」

「その前に、着ぐるみは脱いでいきなさい。その格好で行ったらリリティファさんに失礼だ」

「それもそうですね」

俺はそう返して、着ぐるみを脱ぐと大きめのザルを持って、湖を目指して走り出した。

 

 

 

 

 

 

走ること10分程。ようやく湖に到着した。なぜここまで早いのかと言うと、途中から飛びました。

いやー、やっぱり生身が一番だ。空気がうまい!

俺が湖のほとりで深呼吸していると、湖から何かが顔を出した。

顔を出したのは緑色の長い緑色の髪の誰かだ。その誰かは、俺の様子をうかがうようにじっと俺のことを見てきていた。なんか、見られているのは気持ち悪いな。

「いい加減、出てきたらどうだ!」

俺が呼び掛けると、その誰かが湖から出てきた。

「久しぶりだな、リリティファ」

「は、はい。お久しぶりです。その節はお世話になりました」

その誰かの正体であるリリティファは、俺を見て丁寧にあいさつをしてくれた。

「元気そうで何よりだ。で、こっちに来てからはどうだ?」

俺が訊いてみると、リリティファは笑顔で言った。

「はい!のんびりと暮らさせていただいています。もうあんなヒトはいませんから」

あのヒトって、あの海賊か。名前は覚えていないが、まぁ、ムカつくやつだったよ。

俺が少し前のことを思い出していると、リリティファが俺の左腕を見て、首をかしげていた。

「あの、左腕に違和感があるのですが、何かあったのですか?」

「まぁ、少し前の戦いで吹き飛んでな……」

俺はそう言いながら左袖をまくり、肘まで露出させる。そこがちょうど、生身と義手の接合部だ。

「そ、そんなことが………」

「ああ、今のこれは義手だ」

「お体を大事になさってくださいね」

リリティファさんが心配そうに言ってくれた。本当、もう少し体は大事にしようかな?

「で、何でわかったんだ?」

俺が興味本意で訊くと、リリティファは俺の右腕と左腕を交互に見て、こう続けた。

「その、なんと言いますか。少し左腕がガッシリして見えたので……」

あ~、なるほど。この義手にはいろいろと仕込んであるから、少しゴツいのかもしれない。

「さて、あいさつはこのぐらいにして、魚を獲りたいんだが、いいか?」

「はい!お手伝いします!」

「そうか、それじゃ、頼む」

こうして、俺は魔力でウェットスーツに着替え、リリティファと共に食材確保のために湖に入っていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「大漁だな!」

「はい!」

数時間かけて、ザルいっぱいに魚を獲った俺とリリティファ。

材料があるのはいいが、料理をするには調味料とかもないとダメだよな。

「リリティファ、調味料か何かを貸してくれないか?」

「はい、今取ってきます!」

リリティファはそう言って、湖に潜っていった。湖の中に住んでいるのか、それともほとりに家があるのか。

俺が首をかしげていると、ここに近づいてくる気配が複数。

「何者だ?ここは山賊『ビルーバ一家』の縄張りだ。殺されたくなかったら、身ぐるみとその食料を置いていけ」

山賊か……。この手の輩はどこにでもいるもんなのか?

俺が溜め息をついていると、リリティファが戻ってきた。

「シドウさん、お待たせしました!」

調味料が入っていると思われる箱を持っている。だが、タイミングが悪かったな。

「あ、あなた方は!」

リリティファはどうやら知っているようだ。だが、いつかの海賊の時ほど怯えている様子はない。

「リリティファ、誰だこいつら」

俺はリリティファに訊きながらその山賊を指さした。

「えと、最近私に告白してくるヒトの部下さんです」

「……告白って、またか」

俺が呆れていると、山賊が言ってきた。

「えーい!貴様ら!俺たちを無視するな!」

「黙ってろッ!」

俺はそう言いながら大剣を生成して、オーラを飛ばした!

「ちょっ!?」

『ギャァァァアアアアアッ!』

その一撃をくらった山賊たちは、吹っ飛んでいき、空の彼方でキラリと光った。気がした。

「これにて一件落着だな」

俺が大剣を消しながらそう言うと、リリティファが訊いてきた。

「ところで、シドウさんはどうしてここに来たのですか?」

「………あ!」

リリティファに言われて思い出した!父さんたちが待っているんだった!

「リリティファ!この際止まってられねぇ!ちょっとそのザルを持ってくれ!」

「え?あ、はい」

リリティファはそう言うと、調味料が入った箱と、大量の魚が入ったザルを持った。

それを確認した俺は、リリティファをお姫様抱っこの要領で抱き上げる。

「よし、それじゃ、準備はいいか?」

「え?あの、まさか………?」

「OKだな。よし、行くぜ!」

「え、ええええええええ!?」

リリティファの叫びを聞きながら、俺は翼を出してキャンプまで急いで戻ったのだった!

 

 

 

 

 

 

数分後。

割りと全力で飛んだため、案外早く戻ってくることができた。

「シドウ、お帰り。こっちの準備はできているよ」

そう言って迎え入れてくれる父さん。奥には疲れた様子のイッセーと、なぜかびしょ濡れのサイラオーグが椅子に座って休憩していた。2人共、戻ってきていたのか。いやはや、向こうで遊びすぎた。

「リリティファさんもお久しぶりです」

「お、お久しぶりです。当主様?」

リリティファは疑問形で父さんに訊いた。父さんはまだ着ぐるみ姿だからだろう。

「ああ。私だよ。さて、イッセーくん、サイラオーグ。シドウも戻ってきたところで、食事の準備を始めよう。リリティファさんも食べていきなさい」

「は、はい。いただきます……」

少し当惑しながら、リリティファは返事をした。

俺がリリティファをここまで連れてきた理由は、さっきの山賊のせいだ。あの海賊との一件のせいか、少し過保護な部分があるのかもしれない。つまり、リリティファが心配なのだ。

あいつらがいなかったら連れてこなかった、なんてことはなく。食材獲りに協力してくれて、調味料をくれたんだから、どっちにしろ連れてこない選択肢はなかったがな。

こうして、俺たち5人は、少し遅めの、キャンプとは思えないほど豪華な夕食をとることになった。

 

 

 

 

 




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